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2006.11.21

沖縄県知事選雑感

 沖縄県知事選挙についていろいろ思うことはあるが特にブログに書くことはないような気持ちでいた。しかし、昨日現地の話をいろいろ直に聞いていろいろな思いが少し溢れた。我ながら矛盾しているなとも思うのだが、簡単にメモしておこう。
 知事選について仲井真弘多が候補に立つまでの過程というか、いや糸数慶子がすったもんだしてようやく候補に立つまでの過程には関心を持った。が、その後は関心を失った。糸数が落選すると確信していたからだ。そして実際にその通りになった。私がそう望んでいたというわけではない。私は沖縄で政治活動をしたことはないが、糸数さんとは直接会ったこともあるし、今回の選挙でいえば私が沖縄で知り合った人は彼女の支持者のほうが明らかに多い。もうちょっと正直に言うと、糸数がようやく立った時点で、やったな橙鯨、GJ、おめーはただのわたぶーじゃない……まあそんな感じがした。
 選挙速報はワッチしなかった。その必要もないと思っていた。夜なんとなくラジオをつけて仲井真当選を聞いた。あ、そ、とか思ったのだが、ふと票差が気になり、そして票差を見て驚いた。仲井真34万7303、糸数慶子30万9985。私は僅差と見た。なるほどいわゆる革新側が浮かれていたのも宜なるかな、というところだったのか。
 昨日現地の人に僅差だったねと話すと、別に仲井真側の人というわけでもないが、大差でしょとかも言われた。その語調に、君まだ沖縄のこと分かってないねをまた感じた。まあ、そうだろう。
 私が僅差と思ったのは投票率にもよる。64・54%だった。稲嶺二選の前回〇二年は57・22%であり、差は7・3%。すごく増えたというわけではないが、この差に偏りがあれば、選挙は逆転した可能性はある。ではこの差が仲井真を利したか糸数に利したか、そこをどう見るか。共産党まで巻き込んだ民主党の共闘路線の強みということなのか。この問題は現地の空気を離れた自分ではよくわからないのだが、おそらくどちらかといえば仲井真を利したように思う。
 それでも糸数票が多い。昨日の本土大手紙の社説などを見ると、沖縄県民は基地問題よりも経済振興を選んだというトーンで書かれているし、本土朝日新聞などがそう書くと、おめーら内心うちなーんちゅをダシにしてんだろ、とかむっとくる。が、それが間違いとだけは言えないのだが、負け惜しみを言い散らすよりも、糸数票の多さの意味をどちらの陣営も考えたほうがいい。
 選挙というテクニカルな部分できわどい言い方をすれば公明党を崩せば仲井真は落選しただろう。本土側から見ると公明党は自民党の寄生でありキャスティングヴォートでありその大きな構図からは沖縄でも同じなのだが、それでも沖縄の公明党は基地問題が大きく沖縄の人の心を打てば別の動きを示すところがある。沖縄では公明党というくくりよりもうちなーんちゅのくくりが大きい(自由連合については私は沈黙したい)。今回の選挙では共産党を組み込んでも沖縄公明党の内部の人の心をうまく取り込めなかったようにも思えた。
 糸数擁立が間違っていたかという線で考えてみると、これも難しい。これもずばり言ってしまえば、糸数を候補に立てたのは裏の人々が操りやすいからだろう。私は、率直に言えば、山内徳信を立て大田県政の構図を初心に戻って立て直すべきだったように思うが、しかしそうすれば結局大田県政時代の混乱のようになってしまったか。
 この問題について私には矛盾がある。私はかつて沖縄県民だった意識としてはどちらかといえば大田県政を支持していたが一期の稲嶺に投票した。私はある沖縄の古老の思いと活動にうたれたからだった。沖縄のむずかしさを実感した。
 自分のそうした矛盾した思いからすると、そして現状ですら小沢民主党を支持する自分からすると、たとえば、長島昭久衆議院議員を私は支持するのだが、それでいて今回の選挙についての意見にはなかなか素直には聞き取れない。長島昭久 WeBLOG 『翔ぶが如く』”面舵いっぱい! 方向転換する勇気”(参照)より。


