中年男性のメタボリック・シンドロームと自殺を再考する新しい視点
先日ロイターニュースを漫然と見ていたら、ちょっと面白い話があった。これは考えようによっては、中年男性のメタボリック・シンドロームと自殺を再考する新しい視点となるのではないかというブログ向きのネタになるぞ。
日本語訳のニュースがあったか知らないが、ニュースは”Heavy men may be less apt to commit suicide ”(参照)である。標題でもわかるように、「デブ男性は自殺しにくい」というのだ。ニューヨーク・タイムズ”On the Scales: Suicide Found to Be Less Likely in Heavier People”(参照)にもあった。
ということは、昨今日本でも話題になっている中年男性の自殺を防止するにはデブを増やせばいいのではないか。しかし、デブそのものが問題かということになるかも。なぜデブ問題かというと健康に良くないからだ。となれば、自殺リスクと健康の選択ということになる。そうなれば、健康のためには死んでもいいという一部の人を除けば、これは、つまり、デブがよいぞ、というのはけっこう説得力ある視点ではないか。
As body weight increases in men, the risk of death from suicide falls markedly, new research hints.男性の体重が増加するにつれ、自殺による死亡率は目に見えて減少するということが新研究によって示唆される。
ネタ元は、ちゃんとした医学誌”Archives of Internal Medicine”でその概要もネットで読むことができる。”Body Mass Index and Risk of Suicide Among Men”(参照)がそれだ。
Background Body mass index (BMI; calculated as weight in kilograms divided by height in meters squared) has been linked to depression and the risk of suicide attempts and deaths in conflicting directions.背景 ボディマス指数(BMI;体重を身長の二乗で割って求める)は、憂鬱と自殺試行リスクと相反しつつ関連している。
単純に言うと、太ると、自殺しない、となる傾向がありそうだ。
しかし、こんな結果出してちゃっていいのか?
Conclusions Among men, risk of death from suicide is strongly inversely related to BMI, but not to height or to physical activity. Although obesity cannot be recommended on the basis of its detrimental effects, further research into the mechanisms of lower risk among overweight and obese men may provide insights into effective methods of suicide prevention.結論 男性では、自殺リスクはBMIと強く反比例し、身長や身体活動とは関連していない。肥満の有害な影響を元にすれば肥満が推奨されるものではないが、体重超過で肥満男性において自殺リスクが軽減される仕組みは、自殺予防の効果的な手法に新しい視点を与えるだろう。
ようするに、太ると自殺が減るというメカニズムについてはもう少し研究したほうがええんでないの、ということだ。
なぜ太めの男性が自殺しにくいのか、ということについての今回の研究ではあまり触れていないが、インシュリンの循環量が気分に影響しているからと示唆されている。
私の印象だが、コレステロールも関係しているかもしれない。コレステロールは各種ホルモンの材料になる。たしか、高齢女性については、コレステロール量の低さは死亡率に相関していたはずだ。
ネタはそのくらい。
太ったかたには失礼なエントリになってしまったかもしれない。申し訳ない。多少太っていても気にしなくていいんじゃないかと個人的には思う。
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コメント
おデブ=ノー天気である ということはなんとなくイメージとして定着していると思います。かといってノー天気=おデブということはないように思います。
一つ気にかかることは 精神を病むと食欲が落ちて体重が減るということです。つまり おデブでも 精神を病んでから 自殺 結果、おデブではない状態の自殺者統計 ということが危惧されます。これを短期間の統計でとったものであれば、それはそういう結果が出るのも当然といえるわけです。
おデブの方が体が案外健康で ゆえに 精神も健康 (医学的にじゃなくて元気の問題)という「健全な精神は健全な肉体にやどる」ということが食生活によって ちょっと行き過ぎた結果 おデブ になっているのかもしれませんね。
投稿: りん! | 2007.03.17 11:29
肥満を促す蛋白質が自殺を促す蛋白質を抑制するとか、
そういう生体反応の関係を導けないと、
自殺するほど悩めば痩せるで終わり。
投稿: うps | 2007.03.17 14:57
神経質な人は脳が多量のエネルギーを消費するために太りにくい。らしいですね。
そこからも自殺リスクとBMIの間に逆比例の関係があるのは納得できる話です。
もちろん単純に太れば自殺リスクが減る、という話ではありませんが。
投稿: e | 2007.03.17 17:10
自殺するほど悩んだ場合、デブは(ふつうの人なら、そのまま自殺へと至るにも関わらず)
その直前で体調を簡単に崩してしまい他の疾病を患いやすいが為に、自殺という結果があらわれにくい
……とはこのエントリを書いてて、おもわなかったのですか?
