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2006.10.23

前頭側頭葉変性症と才能

 前頭側頭葉変性症と才能についてちょっと変わったニュースを見かけて、ちょっと考え込んだ。よくわからないのだが、気になる部分もあるので簡単にブログにでも書いておこう。
 話はたまたま米国立衛生研究所のサイトにあるロイターで見かけたもので”Why brain damage may spark artistic ability ”(参照)。標題を訳すと「なぜ脳障害が芸術的な才能を誘発するのか?」。確かに、ある種の脳のトラブルは芸術的な才能を開花させることがあるようにも思えるし、「なぜかれらは天才的能力を示すのか―サヴァン症候群の驚異」(参照)ではないが脳にはなにか奇妙な謎がある。
 今回のニュースだが、脳障害といっても、前頭側頭葉変性症(FTLD: frontotemporal lobar degeneration)に限定されている。


The condition known as frontotemporal lobar degeneration (FTLD) occurs when sections of the frontal and temporal lobes of the brain deteriorate, leading to dementia. There have been reports of previously inartistic people becoming talented visual artists after developing FTLD. But it is not clear whether the brain atrophy is releasing dormant talent, or the disease itself has somehow triggered the artistic expression.

この状態は前頭側頭葉変性症として知られているもので、前頭葉・側頭葉に障害は起こり、認知症となる。発症後に視覚面で芸術的な才能を開花させることがあるという報告もあった。しかし、脳萎縮が才能を解放しているのか、病気自体がなんらかの芸術的な才能の引き金になっているのかについては不明である。


 今回のニュースでもそのあたりは不明という感じだったので、なーんだということでもあるのだが、研究ではその産物を芸術として多面的に評価し、感情表現などにおいてはそれほど優れてないともしていた。つまり、芸術的な才能と手放しで言えることではないようだ。小林秀雄が山下清の絵について優れているが人間が表現されていないと表していたことを思い出した。
 またニュースでは、絵画的な能力が前頭側頭葉変性症によって障害を受けていないということだが、肯定的にその部分の能力を引き出す可能性については言及していないようだった。
 歳を取ると能力が劣化するのは、私も来年は五十歳ということで、そりゃそーですよねということにしている。べたな記憶力は悪くなっているようにも思う。が、正直能力が劣ってきているのかと問いかけると、別に勝ち気に言うわけでもないが、よくわからない。むしろ、直感的な側面では以前よりアップしているのかもと思い、ちょっとそう思うときに検証してみるのだが、そういう面もありそうだ。経験則からなにかメタな部分を引き出しているのだろう。そのあたりはそういうものかということで、吉本隆明「家族のゆくえ」(参照)に内省されている老人の能力ということも頷ける。ただ、自分だけが特例というわけでもないだろうが、経験性でもない感覚面でも若いときよりもきつくになっている面もあるので奇妙な感じがする。
 話を前頭側頭葉変性症にシフトすると、ピック病も含めてだが、こうした病気ほど深刻な状況ではなくても類似の緩和な状態というのがあるのではないかとときおり思う。ネットを見ると「さまざまな認知症:前頭側頭葉変性症」(参照)にはこうあるが。

前頭側頭葉変性症(frontotemporal lobar degeneration)は一次性認知症の約1割を占め、アルツハイマー病に比べ発症が若い傾向があります。もの忘れはみられますがあまり目立たず、人格変化が中心になります。自己中心的、短絡的な行動や、意欲低下、だらしない行動がみられるため、精神科疾患のようにみえることもしばしばあります。食事の好みの変化(甘いものや大量飲酒など)、繰り返し行動、言語障害(漢字が書けない、読めない)などもみられるようになります。

 歳を取るとそういう変化をある程度緩和に示すケースは多いのではないかと思う。「ピック病」(参照)についてはこんなページもある(この病気自体がよくわからないので情報についての正確さもよくわからない)。

ピック病は、アルツハイマー病に比して少なく(アルツハイマー病の1/3~1/10といわれている)、40代~50代にピークがあり、平均発症年齢は49歳である(アルツハイマー病の平均発症年齢は52歳)。

 ちなみに私はその四十九歳。

たとえば、人を無視した態度、診察に対して非協力、不真面目な態度、ひねくれた態度、人を馬鹿にした態度などで、病識はない。その他、会話中に同じ内容の言葉を繰り返す滞続言語(滞続言語とは、特有な反復言語で、質問の内容とは無関係に、何を聞いても同じ話を繰り返すもので、他動的に誘発され、持続的で制止不能である)も特有である。

