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2006.06.13

シンドラーエレベータ事故雑感

 シンドラーエレベータ事故の真相がわからないし自分の経験から思うこともあまりないが、少しだけ書いておこう。いつもにもまして有益なエントリではない。
 私は半田鏝でマイコン制御機器を作っていた世代ということもあり二十代後半世過ぎにその分野の仕事を少した。高度なメカ制御ではなく特殊なOA機器とかだったが、あの頃ついでにエレベーター制御の本なども読み、そこにオペレーションズ・リサーチが応用されているのを知って興味をそそられた。以降エレベーターで長く待たされているとどんなアルゴリズムを使っているのか考えることがある。
 今回の事件で、私が気になったのは制御系の問題ということはないだろうかということだった。私が制御機器開発をやっている頃ザイログ八〇が出てきて、割込もデージーチェーン方式というかソフト的になった。設計も変わった。これじゃハード屋は誤動作を簡単に追求できないかなと思ったものだ。もちろん設計はそんな単純ではないのだが。
 シンドラーエレベーターについて制御系に問題があれば世界中で同様の問題を起こしているはずだがと英米ニュースなどをあたってみたが見あたらない。が、JIN ビジネスニュースの「でたらめシンドラー 世界中で事故」(参照)という記事を見かけた。


 シンドラーエレベータ社製のエレベーターによる事故が、日本だけでなく海外でも多発していたことが明らかになってきた。にもかかわらず、情報開示も、徹底的な原因究明もせず、「当社の責任ではない」といわんばかりのコメントを出し逃げ回っている。あきれた体質に関係者の怒りは爆発寸前だ。

 世界中で事故というわりには数例で統計的なデータではない。その数例を読むと、これは制御系かなという印象も持つ。制御系に問題があればもっと大量の事故パターンが出るだろうと思うが、やはりよくわからない。
 最新の時事では”ブレーキ摩耗わずか=「制御盤」異常強まる-エレベーター死亡事故・警視庁”(参照)として制御が疑惑対象となっている。

 ブレーキは、アーム部分やばねにも異常がないことが分かっており、同課などは、ドアの開閉やブレーキを作動させる制御盤に何らかの不具合が生じ、事故を起こしたとの見方を強めている。

 最新の朝日新聞系のニュース”ブレーキのボルトに緩み 死亡事故エレベーター”(参照)ではメンテナンス及びメカニカルな原因説もあげられている。

 東京都港区の公共住宅で、都立高校2年の男子生徒(16)がエレベーターに挟まれ死亡した事故で、事故機のブレーキの部品を留めるボルトの締め付けが緩んでいたことが、警視庁の調べで分かった。同庁はこの緩みが事故につながった可能性もあるとみて、慎重に鑑定を進めている。

 二説出てきたのだが、朝日記事には制御系の問題の示唆もある。

 エレベーターは扉が開いていると動かない構造になっているが、事故が起きたとき扉は全開状態で、そのまま上昇。男子生徒が救出された後には、電源が切られた状態で、本来だったらその場でとどまるはずのかごが最上階を超えるまでに達したとされる。

 確かにこれはメカニックの不具合とは思えない印象がある。
 制御系に本質的な問題があるなんてことがあるのか、考えたくもないなという思いもするが、もしそうであれば問題の解明はかなり難しいだろう、そう再現可能な誤動作はしないはずだから。

追記(2005.06.14)
 十四日付け産経新聞”エレベーター圧死、ブレーキ異常が原因 ディスクに多数の傷”(参照)の情報が重要に思えた。
 制御系の問題ではなく、メンテナンスの問題と見てよいのかもしれない。


 警視庁でブレーキを分解して鑑定を進めたところ、アーム部分やバネには異常がなく、ブレーキパッドの摩耗も許容範囲内だったが、ディスクに新旧の無数の傷があることが新たに判明。これらの傷がブレーキの利きを甘くしたとみられるという。
 警視庁では管理会社がこれらの重大な傷を見落とした可能性があるとみて捜査するとともに、事故機などがトラブル続きだったことから、ブレーキ異常につながる構造的欠陥の有無について製造元の「シンドラーエレベータ」側から事情を聴いている。
 過去のトラブルについて管理会社間の引き継ぎがなかったことも明らかになっており、委託元の「港区住宅公社」の安全管理に問題がなかったかについても調べている。

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「時事」カテゴリの記事

コメント

finalventさん、こんばんは、

私はこの事件の背景等よくわかっていないのですが、エレベーターの不具合の大抵はメンテナンスにあることが経験上多いように思います。

そういえばメンテナンス会社の名前等はまだ表に出てきていない印象がありますね。特に商用のは、ちょっとした摩耗でも音がしてきたり、停止の仕方がスムーズでなくなったりします。

