« フォートラン、五十二歳 | トップページ | 安倍ジャパンになんとなく思う »

2006.09.21

[書評]郵政省解体論(小泉純一郎・梶原一明)

 「郵政省解体論(小泉純一郎・梶原一明)」(参照)は一九九四年九月にカッパブックスで出版された本なので、もう十二年も前のものだ。

cover
郵政省解体論
 アマゾンを見ると、カバーのデザインを変えていまだ販売されているようだが、確かに今読み返してみても面白いし、今読み返す面白さもある。古本では一円よりともあるので配送手数料三百円程度で買える。たぶん、古本屋なら百円ではないだろうか。ついでアマゾンの素人評が二つあり、二〇〇五年の八月と九月に付いている。あまり参考にならなかった意見のようだが一つ引用する。

21 人中、1人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
★☆☆☆☆ 置き去りの拉致問題, 2005/9/1
レビュアー: カスタマー
拉致被害者はどうでもいいのだろうか。
この本を読んで悲しくなった。
「世に倦む日々」というブログが上手く説明しているので
そちらも参考にするといいでしょう。

 そのブログには拉致被害者について上手に説明しているとのことなので覗くと”世に倦む日日 : 金英男の会見 - 韓国三大紙の日本右翼との結託は亡国の道”(参照)ではこんな意見のようだ。

以上の問題とは別に、この二日ほど考えたことは、ひょっとしたら横田めぐみは死亡していて、横田早紀江はそれを知っていて、娘の死を知っているからこそ、あのように強硬な態度をとっているのではないかという推測だった。本当に生存を確認していれば、あれほど強硬に北朝鮮との戦争を主張するだろうか。北朝鮮と日本が戦争を始めたら、真っ先に生命の危険が及ぶのは捕われの身の拉致被害者ではないか。横田めぐみの死を横田夫妻が知っていたら、という仮定を入れるとパズルが解けように理解できる。横田早紀江の本心は、愛娘の救出ではなくて報復なのだ。復讐が真の動機なのではないのか。

 こういう意見が参考になるのものなのか私にはよくわからない。が、本書にはあまり関係なさそうな気がする。なので、話を本書に戻す。
 本書でわかるのは、小泉純一郎という人は髪の色が変わったくらいで考えていることは十二年前からかわらんなということだ。そしてただ愚直に一念岩をも通すというわけでもなく、今読み返してはっとさせる発言もある。

小泉 そういう見方は必ずしも誤りではないですね。つまり、細川政権、羽田政権のときは、第一派閥の自民党が反主流になったんです。私は自民党のなかでいわゆる反経世会の構築をやってきた人間ですから、自民党が野党になってもうろたえなかったし、国民的な反自民感情はよくわかりました。旧連立の面々が反自民を構築したことは間違いない。
 とにかく、自民党から社会党まで、ほとんど差がなくなったわけだから、どういう組み合わせでもできてしまうんですね。
 だからこれは戦国時代と一緒なんです。織田、豊臣、徳川とあったわけですが、大して理念に差はない。どことくっついたら勝つか、あるいは排除できるかということが一面であることは否定できない。
梶原 ただ、普通、混乱期というのは短く、安定期が長いものです。もっといえば、これが逆になてもらうと国民は非常に困ります。
小泉 でも、四十年も自民党政権という安定期が続いたんです。そして、変化が訪れた。変化には混乱が憑きものなんですね。いまはその混乱期なんです。
梶原 しかし、いかんせん、混乱は長く続くと困る。
小泉 でも、五年や十年はこの混乱が続くのではないかな……。

 小泉政権がなぜ長期政権だったかと考えるとき、こうした冷徹なビジョンを最初から持っていたのだと考えると納得できてくる部分もある。さらにこういうビジョンも彼は持っていた。

小泉 これは厳しい問題です。その意味では、遅かれ早かれ、自民党は過半数を割らなければならない時期が来ていたのんでしょうね。もはや、どの政党も一党だけではみんなの支持は得られません。
 すべての有権者にいいことをやらなければならないとなると、どうしても無理が出てきますからね。
 だから、私はこういう場合、連立政権のほうが多くの仕事をできると思いますね。連立だと、一つの政党が過半数を取らなくてもいい。新しい方向を出しておいて、それで選挙に負けてもいいんです。
 ところが、一政党で過半数を取ろうとすると、うまいことをいおうとして、逆に何もできなくなってしまう。だから、どの政党も過半数が取れず、連立を組んだほうが大改革というのはしやすいと思います。したがって、今回の自社連立の村山政権には、国民のみなさんはぜひ、その点で期待してもらいたい。

