ブッシュ大統領と横田早紀江さんの面会のこと
思いがまとまらないうちに時が過ぎていきそうなので、この話もとりあえず書いておこう。二八日のブッシュ大統領と横田早紀江さんの面会について。
私が最初に気になったのは浅野泉さん(五四)のことである。メリーランド州在住公認会計士の浅野さんは、昭和四九年新潟県佐渡旧新穂村で行方不明となり北朝鮮に拉致された疑いの高い大沢孝司さんの従兄弟で、その縁から米国で拉致問題解決に向けての活動を続けていた。ネットを見ると、ワシントン日本商工会ホームページに浅野さんご自身の『メグミ・ヨコタ ストーリー』(参照)という話が見つかった。従兄弟が拉致されたということからこう語っている。
それから約30年、さまざまな状況証拠から、拉致は確実であるということが被害者の会の全国組織でも総意になってきました。今や新潟の家族や親戚は、救出嘆願のための活動に必死です。私は海外にいることもあり、何もしていないという後ろめたさが、いつも心に潜んでいました。
そんな折でした。パティ-とクリスというアメリカ人(正確にはカナダ人)の若い夫婦のことを知りました。彼等はクレジットカードで借金までして横田めぐみさんを主人公にした映画を製作中で、それで一般のアメリカ人に拉致のことを訴えようとしている、と聞いたのです。実際にその二人に会って話をしてみると、いっそう感動しました。何故、日本人ではないあなた達がやっているんだ。何で借金までしてやっているんだ。色々と率直に聞いてみました。彼等の答えは、それが人々に伝えるべきヒューマンストーリーだから、というのです。彼等が一種の使命感のようなものを感じているように、私には受け取れました。
今回のブッシュ大統領面会の背景には浅野さんとその支援者の動きが強くあったのだろうと私は思った。しかし、ざっとニュースを見聞きした範囲ではそうした報道はあまりなかったように思う(そうでもないのだろうか)。なぜなのだろうという不思議な感じがしていた。
気になって「ワシントンDCらち連絡会」のnews(参照)をあらためて見ると、彼らの活動は直接的な影響ではないにせよ、背景要因としては大きいように思える。
反面、日本のニュース報道やブログなどからは安倍晋三がどうのこうのという話ばかりが肯定的また否定的に強調されているのだが、これはどうなんだろうか。まったくの影響がないとは思わないし、米国のトップとの面会なので日本国のインターフェースがないわけもないのだが……。報道やブログなどでの受け止め方の多くで、バランスに違和感を感じた。そういえば、先日の竹島問題で森喜朗が裏で動いていたようだが、そのあたりの報道もあまり聞かないように思う。
今回のブッシュ大統領と拉致被害者関係者の面会は、当然国際外交としての文脈もある。外交というのは冷酷なものだという以上にこの部分については率直のところあまり語りたくない感じがしている。
もう一点、韓国が今回の面会をどう見ているかも気になった。韓国の代表的な世論とは言えないのだろうが、中央日報の記事”韓国人除いたブッシュ大統領の脱北者面談”(参照)は興味深かった。
早紀江さんはホワイトハウス訪問に先立って日本の外務省と駐米大使館の積極的な支援のもと、米国家安全保障会議(NSC)高位関係者らに相次いで会い、知られるようになった。
一方、政府の関心の薄さから、ワシントンまで来た韓国の脱北者と拉致被害者たちはスポットライトを浴びることができなかった。北朝鮮人権問題に関する限り駐米韓国大使館は言葉数が少なくなる。政府の指示のためだろう。「我々も北朝鮮の人権状況は懸念するが…」で始まるような言葉ばかりを繰り返す。ホワイトハウスが5人の韓国人を招待しながら、大使館関係者を陪席させないのはこの言葉に聞きあきたからかもしれない。
韓国における北朝鮮拉致問題は日本とはまた異なった背景が多様にあり、簡単な議論にはならないが、それでも韓国人の拉致被害者関係者にしてみれば、今回の面談は評価できるものではあっただろう。
と、どうもエントリの歯切れが悪いが、とりあえずその当たりだけでも記しておく。
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コメント
>報道やブログなどでの受け止め方の多くで、バランスに違和感を感じた。
強く同意する。
