« [書評]その夜の終りに(三枝和子) | トップページ | 昭和三〇年代生まれには理系爺さんが懐かしい »

2007.04.01

三角合併攻防戦の背後にある動き

 日本国民が汗水垂らして貯めた財産を組織的に巻き上げるグローバリズム経済の魔の手がまた伸びてきたようだ。だが、日本にはそれを迎え撃つ民族の知恵がある。

cover
黒字亡国
対米黒字が
日本経済を殺す
三國陽夫
 日本を愛するという一点で従来右派と左派に分かれていた政治勢力が連帯し、過激ともいえるノーモア小泉運動によってグローバリズムの手先小泉純一郎と竹中平蔵を日本政治の表舞台から手段も選ばず引き下ろし、危険な一手「三角合併」をかろうじて一年間凍結した。日本国経済を支える諸団体も、「三角合併」の実質的な手続きを完膚無きまでに骨抜きすることに専念し、さらに小泉支持勢力による王子製紙によるTOBもなんとか阻止し、製紙業界の株価も国内的に妥当な水準に安定させた。なのに、その善戦の陰で次なる恐るべき一手が進められていたのかもしれない。
 三月二八日付け日経新聞”三角合併の課税繰り延べ、外資の「準備会社」容認・財務省方針”(参照)で報道されたように、封じておいた悪魔の三角合併封印である課税繰り延べ禁止措置があろうことか外されることになりそうなのだ。

 財務省は、5月に解禁になる外国企業が自社株を対価に日本企業を買収する三角合併で、外国企業が日本に設立し広告宣伝などを手掛ける「事業準備会社」には、課税繰り延べ措置を認める方針を固めた。

 事態がどれほど深刻であるかについては、三國陽夫「黒字亡国 ― 対米黒字が日本経済を殺す」(参照)が詳しい。諸悪の根源はやはり小泉行政である。

 小泉内閣は二〇〇四年、日本経済を活性化させることを目指し、対内直接投資を倍増させる方策として会社法の改正を打ち出した。
 二〇〇七年から株式公開買い付け(TOB)制度を利用して、海外の企業が自らの株式を日本企業の株式と交換することで買収できるようになる。これが実現すると、アメリカ企業による日本買収は、従来に比べてはるかに容易になる。

 日本買いが容易になるのは、株式時価のからくりを使うからだ。日本は米国の巧妙な策略により長期デフレに沈み、その間、日米間の企業の時価総額に大きな開きが出てしまった。この差分を使い、グローバル勢力が日本の主要企業をすべて支配する日が迫っている。

 一九八〇年代後半のバブル経済全盛期、日本の上場企業ベースの株式時価総額は約六〇0兆円とアメリカのそれを若干ながら上回るほど膨らんだ。それがいまや、日本の株式時価総額はアメリカの五分の一程度まで差が広がってしまった。追い打ちをかけるように株式交換による日本企業買収の道が開かれるとすれば、もはや日本企業はバーゲンセールに出されたようなものではないか。アメリカの主要企業がそろって自社の発行株数の二〇%分の株式を発行すれば、日本の産業の主要企業を支配することは計算上、可能となる。

 この野望に日銀バッシャーと見られるリフレ派も加担していた。なんとなれば、リフレ派が支持する低金利とそれがもたらす対外金利差の是認はグローバル経済にホットマネーを供給していたからだ。三國は言う。

アメリカ企業は日本から低い金利で大量に流入する資本を借り入れて日本の優良企業の実物資産を購入できる。

 この国難に対処すべく、三角合併を実質的に不可能にする諸案が目論まれた。なかでも譲渡益課税の繰り延べ禁止は重要だったのだ。この点も三國は的確だ。

また、買収企業の株式を取得した時、株主に生じる譲渡益課税を繰り延べる税改正がされていないため、株主はTOBに応じにくい。

 ニューズウィーク日本語版(4・4)でも指摘されている。なお、同誌はグローバリズムのプロパガンダとも言えるので敵の手の内を知るのに役立つ情報が多い。

 このままいけば、三角合併は誰にも使えないしろものになりそうだ。日本経団連は、さまざまな骨抜き策を求めてきた。いくつかは政府・与党が退けたが、最大の焦点である外国株を対価として受け取った場合の課税繰り延べの扱いは不透明なままだ。フタを開けてみるまで課税されるかどうかわからない状態では、「怖くて使えない」と在日米国商工会議所(ACCJ)のニコラス・ペネシュ対日直接投資委員会委員長は言う。

