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2007.03.24

タミフルについて世界保健機関の現状の見解

 私は医学・薬学の専門的な立場ではないので自分の意見は控えるが、いくつか最新の欧米の報道をメモしておきたい。基本的には、タミフルについて世界保健機関の現状の見解が重要となるが、その前に、少し古いが少年期の子供とインフルエンザ後の精神障害についての研究を簡単に紹介しておきたい。”Post-influenzal psychiatric disorder in adolescents.”(参照)より。


Acta Psychiatr Scand. 1988 Aug;78(2):176-81.

Post-influenzal psychiatric disorder in adolescents.
青少年におけるインフルエンザ後の精神障害

Meijer A, Zakay-Rones Z, Morag A.
Department of Psychiatry, Hadassah University Hospital, Hebrew University Medical School, Jerusalem, Israel.

The association between influenza and psychiatric disorder in adolescents was studied at a time when both were highly prevalent concurrently. First 505 secondary school pupils aged 15-18 completed questionnaires, including a symptom inventory derived from the SCL-90-R. Subsequently, 113 blood samples were examined for influenza antibody titers of five virus strains. Statistical analysis showed that adolescents who had been ill with influenza in the previous six months had significantly more psychiatric disorder than those who had not been ill with influenza in that period.

青少年期における、インフルエンザと精神疾患の関連について研究した。対象期間はその両者が同時に現れる時とした。最初の質問対象はセカンダリースクール(日本の中学・高校に相当)の学生で年齢は15~18歳である。これはSCL-90-R(精神的ストレスの指標)に由来する兆候項目を含む。続いて、ウイルス下にあるインフルエンザ抗体濃度用に113の血液検体を調査した。統計的に示されたことは、過去6か月以内にインフルエンザに罹患した青少年期の子供は、同期間にインフルエンザに罹患しなかった子供に比べてより精神疾患を発症しやすいということである。


 話を世界保健機関とタミフルについてに移す。ニュースは二三日付け”WHO says Tamiflu concerns not affecting stockpiling”(参照)である。

WHO says Tamiflu concerns not affecting stockpiling
世界保健機関はタミフルに関する懸念は備蓄に影響しないと述べた

Concerns about the safety of Tamiflu are not affecting stockpiles of an influenza drug which would be used in a potential pandemic, a World Health Organisation (WHO) spokesman said.

タミフルの安全性に対する懸念は、潜在的なパンデミックに使用されるはずのインフルエンザ薬備蓄に影響を与えないと、世界保健機関代表者は言明した。

Health officials widely see Tamiflu as effective in treating the H5N1 bird flu strain if given early enough. The WHO and some national governments have been stockpiling the drug in case the strain, now mainly affecting poultry, mutates and begins to spread quickly among humans.

保険関連の公職者は、タミフルについて罹患初期に投与すればH5N1型鳥インフルエンザ対処として効果的であると概ね捉えている。



"Japan itself has reiterated that it's not going to change its policy on stockpiling oseltamivir as a pandemic preparedness measure," Thompson said, using the generic name for Tamiflu.

「日本は、パンデミック予備基準で備蓄しているオセルタミビルについての方針を変更することはないと繰り返し述べてきている」と、世界保健機関トンプソン代表はタミフルのジェネリック名を使いながら述べた。

"As we understand it there needs to be some more work to understand the link, if there is one. Right now the reports seem to be anecdotal, but in terms of pandemic preparedness we don't envisage any change at this moment," he said.

「もしそのような関連あるのであれば、我々はその関連をより理解する作業を行う必要があることを理解している。現状では各報告は逸話といった類に思える。しかし、事がパンデミック予備ということであれば、現時点おいていかなる政策変更も想定しない」と彼は述べた。

There is no commercially available vaccine for the H5N1 influenza strain, which has killed at least 169 people around the world since the disease re-emerged in Asia in 2003.

H5N1インフルエンザ影響時に対して商用利用可能なワクチンは存在していない。このインフルエンザはすでに、2003年にアジアで再発してからすでに世界中で169人の死に至らしめている。


 EUの動向については、二三日付け”EU Drugs Panel Says Tamiflu Benefits Outweigh Risks”(参照)がわかりやすい。

EU Drugs Panel Says Tamiflu Benefits Outweigh Risks
EU薬剤パネルはタミフルのメリットはリスクに上回ると述べた

A panel of European experts said the benefits of Swiss drugmaker Roche's (ROG.VX: Quote, Profile , Research) influenza drug Tamiflu outweighed the risks, but that it would closely monitor reports of safety concerns in Japan.

欧州専門パネルは、日本で安全懸念の新しい報告が挙げられているにもかかわらず、スイス薬剤メーカー、ロシェのインフルエンザ薬タミフルのメリットはそのリスクを上回ると述べた、

The European Medicines Agency said on Friday that "if any concerns emerge, further action will be taken."

欧州医薬品庁は金曜日に「懸念が現れるようなら、進んだ対処を取る予定がある」と述べた。

But its Committee for Medicinal Products for Human Use "maintains its opinion that the benefits of Tamiflu outweigh its risks when the product is used according to the adopted recommendations."