投稿: てけてけ | 2007.03.17 17:34
心理的な関連ですかね。
喰い飲みに幸せを感じる、とか、
死体の処理を考えちゃう、とか、
重くて飛べない、とか。
投稿: cyberbob:-) | 2007.03.18 08:58
元論文読んでないから何とも言えないけど、
“自殺リスクはBMIと強く反比例”してるだけだったら
自殺と肥満のどっちが原因or結果なのかは分からなくないか??
…と思ってConclusions読み直すと、表現が絶妙で笑える。
the mechanisms of lower risk among overweight and obese men
だから、
体重超過で肥満な男性の間では自殺リスクがより低い、という構造
なんだよな。
“自殺予防の効果的な手法…”と続くから限りなく黒だが、直接〈肥満⇒自殺減〉とは表現してない。
いじわるく解釈すると、
相関関係だけど、ひょっとしたら因果関係かもしれませんよー。でもそう書いちゃうと“なーんだ、相関関係か”と思われちゃって読者受けが悪いから、因果関係だって断定しないだけにして、限りなく因果関係っぽく書いときますよー。
って研究者の意図が見える気がする(考え過ぎ
投稿: ごっごる | 2007.03.18 11:00
肥満もチキンレースには違いないんでしょうけど、要は成果の実感(満足値)が近しいか否かなのでしょうね。
難易度が高ければ、そりゃあ力量の底が見えること光の如くでしょう。
投稿: 夢応の鯉魚 | 2007.03.18 19:15
ごっごるさんと同意見です。
この結果は肥満と低自殺率の相関関係を示しているだけです。
たとえば、高血圧ほど年収が高いというのは統計的事実ですが、血圧を上げれば年収が上がる訳ではありません。そこには年齢という隠れ因子が存在します。
この場合の隠れ因子は何でしょうか?
論文中に示唆されているようなインシュリンの循環量などと言った別の因子によって肥満と自殺は結び付けられているように思います。
調査結果としては興味深いものですが、自殺の予防という観点で見るのは難しいように思いました。
投稿: コウ | 2007.03.18 23:04
死因について「自殺」と公式にカウントをされるためには、本人によるものということが明白な遺書が現場に残されていることが必要です。
もしもそうで無い場合には、キリスト教圏では自殺はタブーですので
親族の宗教上の見栄や世間体のために、書類上はたいてい自殺では無いという扱いで記録に残されるように
ほぼ通例として希望され処理されてしまいます。
具体的には、原因不明死や自然死、事故死、持病を患っている場合には
その持病が遠因で併発したという(たとえ、こじつけであったとしても)病死という扱いで、です。
もしも、デブが自殺をしなおかつ明白な遺書を残さなかった場合には
デブはもともと持病を患っている可能性が、適正体重を保持している人たちよりも高いでしょうから
適正体重を保持している人たちよりも、デブの方が自殺であることを
書類上、親族の希望によって伏せられてしまう「口実をこしらえられ易い」……というのが
事の真相でしょう。
投稿: てけてけ | 2007.03.19 05:12
「これから太るのか」ってのが、なんかいいですね。
投稿: jiangmin | 2007.03.19 05:57
確かに面白いネタですね。
次期あるある大辞典では「自殺願望でみるみる痩せる!」を取り上げていただきたいですね。
投稿: hamanako | 2007.03.19 22:19
第3章 心身脳の活性化効果の基本要件と枠組み
http://research.cesa.or.jp/12.pdf
投稿: 目多忙利久 | 2007.08.03 23:21