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2006.10.21

サハリン2は何がなんだかわからない

 専門ではないので何がなんだかわからないのだが、専門家でもそうなんじゃないかというのがエントリの主旨になる予定なので、そう、別にどうという話でもない。この間ずっと気になっていたし、潮目のような感じもするのでちょっと書いておこう。
 話はサハリン2プロジェクト、略してサハ2、じゃ略しすぎ。ではサハリン2・0、ってこともなし。サハリン2は、ロイヤル・ダッチ・シェルと三井物産、三菱商事、三社が出資するサハリン・エナジーによるロシア・サハリン沖の資源開発事業だ。開発契約開始は新ロシア黎明・混沌の九四年。出資比率は順に五五パーセント、二五パーセント、二〇パーセント。というわけで、かつての日本領土近くだから日本の比率が多いというわけではないが、対露投資として見れば大きい。来年から原油の通年生産(日量一八バレル)、再来年から液化天然ガスの生産(九六〇トン)開始の予定、だった。が、そう行かないかもしれないというのが事の発端かのような。
 話は先月五日。ロシア天然資源監督局がサハリン・エナジーは環境保全措置を怠っているとして事業許可の取り消しをモスクワ市の裁判所に求めた。一八日これを受けて、露天然資源省は事業第二段階の許可承認を取り消す決定を下し当面開発は停止となった。環境問題があったかなかったかというと、サハリン・エナジーもまったくないとは言えないわけで、そう不当な決定ということでもない。
 停止ということもあるんじゃないのかくらいに私は思っていた。が、日本の報道と限らないのだが、これはロシア政府が仕掛けたものでロシア企業ガスプロムを開発事業に加えろというメッセージではないかという話がふくらんできた。なぜ?
 そこが私にはわからない。誰がそんなこと言っているのかというのが気になってこの間ニュースを見聞きしてきたのだがわからない。専門家は口を揃えてロシアの国策だろうと言うのだが、いったいどこにそんなソースがあるか。プーチン皇帝は、エネルギーを国家支配下に置き国際戦略に使いたいのだろうという観測から、なーんとなく出てきたお話ではないのか。
 二一日、アレクサンドル・ロシュコフ駐日ロシア大使は、プロジェクト全体を中止するつもりはないと明言。どういう権限でそう言えるのかわからないが、中止しないというメッセージをはっきり出したた。さらに二六日、トルトネフ天然資源相はサハリン2について、約一か月は環境調査を行うが、その間は工事継続を容認すると記者会見で述べた。
 ロシアを敵視しているかのようなメディアの思惑とロシアから公式に出てくるメッセージが噛み合わない。
 今月に入り、ロシア会計検査院はサハリン2について、投資額が増大になればロシアの収益化が遅れて不利になると発表したが、それとても環境問題とは直接リンクしない。別の話に思える。ロシア会計検査院の言っていることはただの正確な予想というだけで、問題はむしろサハリン・エナジーの投資増大にある。
 もともとこの開発は生産物分与協定(PSA)によるもので、これは企業の投資分の回収を優先し、ロシアへの収益配分はその投資回収後になる。ロシアがカネのない時代に開発を進めるためにしかたなしに酔っぱらったエリツィンが打ち出したものだが、当然投資が増えればその回収は遅れてしまい、ロシアは手を拱いていなければならない。しかも、現在のロシアは原油価格高騰でカネがだぶだぶ。
 ロイヤル・ダッチ・シェルもロシアというかプーチンのご不満はわかっていたわけで、昨年、サハリン・エナジーの株式を二六パーセントロシアのガスプロムに譲渡することになっていたし、その後、三井物産・三菱商事がその株をシェルに回すことになっていた。
 が、シェルはこれと併行して、事業経費を当初の百億ドルから二百億ドルに増やすと言い出した。ロシア皇帝もそりゃむっときて当然だろう。なので、環境問題はその反撃かと読まれたわけだが、そういう読みの裏付けは私の見る限りだが何もない。
 今日になって共同からこんなお話が流れた。”ロシア大統領がサハリン2批判 日本に影響か”(参照)より。