沖縄で「反基地」を掲げて6派連合を組んで、左のエースといわれた糸数女史を立てて戦った。それで、敗れたのだ。
つまり、野党共闘路線は破綻したといわねばなるまい。
驚くなかれ。すべての市町村で野党候補は与党候補に負けている。
しかも、基地の抱える宜野湾市や嘉手納町では票差が拡大しているのだ。
もはや、現実から乖離した「反基地」一辺倒では、沖縄の民意は動かない。
それが証拠に、与党候補は無党派の4割に食い込んだ。
かくて、私たちに残された選択肢は方向転換しかない、と思う。

 それはあまりにナイチ的に今回の選挙を見過ぎている。沖縄にはあまりに沖縄固有の問題が多く、そしてそれはなかなか語られない部分が多すぎる。
 

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「時事」カテゴリの記事

コメント

意図的な感じもするのですが
仲井真弘多(なかいま・ひろかず)氏を
仲井と書かれると突っ込まずにはいられなくなりますね

投稿: 小金井 | 2006.11.21 12:27

小金井さん、こんにちは。ご指摘ありがとうございます。修正しました。コメントをもって履歴に代えます。

投稿: finalvent | 2006.11.21 12:30

揚げ足をとるつもりはないけど、沖縄に何年も住んで政治運動までやってたようなヒトが沖縄人の名字を間違えるようじゃ、なんだかな~(失笑)って感じだな。

投稿: あqwせdrftgyふじこ | 2006.11.21 12:51

沖縄ではどんなに選挙でおえらいさんが来たって、
知り合いのお願いにはかなわないと思います。
そして沖縄の人はすぐに得られる利益を優先する、
って所があるんじゃないかと思います。
基地やアメリカがいなくなって欲しいと思いながら、
長い間基地のおかげで甘い汁をすった沖縄の人は、
どこかで基地を失うのをおそれている気がします。
基地の近くに住んでいない人は基地によって
なにか不利益をこうむっているわけでもないですし、
基地がどうなろうが関係ないって所もあるんだと思います。
沖縄固有の問題ってそういうところですか?

投稿: かめこ | 2006.11.21 15:05

本筋と全然関係ないのですが
>>64・54%だった。稲嶺二選の前回〇二年は57・22%であり、差は7・3%
という表現に違和感があります。
テレビなんかでは7.3ポイントということが多いみたいですね。
7.3%というのは1000分の73のことですから、64.54%からその1000分の73だけ少ない数というと59.82%ですからね。
どうでもいいっちゃあどうでもいいですね。

投稿: 天魔 | 2006.11.21 17:16

 自分ちの周辺に進駐軍が延々居座り続けて、内心ムカツキつつも、そこから幾許かの利益を得て暮らしてみ。そしたら沖縄の人の心の一端くらいは分かるやろ。
 そういうのは、言葉じゃなくて体感で知らんと意味無いよ。

 本土人の多くが忘れた「負ける悔しさ」を、彼らは何時までも持ってんだよ。

投稿: ハナ毛 | 2006.11.21 18:17

 昨今プチ流行のいじめ問題とかシンクロさせて考えてみ。
 いじめっこ側が本土人でいじめられっこ側が沖縄人。
 沖縄人は1609年の島津侵攻以降、基本的にず~っと「自前の武力を持たないいじめられっこの立場」だろ。
 戦後になっていじめる相手が変わっただけつーか。

 まぁ私も詳しく知らんけど、以前出稼ぎで道路工夫やってた沖縄おやじと仲良くしてたから、そんときいろいろ沖縄話聞いたよ。生きてりゃ50か60か。弁当翁と感覚近くて不思議じゃない年頃の人だったよ。
 いい人だった。

投稿: ハナ毛 | 2006.11.21 18:55

 今日の添削

>たとえば、長島昭久衆議院議員を私は支持するのだが、それで今回の選挙についての意見にはなかなか素直には聞き取れない。
→たとえば、長島昭久衆議院議員を私は支持するのだが、それでいて今回の選挙についての意見にはなかなか素直には聞き取れない。

※「それで」だと前後の脈絡が掴めません。「それでいて」で正しいかどうかは知りませんが、意味の通るように修正していただければ。


>昨日現地の人に僅差だったねと話すと、別に仲井真側の人というわけでもないが、大差でしょとかも言われた。その語調に、君まだ沖縄のこと分かってないねをまた感じた。まあ、そうだろう。

 ここは添削じゃないけど。前回の衆議院選挙のホリエモン騒動震源地だった住民からすっとね。沖縄人の対応がよく分かるよ。たしか亀井静香96000、ホリエモン84000だったかな? そんなとこだったけど。

