« 東国原英夫宮崎県知事 | トップページ | 最近の二件のトラック事故で気になること »

2007.01.23

ファイザーの来し方行く末

 予想されていたことではあるがファイザーの縮小戦略が実施段階に移るとちょっとぞっとするものがあるなと思った。朝日新聞”米ファイザー、1万人削減 愛知の研究所も閉鎖へ”(参照)より。


 愛知県内の中央研究所の正社員は約400人。ファイザーの広報担当者は「日本の他部門への異動などを検討する」としている。だが、同社は05年12月にも日本法人の社員のうち約300人に退職を勧告し、労使対立が深刻化した経緯がある。外資系で最大級の研究・開発拠点を構え、日本の医薬業界に定着してきただけに閉鎖をめぐる反発が強まる可能性もある。

 いろいろと波及はありそうに思える。
 ファイザーの抱えている問題については、朝日新聞の同記事に特許切れの話があるが、これに加えた状況については、日経”米ファイザー、世界で1万人削減・愛知の中央研究所閉鎖”(参照)が簡潔にまとめている。

 追加リストラに踏み切るのは、後発医薬品との競争が厳しくなる一方、収益のけん引役となる大型の新薬が不足しているため。06年10―12月期には、後発医薬品との競争が厳しくなり、抗うつ薬「ゾロフト」が79%の大幅減収になった。主力製品に育つと期待されていた高脂血症治療の新薬開発も中止に追い込まれた。

 高脂血症治療の新薬はトルセトラピブである。グーグルのフィーリングラッキーで検索すると〇五年六月二九日付けのハッピーな時代のプレスリリース”ファイザー社、トルセトラピブ/アトルバスタチン合剤の生産工場が稼動 可能性を秘めた心血管疾患治療薬の新しい展開”(参照)が出てくる。

LDL(いわゆる悪玉)コレステロール値を下げる薬剤として世界で最も処方されている「リピトール」は有効性と安全性が立証されており、トルセトラピブ/アトルバスタチンは、そうした「リピトール」の実績を踏まえてファイザー社が開発を進めている合剤です。男女を問わず世界の主要死亡原因である心血管疾患のリスクを減らすためにはLDLコレステロール値を引き下げることが非常に重要であるということは、スタチン系薬剤の数多くの試験によって証明されています。ファイザー社の研究開発部門では、HDLコレステロール値を上げると同時にLDLコレステロール値を下げることで心血管疾患のリスクを更に減少することができるという仮説の検証を進めています。

 しかしこれは中止になった。日本語で読める記事を探すと昨年一二月八日付けでフォーブスの邦訳記事”Pfizer製薬、新薬の開発中止で苦境に”(参照)があった。

製薬最大手の米Pfizerが、非常に有望視されていた医薬品の開発を中止する決定を下した。臨床試験の結果、服用によって死亡率が増大することが明らかになったためだ。Pfizerにとっては手痛い開発中止となった。


Pfizerは、トルセトラピブの試験に8億ドルもの研究資金を注ぎ込んできた。他のどの医薬品の試験にもこれほどの費用はかけていない。同社が夢に描いたのは、リピトール(Lipitor)の成功を再現することだった。リピトールは、世界でも売上高トップクラスの医薬品で、年120億ドルを生み出すPfizerのドル箱だ。Pfizer幹部らは「トルセトラピブが製品化されれば、リピトールに劣らない成功を収めるだろう」と話していた。

 ファイザーの合理化はその夢が崩れ落ちた後始末でもあるのだが、それにしても新薬開発のリスクというのはここまで高いものかなと考えさせられる。製薬会社の経営というのはどうあるべきなのかいわゆる経営学的な枠組みで対応できるものなのだろうか。
 それほど関連がある話ではないが、同分野のニュースとしては一八日三菱ウェルファーマと田辺製薬が合併へ協議を開始が気になった。FujiSankei Business i”総合/三菱ウェルファーマと田辺製薬、合併へ協議”(参照)より。

三菱ウェル、田辺両社ともに同日朝、協議を認めるコメントを発表した。三菱ケミカルが合併後の新会社に50%超出資し、三菱ケミカルグループの新たな製薬企業とすることで最終調整しているもようだ。合併会社の売り上げ規模で国内6位になる。

 関連エントリとしては〇四年二月に”極東ブログ: 国内製薬会社再編成がようやく始まる”(参照)を書いたが時代は変わっていく。
 FujiSankei Business iの同記事ではまたこうも触れていた。