 なんか藻前ずばりこれじゃんとか言われそうだが。まあ、病識はない、と。
 こじつけたいわけではないが、今日の産経のニュースで”家庭のストレス?退行現象? 万引に走る50~60代男性”(参照)を連想した。

 ボールペン、塗料…。1000円にも満たない物を万引し、人生を棒に振る年配男性たちが目立つ。NHK放送局長。警視庁課長。地位も収入もあるのに、ホームセンターで安い日用品を万引した。50~60代の万引検挙者数はこの10年間で倍増しているという警察庁の統計もあり、関係者は「家庭のストレス」「欲求を吐き出したいとする退行現象では」と分析する。

 医学的には前頭側頭葉変性症ということでは全然ないというのはわかるのだが、なにか類似の傾向というのはあるような気がするし、単に老化の心理的な傾向というだけかもしれないのだが、脳の機能面ではなく構造面での変化がありそうにも思える。

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コメント

はじめまして。いつも楽しく読ませていただいています。

前頭葉損傷に関する症状ですが、少なくとも前頭葉の一部はコンテキストによって行動を変える(直前には正しかったけれど今回は正しくないといった行動を抑制する)ことに関連しているという報告があるので

http://www.pnas.org/cgi/content/full/102/35/12584

前頭葉損傷によって滞続言語という症状が出るのは何かこの辺と関係があるのかも知れませんね。

ところで、おサルさんなんかの行動を見ていると、彼らは衝動的な運動をうまく抑制できていない(判っているけど止められない)ように思います。ヒトはそれに比べて感覚情報が入ってきてもそこから数ステップの抑制がかかった上で行動するようです(その分定型処理はたいていおサルさんより遅いですが、ムカっときてもいきなり殴りかかったり威嚇したりということはせず、むしろ状況を考えて逆に笑ったりもできる)。

ヒトとおサルさんの脳の構造的な違いのひとつが前頭葉の発達度合いということを考えると:

通常時:前頭葉が働く→いろいろ抑制(怒り、衝動的な行動やある種の芸術的な才能も)
老化等:前頭葉縮退→抑制が解かれる→抑制されていた突発的な(万引き等も含めた)行動をする。うまくすれば芸術的な才能も脱抑制?

という大雑把なシナリオが成り立つのでしょうかね。

投稿: cal | 2006.10.23 15:38

「アルツハイマー性痴呆」に分類されている病状の人のうち、本当のアルツハイマー病はその5分の1程度で、残りは脳を使わなくなったことによる脳の萎縮だということを聞いたことがあります。
「前頭側頭葉変性症」のように見える症状、というのも先天的に前頭側頭葉が萎縮しているというよりは、普段の生活で前頭側頭葉が使われないことによる脳の萎縮かもしれない、とちょっと思いました。

状況としては、常にちょっとほろ酔いのときの自我の抑制状態が続くような感じなのでしょうか。

森教授の「ゲーム脳」論は、実験の手法をある程度かじった身には内容の93%がトンデモと断言できるものですが、
(だって、「ソフトウェア開発者の脳波」と「ソフトウェア会社の営業職の人」の脳波を測定して、この脳波の違いは「ゲーム」にあるとか言ってますし。)

ただ、2chで有名なパンのコピペみたいにパンを食べることによって病気や犯罪は誘発されないけれども、パンだけ食べてて肉や緑黄色野菜を一切食べないという状態はやはりちょっと危ないかな。と思うのです。

なので、お仕事の他の趣味はなるべくネットとゲームだけにしないで体を動かしたりとか歌を歌ったりするとかして、前頭側頭葉が働くようにちょっとした抵抗を試みたりもしているのです。

投稿: キングフラダンス | 2006.10.24 06:15

こんにちは。
最後の件ですが、これって例の団塊問題のはしりなのでは?
確かに脳の構造の問題でもあるけど。
結構戦々恐々としてます。

投稿: TRICKSTAR | 2006.10.24 13:18

■万引に走る50~60代男性のオハナシ、これまでは単に『家庭や職場にあたえる影響』を考慮して内々に済ませてきたのが公にされるようになってきただけではという気もします〆

投稿: バカヤマびと | 2006.10.24 23:12

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