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2007.06.15

NOVA一部業務停止処分とISDN遺跡

 外国語会話を学ぶということにあまり関心がないせいか、語学学校NOVA一部業務停止処分問題にも関心を持てないでいた。しかし、なんかこれって心にひっかかるものがあるなと報道を追っていくうちに、ISDN遺跡を発見した。いやそれは冗談。でも、へぇと思うことがあったので少し感想を書いておこう。
 NOVA一部業務停止処分自体について感想や、そこに至る直接的なプロセスについての感想は、まあそんなのものかな、というくらいしかない。四月に出た中途解約時の清算規定についての最高裁判決で、さすがにもう処分せざるを得なかったのだろう。むしろ、ここまで処分を伸ばしてきたかのようにも見えるのは、多少なりとも裏でもあるのかなとも疑った。結論から言うと大した裏があるようにも思えない。が、まるでないわけでもなさそうだ。そのあたりは以下の話にそれとなく、さしさわりなく、ほのめかして書くかもしれないし書かないかもしれない。うやむや。
 報道を見ていて、NOVAグループの猿橋望代表という人に関心をもった。さすが地車祭りの岸和田の出身者という気質が感じられる。どういう気質なんだとつっこまれると言葉に詰まるが。1951年生まれ。読売新聞”NOVAグループ・猿橋望代表 拡大戦略、見直しの時”(2006.3.13)によると、「日本をとにかく出たい」との一心で、「現地に行けば、何とか話せるようになるだろう」という前向きな姿勢で、高校卒業後フランスに向かった。
 1970年だろうか、やはり大阪国際万国博覧会の影響もあったのんじゃないかな。ところが、「極東ブログ: おフランスのパリ症候群ですか」(参照)ではないがそううまくはいかない。猿橋は率直にこう語っている。


それまでフランス語を多少は勉強していましたが、と思ったのが大間違いでした。たどたどしいフランス語しか話せないので、なかなか相手にしてくれる人はいませんでした。結局、数年間を無駄にし、「もっと前からフランス人と接する機会があれば……」と思ったのが語学教室を始める原体験となりました。

 5年半の滞在は学業という点では空しく終わったと言えるかもしれない。しかしそお青春の失敗から現在のNOVAの成功……でいいのかな……があるのだ。いや、そこまで話を進めるものでもないか。
 帰国後、猿橋の元にイギリス人とカナダ人が転がってきて居候。彼らが子ども相手に英語を教えているのを見て、それを仕事にしようと思い立ったらしい。猿橋望、三十にして立つ。受講料は映画料金を目安に一回1500円程度。会社としては赤字だったらしいが、86年に東京三店舗目を出してからようやく猿橋自身の給料分も出るようになったとのこと。拡大路線の始まりは成功だった。
 バブル崩壊につれ経営は苦しくなり、1993年、このままではじり貧というところで猿橋は大きな賭に出る。多店舗展開と合わせてテレビCMを打つことだ。このときの「駅前留学」のキャッチは猿橋自身の発想らしい。これが当たって現在のNOVAがあるとも言える。
 とか、資料をざらっと見ていて、ちょっと意外に思ったのだが、この「駅前留学」と同時期に猿橋は後の「お茶の間留学」のコンセプトも持っていたらしい。随分と先見の明があるものだと思ったが、ふと私自身の過去の仕事を振り返ると、その年代私もISDN技術の極末端に関わっていた。あの頃、私もAT&Tから取り寄せたNo.7共通線信号方式の文書なども読んでいた。思い出すとあの時代、これからのデジタル通信について薔薇色の未来を思い描いたものだった。いろいろあの頃を思い出す。昼食時先輩筋から「実はね世田谷にはまだ法的に交換することのできないクロスバーがあるんだよ」と聞きてぶっと味噌汁を吹いたことがあった。そういえば、もっと以前だが電電マンだった父から「クロスバーにはな、欠陥があって……」とか奇妙な話を聞いたことがあったな。
 日本版ISDNであるINSの実際的な基礎ができたのは1995年だったかと思う。私はだいたいのNTT技術の進捗を知っていたので沖縄移住後早々にNTTと交渉して僻地にISDN回線を引いた。NTT側の人も面白がって協力してくれたのが懐かしい。と、話が私事に逸れてきたが、猿橋もそうした技術屋さんたちの夢をたくさん聞かされていたに違いない。
 「お茶の間留学」つまりテレビ電話による英会話レッスンという技術は、ISDNの128kbps回線上に夢想されたものだった。それはインターネットですらなかった。128kbpsと言っても現代じゃなんだか笑っていいのか泣いていいのかわらない時代になったが、あの時代ISDN技術側にいた私などはすでに情報として入ってくるADSLによるインターネットについては、まったく実用に耐えないと信じ込んでいた。技術進歩というのものは恐いものだなとしみじみ思う。
 「お茶の間留学」が実現したのは2000年だった。もはやISDNに閉じる時代ではない。インターネットの時代なのだ。ADSLや光回線もISDNを過去のものにしようとしていた。
 話を端折ろう。私は、NOVAの失敗は、ISDNに「お茶の間留学」を賭けたことにあるのではないかとなんとなく思う。読売新聞”NOVA業務停止 予約対応困難、見学日が契約日… 偽りの「駅前」”(2007.6.14)を読むと、NOVAが「お茶の間留学」をビジネスの根幹近くに置いていたようすも伺われる。

