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2007.04.27

北朝鮮核施設封印合意を頓挫させた「送金」問題って何?

 北朝鮮の核施設封印合意が現状いったいどこに進んでいるのか私はさっぱりわからない。もともとこんな合意そんなに意味がないということかもしれないが、わからないのは私ばかりってこともあるかもしれないし、誰か教えてくれるかもしれないので、何がわかんないのか、少し書いてみよう。ただ、たらっと書くのでご関心のあるかたはお読みください的な話になる。
 話の切り出しは一五日付け朝日新聞社説”北朝鮮の核 早く合意の実行に戻れ”がよいだろう、というか、この時点までは私もふーん、そうなるのかねと思っていたからだ。


 本来なら昨日までに、北朝鮮の核施設は封印されているはずだった。2月の6者協議でそう合意されていたのに、第一歩からつまずいたのは残念である。
 ただ、幸いにも基本的な合意は崩れていないようだ。北朝鮮は核施設を停止・封印するという約束を実行すべきだし、日本や米国など関係国は忍耐強く働きかけを続けなければならない。

 それが一五日のことであった。それから何か?
 朝日新聞社説が「つまづき」としているのは次のことである。

 このつまずきの原因となったのは、北朝鮮がマカオの銀行に持つ口座の凍結解除問題だ。米国と北朝鮮の間で話がつき、口座にある2500万ドルは北朝鮮に戻されることになったが、技術的な問題から凍結解除の作業が滞った。

 「技術的な問題」って何だ?というのは後で触れるかもだが、要するに中国のことか。

 そうではありながらも、米国は凍結の全面解除を認めた。ここは金融面で北朝鮮に譲ってでも、核問題で何とか前に踏み出したい。そういう政治判断があってのことに違いない。私たちもそれが現実的な選択だと思う。

 このように中国様、違った、朝日新聞社説も米国の態度に賛同している。なにせ朝日新聞にしてみると何かと悪いのは米国だし。

 05年9月の口座凍結以来、反発した北朝鮮はミサイル発射や核実験にまで突き進んでしまった。偽ドル札などを取り締まるための「法執行の問題」という米国の立場は理解できるにせよ、あまりに大きな代償だった。

 あれです、犬が噛みついたら噛みつかれたほうに非があるものなのである。
 いずれにせよ、マカオの銀行バンンコ・デルタ・アジアにある北朝鮮口座の凍結というのは、北朝鮮にとってミサイル発射や核実験をさせてしまうほどの逆鱗だったわけである。
 というのだが、さて、そのカネの合計はというと、2500万ドルだよ。日本円にして三〇億円。ホリエモンのポケットマネーくらいじゃないの。なんでそんな額に大騒ぎするというかそんな額だったらまたまた中略で手に入るはず。
 そのあたりがよくわからんだった。
 のだが、今日付産経新聞黒田御大御署名記事”BDA 金総書記直結 権力中枢名義32口座判明”(参照)によると。

 北朝鮮問題で関心を集めているマカオの金融機関バンコ・デルタ・アジア(BDA)をめぐって、北朝鮮が同行に開設している口座52のうち32の名義が初めて明らかになった。銀行9行と貿易会社23社で、ほとんどが金正日総書記の資金管理をしている「39号室」や人民武力省、国家保衛省、党軍需工業部、党統一戦線部など権力中枢につながっている。
 これは韓国の有力ジャーナリスト、趙甲済・前「月刊朝鮮」編集長が亡命者情報から判明したとして26日、自らのホームページで伝えている。
 BDAは北朝鮮関係の取引額が全体の22%を占めていたとされるが、今回明らかになった北朝鮮の口座名からして、「BDAは実質的に北朝鮮の体制維持のための対外金融窓口だったことを示している」というのが趙氏の分析だ。

 その分析が正しいのかなんとも言いようがないのだが、仮にそうだとすると、北朝鮮の口座というより、金さんとその仲間たちのポケットマネーのプライベートな口座ということではないのか。約五〇口座に三〇億円というのもそう驚くほどでもない。
 話を少し戻す。いずれにせよ、バンコ・デルタ・アジアの凍結は朝日新聞が賛同するように解除されたはず。一一日付け朝日新聞”北朝鮮口座の凍結、マカオ当局解除 米が全面譲歩”(参照)のように標題通り、米国が全面譲歩したはずだ。

