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2007.01.13

人民元と香港ドルの逆転とか

 香港ドルと人民元の通貨価値が十一日逆転した。変化自体は突然ということではないし、今後さらに急激に変化するということもない。が、いずれ香港ドルは人民元に飲み込まれるだろうというお話も出てくるし、風景も変わってくるようだ。単純な話、香港ドルの存在感は低下する。例えば、九日付け中国株投資情報”人民元レート上昇で香港ドル支払い拒否の店も”(参照)より。


人民元の為替レート上昇に伴い、既に中国国内と香港の銀行などでは、顧客が両替する際の人民元レートが香港ドルレートを上回った。1月5日現在、中銀香港の店頭では100香港ドルが99.5人民元と交換されている。こうした現状を受けて、広東・珠江デルタ地域の商店では、以前は歓迎していた香港ドルによる支払いを拒否する店がでてきた。8日付で中国新聞社が伝えた。

 香港はじり貧か。中国本土で工場経営している香港資本にとってはやりにくい時代になるのだろうが、観光業としてはこれから本土から落としてもらえるカネが増えるので歓迎光臨といったところだろう。が、本音のところでは香港の人は人民元を信じてないんじゃないか。
 ネットを見回していたら産経新聞”マネー受け皿、香港の限界”(参照)が面白いといえば面白かった。それだけのことかもしれないが。

香港の隣、中国・深センでタクシーに乗ったら香港ドルでの支払いを拒否された。人民元高のためだが、人民元が香港ドルに取って代わるという俗論に気をとられてはいけない。わずか東京都の半分の面積でしかない香港の株式・不動産市場がバブル化し中国本土や産油国など世界の余剰マネーの受け皿としてもはや限界に来たとみるべきである。マネーを本土自体が吸収する態勢を整えないと、中国圏はもとより世界経済の安定は望めない。香港ドル・人民元の逆転はその黄信号である。


アラブ産油国の金持ちや日米欧の機関投資家はまずは香港市場に出て香港ドル建て資産で運用しながら人民元資産へ投資するチャンスをうかがう。一方で、中国の輸出は増え、2006年の貿易黒字は1775億ドル、前年比で74%増となった。投資家は巨額の黒字をみては人民元相場の一層の上昇を期待する。
 香港ドル建ての資産市場では世界の余剰マネーをさばき切れない。香港バブルが崩壊すれば、上記の香港活用方程式は消滅し、中国経済が揺さぶられる。中国不安は世界の金融市場に伝播(でんぱ)する恐れもある。

 いやはやそうなのか。問題はバブルが崩壊したとしてその規模なのだが、そんなに深刻なものだろうか。
 見回った記事では人民元の強さを強調しているものが多いのだが、このところの相場を見るとドルが弱いということの相対性でもあり、ドルの行方も同じくらいどうなんでしょという問題にも思える。
 ざっくり言えば、それでも人民元と香港ドルの逆転という事態は、中国様って偉くなったね的心理的なインパクトとしてはガチだろう。中国様もそれなりに振る舞わなくてならないということでもあり、布石も進んできているようだ。
 話がずっこけるが正月”極東ブログ: [書評]もう一つの鎖国―日本は世界で孤立する (カレル・ヴァン ウォルフレン)”(参照)をもう一度読み返していた。ウォルフレンの言っていることはどのくらい現状妥当かな、と。いくつかより好意的にとらえられる点もあるのだが、この本はやはり中国様というときに上海閥と胡錦涛系の差が考慮されていないしそこを捨象できる視点でもないのが痛いか。
 ”極東ブログ: 胡錦涛政権の最大の支援者は小泉元総理だったかもね”(参照)でも触れたように、これまでの何かとお怒り中国様や媚中派さんたちのお好きな物語も、上海閥の崩壊とともに終了してきてしまった。なので、新しい物語が出てくるでしょと思ったら、渦中、中国様ってば分かり易すぎ。昨年十一月中国中央テレビが「大国崛起」を放映。全十二回で基本的に一回ごとに歴史の大国を充てるのだが、スペイン・ポルトガル、オランダ、イギリス(上下)、フランス、ドイツと、ベタな西洋史というか、九〇年代のポール・ケネディ「大国の興亡―1500年から2000年までの経済の変遷と軍事闘争」(参照上参照下)を連想させる。続いて、日本、ロシア、ソ連、アメリカ(上下)、そして総括という仕上がり。
 この並びでどのくらい美しい日本を描いていただけるのか日本人としてはワクテカなのだが、見た方の感想はブログ「不易と流行:路地裏の中国経済」”大国崛起(CCTVドキュメンタリー)☆☆☆☆”(参照)ではこう。

 中国で製作されたこの種のドキュメンタリーの中での比較感で言えば、かなり冷静、客観的に作られていて、少しほっとしました。明治維新から所得倍増計画まで、特に、岩倉使節団の派遣、大久保利通の殖産興業政策、澁澤栄一の思想、ソニーの勃興などにスポットを当てて、日本の発展の「秘訣」を探っています。お決まりの「軍国主義・侵略・南京大虐殺」→「まったく過去の歴史を反省しない民族性」→「アジア人民、世界人民に尊敬されない国」という「あの歴史観」では無く、その代わり日清戦争から第二次世界大戦までを一まとめで「軍国主義化」として、20秒くらいで飛び越してしまいました。

 産経新聞の記者ブログのエントリ”【中国を読む】余裕か焦りか「大国崛起」ブーム”(参照)でもこう。

 《約150年前、太平洋西端に位置する島国日本は、西洋植民者の堅固な船による砲撃の脅威のもと、巨大な生存の危機にさらされていた…。しかし、日本はこの歴史のチャンスを迎えうち、東方世界で最初に国家の現代化を実現し、列強の仲間入りをし、アジアに植民地を打ち立てたのだった…》
 テレビからこんなナレーションが流れてきた。風邪でダウンしているとき、ぼんやり眺めていた中国中央テレビ(CCTV)制作の歴史ドキュメンタリー番組「大国崛起(くつき)」12集DVDの第7集「百年維新」である。熱のせいの幻聴かと思った。これまでの中国の歴史観と違う。中国の歴史番組で憎むべき侵略者として描かれてきた日本が、列強の侵略をうまくかわし自ら侵略者となり、敗戦後も驚異的な経済成長をとげた大国として評価された。

 そういうことなんでしょう。
 現在米国は中国に対してスーダンが国連の平和維持軍を受け入れるように説得しろとしているのだが(参照)、そのあたりを受け入れたら、中国も普通の大国への道を進みだすのかと半分くらい思う。あとの半分は、民主主義国じゃねーこんなでかい国ってなんだろとか思うけど。

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コメント

 おじちゃん、今朝も早よから元気ええですのう。頑張りんさいよ?

投稿: ハナ毛 | 2007.01.14 09:10

>本音のところでは香港の人は人民元を信じてないんじゃないか。
そうだと思う。実質ドル固定相場への信頼だから。

投稿: アカギ | 2007.01.14 12:05

ちなみに、第二次世界大戦前から一貫してインフレ問題に取り組み、「インフレーション(岩波新書)」を著した木村喜八郎は、戦後まもなく執筆した著書「インフレーションの研究(銀座出版社)」の中で「戦争中憲兵隊に拘引されて約半年間の留置所生活を送り・・」と記している。その理由は書かれていないが債務を瞬く間に圧縮するインフレは国家機密に属しインフレを理解せず無防備な人が多ければ多いほどインフレの効果は大きい為その効果があからさまになっては困ると考えていたのではないのかと推測される。

投稿: | 2007.01.15 04:01

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