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2006.07.24

「者」の点はいつ消えたのだろう

 書棚の奥の本を取ろうとしてぼろっと「日本の漢字・中国の漢字」(参照)が落ちてきた。戻す前にぱらとめくったが運の尽き。そういえば、と少し考え込んでしまった。「者」という漢字について。


 現在の漢和字典は、字解のあとに熟語を掲げて解説するとき、その字が語頭にある語だけ並べる。このやりかたで行くと、例えば「者」という字のように、それが語頭に立つ熟語例を見ないものについては、説明が一字の説明だけに終わることになる。その結果、この字の説明は、とかくむずかしく、中国語や漢文訓読によほど通じた人でなければ理解がむずかしいものになる。

 というわけで、あるべき説明の試みが続く。一読、なるほどねとも思うし、これは違うんでないのとも思う。いずれにせよ、こういう解説はスポラディックにやってもなとは思う。
 gooの辞書で「者」を検索すると、わけわかんないにはなる。

しゃ 【者】
〔「其者(それしや)」の略〕その道の者。玄人(くろうと)、特に芸者・遊女。


もの 2 【者】
〔「もの(物)」と同源〕人。古来、単独で用いられることはごくまれで、多く連体修飾語を伴って用いられる。
「家の―を迎えにやる」「若い―」「おまえのような―は勘当だ」「だれか試してみる―はいないか」「―は極(いみじ)き臆病の―よ/今昔 28」
〔「人」に比べて卑下したり軽視したりするような場合に用いられることが多い〕

 学校ではどう教えているのだろう。漢文を学べばそれなりに知識の補充にはなるか。
 などと思いつつ、なにか心にひっかかるなというのがあって、ふと思い出した。点だ。あの点は何処へ?
 私が何歳のころだろう。小学生の頃だろう。父に宛てた葉書を見ると「者」には必ず点が打ってあった。けっこうな大人がみんな「者」に点を打っていた。なんでこんなところに点が打ってあるのかと、随分疑問に思ったものだった。
 私の父母は信州人なのだが、「小諸」の地名の「諸」にも点があった。
 あの点は何処へ?
 もちろん、GHQ漢字で書体を整理したとき、この点は要らないでしょ、みたく取ったのではないか。まったくGHQのやることはひどいもので、おかげで現代日本人は、大と犬と太の区別も付かなくなったし、氷と水の区別も付かなくなってしまった……。
 戦後教育から「者」の点が消えたのだろう。とすると、点の無い者は、昭和十五年生まれくらいからか。だとすると「年号年齢早見表 極東ブログ・リソース」(参照)を見るに今年六十六歳くらいか。まだ七十歳の人は「者」に点を打っているだろうか?
 あの点は、何時打つのかも子供心に疑問だった。最後だろうか。百隠曰く、太神宮の太の字に点を打つのが神道の秘訣というが、仏法の点はどう打つぞ、ではないが、「者」の点はどう打つぞ。
 わかんない。台湾では打っていたはず。関係ないけど台南では檳榔も売っていた。そういえば儂のことを「弁当」と呼ぶ者があるが、弁当とはな。台湾では「便當」であった。
 台湾のサイトを覗くと者に点を打っているのではないか?
 覗いて見て、びっくりした。いや、ちゃんと打っているのだよ。ほれ。

 まあ、そうでしょと思ったのだが、ユニコードだと点が消えるみたいだ。ビッグ5だと点が出てくる。いつたいだういうことなのでせふ。野嵜さんにでも尋いてみませふか。
 ユニコードで旧字体と自動的に入れ替えちゃうことがあるのは、Google先生とか使っていて知っていたが、こんなことがあるのか。というか、星港あたりでは点は消えているのだろうか。
 点の由来はなんだろと、金文(参照)を見ると、点がくっきりと見える。篆文を見ると点はない。
 もしかしてこの点は「おいかんむり」の一部かと……そんなわけはない。考・孝の金文を見てもなんだか由来が違う。
 わからん。しかし、これを機に機のように私は者にもこっそり点を打とうかな。