ロシアのプーチン大統領は20日、日本商社などが出資する極東サハリン州沖の石油・天然ガス開発計画「サハリン2」について、現行の契約形態である生産物分与協定(PSA)や、事業主体が打ち出した事業費倍増計画はロシアの利益にならないと厳しく批判した。大統領がサハリン2について自ら考えを表明したのは初めて。

 初めてプーチン皇帝のお言葉が出てきたわけだが、なんかおかしい。と思っているうちにこの問題にけっこうきちんと取材しているNHKから”ロ サハリン2で対話の構えも”(参照)が出た。ちと長いが重要なので引用する。

これについて、トルトネフ天然資源相は20日、上院の公聴会で、事業主体のサハリンエナジーがロシア政府に歩み寄り、環境対策の不備を認め、改善に取り組む意思がみられるとして、「建設的な対話を行いたい」と述べ、事態打開に向けた協議に応じる構えを示しました。また、プーチン大統領も20日、EU・ヨーロッパ連合との首脳会談後の記者会見で、「双方が交渉のテーブルについて合意することが必要だ」と述べました。その一方で、「環境問題以外に事業費の増加が問題だ」とも指摘し、サハリン2の経費が予定の2倍にふくれあがることによって、ロシア側の利益の取り分が少なくなることに不満を示しました。

 こっちのHKニュースのほうが真相に近いように思える。プーチンとしてはなんとか日本ともめたくないという心情が優先的なのではないか。
 昨年の話だが、シュレーダー元ドイツ首相がロシア・ガスプロムの共同事業NEGPの締役会長に就任した(参照)。ドイツ国内ではすごいブーイングの声が上がった(参照)がプーチンとしては信頼できる国外の仲間を要所に据えたかったことは間違いない。
 たぶん、プーチン皇帝は日本でもそういう信頼できる人が欲しいのではないかと思う。でも候補者は早々に潰されていたということか。

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「時事」カテゴリの記事

コメント

finalventさん始めまして。いつも楽しみに拝見しております。

「選択」05年12月号「亡国のサハリンプロジェクト」によると、総事業費が倍に急増したのは去年7月の事。
理由は
1.米欧環境保護団体のバッシング→パイプラインルート変更、工期延長を余儀なくされる
2.鋼材価格急騰
3.ロシアの許認可手続き遅延
だそうです。「選択」は裏にロシアだけでなく米石油メジャーもいて、シェル+日本の独占を快く思ってないからだ、と勘繰ってます。ホンマかいな。
そしてプーチンはすでに去年11月来日の際事業費倍増を認めないとの考えを示してます。その当時は私も何故?と思っていたのですが、今年に入り真打ガスプロムが登場、そして矢次早に露天然資源省も参戦。私も何が何だかよく分かりませんw 
ちなみにこの記事はサハリン1にも触れていて、今日報道された中国様のガスお買い上げを警告してます。LNGでなくパイプライン生ガス輸出にこだわった時点である意味当然ですが、「選択」の予想が的中するのは最近では珍しいな、と。

投稿: 通りすがり | 2006.10.22 01:07

 単なる内部抗争(権力闘争)じゃないの?

投稿: ハナ毛 | 2006.10.22 04:56

こんにちは。お久しぶりです。
サハリンエナジーが開発にあたって甚だしい自然破壊をおこなっているのは事実です。
これは私も現地で確認してきました。
英国メジャーが開発した北海油田との配慮の差はあまりにもあからさまで隠しようがありません。
工事会社も酷く、アニワのLNGプラントにしても工事用道路が地元小河川をせき止めて既に数年になります。
石油産業に関わっていない地元住民の感情的な反発も強く、今回のロシア政府による干渉の口実となっている環境問題は、我々にしれみれば「何をいまさら」でしょうが、地元市民にしてみれば「なぜもっと早く」と言う思いでしょう。

