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2006.06.23

フランス新移民法案、雑感

 結局それが政治ってもんかなと考えてもみるのだが、フランスの新移民法案は十六日上院でも可決した。下院では先月十七日に可決していた。話が少し古くなったせいかネットのリソースは少ない。共同で残っていたのが”仏・新移民法が成立”(参照)である。新移民法案の問題点が簡素に描かれている。一言で言えば、フランス社会から移民を排除していこうとするものだ。


 新移民法は、移民が家族を呼び寄せる条件などを厳しくする一方、優秀な外国人は積極的に受け入れるとする内容。
 また、不法移民が10年間住めば滞在許可証を取得できる従来の手続きを廃止。これまでフランス人と結婚した外国人は2年後に滞在許可証を取得できたが、3年後に変更した。このほか、移民を仏社会に融合させるため、10年間の滞在許可証を取る際にフランス語習得を義務づけた。

 記事はこれに続き、野党からの批判などが多少加わっている。問題の波及というか深刻さは朝日新聞”不法移民の子の「里親運動」 フランスで拡大”(参照)がわかりやすい。移民の子供まで社会から排除することになりかねない危機感を感じる人々が多い。

 フランスで、滞在資格がない移民家庭の子供の里親になる運動が急速に広がっている。ナチス占領時代に多くの市民がユダヤ人の子供たちをかくまったように、強制送還から守るのが狙い。教え子やわが子の仲良しが送還されるかもしれない現実に危機感を抱いた教師や親たちが、続々と里親登録している。

 現地の状況は、先見日記”代父母縁組”(参照)がさらに詳しい。このエントリで興味深いのは、「市民の不服従」が考えの中心になることだ。

 法律に背いた行為によって市民権を主張することを「市民の不服従」という。良心的兵役拒否などもそうだが、その法律がより普遍的な倫理(人権の尊重など)に反するという立場からの抵抗行為だ。サン・パピエの子どもたちの庇護の場合、子どもの権利条約にも明記されているが、すべての子どもが教育を受けられ、人間らしい暮らしができるようにという基本的人権からみると、現在の移民規制法は非人間的で、共和国の精神にも反している。

 「市民の不服従」については、英語のウィキペディア"Civil disobedience"(参照)に簡素な解説がある。日本の歴史における「市民の不服従」については興味深い歴史があるが、いわゆる歴史書としてまとめらているか知らない。いわゆる社会主義運動史のようなものに混在させられているのではないか。
 この新移民法によってフランスはどうなるのか。フランス市民たちは強く結束して移民の子供たちを守るだろうか。
 とそれ以前に新法を推進していたサルコジ内相はどうなるのか、といった政治臭い匂いがする。「極東ブログ: おフランスの学生さん大暴れ」(参照)でふれた学生暴動のオチがヴィルパン失墜であったように、また大騒ぎして今度はサルコジを潰すか。そうなると、一年半前のエントリ「極東ブログ: シラク大統領の次はサルコジ大統領」(参照)とは違ったことになるか。
 日本語の最近のリソースとしては朝日新聞”仏与野党、大統領選へ党員数競う”(参照)があり、現状ではサルコジの強さも伺える。まあ、この間いろいろあったのだが。

 02年、シラク大統領の支持母体として発足したUMPだが、04年に党首になったサルコジ内相を慕う若い世代が大量に入党し、すっかり大統領を目指す同氏の選挙マシンとなった。07年初めの党大会では「党員の意思」で同氏を候補者に指名する段取りだ。

 朝日記事を読んでいただくとわかるように、主眼は社会党ロワイヤル元環境相(参照)に置かれている。

 社会党の党員増やしはサルコジ流の草の根戦略に対抗したもの。にわか党員が増えるほど、世論調査の人気で他を引き離すロワイヤル元環境相に有利とみられる。

 そうかねという感じもするが、ロワイヤルの人気が高いのは確か。このあたりは今週のニューズウィーク(6・28)”フランス救う「中道」の女神”が簡素にまとめている。簡単にいえば、ロワイヤルは第二のサルコジと称されているように社会党でありながら保守強行的な側面が強く支持されている。全体としては、フランスの政治の空気は右派傾向といった感じするが、そうした空気を取り込まないことにはまたルペンのようなものが出てきてしまうというある種、庶民のバランス感覚のようなものではないか。
 とはいえ、先のニューズウィーク記事にもあるように、ロワイヤルの人気の裏で社会党は旧来の社会主義的な傾向の維持にもつとめている。というか、そのあたりが先日のおフランスの学生さん大暴れみたいになにか胡散臭い印象がある。

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コメント

フランス革命の推進役となった新興ブルジョアジーの思想的根拠にはジョン・ロックの抵抗権思想(気に入らない政府には抵抗し転覆を図ってもよい)がありますから、市民的不服従もそこからの流れではないでしょうか。
社会主義運動史、大衆運動史の中に市民的不服従らしきものは私の知る限り見当たりません。市民が自発的意志で行動を起こすことは左翼運動ではほぼありません。日本の左翼運動は至って組織的で、上意下達式、右に倣え的であります。その中で個性的な運動をしようとすると、左翼の中ですら白い目で見られます。一緒に同じことをしない足並みを乱す者め!と露骨に排除されることもあります。
いずれ私のブログでそのことを書きたいと思っています。

投稿: うみおくれクラブ | 2006.06.24 01:06

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