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2007.01.17

このところの穀物高騰など

 暖冬で石油需要が減り原油価格が下がってきたと言われる。それはそうなんだろうがこれまでの原油高騰は振り返って多分に投機が原因だったと見てよいのではないか。もちろんベースのニーズが増えているので原油価格が九〇年代のようになることはないだろう。ただ、ベースのニーズというなら次は穀物が問題になりそうだ。一六日付けFujiSankei Business i”エタノールブームでトウモロコシ高騰、養豚農家が悲鳴”(参照)では米国の状況について畜産関連で触れていた。


 代替燃料として注目を集めているエタノールの増産ブームに養豚農家が悲鳴を上げている。豚の飼料であるトウモロコシがエタノールの原料として使われるため価格が高騰、採算が合わなくなってきたからだ。

 記事ではエタノール生産について個別的には触れているが国策としてのエネルギー問題とのリンクについては触れていない。
 同じくFujiSankei Business iの九日付の記事”バイオ燃料高騰 進む鶏脂肪油燃料 穀物より低コスト ”(参照)では標題通り鶏脂肪油燃料について触れている。

 バイオディーゼル燃料向けの需要拡大で急騰する穀物に代わり、家畜の脂肪を原料とする低価格燃料が米国で急速に普及しそうだ。食肉大手や中小ベンチャーが相次いで事業化に向け始動。5年後にはバイオ燃料の半分を占めるとの予測も出ている。

 私はディーゼルについては大豆原料バイオ燃料が主流になるだろうと思っていたので、記事はネタかなという印象も持つ。がそうとばかりは言えないかもしれない。

 大豆油燃料の場合、1ポンド(約0・45キロ)のコストは33セントなのに対し、鶏脂肪燃料は19セントと6割以下で製造できるという。
 このため、家畜脂肪燃料は急速な普及が見込まれており、同紙によると、ミネソタ大のバーノン・エイドマン教授は5年後に大豆油燃料がバイオ燃料全体の2割にとどまるのに対し、家畜脂肪燃料は5割を占めると予測している。家畜脂肪燃料の生産が本格化すれば、穀物油燃料の価格低下にもつながりそうだ。

 以前ネタで書いたエントリ”極東ブログ: ベトナムで期待されている新しいバイオ・エネルギー”(参照)がネタとも思えなくなるような時代の変化だ。
 話を穀物ベースのバイオ燃料に戻すと、この傾向はかなり進むらしい。四日付け共同”エタノール拡大で穀物急騰 トウモロコシの半分燃料に”(参照)では、〇八年というから来年トウモロコシの米国生産量のほぼ半分がエタノール向けになるらしい。もっともこの話の出所を見たら”極東ブログ: 中国はもはや食料輸入国”(参照)や”極東ブログ: 世界市場の穀物価格は急騰するか?”(参照)と同じくレスター・ブラウン、またかよ、だった。しかしまた君かというわけにも行かなくなるかもしれない。
 穀物高騰は日本国内の畜産への影響もあるだろうし、それはけっこう社会問題として大きく浮上してくるかもしれないが、世界的に見るとやはり中国経済にどう影響するかということが大きいだろう。すでに中国国内での大豆油は値上がりしているし、さらに全体的にインフレを加速する要因となるだろう。そのあたりがどのくらいの中国経済の動向にインパクトを持ちうるのかわからないが意外と大きくなるかもしれないなという印象はある。
 穀物高騰の理由は以上のような流れからみると米国のエネルギー問題が主軸のようでもあるが直接的な原因は国際的な干魃らしい。オーストラリアが特にひどかったようにも聞く。またインドがかなりの穀物買い付けも行ったらしくそうした情報を元にした投機的な要因は大きいだろう。このあたりの要因を外すと、原油価格高騰のように一時的な問題と言えないこともないだろう。
 だが気になるのは、米国では一二年までに七五億ガロンのエタノールの生産体制を義務づけており、今後は構造的に二〇%がエタノールに回されるらしい。するとうがった見方だが、米国の政策によって穀物を飼料とするかエタノール原料とするかが決定できるとすれば、それを梃子に世界経済に影響を与えることが可能になるとも言える。そのあたりにどのくらい米国の国家意思のようなものがあるのかよくわからないが、陰謀論的に考えなくても、この配分がけっこう強い外交カードになっていくのだろう。

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コメント

穀物価格は昨晩から急落スタートですよ。

穀物から作るエタノールを作るのは、農地開拓により環境破壊を進行させるのではないかと私は不安なんですが、それについて触れた論調はないですねぇ。
ただし、廃棄物から作るのなら環境保護に役立つでしょう。日本は、セルロース系バイオマスエタノール開発ではトップクラスなので、それに期待しています。


RITEとHonda、
セルロース系バイオマスからのエタノール製造新技術を共同開発
http://www.honda.co.jp/news/2006/c060914.html

木くずからエタノール バイオエタノール・ジャパン・関西、世界初の商業生産
http://www.business-i.jp/news/ind-page/news/200701150016a.nwc

投稿: biaslook | 2007.01.17 20:29

ピークオイルが表面化したと見るべきか?いずれにせよ欧米投機筋に左右されない多様なエネルギー獲得が必要なのでしょう。

投稿: アカギ | 2007.01.17 23:15

猪木偉大ですね

投稿: marco11 | 2007.01.22 22:01

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