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2007.04.28

イラク情勢と米国の関わり現況メモ

 イラク情勢と米国の関わりについてだが、さて、どういうタイトルにしたものか悩む。なので適当に付けておく。とりあえず話のきっかけは、米国でイラク撤退法案が上・下院で可決したことだ。一応ニュースだが、下院については、二六日付け読売新聞”イラク撤退法案、米下院で可決”(参照)より。


米下院は25日夜(日本時間26日午前)、イラク駐留米軍の撤収を10月1日までに開始し、来年3月末までに戦闘部隊の撤収を完了するとの条項を盛り込んだ総額1240億ドルの補正予算案を、218対208の賛成多数で可決した。

 上院については、二七日付け日経新聞”イラク撤退法案、米上院も可決・大統領、拒否権行使へ”(参照)より。

米上院は26日の本会議で、イラク駐留米軍を来年3月末までに撤退させる条項を盛り込んだ補正予算案を51対46の賛成多数で可決した。

 今後はどうなるかだが、民主党はこの法案を五月一日にホワイトハウスへ送付し、四年前の空母エーブラハム・リンカーン艦上「勝利宣言」をくさす、と、しかし。

 大統領が拒否権を行使した後、3分の2以上の多数で法案を再び可決すれば、拒否権は覆る。ただ両院での票差はほぼ民主党、共和党の勢力図と同じ構図となっており、撤退期限付きの法案が廃案となるのは確実とみられる。

 ということで、廃案になるのは確実。
 単純に民主党側の大統領選挙を睨んでのパフォーマンスとも言えるのだろうだが、私は、けっこうこのニュースをふーんという感じで聞いた。というのは、こうした切り口で伝えられると民主党はいかにもイラク撤退を急いでいるようだしそれに間違いはないのだが、今回の米議会のドタバタは実際のところ、ここまでの戦費は是認するということなんだな、と。国家の戦争を正当な手順で静止させることができるのは国会による予算の否認だが、日本も太平洋戦争ではそれができなかったものだった。
 問題の核心は戦費ということなのではないか。先の読売新聞ではこうもある。

大統領が拒否権を行使した場合、民主党などは、イラクとアフガニスタンの戦費が不足し始めるとされる6月か7月までに、新たな予算案の採択をめざすと見られる。民主党が再び撤収時期などの条件を盛り込むかどうかは不明。

 民主党としても戦費については微妙に見ているようだし、その行き先はべたな政局や米国民の意識動向にかかっているので、いろいろとメディアもまた騒がしくなるのだろう。
 でだ。
 日本だと特ににネットというかブログとから見るとブッシュや共和党は戦争がやりたくてしかたのない○○扱いされていることが多いのだが、実際のところ米行政側はどうなのか。つまり、民主党フカシやがって、と、いうことでスルーなのか。ということだが、どうも、実際のところ共和党やブッシュの本音もそれほど民主党の考えと変わってないような印象を受ける。つまり、実際上来年の春には全面ということではないにせよ撤退の道を進み始めるのではないか。
 そういう印象を持ったのは、一九日のゲーツ米国防長官のイラク訪問に関連してだが、この報道について、少し首をひねることがあった。一例として一九日付け時事”米国防長官、イラク訪問”(参照)だが、事実の記述の後、こう締めている。

 イラクでは18日にバグダッドで200人近くが死亡するなど、大規模テロが多発している。こうした状況を踏まえ、2月に開始された武装勢力掃討作戦の進ちょく状況などを検討したとみられる。

 ただのクリシェなのか。比較に二〇日付け朝日新聞”ゲーツ米国防長官、イラク訪問”(参照)はAPをべたに引いている。

 AP通信によると、ゲーツ長官はイラク訪問に先立ち、記者団に対して、米国の軍事介入が無期限ではないことをイラクの指導者に改めて警告する、と言明。政治的和解と石油収入の分配を巡る法整備を加速させれば、指導者が協力し合っている姿を国民に示すことができる、とも述べた。

