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2007.05.01

エチオピアにおける中国系油田襲撃事件

 エチオピアで中国系油田が襲撃される事件があった。このニュースは日本で報道されなかったわけではないけど、ダルフール危機問題と同じで中国様が絡むとなると、なんとなくその問題はできるだけ触れないでおこうオーラが漂ってくるのかなと感じた。まあ、なんとなく感じたくらいの主観にすぎない。が、少し私が知るくらいのことはブログに書いておこうか。
 まず共同の報道の手口はこう。標題がちょっとわかりやすすぎなのに、背景がわかりずらいのが絶妙。四月二五日付け”「非道で残虐」と非難 油田襲撃でエチオピア首相”(参照)。


エチオピアからの報道によると、同国のメレス首相は24日、同国東部の油田施設が武装グループに襲撃され、中国人9人を含む計74人の作業員が殺害された事件について「非道で残虐な行為」と非難、警備を強化するとともに事件の調査に全力を挙げると述べた。

 たしかに「非道で残虐な行為」だが、それにしても「同国東部の油田施設」っていう表現は心配りがナイス。とはいえ、前日の共同”中国人ら74人殺害 エチオピアで油田襲撃”(参照)ではそうでもなく中国資本とあった、というかAPの引き写しだからか。

東アフリカのエチオピア東部で24日、武装グループが中国資本の油田を襲撃し、敷地内の施設を破壊した上、中国人作業員9人とエチオピア人作業員65人の計74人を殺害した。AP通信などが伝えた。

 朝日新聞は仲良しの国営新華社通信を引き、エチオピア政府報道官による「オガデン民族解放戦線(ONLF)と関連のある勢力のテロ攻撃だ」とする見解を載せ、コメントを加えた。四月二四日付け”エチオピアの中国系油田で74人殺害 武装集団襲撃”(参照)より。

 現場周辺は、エチオピアでは少数民族のソマリ人が多い地域。ONLFはソマリの分離独立などを求める反政府勢力。06年4月にはエチオピア東部で石油やガスの探査を行う外国企業に対し「エチオピアの現体制と外国企業の利益のための行動で、許しがたい」と警告する声明を出している。
 経済の急成長で石油需要が増えている中国は、エチオピアやスーダンなど、治安上の懸念や国際政治上の問題で欧米や日本が手を出しにくい国々で、活発に石油開発を進めている。

 これでこの辺りの状況がわかるだろうか。ざっと読めるのは、ソマリアに関係があるらしい、中国を敵視する勢力があるらしい、スーダンもキーワードになっているな、というくらいか。
 事件はその後、中国人七人の拉致事件となる。二五日付けCNN”中国系の油田を襲撃、多数死亡、拉致も エチオピア”(参照)より。

アフリカ東部のエチオピア政府などは24日、分離独立を求める反政府勢力の武装闘争が続く同国東部にある中国の石油関連企業の油田開発施設で24日朝、武装した約200人の襲撃があり、少なくとも9人の中国人とエチオピア人65人の計74人が殺され、中国人7人が拉致されたと述べた。

 その後、反政府勢力は「オガデン民族解放戦線」と特定され、七人は仲介に当たった赤十字国際委員会を介して解放された。昨日、四月三〇日付け読売新聞”エチオピアの石油関連会社襲撃、拉致の中国人7人全員解放”(参照)より。

同戦線は、エチオピア東部オガデン地方の独立を目指しており、「中国を標的にした訳ではない」と人質の解放に応じた。ただ、中国政府に対し、同地方でエチオピア政府と協力して石油開発するのはやめるよう求めている。

 拉致された中国人が無事でよかったし、とりあえずうまくまとまったというか、ちとうますぎねかみたいな印象もわずかにあり、やはり「同地方でエチオピア政府と協力して石油開発するのはやめるよう求めている」というところまでは中国様のご意向でも丸めるわけにはいかなかったのではないか。
 で、この事件ってなんだったの?
 全体像が示されないので、ある種の偶発事件のようにも見えないこともないが、どう見ても石油利権に関連してアフリカに入り込む中国の問題がまず明確にあり、次にソマリアの問題がある。その辺りをざっくり説明できないものかと思案していたが、フィナンシャル・タイムズにずばり「アフリカにおける中国」問題として、”China in Africa”(参照)取り上げられていた。

Much as China's - and indeed America's - ally Meles Zenawi, the Ethiopian prime minister, might like to be on top of security across the Horn, he is not always able to deliver. His army is the region's most powerful conventional force. But under his rule, Ethiopia is fraying again around the edges. Armed separatist groups are now changing tactics. Unable to match the army on the battlefield, the Ogaden National Liberation Front has chosen the spectacular to draw attention to its cause.
(中国と米国の同盟にあるメレス・ゼナウィ首相は角地域の保全の頂点を極めようとしているが、常に対処する能力があるわけではない。彼の軍隊はこの地域の最大の常備軍ではある。しかし、彼の支配下でも、エチオピアにはほころびがある。武装分離グループはそこで戦略を変えつつある。戦場での武力が均衡しないので、オガデン民族解放戦線は衆目を集めるための劇を選択してきている。)

 単純に言えば、中国と米国が現エチオピア政権に肩入れしたため、エチオピア内の対立派が、目立つテロ活動をするしかなくなった、ということだろう。さらに。

Both horrific events can be attributed partly to fallout from Ethiopia's messy intervention in neighbouring Somalia.
(この二つの悲惨な事件は部分的にだが、エチオピアによる乱雑な隣国ソマリア侵攻の副産物でもある。)

 このあとフィナンシャル・タイムズはイラクにおける米国と同様に、エチオピアは中途半端な侵攻活動によって逆に反乱勢力を活気づけてしまったと続けている。
 中国についてはさらに手厳しい。

China itself has played no overt role. As the Beijing government often insists, it prefers not to meddle in the internal affairs of other states. It does, however - for example by blocking international efforts to rein in Sudan. In Ethiopia, China's commercial activities, which are buttressed by soft loans to Mr Meles's government, inevitably have political implications too. While foreign governments might want to be apolitical, in practice in Africa they never can be.
(中国自身は明確な関与をしてない。中国政府がしばしば主張するように他国の内政干渉を好みはしない。が、実際には国際社会によるスーダン制裁の努力を阻害している実例もあり、実際には内政干渉をしている。エチオピアでも、中国の商業活動はメレス・ゼナウィ首相への長期低利貸付で支援することで、必然的に政治的な意味合いが生じる。アフリカにあっては、対外国がいかに非政治的であろうとしても、現実には実現しない。)

 アフリカにおいて非政治的な経済活動の関与はありえないとする、フィナンシャル・タイムズの割り切り方はやや極端かもしれないが、現実的な認識だろう。
 フィナンシャル・タイムズはこの文章で締めにして、その先をあえて語らない。が、もう一度今回の事件を眺めて見ると、その含みもわかるだろう。

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受信: 2007.05.04 13:47

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