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2007.05.17

日本もカザフスタンのウランにはなりふり構わぬ資源外交

 背景がよくわからないのでためらっていたのだが、とりあえずブログしておこう。話は、先月末の甘利明経済産業大臣によるカザフスタン訪問だ。公式なアナウンスはカザフスタン大使館の”2007年4月29~30日 甘利明経済産業大臣がカザフスタンを訪問
”(参照)があるが、表向きの話ばかり。
 この訪問で、日本のウランの全輸入量に占めるカザフスタンから調達の割合が現在の現在1%から30~40%と大幅にアップする。エネルギー全体の依存度を石油から原子力に転換しないといけない日本のエネルギー事情を考えると、日本のカザフスタンへの依存が洒落にならないくらい大きくなるといえるだろう。
 それでいいのだろうか、というのがまず素朴な疑問で、そこからいろいろと思うことがある。今回の合意はすでに前年小泉元総理の訪問で十分に足固めはしてあるので驚くほどのことはなく、たぶんその筋の専門家にはあたりまえの事実がいろいろあるのだろうが、ニュース報道やネットのリソースを見ている分にはあまり全体像が描けない。なお、カザフスタンは全世界で第二位のウラン埋蔵量を持つ。ちなみに一位はオーストラリアだ。
 「それでいいのか」と思うのは、端的に言えば、カザフスタンはヌルスルタン・ナザルバエフ大統領(参照)による事実上の独裁国家だ。ただし国情は、同じく甘利明経済産業大臣が今回のどさ回りに行ったウズベキスタンとは比べものにならないくらいと言っていいだろう、安定している。懸念なのは、今回の日本の行動は、中国様と同じように、あるいは中国様を真似て、なりふり構わぬ資源外交やってやがんな日本も、としか見えないことだ。この手の資源外交がろくでもない結果になりがちなことについては言うまでもないだろう、というあたり、いいのか日本。
 カザフスタンを取り巻く資源外交で、かつてフィナンシャルタイムズがグレートゲームと評したのは石油のほうだった。この問題については、「極東ブログ: ペトロカザフスタンまわりの話」(参照)で触れた。ベタに言うと中国とウイグル自治区の関連や、米国とロシアの関連もある。このグレートゲームと、今回の日本のウラン外交がどう関連しているか、はっきりとはわかりづらい。単純にいえば、ロシアも中国もカザフスタンについて石油だけではなくウランも狙っていたので、一見日本が二国を出し抜いた形にも見える。
 日本側では、少し調べればわかるように表向き、商社や電力会社が関連している。いちおうニュース記事も引用しておこう。4月30日付け共同”ウラン輸入4割確保へ カザフと共同声明 ”(参照)より。


 世界的に資源獲得競争が激化しウランの価格が急騰する中、埋蔵量が世界2位のカザフを官民約150人で訪問、ウランの安定確保への道筋をつけた。安倍晋三首相も原油の安定調達を目指し財界首脳らと中東を歴訪中で、官民挙げての異例の資源外交が展開された。

 訪問団には電力、商社、メーカーなど29社のトップらが参加。丸紅の勝俣宣夫社長らがウラン鉱山の権益確保で、東芝の西田厚聡社長は原発建設事業での協力で、それぞれ国営「カザトムプロム」と合意。日本側がカザフのウラン燃料加工や、軽水炉建設計画に技術協力をすることでも一致した。


 カザフスタンといえばかつてソ連時代の原爆実験(セミパラチンスク)との関連や「極東ブログ: [書評]沿海州・サハリン近い昔の話―翻弄された朝鮮人の歴史」(参照)で触れた高麗人のネットワークなども連想される。ただの連想に過ぎないのかもしれないが。
 話が粗くなるが、カザフスタンは事実上中ロ同盟のようにも見られた上海協力機構、中国・ロシア・カザフスタン・キルギスタン・タジキスタン・ウズベキスタンの六か国中の一国である。その枠組みは現状どのようになっていて、またカザフスタンはどのような位置にあるのか。もし今回の日本・カザフスタンのウラン合意が、中ロを出し抜くとすれば、どういう図が描けるのか。このあたりがよくわからない。
 上海協力機構についてだが、ウィキペディアを参照すると、説明にちと疑問にも思えた点がある(参照)。まず、02年時点については上海協力機構(SCO)はこう描ける。

2002年6月7日、サンクト・ペテルブルグにおいて、SCO地域対テロ機構の創設に関する協定が署名された。SCO地域対テロ機構執行委員会の書記局は上海に、本部はキルギスの首都ビシュケクに設置する。また同時に、同年初頭の米ブッシュ大統領の悪の枢軸発言に始まる、対テロ戦争拡大の動きを牽制した。