決して、製造メーカーのメンテナンス絶対と言うつもりは無いのですが、気がつくと自分がかかわっている建物はみな純正のメンテナンスでお願いしています。地震で停止したとき、商用のものではなかったのにこちらから電話する前に来て下さった時は感動しました。

投稿: ひでき | 2006.06.13 20:46

基本的に海外では、列車事故と同じようにEVの事故は
そう珍しくもありません。
中国等途上国への出張の際には気をつけた方がいいと
思います。
実際、中国の某ホテルで宿泊中に、ボーイが挟まれて
死亡したこともありました。

日本の場合は建物とは別個に確認申請を行ったり、
半年ごとの定期点検の義務等規制が強いので、
事故が極端に少ないんだと思われます。
まぁ、その恩恵に与る形で、国内メーカーのシェアが
高めだったりしますけどね。
独立系とメーカー系といったメンテ会社の区分もある意味
日本ならではのものでしょう。

投稿: 無給建築士 | 2006.06.13 22:22

エレベーターなんかだと量産品とはいってもかなりカスタムメイド(エプロンドレスのではなくて)。たぶん標準できるところは標準化してるんだろうけど、建物の意匠とかもあるので、標準化できない部分も多いのでは。
それに国ごと地域ごとの規格や規制も絡んでくるでしょうしね。
そういう意味では日本国内限定の不具合というのはあり得る鴨。

投稿: ■□ Neon / himorogi □■ | 2006.06.13 22:50

>かなりカスタムメイド(エプロンドレスのではなくて)

殺すぞ。

投稿: 私 | 2006.06.14 01:40

> そういえばメンテナンス会社の名前等はまだ表に出てきていない印象がありますね。
逆に具志堅さんのテレビコマーシャルが流れなくなってますね。

投稿: 玉里 | 2006.06.14 01:40

ブレーキディスクの傷はそうそう入らない…はずなので、
(記事からは傷なのか単なる磨耗による溝なのかわかりませんが、
ここは傷って書いてあるから磨耗以外の傷と考えるとして)
傷の入る原因が別にあるのでしょう。

投稿: 無粋な人 | 2006.06.14 09:42

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/jiken/news/20060614k0000m040151000c.html
を見ると、メンテだけじゃなくて、ブレーキパッド駆動部分の設計にも問題があるんじゃないかと思いました。

投稿: えと | 2006.06.14 11:35

ここまでの騒ぎになっているのは事故原因やシンドラーの技術の問題よりも、メーカーとしての態度の問題でしょう。

しかし、日本企業は自社が直接関わっていなくても、事故となれば即座に遺憾の意を表しますが、ヨーロッパでそんなことをしたら関係なくても自分が全ての責任を負わされることになりかねません。

今回の件はそうした文化の違いの現れという気もします。

投稿: drp | 2006.06.14 16:42

こんにちは。
シンドラー エレベーター 事故 で検索してきました。

当時私は、この事故をニュースできいた瞬間「あり得ない。このエレベーターには欠陥がある。」と思いました。

ブログ主さんはコンピューターの知識、エレベーターの知識もおありですから、私よりも的確な事故原因推測が可能でしょうが。

私も機械設備の制御盤・分電盤の配線の仕事と製造業で製造機械の操作をしていまして、ちょっとだけですがシーケンスをかじったことがあります。
(シーケンスを組めるほどではありませんが)

ドアが閉まらないうちにゴンドラが作動した。
これは、普通絶対に有り得ません。
ドアが閉まって安全性が確認されてから、ゴンドラが動き出すというプロセスになっているはずですから。
シーケンス制御なら、起こり得ないはずの動作が現実に起こっている。
これは大変なことでエレベーターを利用する人は全員、ギロチンの刃の下にいるようなものですから。

当初、ブレーキ故障・保守点検の不備が原因かといわれていましたが、シーケンス機器の電磁波による誤作動という結論になりました。(ニュース映像では見覚えのあるシーケンス機器が。)

シンドラー社は自社製エレベーターのシーケンス機器の交換・安全点検をほどこして対応したようですが、電磁波対策のほどこされてないシーケンス機器を採用していた会社のエレベーターなど絶対に利用したくないですね。

これはメーカー側も予測できた事故だと私は見ています。
何故なら80年初頭、似たような不具合がありました。

当時、各社がこぞって出したターボ装着バイクです。
ターボバイクはコンピューター制御されています。
市販された、このバイクのエンジンが誤作動する事例が起こりました。
原因はトラックの違法無線電波でした。

投稿: わい | 2010.03.06 12:00

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