 実質票で言えば亀井80000、ホリエ30000と見るから、結果以上の大差負けなんだよ。選挙の数字ってのは、そういうもん。投票率が上がったときは浮動票が多く動くから。そういうの込みで見るといい線逝ってそうな勝負でも、実際は浮動票を一切当てにしない「旗本勝負」で換算するから。
 今回の沖縄のケースだと、旗本勝負で換算すると「25万対15万」くらいと見込む。んじゃ、大差負けじゃん。そんな感じ。

 多分、弁当おじちゃんは沖縄のことを知る知らない以前にそもそも「数字に弱い」だけちゃうん? と思ってみる。思っただけ。口にはしてないよ。とか言って。

投稿: ハナ毛 | 2006.11.21 19:15

 ちなみに、だ。
 亀井vsホリエモンのときは亀井浮動16000、ホリエ浮動54000で、ホリエのほうが3倍人気とまで見積もってるけど、それでも負けるときは負けるのよ。

 浮動票を当てにしたうえで勝負に勝ちたければ、個人人気で最低でも10倍上回ってないと、ダメよ。桁が違う格が違うとまで認識されなきゃ、そう簡単にひっくり返せないよ。

 民主党に限らんけど、左派の人は個人人気を過大に評価しすぎるんだよ。明らかに、あからさまに桁が違う、の領域まで逝かなきゃ。一時の感情に左右されるほど有権者は馬鹿じゃないし、仮に馬鹿でも「大勢には影響しない」よ。
 あと、ちなみにうちの田舎だと人口8000人中創価学会員は200人、票に成るのは400。動員力は最大で総人口の5%程度か。投票率に換算すると10~12%くらいになるね。
 基本的に彼らは絶対参加なんで「低投票率のときは絶大な威力を発揮する」けど、投票率が上がれば相対的に戦闘力が下がるし、今回の沖縄戦みたいに7.3%も変動すれば、実質戦闘力は5~7%程度に落ち着くと見たほうがいい。それら諸々浮動票を「抜いた上で」考えてみ。

 公明党が肩持ちするのは「旗本の多いほう」だからね。公明党を切り崩せば勝てたかも? なんて、泣き言以外の何者でもないよ。それ、絶対無理だから。

投稿: ハナ毛 | 2006.11.21 19:30

 選挙は水もの、なんてよく言うけど。
 実際に投票結果が影響するのは、その地に根を下ろして生きている人たちですから。
 浮き草根無し草の言い分なんか初手から無視、が基本ですよ。

投稿: ハナ毛 | 2006.11.21 19:48

ハナ毛さん、こんにちは。今日の添削ありがとう。反映しました。

投稿: finalvent | 2006.11.21 19:55

↑「それでiいて」になっとりますよ。反映ミス。

投稿: ハナ毛 | 2006.11.21 19:59

個人的に思ったのが
保守側候補が、
沖縄の無党派層にも受け入れられる程度に
気持ち左よりの政策を出すようになったのではということ。
基地の事故関係とかで、
率先して抗議行動を起こす保守系知事というのは
20年前では考えつかなかった気がするのですが…。

投稿: Lefty | 2006.11.21 22:30

今回の革新側の敗戦分析に何度か立ち会いましたが、ピントのズレ具合になんだかなーな感想しか抱けません。
開票時に本部を高教組(革マル)本部の教育福祉会館に陣取ったあたりからして、センスがないなと辟易してましたが。
結局最後まで内向きで、内輪しか見ず、内輪だけの集まりで内輪だけで賛同を強めて、内輪だけで選挙予測をして、内輪だけの調査で勝利予測を出して、内輪だけで団結を組み、内輪だけで勝利を迎えようとした。
最後まで内向き。
県民を見ていない。
糸数の周りには本土出身の活動家しかおらず、革新内部から最後の最後までその危険性の指摘と、山内支持が絶えなかった。
選挙活動ではモラルハザードを起こし、公選法違反を堂々と繰り返し。
糸数陣営を見ていて、当時のリクルートや光通信のソレと似ているなと感じたのは、多分私だけではないはず。

投稿: くれふ | 2006.11.21 22:57

↑外から見た感じだと
>今回の沖縄のケースだと、旗本勝負で換算すると「25万対15万」くらいと見込む。
 なんですけど、上記のような内情を踏まえてどの程度の戦力差と認識しておられますか。

投稿: ハナ毛 | 2006.11.22 01:04

 知事選ついでに言っとくと、広島県知事選の前哨戦ちゅーか事前のお願い大会も、既に開催されてるんですな。現知事が汚職疑惑でアレなんで。表立っては動きまへん。今度出るかもしれないんでそんときゃ宜しくね、くらいの勢いで。
 んで、我が家はビンボー一家なんで誰もお願いに来ないんだけど、友人宅(開業医)にはどっかの誰かさんが何度か足を運んだみたい。

 寸志持ってキテマスヨ。寸志の中身は何でしょね?