 マカオ金融当局者は10日、「口座保有者やその代理人が法に沿った署名を持参すれば、いつでも資金の引き出しや送金をすることができる」と述べ、実質的に凍結資金の全面解除に踏み切ったことを明らかにした。
 米政府はBDAを北朝鮮との関連で資金洗浄の疑いが強いとする処分を確定させている。だが、「表向きは資金を合法、非合法に分けない」(マコーマック報道官)として、凍結した北朝鮮関連の52口座計約2500万ドル(約30億円)のすべての解除を受け入れた。

 なのに核施設封印合意はその後もまるで進展がない。なぜか?
 北朝鮮にしてみるとこれでは解除になっていないと言いたいようだ。送金ができないのは困るというのだ。二五日付け時事”資金問題解決には「送金」必要=北朝鮮公使”(参照)より。

25日の韓国の通信社・聯合ニュースによると、北朝鮮の金明吉国連代表部公使は同ニュースとの電話インタビューで、マカオの金融機関での凍結資金問題を解決するためには、凍結解除に加えてほかの金融機関などに資金が送金されることが必要との認識を示した。

 この「送金」というのが私などにはまずよくわからない。たぶん、朝日新聞も先の社説やニュースを見るについ最近までわかってなかったんじゃないか。というのも、この送金話は急に降って湧いたわけではないので想定不可能ではなかったはずだ。一一日付け産経新聞”マカオの北朝鮮口座、凍結解除 名義人に直接返還”(参照)より。

マコーマック米国務省報道官は10日、記者団に対し、マカオの金融機関バンコ・デルタ・アジア(BDA)の北朝鮮関連口座の凍結が全面解除され、口座保有者は資金を引き出せる状態になったと語った。先月19日に米朝で合意した北朝鮮名義の口座への送金ではなく、口座保有者に直接返還する形となった。

 つまり、今回の合意では、当初から送金は想定されていない。
 で、この送金というのはどういうことなのだろう。同記事ではこうある。

 ただ、北京の中国銀行にある北朝鮮の朝鮮貿易銀行名義の口座に一括して送金するのではなく、口座保有者がそれぞれ預金引き出しをできるようにすることになったことで、使途の監視がさらに困難になった。

 いくつかわからないのだが、北朝鮮が送金したい先は中国国内の銀行だったのか、ということ。もう一つは、送金されるカネというのはドルなんでしょ?
 ようするに送金問題というのは、中国がこの問題に絡むのがイヤ、というのと、北の金さんはドルが欲しいということではないのか。
 ラジオで聞いた話では、バンゴ・デルタ・アジアからは実際に北朝鮮は現金は引き出せるが、この現金は事実上香港ドルに限定されているとのこと。このあたりで、ちらと「極東ブログ: 中国様のちょっとした小ネタかな」(参照)を連想する。
 さらにこの背景に、米国は一八日バンゴ・デルタ・アジアと米国の金融機関の取引を禁止したことがある。バンゴ・デルタ・アジアは米ドル決済が一切不能になっている。
 そこでまた疑問が湧く。だったら別の国へ送金するという手はないのか。二七日付け朝鮮日報”BDA:来週中に送金問題解決の可能性も”(参照)では可能なようでもある。

北朝鮮は来週中にも、マカオの銀行バンコ・デルタ・アジア(BDA)にある、凍結措置を解除された北朝鮮口座の資金を2つの口座にまとめ、第3国の銀行に送金する方針であることが26日分かった。韓国政府関係者らによると、北朝鮮の代表団はBDA側と送金問題について協議を行っており、米国は送金手続きを支援するための準備を進めている。

 また、二五日付けのYONHAPNEWS”送金確認後に合意履行、関連国が意見まとめる”(参照)ではこうある。

 現在北朝鮮とBDAは、東南アジアの銀行などと凍結解除された北朝鮮資金2500万ドルの送金方法を協議している。ある銀行と送金合意を目前にしているとみられるが、この銀行は北朝鮮資金を扱っても不利益を受けないという米財政当局の署名覚書を求めているもようだ。米国はこれに対し、北朝鮮資金の送金を受ける外国銀行に対しては問題を提起しないという立場を示している。米銀行とBDAの取引禁止措置は維持するとしている。

