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2006.06.28

勇敢な盾(Valiant Shield)

 グアム島周辺の海域で、先日十九日から五日間、米海軍、空軍、海兵隊などの統合演習「勇敢な盾(Valiant Shield)」が実施された。規模が非常に大きく、参加総員は二万二千人を超え、過去十年における最大規模の米軍演習となった。グアムは沖縄からの海兵隊移転先候補でもあるし、米軍再編成にもろに関わってくるので、国内でもう少し重視されるのかと思ったがあまりニュースにはならなかったような印象がある。
 朝日新聞記事”米軍演習に中国が初のオブザーバー参加”(参照)では、この米軍演習のオブザーバーに中国の軍関係者が招待された点を重視しているようだった。


 中国の新華社通信によると、中国の代表団は陸海空軍の6人と外交官、記者の10人構成。16~20日にグアムを訪れた。演習開始後は海軍基地で戦闘機の発着の模様などを見学。核心部分の見学は認められなかったが、代表団メンバーは帰国後、「両軍が交流を拡大し、信頼を醸成することは軍同士の関係だけでなく、米中関係全体にも利益となる」などと語った。

 記事を見てもわかるように「新華社通信によると」ということで、自社ソースではなく、パクリというか中国様へのヘタレを絵に描いたようなことになっている。記者の派遣ができなかったのだろうか、ネットリソースからは見えない。
 続けて。

 中国の軍拡路線の不透明性を問題視している米側にとって、今回中国の参加を認めたことで、中国の演習見学を求める基礎ができたことになる。

 というのだが間違いではないにせよ、一義には米軍による中国軍への威圧なのにその言及もない。この間、テポドン騒ぎがあったことも新聞社なら当然考慮すべきなのだが、そこは朝日新聞のヘタレここに極まっている。
 読売新聞は記者をグアムに派遣したようだ。記事”米空母3隻、グアム沖に集結…19日から演習”(参照)にはイロハのイくらいに「米国には軍事活動の透明性を確保しつつ、西太平洋における米軍の戦力を誇示する狙いがあると見られる」とコメントしている。
 読売記事は概ねフラットな印象。

 演習には、原子力型の「エイブラハム・リンカーン」「ロナルド・レーガン」、通常型の「キティホーク」の空母計3隻が参加する。米軍の空母3隻が太平洋上で同時に演習するのは、ベトナム戦争以降で初めてという。

 軍オタもそのあたりが狙い目っぽいので、ネットをざっとサーチするとそのあたりの写真なども目に付く(参照)。
 米国にとって今回の大演習がどのような意味を持っていたかというと、案外示威的なものではなかったか。ミリタリー・コム”McCain a 'Valiant Shield' Against Submarine Threats”(参照)の記事の標題からもわかるように、中国潜水艦への脅威というのはわかりやすい。極東ブログでも過去、「極東ブログ: 中国は弾道ミサイル原子力潜水艦(SSBN-Type094)を完成していた」(参照)や「極東ブログ: 中国原子力潜水艦による日本領海侵犯事件について」(参照)で関連の話題に触れた。
 中国の原潜が実際の脅威となるかについては、軍事的にはそれほど意味はないだろう。今回中国軍をオブザーバーにしたのも、誇示は誇示でも、もっと中国内政へのメッセージ的な意味合いが濃いのではないか。つまり、これがコミュニケーションってやつ。
 米軍関連のソースを二、三当たってみてそれなりに面白かった。本質的なことではないのだがろうが。例えば、Kuam.com”Meet the people behind Operation Valiant Shield ”(参照)には、スタインドル海軍准将の次のコメントがある。

Here in Asia, over 74% of the oil that comes in to Asia come in by ship and it's important to keep the sea lines of communication open. We're the world's pre-imminent anti submarine warfare fighting force and the way we achieve that is through a lot of practice and that's exactly what we're doing in Valiant Shield."

 このシフトはアジアの石油を守っているのだというのだ。端的に言えば、中国、日本、韓国を指すのだろうが、仮想敵が中国であれば言外の含みはわかるというもの。
 星条旗”Officials high on Guam's future as Valiant Shield wraps up ”(参照)では、あっけらかんとしたボウラ大佐の言葉を記している。

Military financial constraints are another issue, Boera said.

“Costs change on a daily basis,” he said. “The Air Force is undergoing budget restrictions.”

Still, basing Pacific air operations out of Guam is cheaper than flying from Japan, Korea or the continental United States, he said.


 軍事活動にはカネがかかるんだよ。グアムに居たら日本や韓国から飛んで来るより安上がりじゃん、というわけだ。
 おもわずツッコミを入れたくなる空気だが、これは正しいと言えば正しい。
 日本のジャーナリズムの空気だと、沖縄海兵隊のグアム移転に何兆円といった大金だせるかよとしみったれた議論花盛りだが(そのわりにこの演習の実態とかろくに取材もしない)、現状のまま有事となれば日本の負担はどかんと大きい。
 もっとも、沖縄の海兵隊はもともと冷戦シフト。佐世保の揚陸艦で動くようになっている。沖縄が戦略的に重要な意味を持っているから在沖米軍も重要だとかいう間違いが多過ぎ。グアムに移転しないと使い物にならない、使うのであれば。

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コメント

日本からはNHKの樺沢一朗記者が空母に招かれたようです。

投稿: kisslegg | 2006.06.28 22:19

>グアムに移転しないと使い物にならない、使うのであれば。

んー、フネは足が遅いので一番現場に近く整備ドックがあるところ=もともとは半島有事への備えですし。一方兵隊は空輸すればいいので演習地が確保できる沖縄だったわけで。海兵隊の装備は一応空輸が前提になってます。

在韓米軍の撤退=中国との緩衝地帯の確保→フロントラインを韓国から日本へ移動→縦深の不足→米軍はグアムに逃げ込む。

>軍事活動にはカネがかかるんだよ

ソ連を軍拡競争で疲弊に追い込んだように中国に対しても軍拡競争で疲弊させてやろうと。

投稿: ■□ Neon □■ | 2006.06.28 23:49

 どういうわけかTBが通りません。まいどごめんなさい。
http://harmoniker.seesaa.net/article/20011953.html

投稿: harmoniker | 2006.06.29 15:20

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