 最後の村山政権のくだりは「極東ブログ: 「どこに日本の州兵はいるのか!」」(参照)を思い返すと苦笑せざるを得ないが、その後の公明党との連立を小泉がどう考えていたかはよくわかるし、今後の安倍政権を彼が内心どう見ているかもわかる。このあたりは勝負師というものの勘なのだろう。
 郵政改革の批判にもこの時点で見越していたふうでもある。

小泉 それはいままでやってきたことなんです。郵貯にしても必要だといわれれば、既得権がありますからね。そこで少しでも有利なことをやれば、国民の信用が背景にありますからね。
 こういう状況のなかで、細かい議論をすると、もう民間と境を接する分野がとめどなく広がっていってしまいます。専門家の枝葉末節の議論、商品の議論になってしまうんです。そうなると政治が介入する問題ではないというふうに議論がスリ替えられてしまうんです。
梶原 そういうところに議論がいってしまうと、基本的な問題が抜けてしまって、非常に危険なわけですね。
小泉 商品の話に踏み込んでしまうと、役人の仕事になってしまうわけだ。
梶原 政治家がはじき出されてしまう、と。そうするとやはり原則論が大切です。
小泉 混乱期ほど原則が大事なんです。

 転写しながら、これだけ心を固めて生涯の決戦に挑んだというのは並の人間ではないなとあきれてくる。小泉は誰かに操られていたと言う人もいるが、「第126回国会 逓信委員会 第6号」(参照)などを読み返すとなかなかそうも思えない。
 私は小泉純一郎という人が好きではない。政策もそれほど評価しない。ただ、政治家というものの一つの原型をきちんと示している点で、歴史に残る政治家だろうとは思う。

|

« フォートラン、五十二歳 | トップページ | 安倍ジャパンになんとなく思う »

「書評」カテゴリの記事

コメント

>私は小泉純一郎という人が好きではない。政策もそれほど評価しない。ただ、政治家というものの一つの原型をきちんと示している点で、歴史に残る政治家だろうとは思う。

 小泉たんに限らず、好かれる政治家なんてのは居ないでしょ。そんなに好きなら古代の聖人君子でも夢見てろって話だし。
 政治に対して妙な理想や幻想を抱くことなく「そういうものだ」と認識することが民主主義時代における庶民のあり方なんだから、「政治家というものの一つの原型をきちんと示している」…という行為をわざわざされてる時点で、と ん で も な く 舐 め ら れ て る だ け なんじゃないの?

 舐められて喜ぶのは風俗通いのおっさんだけで十分でしょ。って感じ。

投稿: ハナ毛 | 2006.09.21 15:11

村上政権ではなく
村山政権では?

投稿: mn | 2006.09.21 15:22

mnさん、こんにちは。ご指摘ありがとうございます。訂正しました。

投稿: finalvent | 2006.09.21 15:47

後世
安保、憲法,の変更に道を拓いた。
と書かれても、
自発的な反対運動は、それほどなかった。
と記されないと伝記物。

投稿: きりかぶ | 2006.09.21 23:10

マスコミは政治家を「批判」してりゃラクチンですからね。実効性がない倫理観で。それで二二六事件を誘発したり、戦争気分を煽ったり、インボイス方式の付加価値税を潰したりして来たんではなかったっけ。その環境条件下で好かれる政治家ってのは要するにポピュリストばかりってことになったりして。

投稿: cru | 2006.09.23 10:31

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: [書評]郵政省解体論(小泉純一郎・梶原一明):

» 小泉の答弁 [異をとなえん]
何回かリンク先として見た事があるのですけれど、今日全体をかなり丁寧に見て改めて面白いなと思うブログ、 極東ブログ を見つけました。 その中で意見を述べたいと思った部分は幾つかあったのですが、ブログ主の考えとは別に特に面白いリンク先がありましたのでそこをリンクし...... [続きを読む]

受信: 2007.05.08 23:58

« フォートラン、五十二歳 | トップページ | 安倍ジャパンになんとなく思う »