 んで、友人の断り口上。
「私は金では動きません。政策の良し悪しを見て決めたいと思いますのでお引取り下さい。」

 毅然としてますねえ。男らしいですねえ。素晴らしいですねえ。

 で。後日私と連れで街までドライブ。アーンドショッピング。
 車中。
「……安すぎるんよ。たかだか1万円ぽっちで歓心買おうなんざ世間を舐めるにも程があるわ。だいたいのう。政策見て決める言うけどが、要はワシに美味しい話を持ってこい言うことじゃけえのぉ。ええ歳こいて美味しい話のひとつも持ってこれんのが生意気言うなや」

 毅然としてますねえ。男らしいですねえ。素晴らしいですねえ。

 で、私。
「どうせなら土下座も要求すりゃえかったやん。先に地面に穴掘っといて、そん中に顔埋めさせるんよ。ワシがええ言うまで土下座しとれや言うて、ホンマに土下座しやがったら後頭部思いッくそ踵で踏みつけて「スピンターン!!」とか言うてグルグル回りゃええんじゃ。それで耐え抜いたら一丁前よ。一票でも十票でも入れてやりんさい」

 友人大爆笑。素敵な選挙日よりでしたとさ。そんな感じ。

投稿: ハナ毛 | 2006.11.22 01:43

人生スピンターン!!

投稿: ハナ毛 | 2006.11.22 01:52

>スピンターン!!
俺ならつま先で回るな。

投稿: 黒潮 | 2006.11.22 03:20

どっちゃでも、より痛いほうで回って吉。

投稿: ハナ毛 | 2006.11.22 07:49

沖縄の自立の道は米国軍を縮小させ、中国の影に怯えないようする具体策が問われている。自由貿易地区として反日国家との交易のための平成の長崎の出島と活用を。

投稿: 寄稿人 | 2006.11.22 16:15

セピア色
経営がかかっているので、政治家(外交官)でなけりゃ。
西風のときも東風のときも。

投稿: きりかぶ | 2006.11.22 21:43

自由連合について口を閉ざしているのは
この選挙で当落を左右する要因となった
徳州会のローラー作戦の経緯のことでしょう。

一番大事なところなのに
このブログの著者は話すと何かまずいことでもあるのでしょうか?

投稿: ぽ | 2006.12.03 10:18

今回の選挙は生活・経済不況への不安度の結果である。基地問題は倫理観としての大人の建前論だ。ダブルスタンダード。大田氏当選時は三期を務めた西銘氏がバブル期を謳歌し、崩壊の煽りを受けた世紀末現象と世の風潮に飽きやすい県民性の庶民バランスで交替したまで。稲嶺氏にしても然り。その流れからすれば糸数氏の勝利可能性は高かった。山内氏なら前回同様に役不足で惨敗になる。キーマンは反自公の下地氏だ。彼の運動能力の激しさが投票率アップの一翼を担い公明票に火がついた。著名度が高く品性があり女性初というイメージがある糸数氏以外に東大官僚出身、地元経済界トップのエリートに対峙しうる選択肢はなかった。稲嶺氏が三選目をのぞめば糸数氏の勝利になったはずだ。稲嶺氏は何もせず、疲労感を演じ続け仲井真氏を持ち上げ勝ち逃げに成功した。一方、下地氏は危ういが純粋な旧保守にかわりはない。公明党が自民党と手が切れる日を待つのみ。それはそれでいい。やはり、庶民バランスのサイクルが崩れた第一の要因は振興策、雇用問題である。庶民は誰がなったていいと考えている。普通の安定した生活を望む。中央のパイプをさらに期待している。アメリカ頼みの日本国となんら変わりはない。

投稿: アカギ | 2006.12.13 14:43

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