 国内市場は薬価(薬の公定価格)引き下げの流れの中もとで今後も伸びが鈍化することが見込まれる中、製薬企業は海外市場に活路を求めなければならなくなっているが、18年9月中間期決算での海外売上高比率は三菱ウェルが6.8%、田辺が9.9%にとどまっており、武田薬品工業(48.5%)やエーザイ(59.3%)などの上位4社に比べ大差が開いていた。

 拡大はむしろアジア市場など市場全体に依存していくのかもしれない。

|

« 東国原英夫宮崎県知事 | トップページ | 最近の二件のトラック事故で気になること »

「経済」カテゴリの記事

コメント

 優秀な人材掻き集めて巨額の投資して何年も時間掛けて開発して、それで結局ハイサヨナラですか。人生ですなあ。
 真面目に勉強していい会社入るって、それ自体が「人生大博打」ですなあ。諸業務上・諸行無常ですなあ。

投稿: ハナ毛 | 2007.01.23 21:55

新薬開発は前から大博打だって事は言われてたよねー。
夏にビジネススクール覗いてみたら製薬会社から来てる人がいっぱい居たっす。
自社でゼロから開発するようなリスクは負わずに、目星を付けたベンチャーにツバつけといて、成功したのを取り込む形が賢いやり方なんじゃないかなぁ。
産学協同をうまく利用してさ('A`)

投稿: うps | 2007.01.24 01:05

>賢いやり方

 ただまあ、基礎研究も重要でしょ。何の役にも立たないゴミ虫みたいな真似するヤツでも、とりあえず飼っておけば(たまに)凄いこと仕出かすし。それに、賢いやり方? を実行したとしても、それら利益を享受する側(会社の中の人)が傲慢だったり現場の苦労を知らない人だったりすると、それはそれで問題出るし。
 微妙なところですよね。破綻するまで突っ走るなよ、としか言いようがない。南無南無。

 私とか「飼われてるゴミ虫」だから、さ。なんか「虚しさ」だけは共感できてしまう。諸行無常。

投稿: ハナ毛 | 2007.01.24 07:43

開発方法が変化したという指摘も。

Aquarian's Memorandum
製薬会社の研究所閉鎖は手法の革命的変化のせい
http://aquarian.cocolog-nifty.com/masaqua/2007/01/post_9a75.html

投稿: lba | 2007.01.24 23:47

>成功したのを取り込む形が賢いやり方なんじゃないかなぁ

Wall Street Journalの記事("Pfizer Overhaul Faces Timing Dilemma", January 23, 2007)には研究所の閉鎖の説明に続いて,外部でなされている研究をPfizerが積極的に取り込もうとしていることが述べられていますが,ライバル会社も同じことを考えているので外部研究の値段が高騰すると書かれています.一万人削減して浮いたお金があれば高くても他社を出し抜いて分捕れるのかな…

〇四年二月のエントリーを久しぶりに読みましたが,3年前より状況は更に煮詰まってきたとの印象を持ちました.

投稿: 龍蛇蟄 | 2007.01.27 22:49

税務上、創薬研究を日本でする必要がないという考え方もあると、税理士の方に聞きました。

移転価格問題により、IPをアイルランドなど税率の低い国に置くと言うのが海外製薬会社の流れのようです。
新薬の利益はIPをおいてある国で認識される、という事だそうです。

ノバルティスはその結果、実効税率10%台のようです。。日本の製薬会社には難しいかも知れませんが、日本で創薬をすることは非常に税務上困難という考え方もあるのではないでしょうか?

創薬ではなく、日本で許認可を得る為の臨床検査という観点で、ある程度研究所は必要だという質問を返したのですが、
アウトソーシングが発達している事と、そもそも日本はアメリカの臨床データを流用できると言われました。
結局のところ、臨床という観点からも日本と言うマーケットは製薬会社においては営業マーケティング機能に特化すべきエリアなのかもしれません。

投稿: kei | 2007.01.29 12:16

残念ながら(幸いなことに?)日本の製薬企業はグローバルなプレゼンスの低さのため,アイルランドなどで優秀な人材を十分確保することは困難と思われます.人材確保の観点から,国内企業の多くは国内に研究拠点を維持すると予想されます.

ただし,IT分野と同様のオフショアリングは今後拡大の可能性があると思われます.実際そのようなビジネスモデルに基づく海外企業の国内製薬企業への営業活動は行われています.

投稿: 龍蛇蟄 | 2007.02.01 22:20

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ファイザーの来し方行く末:

« 東国原英夫宮崎県知事 | トップページ | 最近の二件のトラック事故で気になること »