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2006.09.07

中国の新破産法

 中国はすでに共産主義とは言えそうにないが、それでも資本主義なのかと問われるとどう返答していいかわからない。専門家はどう答えるのだろうか。政治体制としては明確に民主主義とは言い難い。強い統制的な政治体制のなかで資本主義が機能するものなのかも私にはよくわからない。もっとも日本がその成功例だったじゃないかと言うなら皮肉なのか事実なのか判断が難しい。いずれにせよ、歴史はものすごい圧力で進展していく。
 そうしたなか、中国が本当に資本主義に近くなるのだなと感慨深く思えたのが、新破産法の導入だった。先月二十七日中国全国人民大会常務委員会で新しい企業破産法が圧倒的多数で採択された。ネットではFujiSankei Business i.”中国/破産法成立で国有企業ピンチ 外資の投資意欲優先(2006/8/30)”(参照)が詳しい。


 中国の国会にあたる全国人民大会(全人代)常務委員会がこの27日、企業破産法を賛成157票、反対2票、棄権2票で採択した。金融市場の対外開放を視野に、銀行など金融機関に関する規定が盛り込まれたほか、破産法の成立で、企業が破産した後の清算手続きが明確になる。これまで破産にあたって特別扱いされてきた国有企業の従業員も同法によって処遇されることになる。(上原隆)

 破産法自体は中国にも以前から存在していたが、四十三条の簡素なものであり、しかも裁判所が破産宣言するのではなく、行政機関が行政の一環として実施するものだった。計画経済の一端としての規則のようなもので、悪く言えば政治的にどうにでもなるものだったのではないか。また、国有企業対象の四十三条の破産に関する法律外に国有企業外企業に適用する法律もあったらしいが十分には機能していなかったようだ。今回の新破産法によって国営企業も私企業すべて一括化される。銀行や金融機関も含まれることになる。
 全体的には今回の新破産法の成立は中国のWTO加盟の影響と見てよく、国際ルールに馴染むものになっている。破産は裁判所の管轄になり、社長の責任や民事賠償なども問われる。
 中国の内政的には労働者の保護が問題になるかもしれない。先の記事でもそこにポイントを当てていた。

 新破産法の成立で、10万社ともいわれる不採算の国有企業が破産宣告を受けた場合、従業員たちの処遇が従来とは大きく変わることになる。

 十万社というと大きな数だが破産整理の速度はそれほど早くは進まないだろう。昨年までに整理されたのが三千六百五十八社だが、向こう二年で二千社程度らしい。斬新的な改革であることはその影響力が本質的であればしかたがないことだろう。
 今回の破産法の成立によって、企業経営の透明性が増すと見なされているし、「外資の投資意欲優先」ともされている。だが、投資に見合う担保を明確に評価する作業などで外資投資が難しくなる面もあるだろう。こう言うと悪口のようだが、従来は国営企業の破産は行政の管轄だったので要人とのコネなども担保の部類だったのではないか。中国ビジネスは人脈が鍵とも言われてきたが次第にビジネス・ルールも変わるのだろう。
 新破産法の施行は来年の六月ということでまだ間があるし、施行後の動向を見ないと実際のところどうなっていくかはわからない。
 こうした資本主義のルール整備を見れば中国も世界市場に調和して変わっていくものだなと思うが、本当に変われるのだろうか依然疑問にも思える。清算された国有企業からあふれた労働者は外資による私企業で吸収せざるを得ないのだろうが、そううまくいくものだろうか。

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「経済」カテゴリの記事

コメント

(1)破産法が成立した
(2)企業経営の透明性が増す
(3)当然ながら外資の企業も対象になる
(4)ので、投資のリスクは高まるように思われる。

この一連の論理が理解できません。特に、(3)→(4)に、なにかしらの論理の飛躍を感じます。誤読の可能性もありますが、ご教示くだされば嬉しいです。

投稿: ご教示くだされば | 2006.09.07 12:00

> 中国の国会にあたる全国人民大会(全人代)…

ステロ・タイプですが、インチキですね。
中国に「国会」など存在しない。

「全人代」も中共の指導の下にある。
「全人代」の選挙で政権交代など起こらない。

投稿: ryan | 2006.09.07 12:04

「ご教示くだされば」さん、ご指摘ありがとうございます。リスクについては担保のことを想定していました。透明性の問題とは直接つながらないので、エントリを少し手を入れました。

投稿: finalvent | 2006.09.07 13:29

そもさ。
「理解できる人には理解できるように書く」とは、いかに?

せっぱ。
不要。なぜなら、理解できる人は既に理解しているから読む必要がないし、理解できない人は理解できないのだから必要なし!