 そしてこの路線で日本で考えられることが多い。ウィキペディアへの疑問点は以下の部分だ。

SCOへの加盟の希望については、モンゴル、インド、パキスタン、アフガニスタン、イランが表明しており、2004年にモンゴル、2005年にインド・パキスタン・イランがSCOのオブザーバー出席の地位を得て、2006年6月の会合によってこれら4カ国は正式に加盟する見込みである。これによって、SCOは中国の国境対策の機構から、中国・ロシア・インドといったユーラシア大陸の潜在的大国の連合体に発展することになり、アメリカに対抗しうる非米同盟(反米ではないことに注意、また当事者がそう断言しているわけではなく、同盟の強制力はない)として成長することは、アフリカや南アメリカの発展途上国・資源国から歓迎されている。また、印パ両国が加盟することで、中印パ3国間の対立の解消も期待されている。2005年にはロシアが中国・インドと相次いで共同軍事演習を行った。

 ウィキペディアの説明が間違っているというのではなく、むしろ括弧内の「反米ではない」という補足のあたりの微妙なブレ感への疑念だ。
 あまり妥当ではないかもしれないが、私の印象を加えれば、反日デモなど反日攻勢を推進していた上海閥の弱体化と、ロシアの資源戦略の好調から、非米同盟な要素はかなり弱くなっているし、カザフスタン側でも、ロシアや中国と微妙な距離を取りたがってきているのではないか。
 英語版の説明には日本語版にない次の言及がある(参照)。

In some Western sources, the Organisation is sometimes referred to as the "Shanghai Cooperative Group" to imply that the organization lacks coherence and authority, usually in the context of the petrodollar.
(西側の報道では、SCGは、上海協力グループとして参照されることがあり、その含みは、通常オイルマネーを背景とした、一貫性と権力の欠如を意味している。)

 この言及は現状ではソースの指定がなく不確かな情報になるようだが、現状の上海協力機構の実態を示しているだろう。
 話が少し飛躍するが、米国はカザフスタンについて資源に目が眩んだかのようにその独裁制について叱責していない。米国がどのようにカザフスタンを巻き込む利権に関係しているのかもよくわからない。ただ、けっこう複雑な図柄になりそうだ。

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コメント

>上海協力グループとして参照されることがあり、その含みには、一貫性の欠如と、事実上オイルマネーを背景とした権力を意味している。

これ、かなり痛い誤訳でしょ。

通例、石油利権絡みの組織であるとされ、求心力と権威に欠けていることから「上海協同組合」と呼ばれることもある。

ぐらいかな。

投稿: 佐藤秀 | 2007.05.17 16:06

初めてコメントさせていただきます。いつも興味深い記事をありがとうございます。

佐藤秀さん(@05.17 16:06)がおっしゃっている箇所、直訳調で試訳してみました。

 (通常は)オイルマネーという文脈で、西側筋の一部では、その組織は「上海協同組合」として言及されることがある。その組織に一貫性と権威が欠けているということを言わんとするものだ。

つまり引用されている部分は、“「機構」というなら「一貫性と権威(coherence and authority)」があってしかるべきなのに、SCOにはそれがなく、まるで「協同組合」だ、という揶揄のようなものが、西側の一部(some)に出ている(wikipediaにソースなし)”、ということではないかと思います。

coherenceは、「一貫性」とすべきなのか「求心力」とすべきなのかは、wikipediaの文章からは判断しにくいのですが、2つ前の段落に「中ロの利害が対立しているため、このグループにはcoordinated mannerで行動する能力に問題がある」ということが書かれていますので、そのことを指しているのだと思います。したがって、どこに視点を置くかによって「一貫性」と「求心力」のどちらでもありうると思いました。

投稿: 花村 | 2007.05.17 17:09

↑すみません、メアド欄で、別のメアドで使っているユーザーネームを入れてしまいました。そのメアドを使っている人がいたら申し訳ないので、ここで訂正させてください。すみません。

投稿: 花村 | 2007.05.17 17:19

「一貫性」じゃ日本語としてちょっと。「緊密な連合」とまで言えないという意味だから。

投稿: 佐藤秀 | 2007.05.17 23:23

結局は機知だと思うが日本の大手商社が情報を掴んでいる。東トルキスタンの独立阻止。これが米中ソの狙い。蚊帳の外にならないように商社の圧力に屈したのが日本政府。小泉や安倍のような従軍慰米府はさぞ利用しやすい日本でしょう。

投稿: アカギ | 2007.05.18 07:49

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