しかし、ヒト用医薬品委員会は、適用基準に従った利用時において、タミフルはそのリスクよりメリットがあるという見解を維持する、とした。


 英国での反応はBBC”Patient warning on flu drug risks”(参照)がわかりやすい。

A spokeswoman from the UK's medicines regulator, the Medicines and Healthcare Products Regulatory Agency, said they had not received any adverse reports similar to those seen in Japan, but had heard about two instances where an elderly patient had become agitated and confused after taking Tamiflu.

英国の薬剤監査機関である医薬品・医療製品規制庁(MHRA)の代表は、日本で見られたとされる副作用に等しい副作用の報告を受け取っていないが、高齢患者がタミフル服用後動揺と混乱を来した二例があると聞いている、と述べた。

She said the MHRA supported the EMEA's decision.

代表者は、医薬品・医療製品規制庁(MHRA)は、欧州連合欧州委員会企業・産業総局及び欧州医療製品評価庁(ENEA)の決定を支持すると述べた。


 併せて、現状の鳥インフルエンザの世界的な状況だが、バングラデシュについては”Bird flu reaches India’s doorstep, Bangladesh poultry affected ”(参照)、ミャンマーについては”Health alert over Tamiflu, bird flu spreads in Myanmar”(参照)、またこれらを受けてインドが警戒しているようすは”India sounds bird flu alert in border states”(参照)からうかがえる。さらに、サウジアラビアも”Saudi Arabia reports bird flu outbreak”(参照)によるとアウトブレイクの報告がある。

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コメント

finalvent様
タミフルに関する最新の欧米の報道、ありがとうございました。
日本では、故意か無知か、タミフルと鳥インフルエンザの関わり
についての報道を避けていると感じています。もし日本でアウトブレイクが起きたらどんな報道がされるのでしょうね。


投稿: fuuta | 2007.03.24 11:40

>タミフルのメリットはそのリスクを上回る

要するに、これだけの事だと思うんですけどね。
副作用のない薬なんか無いわけで。

投稿: sw | 2007.03.24 18:55

国の対応はわざとやってるのか、きちんと報道されてないだけなのか。
まあ、大臣が「因果関係ない」とか言っちゃう時点でおかしいか。

それと普通のインフルエンザに対してタミフルを使う必要はあるの?
それとも簡単に見分けがつかないから、とりあえず消費期限切れ回避も兼ねてタミフル出しとけってこと?

投稿: うps | 2007.03.24 21:06

"Japan itself has reiterated ~~の段落で「タミフルのジェネリック名を」とありますが、「特許の切れた安価な後発薬」という意味でジェネリックという単語を使うのは和製英語で、ここでのthe generic name for Tamifluは「タミフルの一般名(成分名)」と訳すべきだと思います。タミフルは商品名であるのに対してオセルタミビルは一般名でタミフルの主成分です。言うなれば、セロテープとセロハンテープ、バンドエイドと絆創膏、宅急便と宅配便のような関係です。オセルタミビルがタミフルの"generic name"ではありますが、(和製英語としての)"ジェネリック名"ではありませんので。

>うpsさん
症状を抑えるというよりは、治癒までの日数を短くする効果があるようです。タミフルはインフルエンザウイルスを殺すものではなく増えるのを抑える薬ですから、かかり初めには絶大な効果を示し治癒までの日数が数日短くなります(逆に言うと発症から3日以降に使った場合はあまり効き目が期待できない)。特に小児や高齢者ではインフルエンザは長引けば命を落とすこともあるので積極的に使われてきたようです。

投稿: T.Goto | 2007.03.25 03:02

>T.Gotoさん

なるほど、普通のインフルエンザでも体力の弱い人にとっては必要なわけですね。
でも、現在の日本だとそれ以外の人にもどんどん処方してる感じですよね。
調べてみると1人当たりのタミフル消費量はダントツの1位で、2位アメリカの8倍らしいです。
パンデミックに対する備蓄が必要なのはわかるが、問題の根底は別のところにありそうな。
まあ、それが医療水準の高い日本と言う事なのですかね。

投稿: うps | 2007.03.25 21:30

WHOの声明のここのところだけ、なぜか訳が無かったので、訳してみました。こんな感じでしょうか。

"The WHO and some national governments have been stockpiling the drug in case the strain, now mainly affecting poultry, mutates and begins to spread quickly among humans."

「WHOといくつかの国の政府は、現在主に家禽に感染しているウィルスが変異し、急速に人間に広がる事態に備え、薬を備蓄してきている」

投稿: ume-y | 2007.03.26 14:23

薬功は自家中毒の裡。排すとして、どっちが万難に当るやら……ですね。

投稿: 夢応の鯉魚 | 2007.03.26 17:08

なるほど。因果関係を言うためには、機序がわかっていない現状では、少なくとも、処方していないグループでの異常行動の発現率と比較しなければいけないわけだ。
言われてみれば、疫学の基本というか、対照群は、科学的方法論の基礎の基礎ですなあ。

投稿: Cru | 2007.04.01 23:05

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