 だが、最大の防衛でもあり日本の伝統的な美学にも通じる曖昧で不透明な権力の行使を、こともあろうか官僚の大本営財務省が取り崩す決定に傾いているかに思えるニュースが流れたのはなぜだろうか。ヒントはやはり同ニュースの中に隠されている。

ペーパーカンパニーには繰り延べを認めない方針は変えないが、準備会社は容認することで、日本に製造拠点や販売網を持たない外国企業にも三角合併による買収の道を開く。

 一読すると緩和の方向のように向かっているかのようだが、財務省の発表はその裏まで読む必要がある。なかでも留保条件にどれだけの恣意性が込められているかが官庁の意向を読むポイントだ。今回のケースでは、日本国に楯突くような買収が出た時点で難癖をつけて「お前らはペーパーカンパニーではないか」と判定すればよいということのようだ。ホリエモンを豚箱に入れ日興の不正見逃すのに比べれば、あからさまに検察を動かすまでもない簡単な行政手段で三角合併を無効にすることができるのだ。まだ、日本には希望がある。
 同論点については三月二九日付け読売新聞”日本での事業実体、条件…三角合併の課税繰り延べ”(参照)のほうが詳しい。

買収側が三角合併のために日本で子会社を設立する場合は、事業実体のないペーパー会社に終わらないことを明確にするため、日本に事業所を持ち、従業員を雇用したり、関係省庁への許認可申請や広告・宣伝を始めているなど具体的な活動の開始を求める。同省は4月中旬に省令を公表する。

 三角合併を推進するための代理店にはペーパーカンパニーではない証明が求められるのだが、その三点を解説するとこうなる。
 (1)「日本に事業所を持ち」というのは、「事業税をたんまり納めろ」ということ。(2)「関係省庁への許認可申請や広告・宣伝を始めている」というのは「官僚や業界の掟に従え」ということだ。
 しかし、こうした日本の美しい慣例はすでに欧米でも知られているのでそれほど新味はない。重要なのは、(3)「従業員を雇用したり」という点にある。未公表の段階だが、財務省は、日本に増え続けるニートの雇用促進を想定しているらしい。つまり、ニートの雇用と外国企業による日本企業買収はバーターになるというのが新しい日本国の国策なのだ。
 ニート問題プラス三角合併問題解消のために、メディア情報もこれから統制されることになる。従来のように「ニートは使えない」とか「ニートは国内問題である」といったマスメディアのキャンペーンは今後沈静される。代わりに、「ニートや失われた世代と呼ばれる若者は、実はグローバルでチャレンジ精神溢れている」というキャンペーンに取って代わることになる。
 このようにして見ると、グローバリズム問題の本質は情報戦またはイメージ戦でもあることがわかるだろう。
 もっとも、日本支配を目論むグローバリズム側も日本の固有の文化や言語についてより深い理解を得るべく研究を進めていることに注意を促したい。この点で、顕著な例を挙げよう。米系投資ファンドのスティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンドによるアデランスの買収工作がそれだ。三月二九日付けFujiSankei Business i”アデランス防衛策 スティールが反対”(参照)より。

 米系投資ファンドのスティール・パートナーズ・ジャパン・ストラテジック・ファンドは28日、投資先のアデランスに対し、昨年12月に導入した買収防衛策の廃止を求める株主提案を行ったと発表した。

 不思議に思う人もいるかもしれない。なぜハゲタカ・ファンドがアデランスを求めるのか? なぜハゲタカが、カツラのアデランスを?
 繰り返して呟いてみるとよい。なぜハゲタカが、ハゲタカが、ハゲタカハハゲタカ……すると気が付くだろう。ハゲタカ・ファンドは、日本人から、ハゲタカ、ハゲタか、禿たか? と言われ続けてハッと頭髪の必要性を理解したのである。まさかと思うような駄洒落のなかに、つまり日本文化や日本語の本質に、グローバリズムがまるで四月馬鹿みたいにすでに忍び寄っているのだ。

|

« [書評]その夜の終りに(三枝和子) | トップページ | 昭和三〇年代生まれには理系爺さんが懐かしい »