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コメント

こんにちは。
UnicodeのU+8005では日本語・中国語簡体字の点ナシと中国語繁体字の点アリが包接されているので、表示時に点があるかないかはフォント依存です。メモ帳に「者」を入力して日本語フォントを選ぶというまでもなく点はなく、SimSun (簡体字)でもやっぱりないのですが、MingLiU (簡体字) にするとあら不思議、点がつきます。
ちなみに、JIS X 0213には点アリの者が1-90-36として、ナシの1-28-56とは収録されています。これはUnicodeではU+FA5Bに対応します。これ以外にUnicodeには北朝鮮由来のU+FAB2(点なし?)、台湾由来のU+2F97A (点なし)もあります。

投稿: 成瀬 | 2006.07.24 21:18

初めてコメントさせて頂きます。
戦前に点を着けていた、という事を初めて知ったんですが、そういえば“奢”には点がついてますよね。
GHQの陰謀で点が無くなったとしたら、逆にこの字に残った謎が深まります。。。

投稿: hato1489 | 2006.07.24 21:56

Unicode ユニフィケーション とかでぐぐってみると情報がいろいろ出てくると思います。
Wikipedia の
http://ja.wikipedia.org/wiki/CJK%E7%B5%B1%E5%90%88%E6%BC%A2%E5%AD%97
の辺りもご参照のこと。

投稿: τ | 2006.07.24 22:03

繁體字だと「類」とか「器」も点がつきますね。「大」じゃなくて「犬」です。
GHQ はどうなんでしょう?
当用漢字では「参」ですが、ヘンがつくと旧字体のまま使ってます→「慘」。
こういうのけっこうあります。
頻出する基本漢字のみ気まぐれにいじったのかも。

投稿: sh | 2006.07.24 22:26

> shさん
一般に、常用漢字は新字体、それ以外の文字(表外漢字)は旧字体を用いるとされています。なお、「悲惨」の「惨」は常用漢字なので新字体ですかね。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B8%B8%E7%94%A8%E6%BC%A2%E5%AD%97
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/12/kokugo/toushin/001218.htm

投稿: 成瀬 | 2006.07.25 00:01

初めまして。
「高」という字の鍋蓋の直下がハシゴから口になったように、戦後のどこかで旧字体を改めた(←正しい表現ではないですが)時期があったと思います。少なくとも私の祖父は、鍋蓋の下はハシゴを書いていました。
 私は国語に詳しくない上に、調べずに書いてしまっていますので(すみません)、よく分かっていないのですが、例えば当用漢字を定めた時点で整理統合が行われたということはないのでしょうか。衛藤さんという人から、大分には10通り以上の衛藤がいるのに、戸籍登録の際に「当用漢字で」といわれるので猛烈に腹が立つ、と聞かされたことがあります。「しんにゅう」の点の数なども少なくなったような気がしますし。
 それでも、中国の簡体字よりはましな気が。磁が「石並」になるようですが、これってマージャンのポンですよね。学生時代に、漢文の授業で簡体字が判らず、間違った訳をして先生に馬鹿にされた(そして、他の学生達に爆笑された)のを今でも思い出したり。それで漢文を嫌いになったりはしませんでしたが、その授業は嫌いになりました。
 長くなってスミマセン。

投稿: roi_danton | 2006.07.25 00:11

> ユニコードだと点が消えるみたいだ。ビッグ5だと点が出てくる。
これはブラウザ(あるいはOS)のデフォルト言語が日本語であるため、Unicodeだと日本語フォントが使われ、Big5だと繁体字のフォントが使われたためではないでしょうか。試したわけではありませんがブラウザ(あるいはOS)のデフォルト言語が中国語(繁体字)ならUnicodeでもBig5でも点がついて表示されるような気がします。

また、
<p lang="ja">切磋琢磨、者、刃。</p>
<p lang="zh-CN">切磋琢磨、者、刃。</p>
<p lang="zh-TW">切磋琢磨、者、刃。</p>
のように言語を明示すれば(少なくともWindows XP上のFirefox/Operaでは)文字コードに関わらず異なった字体で表示されます。

投稿: | 2006.07.25 00:32

P要素のlang指定の件のご指摘、ありがとうございました。表示差を確認しました。ユニコードの問題ではないのですね。

投稿: finalvent | 2006.07.25 10:29

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» 平成18年07月24日 [普請紀]
『極東ブログ: 「者」の点はいつ消えたのだろう』 戰後の漢字制限と共に消えた。 [続きを読む]

受信: 2006.07.24 23:03

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