[書評]沖縄ダークサイド
宝島のムックで「別宝Real 沖縄ダークサイド」(参照)が出たのは二〇〇四年七月。沖縄で八年暮らしていた私としてはふーんという感じではあった。企画倒れということはないし、こういう本があるのはどっちかというといいことなんだが、ちと取材が甘いな薄いなという感じはした。執筆陣が微妙というのもあるし、書けないことも多いのだろう。
![]() 沖縄ダークサイド |
このムックもこれで終わりかと思っていたら、二年後文庫本で「沖縄ダークサイド」(参照)が出たのだが、帯はこうある。
LD関連事件
野口英昭氏はなぜ沖縄で死なねばならなかったのか!? 「癒しの島」の欲望と打算に迫る!
この間の話題として沖スロじゃなくて、野口英昭怪死事件の話が追加されていた。が、この事件について直接的に考察されているわけではないわりに、背景についてはしっかり書かれているので、ネットなどで飛び交っていた珍妙な説に対するリテラシーを養うことはできる。野口氏の投資組合に関連して”「癒しの島」の利権の構造”では。
さらに、同社設立時の出資者の中に、リキッドオーディオ・ジャパンの名があることも興味を引いた。リキッド社は、東証マザーズ上場第一号として脚光を浴びながら、暴力団絡みのスキャンダルに塗れて”ベンチャーバブルの闇”を象徴とする存在となった企業である。
これらの情報をふまえ、例えば某週刊誌は二月一〇日号に次のように書いている。<沖縄では小泉内閣が推進する構造改革特別区の「情報通信特区」や「金融特区」の地域が指定されてIT企業の進出が相次いでいる。ライブドアは小泉改革を利用して沖縄での”闇ビジネス”を拡大したとみらられており(中略)事件の背景には、小泉政権下でふくれあがった巨額のIT政治利権の存在がクローズアップされてくる>
という某週刊誌の話を示してから、こうきちんと批判ている。
たしかに、沖縄には「情報通信特区」や「金融特区」に指定されている地域がある。しかし、小泉内閣がこれらの施策に力を入れているかのような書き方はいただけない。これらの特区は、米軍基地負担のインセンティブとして沖縄側が政府に要求したものであり、小泉内閣が特段の関心を示してきたものではない。野口氏が上場を手がけた件の企業のように、県外資本が特区に進出し、さまざまな優遇策を上手に利用している例はあるが、現状では必ずしも大きなうま味を生んでいるとは言えず、「巨額のIT政治利権」とはほど遠いのが本当のところだ。
というわけでライブドアだからIT系といった薄っぺらなネタはさておき、とはいえ「沖縄利権」の問題がないわけでもなく、全体構図の要領よい説明のなかには示唆的な話も含まれていた。
沖縄のカジノ予定地は、最初県南部の糸満市が浮上、続いて現在の浦添が有力になった経緯があるのだが、実は恩納村も、推進派内部で「第三候補」として名前が上がっていた事実はあまり知られていない。
果たして、ライブドアに関わる諸々のウワサやUSENの動きの背景に、いま新たに生まれようとしている「カジノ・ビジネス」への思惑があるかどうか――その真相が見えてきた時、「沖縄利権」の新たなる姿が、われわれの前に現れてくるはずである。
たぶん、というかかなり、そうなのだろう。
利権に関連してダークでない部分ではこの十一月の県知事選が重要になる。すでに現地沖縄では琉球新報”県知事選で3氏、出馬に含み”(参照)で「11月の知事選で、民主党県連の喜納昌吉代表は」といった愉快な話はさておき、っつうか”候補7氏を確定 知事選野党代表者会議”(参照)。与党側でも”西銘氏、再び固辞 与党内に待望論根強く”(参照)のように混迷している。こうした構図にも「沖縄ダークサイド」はなかなかよいレファ本になる。
ところでこのエントリ関連でネットを見てたら下地幹雄のミキオブログっていうのを発見。以下の二十二日のエントリ”若さの秘訣は・・・”(参照)はとてもグッドでした。
今日、マクドナルドで朝食を食べました。
一緒に食べたメンバーは、平均年齢80歳、元気の秘訣はと聞くと「マック」ですと答えます。
20年間毎日マックで朝食を取っているとのことであります。
凄いとしか言いようがありません。
普通ならば、朝は和食とおっしゃりそうな年齢であるはずなのに、マックが好きだということであります。
若さの秘訣は、「既成概念にとらわれることなく、あらゆることにチャレンジすること」だともお話しされていました。
アギジャビヨー。
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コメント
知事選は、実際はあまり混迷してないんですよ。混迷しているように記事を書かせてお茶濁し&話題づくりをしているだけで。
与党は本命が電気オヤジなんだけど、電気オヤジは1人で勝手に話を進めて利益を囲んじゃうので圏内政財界全員から嫌われていて、本命なんだけど最後まで僅かな可能性にかけるという理由で、無能で操りやすい田舎オヤジのケツを叩いているものの、ヘタレな田舎オヤジはやっぱり立てませんという構図で。自称副知事のおじちゃんは煩いから候補に名前だけ入れてあげただけで眼中に無し。
野党はバスガイドは社大が最後の政治力を失うのを避けるため完全拒否で、代わりに社大が押そうとしてた人は始めから後ろ向きだった挙句、本日内々に不出馬宣言済み。党首は電波なので問題外。強酸が豚クジラを完全拒否していて、戦う村長さんは当選の見込みがなければ政界復帰なしの姿勢。野党連合で行くのなら本命が偽市民派で、対抗が帽子おじさん。
今年度に入った段階で、かなり絞られてるんですけどね。
投稿: くれふ | 2006.07.31 19:29
↑テレビくらいでしか沖縄情勢を知らない身からすると、誰が立っても一緒くらいにしか思いません。
時に親米派・反米派が立ちましたよーとかテレビは言うけど、結局その後の流れを追うと「どっちもどっちちゃう?」みたいな収まり方しかしてないし。
無風だろうが烈風だろうが、そもそも問題ニャなんね。
投稿: 私 | 2006.07.31 22:23