 時事と比べると報道のトーンが違う。が、朝日新聞が独自の見解を出しているわけではない。この点二十日付けCNN”米国防長官がイラク訪問、自助努力を求める”(参照)がより詳しい。

 ゲーツ長官はイラク指導者らへの警告として、米軍の関与が無期限に続くわけではないことを強調。「時間は押し迫っている」と述べ、イスラム教シーア派、スンニ派とクルド人の間の和解や石油収入の分配を定めた法の整備を「できるだけ速く」進めるべきだと語った。また「法が成立しても状況が即座に変化するわけではないが、やり遂げることによって、協力しようとする姿勢が伝わる。その結果として、暴力を抑える環境が作り出されるはずだ」と述べた。
 ゲーツ長官がこれまでになく強い口調でイラク側の努力を促した背景には、駐留期限設定の是非をめぐる米議会での攻防がある。

 読みようによっては、戦争を引き起こしておきながら米国はもう知らんからなと、さすがのご意見無用、という印象もある。が、好意的に見ると、イラク人に対して、やる気になれば君たちで出来るんでないの、ということでもある。そして、その背景にはやはり米軍のかなりの規模の撤退が含まれているのではないか。
 日本では何かと内戦として報道されるイラク情勢だが、ゲーツがほのめかしているように、イラク内部協調でなんとかなるのだろうか?
 このあたりが微妙な状態になっているようだ。補助線的にはイラク現政権のシーア閣僚辞任をどう見るかということがある。ニュースとしては一六日付け産経新聞”サドル師、6閣僚に辞任指示 米軍撤退日程めぐり反発 ”(参照)があり、ここではサドル・フカシ説をフォローしている。

ただ、これでマリキ政権が崩壊する可能性はなく、サドル師は米軍撤退開始後をにらみ、シーア派世論の主導権を握るためのパフォーマンスに出たとの見方もある。

 ニュースでは触れてないが閣僚は辞任しても議員は辞任していないことからも、サドル側のパフォーマンスだろうし、米軍撤退後を睨んだ計画的行動と見てよさそうだ。加えて、次の指摘は重要だろう。

一方、首相はシーア派少数会派やクルド人勢力を集めれば国会の過半数を維持できるうえ、サドル師派の政権離脱という“揺さぶり”を、米国からいっそうの支援を引き出すテコにできるとのうがった見方がある。

 これらは各見解に過ぎないのだが、ちょっと強引にまとめれば、いろいろ言われているほどにはシーア派側の反発は強くなく、であれば、あとはマリキ政権としてはクルド人とスンニ派をどうまとめるかにかかっている。クルド人の問題にも根深いものがあるが、当面の問題は「内戦」とされるスンニ派とシーア派であるとすると、大筋で妥協の線がどう見えるかということになる。
 サドルのフカシからシーア派についてはある限界があるとすれば、後はスンニ派の問題になるのだろう、となんとなく想定していたのだが、ゲーツのイラク訪問先ファルージャについて、安定しているという話を先日ラジオで聞いて、え?と思った。
 日本語のウィキペディアにはファルージャの項目があるが、〇四年までの話しかない。英語版を見るとその後の推移の記述もあり、特にCurrent situation(現状)について興味深い指摘があった(参照)。

By Summer 2006, it was reported that Fallujah had become relatively peaceful, by contrast to the rapidly deteriorating situation in the rest of the volatile Al-Anbar province.[8] The security measures that had been introduced to prevent mass re-infiltration by Sunni rebels or Al-Qaeda elements had proven effective[citation needed], though a significant fraction of the population of the city was lost as refugees fled from the activities of Operation Vigilant Resolve and Operation Phantom Fury.[citation needed]

 [citation needed]が多いので不確か情報ともいえるのだが、これによるとファルージャは relatively peaceful とある。もちろん、異論が多いのだろうし、異論を煽りたいわけではないのだが、全体の流れを見ても、意外と単純に受け止めてよいようにも思える。であれば、スンニ側でも妥協のラインが見え始めているのではないか。

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