「雑記」カテゴリの記事

コメント

「ハゲタカ」ネタをとられたことで悔しい思いでいっぱいです。「禿げたか?」はさておき、先日 仕事の待ち合わせでJOBCAFEの前にいたら、スエットで入っていくヤンキーチックな若者がいたのです。「気軽な雰囲気で!」なんてJOBCAFEだろうと思いますがあまりに気軽すぎて。マクロ的にニートは 意欲があるなんていわれますが、なめているのもまた事実。
三角合併は外圧に屈する形だと思っていたけれど考えてはいるのですね。
まあニートはとかく 食っていける ことが問題なのです。
やはり ニートに自己破産した人はなんらかの手段が必要です。
人頭税をかける。選挙権を取り上げる。行動を制限する。
行きやすいようにしないといかない JOBCAFEなどやめちまえ!
変なキャリアコンサルタントを雇うな!と調べもしないで思うわけです。
カツラはバージョンアップメンテナンスで稼ぐらしいので、JOBCAFEもじょじょに料金でもあげていきましょう!
「えっコーヒー代とるんですか?」「あたりまえです!私たちも働いているのですから!」

投稿: りん! | 2007.04.01 11:01

↑そうか。再来週あたりにふらりと山逝って筍数百kg単位でゲットして「どーせ売っても(大した)金にならんからいいよ。やるよ」とか言って市場で働くおばちゃんたちにあげるわけですが。そういうのを「今から確約して」行動しようと目論む私の労働観念(←プギャー)はどうなるんだろうね? 知らんけど。

 自分の生活に被害が及ばない限り、ニートなんか放っときゃいいじゃん。勝手に生きて勝手に野垂れ死ぬだろ、そんなもん。ほっとけ。

投稿: ハナ毛 | 2007.04.01 13:17

4月1日に微妙な記事書かれると判断に困る。

投稿: 通りすがり | 2007.04.01 14:45

四月馬鹿の記事なのかな??????
なんか違和感が

投稿: うーん・・・・・ | 2007.04.01 15:26

↑まったくです。

因みに、経済オンチとしては他所の時価総額がさながら冗談と感じます。何なの? アレ

投稿: 夢応の鯉魚 | 2007.04.01 15:31

今日見た中では一番難易度が高いです。

投稿: うps | 2007.04.01 18:08

文章のノリが全然finalvent氏っぽくない、というのでようやく四月バカに気づきました。
レベル高いなぁ。

投稿: いつも見てる人 | 2007.04.01 19:40

いつもモジ化けているくせに、この日はみなマジになっている。

投稿: 都市に棲む山姥 | 2007.04.01 20:14

インターネットが普及によって、個人が簡単に意見をブログ等によってWeb上に公開することが、技術的に容易になっています。一方で、ブログの炎上と言った現象に代表されるように、匿名投稿による誹謗中傷が個人の自由な発言を抑えているといった面もインターネット上にはあります。しかし、匿名性に守られるからこそWeb上で発せられているような、政治家や企業やマスメディアといった既得権益を有する個人や団体に対する批判や告発は、インターネットの普及によって目立ってきたものと思われます。また出版物と比べて、誰もが閲覧することが可能であり、極めて迅速にかつ簡単に読者が自らその対象を批判することができるため、出版物の読者と比べてネット上の読者の反応の起こり方は多少異なっているのではないでしょうか。

投稿: disconsolatedesire | 2007.04.02 10:13

いや…第一段落で気付くって……

投稿: 無粋な人 | 2007.04.02 10:26

ダメだ、
全く分からん。
三國陽夫氏の言ってる事の方が正しい気がする。
誰か解説プリーズ。
理解を助けてくれそうなサイトへのリンクでも構いません。

投稿: 773 | 2007.04.06 00:43

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 三角合併攻防戦の背後にある動き:

« [書評]その夜の終りに(三枝和子) | トップページ | 昭和三〇年代生まれには理系爺さんが懐かしい »