とても良心的でバランスの取れたエントリー内容だったと思う。
草の根レベルの積み上げは重厚さで決定的な差を持つと思いたい。
投稿: トリル | 2006.05.03 23:25
おそらく韓国の拉致問題は一応の決着までいくんじゃないでしょうか。
日本は言うに及ばずですが
投稿: イブ | 2006.05.04 05:04
>おそらく韓国の拉致問題は一応の決着までいくんじゃないでしょうか。
いや、朝鮮日報などの報道を見る限り、どうも韓国政府は北朝鮮との友好を優先事項にして、拉致問題を積極的に取り上げないようです。
投稿: F.Nakajima | 2006.05.04 13:29
どうやら、筆をすべらせすぎたようです。finalventさんのご不興に対し、ここに謝罪いたします。
投稿: F.Nakajima | 2006.05.06 00:19
皆様のご協力で、12月16日の拉致救出の集会のことを知らない家族のいないようにできればと渇望しています。どうかよろしくお願い申し上げます。
さて12月16日(アメリカ時間12月15日)の拉致救出、日米同時集会につきまして、添付のように、途中経過を報告させていただきます。
皆様の方からも、関係者にどんどんご連絡をしていただき、参加者、参加地を増やしていきたいと願っています。
また皆さんの方でも、マスコミ関係者、特に地方のマスコミ関係者、地方支局等にご連絡いただきまして、この集会のことがいっそう多くに方々に広まることを願っております。
拉致問題に関して二つの大きな誤解があります。
一つは、拉致に関し、政府の認定を受けてから救出嘆願活動をするという誤解。ほんとうは家族会の例を見てもわかるように、救出嘆願活動をしなければ、認定どころか調査もしてくれません。
もう一つの誤解は、拉致被害者は横田めぐみさん達数名だという誤解です。実際は数百名です。でもまだ多くの日本人は数名だと思っています。
この二つの誤解を解決しなければ、拉致被害者救出を前に進めることは困難です。この二つの誤解を一挙に解決する方法があります。
非認定の被害者が無理をしてでも一歩前に出ることです。たくさんの拉致被害者がいることを、みんなにわかってもらいましょう。
そして多くの家族が協力することができれば、それは大きな力になります。
具体的な方法は比較的に簡単です。日本の方々の被害者家族が拉致被害者の写真看板を持って、同時刻に、表に出ましょう。12月16日、土曜日の朝10時です。マスコミには参加者のリストを前もって渡して、取材に来てもらいましょう。(会場を借りて大きな集会を持つ必要もなく、著名な先生に講義をしてもらう必要がありません。また仮にそれをしても、マスコミは報道してくれません。)
同時刻に、家族の写真を持って外に出ましょう。数百人の拉致被害者家族が協力すれば、家族会に勝る力が出るはずです。横田さん達だけに苦労を任せることはできません。皆で協力しましょう。
難しい話をしても、多くの人は聞いている余裕がありません。誰にでも、すぐわかるように、訴えましょう。
拉致は横田めぐみさん達数人の例外的なことでなく、たくさんの被害者がいること。拉致は他人の問題ではなく、みんなの問題なんだということを、みんなにわかってもらいましょう。
より多くの人々の支持を得て、拉致被害者を救出するための具体的な準備が必要です。
私達一人一人の力はとても小さいものです。しかし家族会がそうであったように、皆で協力すれば、社会を動かしていくことも、不可能ではありません。
12月16日まで、残り1ヶ月です。皆様のご協力で、参加者、参加地を増やしてください。孤立して苦しんでいる家族が、この集会のことを知らなかった、ということは最低避ける必要があります。(しかし被害者家族の居場所がわかりません。間接的にでもごぞんじの方は、是非ご連絡ください。)
皆様のご協力を心よりお願い申し上げます。
すべての拉致被害者家族の願いを託して。
*関係者に12/16同時集会のことを連絡して、参加者、参加地を増やしてください。
*地元のマスコミに連絡してください。
*写真看板を作ってください。
*12/16の朝10時には、写真看板を持って表に出てください。
詳しくはワシントンDCらち連絡会のウェブサイトwww.asanocpa/com/rachiをご参照ください。
投稿: 浅野泉 | 2006.11.17 11:03