ギャップイヤーって制度化しているのか
先日ラジオの話を聞いていて英国のギャップイヤー(gap year)についてあれれと思うことがあり、ネットを調べてみてへぇと思った。英国だと高校を卒業してから大学に入学する前に一年間と期限を決めて社会勉強とかすることがある。この期間をギャップイヤーと言うのだけど、私は個人的なというか家庭的な風習だと思っていた。が、ネットをざっと調べて見ると社会制度ってなことが書いてある。たとえば、三省堂の辞書には(参照)こうあった。
イギリスで 1990 年代から普及した制度で,利用する学生はこの間を旅行やボランティア,職業体験などで過ごす。
すでに国が推し進めている制度っぽくなっていたのか。
平成十三年九月の文部科学省委託調査「社会奉仕活動の指導・実施方法に関する調査研究」には次のような話があった。
ギャップイヤーの利用者とっては、大学で何を専攻したいかの目的が明確になる等の効果があるとされている。ギャップイヤーをとった若者は、大学を中退する割合が少ない。イギリスでは、大学の途中退学者は20%程度いるが、ギャップイヤーを利用した若者に関しては3~4%に途中退学者の数が減ると言われている。企業も、ギャップイヤーによって様々な社会体験を経た若者を評価している。
ギャップイヤー中の若者を支援するエージェント団体が数多くある。エージェント団体を通すと、出国前から帰国までの手続きを全部代行してもらえたり、適切なアドバイスをもらえたりすることができるため、多くの若者がこれを利用している。政府は優良なエージェント団体を22団体集めて協会をつくっており、そのうちの一つにギャップ・アクティビティ・プロジェクト(GAP)がある。
よくわからないし、平成十三年というとニートという言葉もなかったわけだが、概ねニート対策っぽい響きがしないでもない。引用が長くなるが、続けてギャップイヤー支援の団体についても触れていた。
<GAPの団体概要>
■ 1972年に設立した。最も古く大きいエージェント団体である。
■ GAPの活動に対する政府からの資金援助はなく、活動財源は企業寄付が主である。
■ 約200人の現役を引退した高齢者が、若者のためにボランティアをしている。
■ ボランティアのほかに21人のフルタイムの有給スタッフがいる。
■ 年間に2,000件の申し込みがある。世界33か国に1,500人の若者をボランティアとして送り出し、21か国から600人のボランティアを受入れている。
■ ほとんどの若者が5~6か月のボランティア活動をしている。
■ 海外でのボランティア活動の内容としては、英語を教えることが最も多い。高齢者の介護や、孤児院や障害者を対象とした活動もしている。農業のボランティアや子どものキャンプの手伝い、環境問題を改善するたるのボランティア、病院ボランティアなど多様である。
なんとなく日本でもそういう団体を作ろうという空気が読み取れるがこの報告書から五年が経った現在どうなのだろうか。
英語のリソースを見ているといかにもというかガーディアンにFAQの特設ページ”Gap year special report”(参照)があった。最初の問い"Are gappers really the new colonialists?"がふるっている。「ギャッパーっていうのは新しい形態の植民地主義者じゃねーの?」ということで、行き先は第三世界とか旧植民地も多いのだろう。この答えは……Yesとある。洒落ているね。
そういえば私が大学生のころは大学卒業に世界旅行とかいうのが流行っていたが最近はどうなんだろう、あまり聞かないが。そういえばのついでだが、大学の先生とかにはリーブ(leave)があったが、普通の企業でもリーブのような制度を設けてはどうだろう。そう呑気なこと言ってられないか。
ネットを眺めていると、安倍晋三政権では若者を強制労働させるぞみたいな噂が飛んでいるけど、ギャップイヤーの変形みたいなものになるのだろうか。ちなみに八月三〇日産経新聞”首相主導で教育改革 安倍氏当選なら「推進会議」設置へ”(参照)にはそんな話はなく、こんな感じ。
推進会議が設置されれば、安倍氏が主張する(1)学力の向上(2)教員の資質向上(3)児童・生徒が学校を選択し、自治体などが配布する利用券を授業料として納める教育バウチャー制度の導入-などが論議されるとみられる。
同じく安倍氏に近い山谷えり子内閣府政務官は来賓あいさつで、「推進会議と国民運動の連携が望ましい」と述べ、教育再生に向けたネットワークが必要との認識を示した。
ところで話が飛ぶが「安倍氏に近い山谷えり子」かぁ。山谷親平の娘だなぁとか思う私も歳を取ったもんだ。山谷親平は昭和五十九年に急性白血病で死んだ。六十二歳だった。若いなと思ったが私の父も六十二で死んだ。手塚治虫は平成元年の死で六十一歳だったな。人生短いといえば短い。生き急がず、ギャップイヤーとかも人生に数回あってもいいような気がする。
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コメント
教育に依って人間を作ってしまおうって感覚が見え隠れして嫌ですな。なんでも思い通りになると思ってんじゃないの?
投稿: ハナ毛 | 2006.09.17 15:09
「義務化」しちゃ、変質するのがわからないような御仁じゃないでしょ。
そこの看板は外せるようになってると考えますがね。
夕刊紙の見出しにならないでしょ地味ネタは。
投稿: | 2006.09.18 02:56
変質もなにも「義務化」ってのは徴兵制からのアイデアでしょう。
それなりに効果はあげると思うけど、ニートとか少数のために全国民あげてやることでもないでしょうな。
投稿: cyberbob:-) | 2006.09.18 07:16
工学系の学部に進学する人は、ギャップイアーを使って、
自分の進みたい分野の会社でスタージュをする、
と数年前にイギリスに住んでる人に聴きました。
1年前からイギリス人(永久VISA取得者含む)でも、
大学へ授業料だか入学金を払わなければならないシステムにかわったため、
前年度、去年9月入学ですね、ギャップイアーとった人少なかったじゃないかな。
投稿: pointille | 2006.09.18 10:38
なんでもかんでも惰性でやって、とりあえず元気に勤めて社会保障を貰ったら満足ですよって輩が多いから。(仮に制度化しても)ギャップイヤー出身者って第2第3の帰国子女みたいな扱いを受けるかもしれんね。馴染むまでに2,30年はかかるかも。
投稿: ハナ毛 | 2006.09.18 14:59
英語のwikiで見てみましたが、gap yearって英国のgrand tourの現代版だというような紹介のされ方されてましたよ。全然、雇用対策と関係ない話じゃないですか。
確かウイリアム王子は南アメリカでgap year 制度を利用してボランティアをしたという記事があったのを思い出しました。
追いかけてきたマスコミの前で便所掃除をして、その後、カメラに向かって一言。「今年の流行トレンドは黄色いゴム手袋だぜ」(掃除する最中に身に着けていた)
あの一言にしびれましたね~。
投稿: F.Nakajima | 2006.09.18 21:00
青年海外協力隊制度が、日本ではギャップイヤー制度のさきがけのようなものとして橋頭堡になるはずだったのですが、まるきりの失敗におわっているまま現在に至りますからねぇ。
産業界からの要請、つまり、企業にとってもメリットが産まれる仕組みを取り込んでいなければ、協力隊制度の失敗の徹を繰り返すかもしれません。
投稿: てけてけ | 2006.09.19 10:36
昨日NHK教育で、茂木健一郎センセイがギャップイヤーについてお話なさっておられたのを拝見いたしました。
投稿: synonymous | 2006.09.21 09:20