サハリン油田の環境破壊を調査して、その中止を煽っていたのがFOEで、FOEの背後には原子力産業がいます。
今回のロシア政府による干渉はFOEによる長年の働きの成果であることは間違いありません。
ただし、その引き金を引いたがサハリンエナジーの投資だったということでしょう。
ただしFOEとロシア政府の利益は本来相反しています。そこでサハリン油田の対日輸出を促進したいプーチンの本音を考慮した関係者が「ガスプロム参入で資本比率に干渉して利益の回収を早めようとするだろう」と推測したものです。
さらに、ロシア外交筋から「日本への輸出は予定通りすすむ」と言う発言もこの推測を強化しました。
なお日本メディアで最初にこの推測を報じたのは北海道新聞だと思います。

投稿: sonic | 2006.10.22 08:59

今回のロシア政府の干渉について、FOEの見解をどうぞ。
私は彼らとは考えは相容れませんが、彼らが石油開発をつぶすためにかなり正確にサハリンの環境を精査しており、環境破壊と工事関係者と住民に危険を及ぼしているのは確かなことだと言えます。

http://www.foejapan.org/aid/jbic02/sakhalin/letter/20060925.html

ところで、明日引越しでして、インターネット環境のないところに異動することになりました。
以前、岩手の医療問題でご意見いただきました。有難うございました。
またご縁がありましたら宜しくお願いいたします。

投稿: sonic | 2006.10.22 09:07

sonicさん、こんにちは。貴重なコメントありがとうございました。ネットの環境が戻られる日までブログを続けてたいと思っています。

投稿: finalvent | 2006.10.22 09:19

佐藤優を失った影響は大きすぎ
日露戦争途中で明石大佐を左遷させたもんか?

投稿: ねこ | 2006.10.22 18:58

>たぶん、プーチン皇帝は日本でもそういう信頼できる人が欲しいので
>はないかと思う。でも候補者は早々に潰されていたということか。

そうなんですよねえ。
「何者か」が日本とロシアとの関係を切ってしまおうと画策していて、そこから考えると「何者か」がいったい何を考えているのかが少しわかる気がするのです。

ただ、北海道生まれの私にとっては直感的に「切れないだろう」とは思ってしまいます。

投稿: キングフラダンス | 2006.10.22 19:15

 外部からの謀略があろうがなかろうが、それで足並み乱れるってことは結局内部抗争なんよね。いまのところ日本人にとってのロシアはプーチンだけが目立ってるけど、それ以外の面子でこれはと言える実力者は誰か居るんですかね? 居れば、その人にも目を向けたいね。

投稿: ハナ毛 | 2006.10.23 07:32

おひさしぶりです。
サハリン2に対して環境破壊で天然資源省の警告が出たのは結構以前からのことだったようですね。
しかも先週、天然資源省はガスプロムに対しても違反を告発し、11月21日まで全事業に対する査察を行うことを発表したようですね。これは政治的なポーズかもしれないとも思えますが、案外、これらの話は天然資源省の省益狙い、ないしは、本来業務に邁進しているが故のアクションだったという側面も大きいのかもしれません。ひょっとしたら。

投稿: fanannan | 2006.10.23 08:35

日露関係は、人為的な妨害がなければ現在のような状態に陥るわけがない。
そのぐらい不自然。
日本とロシアの双方に、妨害工作をしている人間がいる。
日本には、中国や米国の意向を受けた連中
ロシアには、日ロ関係の正常化で極東ロシアの開発が進んで、欧州ロシアとアジアロシアの分裂が進むのを怖れる連中
冷戦終了後の日ロ関係が日中関係並みなら、極東ロシアは中進国レベルは軽く超えていたはずだ。スペイン並みの経済レベルになっていたはず。

投稿: ロシアパブ | 2006.10.23 12:29

>FOEの背後には原子力産業がいます

ん?
FoEはゴリゴリの反核団体じゃないの?
反核反原子力じゃないリリースなんて見たことないけど。

投稿: くれふ | 2006.11.01 19:00

サハリン2の件には事情があります。
あれはプーチン大統領が、資源国営化政策を推し進める為、それまでの計画(前政権の計画)を取りやめ、天然ガスを国営に戻す為に日本企業にも涙を呑んでもらったって話です。
日本企業いうても所詮ユダヤの子分だから、そういう視点でみれば…。
同時に、プーチン大統領の資源政策は大成功を収め、そのお陰で今西側に強気で居られます。

投稿: | 2014.03.29 15:24

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