北朝鮮核実験実施
このところ英紙テレグラフでの報道を見ていると、慎重でありながらも、現地報道員や米国やロシアの情報を元に、核実験が近いことを報道していた。日本政府もこの情報はかなり正確に把握していたようなので、政府側としても驚きはないだろう。
五日付けの”US spy satellites detect N Korea's nuclear moves ”(参照)によれば米人工衛星で察知されていたようだし、六日付の”North Korea 'could test bomb this weekend'”(参照)では近々の実験について、谷内正太郎外務事務次官の発言をソースとしている。国内ソースを見ると例えば朝日新聞の”北朝鮮の核実験、「今週末にも」 谷内外務次官”(参照)があるにはあるが、記事の弱いトーンが印象的だ。
私も今日の実験は予想できなかった。もうちょっと中国がなんとかするだろうし、意外と米国は交渉にねばり強いところがあるので、外部から見ていると、そこまで北朝鮮は追い詰められていたかなという感じがする。もっとも、昨年四月”極東ブログ: 北朝鮮核化の新動向”(参照)でこう書いていた。
現実の問題として、日本ではこの北朝鮮核搭載ミサイル可能性の問題をどう受け止めていいのかは難しい。社会パニックになることは避けたいし、頓珍漢な予想みたいのはしたいわけではないのだが、このまま北朝鮮を追いつめていけば、核実験を行うしかなくなるだろう。そうなってから、日本の世論なりの立て直しが可能かというと、よくわからない。ある程度関心をもつ人が、現状では、できるだけ細かくニュースを追っていく必要はあるだろう。
今日以降の日本の世論がどうなるか気にはなるが、現状の一報後のようすを見ていると社会パニックのような状態にはなりそうにない。というか、依然、遠い他国の出来事のような非現実感が覆っているのかもしれない。
事実確認にちとウィキペディアを参照したところ、意外に優れた記事があった。”北朝鮮核問題”(参照)より。
北朝鮮の核開発に関しては事実上、完了していると見られている。これまで起爆装置の製造には欠かせない高爆実験を140回程度行ったとされる。公式には核実験そのものは確認されていない。しかし、1998年にパキスタンが行った核実験は当時のパキスタンの核開発にはあり得ないはずのプルトニウム爆縮原爆の痕跡があり、北朝鮮の核技術者も核実験場に居た事から、少なくともパキスタンの核実験のうち一回は北朝鮮の核の代理実験だったのではないかという疑惑も浮上している。
現在から振り返ると、「少なくともパキスタンの核実験のうち一回は北朝鮮の核の代理実験だったのではないか」というのはほぼガチといっていいだろう。そしてこの情報はすでに米国側では昨年二月二十七日付ニューヨーク・タイムズの報道(一九九八年パキスタンの核実験後現場付近に派遣された米軍機が大気中からプルトニウムの痕跡を検出していた)でしっかりおさえられていたものだが、日本での報道ではブッシュ叩きの空気もあってか妄想に近い扱いではなかったか。
現状では完全に核実験が確認されたわけではなく、米国側から「あれは違うってことひとつ」となるかもしれないが、想定された範囲で、具体的に今回の実験がどれほどの危険性を持っているかについては、先と同じくテレグラフだが予想している。”N Korea's bomb 'would kill 200,000'”(参照)より。
The nuclear weapon that North Korea intends to detonate in an underground test is big enough to kill up to 200,000 people were it ever to be used against a city such as Seoul or Tokyo, Russian military experts have revealed.北朝鮮が今回地下実験を試みようとしている核兵器は、ソウルや東京といった都市を対象とするなら、二十万人程度殺害できる能力があるとロシア軍専門家は明らかにした。
東京大空襲の二倍の惨事が想定されるということで青ざめるが、これは東京というより北朝鮮に近隣の大都市の例というだけのことだ。
They say that the weapon, with the same 20-kiloton yield as the bomb dropped on Nagasaki, is about 10ft long and weighs four tons. It is too big to fit on to any missile Kim Jong Il's regime currently possesses but if it were detonated above ground it could destroy everything within five square miles.