投稿: コオロギ | 2006.09.07 19:50

なんか冴えないねえな。
シャキッと書くなら書く、
書かないなら世捨て人気取りでオケ。

団塊世代って、お前の上みたいだが、
こういうクソブログふえそうやのう。web2.0も鳴いてるわ。

投稿: けろやん。 | 2006.09.07 20:42

このエントリ読んだ後、検索かけたんですが、「企業ってのはつぶれない」ってのが建前だったんで破産に関する明確な条文ってなかったんですね。

コレが何で問題か、というと、具体的にいうと外資系が進出に失敗していざ撤退となったときに、破産手続ができなければバランスシートからいつまでもその会社を消すことができないので、不良債権化してしまうのと、金利や運転資金などで債務が増えていってしまうを避けたいわけです。

ただ、破産法すら法律で未整備ってことはその他の債権法などにもかなり穴が開いている部分があるってことで
。。。さすが人治国家ってところですね。

投稿: F.Nakajima | 2006.09.07 21:10

>「理解できる人には理解できるように書く」

残念ながら間違いです。この文章は目的語が省略されていますが、前者の「理解できる」と後者の「理解できる」のところに同じ目的語が置かれているか不明です。同じなら同語反復になるのでコオロギさんが正しいのですが、もし違っていたら意味を読み取る必要がでてきます。

投稿: F.Nakajima | 2006.09.07 21:39

F.Nakajimaさん、横レスですが。

>>「理解できる人には理解できるように書く」

>残念ながら間違いです。この文章は目的語が省略されています
>が、前者の「理解できる」と後者の「理解できる」のところに
>同じ目的語が置かれているか不明です。

なるほど。

例文:中学の数学を理解できる人には、
   高校の数学を理解できるように書く

至極あたりまえのことですよね。
また、それを書く必要、それを読む必要とも大いにありますね。

投稿: 深海魚 | 2006.09.08 00:05

> 強い統制的な政治体制のなかで資本主義が機能するものなのかも私にはよくわからない。

共産主義とか資本主義で何を意味しているのか、いまいち不明なのですが・・・
(そもそも中国は社会主義だという話もあるが・・・)

仮に、「徹底した経済計画の有無」によって、共産主義(社会主義?)と資本主義を分けるとすると、資本主義の社会は古来からたくさんありました。他方、近代以前には民主主義的な社会はほとんどなかったと思われます。

日本は“もっとも成功した社会主義”だと評されることがありますが、社会主義を取る国で民主主義が機能した例は寡聞にして知りません。
民主主義でありながら広範な経済計画を持つ国は、現在でも沢山あると思います。
アメリカにしてからが、軍事部門は見事なまでの統制経済です。

政治制度と経済制度は区別して論じるのが大切だと考えます。

投稿: 木星人 | 2006.09.08 08:24

中国は”帝国主義”じゃないの?遅れてきた・・・。

投稿: なぎさっち | 2006.09.08 09:38

>中国は”帝国主義”じゃないの?遅れてきた・・・。

 いえいえ、昔っからナカノヒトが代わっても”中華帝国”でしたから、”遅れてきた”のではなく”相変わらず”なのではないでしょうか。
 もっとも、人口、国土の大きさからしても”帝国”以外の形態を取りうる事が可能か疑問です。

投稿: 血苺 | 2006.09.08 09:50

「最終弁当」「弁当」は私が開発したあだ名なんで、勝手にご利用になられるのは心外ですな。とか言って。別にいいけど。

 人の開発したものパクってばっかいないで、ダメ元でいいから自分でもなんか開発しろよ。とか言って。別にいいけど。

投稿: ハナ毛 | 2006.09.08 20:07

そういやバブル弾けた頃に「会社の寿命30年説」というのが一時話題になりましたね。

会社員が退職するまでに大抵の会社はアボーンってかと、感慨深いモノがありました。

投稿: トリル | 2006.09.08 23:41

俺はそれよりも、新華社印の検閲法の方が気になるよ。

投稿: 通りすがりさん | 2006.09.12 10:12

いいえ、違いますよ。中国の経済が資本主義ということは当たり前ですが、従来マルクスが言ってたのは資本主義だろうが、社会主義だろうが、科学技術が指数関数的に発達し、生産量が無限大に増加した段階で共産主義社会がきます。こんな馬鹿馬鹿しいSFまがいの狂った話が実現するはずありません。しかし、究極の目的が共産主義社会の実現とするならば、間違いなく彼らは資本主義の道を提示したWWロストウに反してマルクスの経済発展の「予言」を実行しています・・・現在の中国経済を中共がマルクスのいう成熟した資本主義とは程遠い初期段階と規定しているのはそういう意味で彼らが前衛部隊だからでしょうね。まぁ、中共の無理じいですが。個人的には日本が資本主義の中で社会主義を実行していて、中国は共産主義の中で資本主義を実行している。つまり、中国は日本と全く違うんです;

投稿: 勝共 | 2006.10.07 02:46

訂正します^^;
「個人的には日本が資本主義の中で社会主義を実行していて、中国は共産主義の中で資本主義を実行していると思います。」っです;;

何れにしろ「赤い帝国主義」は中国の土着的な要素は少なからずあるものの、中国国民が悪いんじゃありません。これは共産主義のせいで、ソ連でもありました。

投稿: 勝共 | 2006.10.07 02:55

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受信: 2006.09.08 04:31

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