 よくわからないが、当初朝日新聞が楽観視したように、送金手続きの問題ということでこのどたばたは終わるのだろうか。
 もう一点、米国は今回の北朝鮮による送金ドタバタ騒ぎを事前に想定したのか?だが、これもよくわからない。ニューズウィーク日本語版(5・2/9)”割れ窓だらけの米朝合意”によると、今回の合意を推進していたのは国務省だが、一八日のバンゴ・デルタ・アジア制裁を発動したのは財務省だった。しかも、その根拠は愛国法によっている。
 国務省と財務省の足並みの悪さについてはその背景を考えるとさして不思議でもないのだが、制裁根拠が愛国法だったのかというのは、ちょっとへぇと思った。米国の愛国法って北朝鮮にとってこういう面でまずい存在だったのか。
 以上、話がもわっとしているのだが、この関連のニュースがどうもわからない。特に日本のニュースからは見えてこないように思える。

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コメント

アメリカの「金融制裁」の実態は、BDAがアメリカの銀行にコルレス口座を開設、利用することを禁じているということですね。

http://okwave.jp/qa2836218.html

BDAだろうが中国銀行だろうが、ドルの取引はアメリカ国内の銀行にあるコルレス口座を使用して行っているため、この措置が解除されない限り、北朝鮮はBDAの資金をドルとして引き出したり送金することはできません。
また、北朝鮮がドル以外の通貨でBDAの資金を他の銀行に送金するためには、送金先の銀行に口座を開設しなければならないわけですが、そうなると今度はその銀行がBDAと同じくアメリカ国内のコルレス口座を利用できなくなる恐れがある(今はなくても、将来アメリカの政策が変更される可能性はある)ので、どの銀行も送金の受け入れを渋っているのだと思われます。中国銀行でさえ受け入れを拒否したそうですね。
だから北朝鮮にできることは、香港ドルで資金を引き出すことだけだということになるわけです。

投稿: Baatarism | 2007.04.27 22:15

グローバル化によって、政治と経済が分離している、
ということではないでしょうか。
アメリカ、EU、日本などの資本は、
全世界の企業に複雑に行き渡っています。
北朝鮮資金のような、
ヤケドしかねない資金を扱ったとなると、
沈没する船から逃げるネズミのように、
投資家が一斉に逃げ出してしまいます。
預金者も同様でしょう。
銀行は信用が第一、偽ドル札資金には一切関わりたくない、
というのが本音でしょう。
国家の思惑で出来る範囲が、
しだいに狭くなりつつあるということでしょうか。
株を公開していない朝日新聞には、
関係ないことでしょうけれども。

投稿: オルフォー | 2007.04.28 00:55

総理渡米とかラプターとの合同演習とかでもしかして戦争キター?とちと気になってたのだけどなるほど、こんなややこしいことになっていたのか。

投稿: cyberbob:-) | 2007.04.28 08:52

北朝鮮は、金融制裁が解除されれば、また偽ドルや覚醒剤をマネーロンダリングできると思っていた。
アメリカは、口座の現金を引き出すのだけは認めると。
それで、アメリカは嘘をついていないので北朝鮮が困っている?

投稿: ogu | 2007.04.30 23:49

この問題って、色々複雑に見えますけど、一度単純化して考えると、つまりは米国と中国が結束して「技術的な問題ができたから送金できなくなった」と口実を作ってBDAを国際決済システムからハミゴにすることで、実質的に「北朝鮮に凍結口座の預金を返還する」と約束したのをホゴにしたってことでしょう?

だからこれは北朝鮮が核開発停止の約束を守らなかったオトシマエをつけさせられているということ、それに対して次の核実験もミサイル実験もできないでいる北朝鮮には、次の六カ国合意(あれば、の話しだが)で合意履行を約束する以外にすでに選択肢がないってことではないのでしょうか?

これは別に「北の核の脅威」に対する楽観論というのではなく、イラク問題の山場にきている米国は北を相手にするヒマはなく、米国は中国に頼ってこの問題を取り仕切ってもらっているということ、つまりは中国に借りを作っている、あるいはそれでも良いと米国が考えているということであって、つまりは日本はやはり米国に見捨てられる(中国が管理するアジアの政治枠組みに入るよう、米国に強要される)ということなのではないですか?
慰安婦問題での米国の対応は、まさに日本が中国の影響力に無理やり従わされている、米国がそれを進めているに他ならないように見える。

唐突な意見ですいません。

投稿: バンコクの雨男 | 2007.05.03 04:03

北朝鮮はテロ支援国家に指定されていましたから、パトリオット法により、確か、一日1万ドル以上送金できないことになっていたはず。2500万ドルを送金する為には2500日以上かかってしまいます。
この問題を解決するために、アメリカは、北朝鮮をテロ支援国家指定からはずす様です。

投稿: ゲルマン | 2007.05.05 10:11

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