今回の核兵器は、長崎に落とされた原爆と同じ二〇キロトン出力で、長さ約一〇フィート、重さ約四トンである。この形状と重量は現在金正日が所有しているミサイルには装着できない。だが、地上爆破に成功すれば五マイル四方を破壊し尽くすだろう。
ということで、東京にミサイルでどかんと一発禿頭ふうになることはない。というか、都民は直下型地震を恐れているだけで恐怖はまだまだ十分な状態だ。この核兵器の恐怖ということなら、すでに国境で小競り合いが見られるともいう地続きの韓国が心配になるかもしれないが、この点においても、盧武鉉大統領の太陽政策のもと韓国国民は同胞民族である北朝鮮の人々に恐れを抱く必要などありえないので、いくらソウルが地理的に北朝鮮に近いとはいえ、東京と同じく安心して暮らしていけるとの心情に間違いない。まして日本人が過剰に心配することでもない。
今後北朝鮮の核実験がこれで終了かといえば、すでに保有しているプルトニウム量からすると、まだまだ数回はできるのであり、日本としてもこれからは、朝鮮労働党創建記念日の年中行事かというふうに見るようになるかもしれないが、あまり油断しないほうがいいだろう。
ちなみに「極東ブログ: テポど~ん」(参照)で中国様の心境についてこう察した。
中国様としては、対米的な手前、北朝鮮にこれ以上ミサイル商売をさせたくはないだろう。内心ふざけんなという感じではないか。そのあたりをうまくツンツンとできる外交力が日本にあればいいのだけど、難しいか。北朝鮮も韓国も東北部の第四省にはなりたくないだろうし、存亡をかけた必死の工作が、今、広大な宇宙に始まろうとしている。
ミサイルと核実験とはお商売がちと違うのだろうが、このあたり面々はいろいろご活躍なのだろうと思う。中国様や韓国様のお家のご事情というのもいろいろありそうだし。
米国様は前回民主党政権下では北朝鮮の空爆を決定した経緯があるが、現米国政府はもうちょっと慎重なんじゃないかと思う。というか、胡錦涛を立てるように動くだろうと思うが、ちと読みが甘いか。
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コメント
想像して愉快な事…
日本の反核團體の内情
良くも惡くも、反狂亂か?
連中、朝鮮總聯の門前でダイ・インでもやるか(笑ひ
鳩山由紀夫の動向
昔、フランスの核實驗反對のため
タヒチ島まで出かけた男
北鮮の場合は、さて何をするか(笑ひ
シナ領トルキスタンの核實驗の時は
何もしなかつたといふ實績(?)あり
此奴も反狂亂にならねばをかしい
投稿: by-passer | 2006.10.09 16:56
手前味噌のオンパレードですね
投稿: | 2006.10.09 17:11
核実験をしたとしても、実用兵器として使えるのはまだまだ先の話。7月のテポドンに核弾頭が付いていたとしたら……w
投稿: ヤマボウシ | 2006.10.09 18:07
ミサイルで撃ち込まれるよりも、工作船で持ち込まれる方を注意しないといけないでしょうね。
投稿: | 2006.10.09 20:01
実際戦争になったら、一番怖いのは人ですよ。
投稿: ハナ毛 | 2006.10.09 23:25
ちうか、本当に怖いのは安上がりの核がテロリストにわたること。
投稿: cyberbob:-) | 2006.10.10 06:51
はじめまして。
一番敏感でいなきゃいけない日本が何でのほほんとしてるんでしょうね。僕も今までのほほんとしてたけど最近卒業論文でちょっと調べてからビビりはじめた学生です(笑)
勉強になりましたー^^これから読ませていただきますー
投稿: 札幌人 | 2007.01.18 06:08