 昨年12月まで統括本部の社員として、関西エリアを担当していた和歌山市の無職女性(24)は「『予約すれば、いつでもレッスンを受けられる』といううたい文句は、自宅でのテレビ電話のレッスンも含めればという意味だった」と証言。契約時に用いる営業マニュアルには「テレビ電話のことは、相手から尋ねられるまで一切触れてはいけない。聞かれないことには答えないという決まりがあった」と打ち明ける。

 「お茶の間留学」がISDN仕様だったことは、現時点では決定的な間違いとはでは言えないかもしれない。すでにNOVA自身ISDN以外の通信も利用できるような対応を取っていることも知っている。それでもスカイプ(Skype)時代には、機材と通信費というインフラ的な経費部分ですら対抗するには無理があるように思える。
 NOVAの「お茶の間留学」は、中国で高まる語学熱に合わせ、この8月には上海でも開始される方針がある。実現されるのだろうか。今回の処罰はその中止を結果的に導くだろうか。
 NOVAはどうなるのだろうか。厚労省は、教育訓練給付金制度による経費補助の対象からNOVAを6月20日以降打ち切ることにした。NOVAはこれまで7万1000人対象に161億円の給付金を受けていたとのことだが、その分の減収は大きいだろう。
 私はNOVAは生き残るのではないかと思う。これまでも語学学校が潰れて社会問題となったことを国が知らないわけはない。被害は大きいのだ。というか、NOVAが潰れたら、私はこの国の方針が本当に変わったんだと実感するだろう。

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コメント

2005年まで(月までは明かせませんが)中にいた人間として一言コメントさせて頂きます。

ご推察の通り、ISDNに掛けてしまったというのは、問題だったかもしれません。
しかし、この不祥事の最大の発端は、それよりも2004年くらいに急に社長が言い出した「1000店舗」達成の方針が大きいのです。

当時、教育制度給付金がしぼられ始め(受講金額の8割から4割に)、先々の展開について不安が漏れ始めていた頃、社長が出したのは「これからはKIDS(子ども英会話)だ」ということ。
これ自体にはそれほど問題はありませんでした。というより、まっとうな見解だったと思います(現在、子どもにかけるお金の量はかなり増えていると聞きますし)。

ところが、この前提から、社長はいわゆる「駅前」や「お茶の間」だけではなく、郊外のマンションの一角や、ショッピングセンターの空きスペースまで使うという方針に変更しました(それまでは「駅前」か「お茶の間」だけだったのです)。

しかも、当時600ほどだった店舗数を1年以内に1000超にするというのです。
どだい、無理な話です。

しかし、超ワンマン企業ですから、そこはどんな事情があろうとも達成するのだ、ということで無理な出店が行われました。

結果として、既存の店舗と新規の店舗のあいだで客の取り合いが起き、既存の事業所を含め、大きく損害をこうむることになったのです。

その結果として、2005年度以降赤字が続いているのです。

身から出た錆とでもいいましょうか。

コムスンのようにその事業だけ身売りするのは難しいとは思いますが(NOVAの場合、子会社ではなく、本体の事業ですから)、それでもベネッセやその他の企業から買収のお誘いはあるのではないでしょうか。

ご記載の通り、語学という産業はいきなり無くなるようなことがあっては、おそらく大混乱を惹き起こすと経産省も考えているでしょうから(なんといってもNOVAは市場の6割を押さえていますから)、最低ラインとしては現状の経営陣をすべて排するような形で、事業としては継続するという決着が現状ではもっとも妥当な筋ではないかと思います。

そうして、まともな経営陣がついてくれれば、ある程度はまっとうにやっていける企業になれるのではないかと思います。

投稿: 中にいた人 | 2007.06.15 22:05

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