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2007.06.29

東芝による米原発二基受注、雑感

 東芝が米電力大手NRGエナジーによる米テキサス州建設予定の原子力発電所建設を総事業費約6400億円(52億ドル)で受注する見込みだ。2014年に稼働予定。
 日本企業による初の米国原発受注のニュースでもあるのでその点でも、へぇと思ったが、その金額を聞いて、少し驚いた。額が大きいというのではない、あまりに帳尻が合い過ぎている。なんなのだろうと少し考え込んでしまった。この話題について何かまとまった結論もないのだが、気になるのでブログに書いておこう。
 ニュースと背景については日経新聞記事”東芝が米原発受注、総事業費6000億円”(参照)より。


 東芝が米電力大手NRGエナジーから原子力発電所を受注することが内定した。同原発は日立製作所・米ゼネラル・エレクトリック(GE)連合が優勢だったが、日本での安定した実績などを訴えた東芝が逆転した。総事業費は約6000億円。東芝本体が海外で原発建設の主契約企業となるのは初めて。原子力政策を転換した米国では今後30基の原発新設が見込まれる。三菱重工業も米国で大型受注を獲得しており、日本の原発大手の攻勢が相次いでいる。

 全体の流れとしては主に昨年の石油高騰(現在もまた上がってきているが)の世界的な騒ぎと地球温暖化を避けようという祭りのような騒ぎから、各国とも原子力発電見直しにシフトした。特に米国では記事にもあるように今後さらに原発の建設需要があり、日本はかなりその恩恵にあずかることになる。もっとも、日本対米国という単純な図式ではないことは、今回の受注でも日立・GE連合が途中まで優勢だったことでもわかる。
 東芝の受注額で「あまりに帳尻が合い過ぎている」といった印象をもったのは、今回の受注の直接的なきっかけとなった06年の米ウエスチングハウス買収額が(54億ドル=約6400億円)だったことだ。まるでこの日に回収見込みが立つかのような受注だった。それだけ見れば、米国が米ウエスチングハウスを日本企業である東芝に買収させずに、なんとか持ちこたえさせるような米国内的な配慮でもすれば良かったかのようにも見える。が、技術的には米ウエスチングハウスには無理だったようだ。
 今回の受注はFujiSankei Business i.”東芝、初の単独受注 米原発2基、総事業費6400億”(参照)によると、「沸騰水型軽水炉(BWR)と呼ばれる方式の最新改良型(ABWR)」ということで、東芝はすでに「世界初のABWRである新潟県の柏崎刈羽原発6号機を手掛けた実績」がある。なお、この技術は日立もあるにはあるのだが。これに対して、米ウエスチングハウスは「世界の商用原子炉の約7割を占める加圧水型軽水炉(PWR)方式の大手」ということだった。うがった見方をすれば、東芝に買収させることで、米国内の雇用を守ったとも言えるのかもしれない。ちなみに、米ウエスチングハウスは06年の時点で、米国を含め世界34か所に技術・販売拠点を持ち、原発の建設実績は98基。従業員約9000人、売上高約18億ドル(約2100億円)とのこと(読売新聞2006.2.20より)。企業規模としてはそれほど大きいわけでもない。この買収は、「極東ブログ: 行け、行け、中国海洋石油!」(参照)や「極東ブログ: ユノカル問題続報」(参照)でふれた中国海洋石油(CNOOC)によるユノカル買収と同様に、対米外国投資委員会の審査対象となったが、4か月でスピード承認になった。
 日本国内的に見ると、東芝が結果的に米ウエスチングハウスを買収したのだがこの買収では、三菱重工業も狙っていた。”三菱重会長“恨み節” 東芝の米原子力大手買収”(2006.2.22)ではこう背景が語られている。

 三菱重工業の西岡喬会長は21日の記者会見で、米原子力大手ウェスチングハウス(WH)の買収レースで東芝に敗れたことについて、「理解に苦しむことが起こった」と述べ、東芝の提示した買収額(54億ドル=約6400億円)があまりに高すぎるとの認識を示した。

 業界的には常識外れのトーンもあったのではないか(当初の予想では3000億円)。しかし、今回の受注額を見ると、苦笑い以上もあるかもしれない。なお、三菱重工業と東芝は原発についてはこれがきっかけで事実上決裂したようだ。
 東芝を揶揄したわけではないが、もう少し気になることがある。東芝は米ウェスチングハウスの買収を足がかりに原子力事業拡大を狙っていた。計画では、06年時点で約2000億円の原子力事業規模が、2015年までに6000~7000億円に拡大される予定だ。もちろん、今回の受注から米国でのさらなる展開が見込まれているのだが、それでもこの膨れかたには、当然、中国の原発建設需要が含まれている。
 というあたりで、米ウェスチングハウスを振り返ると同社もそもそも中国市場を狙っていた。十年前の読売新聞記事(1997.10.23)”江沢民訪米に向けて(3)原発業界、巨大市場に的(連載)”だが、次のように語っている。

 米原発メーカー、ウエスチングハウスのマイケル・ジョーダン会長はこの四年間に六回、中国を訪問した。今後二十五年間の原発建設投資が推計六百億ドル(七兆二千億円)に達する見通しで、世界最大の原発市場となることが予想される中国への売り込みが、最大の目的だ。
 一九七三年以降、米国内での原発発注はゼロ。中国に原発を輸出できなければ、同社は身売りの可能性もあるとうわさされている。だが、商談の最大の障害は中国側にではなく、米国側にある。米国は八五年、対中原発輸出を始めるための原子力平和利用協定に調印したが、議会が中国の核拡散疑惑をやり玉に挙げ、協定履行を凍結させたままなのだ。

 結局、米ウエスチングハウスは東芝に身売りとなったのだが、東芝となることで中国進出の展望も開けてきたと言えるのだろう。
 以上、たらーっと書いてみて、自然にこの先のストーリーが見えつつあるようにも思えたが、結果的に日本にとって悪い話でもないのだろう、というあたりで雑感も中断しておくほうがよいような気がする。

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コメント

なんにしてもルートが多いのはリスクヘッジ上でもメリットの方が多いでしょう、たぶん。
私は平時における各国軍の交流みたいなものだと思うてます。
相手が見えてると、そう不必要に怖がる事も無いと。

投稿: トリル | 2007.06.29 15:18

アジア支配を念頭に置いたアメリカファンド主導。東シナ海のガス田は台湾との政治的絡み、実物実利では精錬するまでのコストが高いし、環境破壊に繋がるのは必至。中国側は日本から技術提供を受けたいだけ。東芝は東世界への軍需産業を強みに持つ。米エネルギー産業と米ファンドは一心同体。話は飛ぶが原子力発電がテロの最大の標的であることは覚悟か。

投稿: アカギ | 2007.06.29 16:04

ウエスチングハウスといえば、米海軍向け空母・潜水艦用の小型原子炉で何とか食い繋いできたというような印象でした。
流石に東芝買収の際には、軍需部門は切り離されたようですが。
そういえば、日産がルノーに買収された際も、日産のロケット・ミサイル部門はIHIに引き継がれましたね。

投稿: tome | 2007.06.29 18:33

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