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2006.05.08

夢のリヤカー

 明け方ぼんやりと夢から現に意識がゆっくりと移っていくなかでリヤカーのことを思っていた。いつから見なくなったのか。私はどんなリヤカーを見ていたのか。リヤカーとはなんだったのか。何を乗せていたのか。誰がそれを引いていたのか。人だった。どんな人だったのか。自転車もあった。あの風景はなんだったのだろう……。

cover
コリアン世界の旅
 たしか「コリアン世界の旅(講談社プラスアルファ文庫)」(参照)だったと思うがと書架を見てこの初版本が見あたらないのだが、ヤフーの、いや孫正義ソフトバンク株式会社代表取締役社長が子どものころリヤカーに乗せられていた話があった。そのあたりの背景のインフォがウィッキペディアにあるかと見るが驚くほどない。彼自身が語った話でもありタブーでもないと思うが、あまりこの話につっこむべきでもない。とりあえずリヤカーとは孫社長の魂の原点ではないかと思うし、とりあえずそれは特定の貧しさというものでもあるだろう。彼は私と同い歳だが随分と人生が違うものだと二十年くらい前に思いそれ以降思わないことにしているが、二十年くらい前までは、けっこう同じ風景を見ていた。彼は向こうで私はこっちから、という感じがするが、そこにある風景は同じだっただろう。
 西原理恵子も子どものころリヤカーに乗せられたという話をなにかで読んだ。どの本だったか忘れた。風景としては「ぼくんち(ビッグコミックス)」(参照)に近い(この本はできたら三分冊本で読んだほうがいい)。彼女は六四年の生まれで私とは七歳も違うが、高知というディープな地方がそれだけ歴史の風景を保持していたのかなと思うし、それは高知と限らないだろう。彼女はリヤカーに乗せられた経験を楽しく懐古しているふうだったと私は読んだ。子どもには楽しいだろう。
 地域差はあるにせよある年代の子どもからリヤカーの風景の記憶はないのではないか。それはどのあたりで、どういう歴史の触感を持っているのだろうか。明け方いろいろ思った。そういえば、土管も見なくなった。コニーちゃんの友だちドカンくんも最近は見かけない。コンダラも見なくなった。コンダラ? あれは正式名はなんというのだろうか。
 目が覚めてきて、マシンでリヤカーをざっと調べてみて間違いに気が付いた。私は「リアカー」だと思っていたのだが、字引には「リヤカー」とある。また、この語源は、私は rear cart だと思っていたのだが、rear car らしい。あれは car じゃなくて cartだろと辞書にツッコミを入れたものの字引は一様に car 説を採っている。ウィッキペディアを見ると意外に詳しい(参照)。

 1921年頃、海外からサイドカーが日本に輸入された時に、サイドカーとそれまでの荷車の主流だった大八車の利点を融合して日本人が発明した。
 Sidecarに倣ってRear-Carと命名したため和製英語である。
 1923年9月1日に発生した関東大震災、燃料不足だった太平洋戦争の戦中・戦後などの時期に人力によるリヤカーは効率的な荷車として大活躍したが、自動車が普及するにつれてオート三輪・軽トラック・オートバイ等に取って代わられ、次第に衰退していった。

 語源としてはサイドカーからの派生の和製英語だとしているのは、説得力がある。ちなみに、和英辞典を引くと、a bicycle-drawn cart; a bicycle trailer.とあるので、cart に見えるよなとは思う。
 ウィッキペディアの解説によると、関東大震災を契機に大八車に代わったものとしている。この説も概ね正しいようにも思う。
 ところで、ウィッキペディアにはリヤカーの図がないのだが、それがなんだかわからない人もいるだろうか、と心細くなってきた。どっかに写真でもと思うと、けっこう良いのがある。ウィッキペディアから辿ったのだが、「リヤカー博物館」(参照)である。これは、かなり面白い。中でも次の説は私の記憶の風景のスイッチをポチッとなである。私は、物心付いたころからラジオ好きの父に連れられて秋葉の部品屋をうろうろしていた。

諸説が在るが、総合的に判断すると、当時 秋葉原駅近くの総武線の高架下を利用した 工場で、スクーター及び自転車の部品工場を営んでいた 中村銀造氏経営の中村銀輪社にて 製造されたのが最初であるという説を 当博物館としては採りたいと思う。

 我ながら無知だったなと思ったのだが、リヤカーというのはあのカート部分が主体ではなく、フレームであり、むしろ自転車の変形だったのかということだ。つまり、カートをはずした状態がリヤカーの本体なのだ。というところで、そうかとわかったのだが「今 リヤカーは何処に」(参照)である。なんでも知ってるつもりでも、ほんとは知らないことがたくさんあるんだよである。
 どうもアナクロ的な意識になりつつあるのか、「アフリカで甦ったリヤカー」(参照)もいい話だなと思う。洗濯板やリヤカーといったテクノロジーが有効に活かせる地域はまだ地球には多い。それをもっと活用すべきだとまで言うとなんかそれはそれで間違っているようにも思うが。

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「雑記」カテゴリの記事

コメント

リヤカーなら大学生の頃、サークルで普通に使ってましたが、別に何も思いませんでした…。
私が幼少の頃、家が昭和50年代に陶器店をやっていたんですが、台車を使ってました。
陶器が売れなくなって廃業し、家を建て替えたとき、近所に仮住まいしたんですが、
引っ越しのときはこの台車を使ってました。帰路は幼い私が乗って。

投稿: てんてけ | 2006.05.08 10:07

http://rightwing.sakura.ne.jp/jgsdf/other/rearcar/rearcar.html

普通、戦闘兵車(?)として使われることはありませんが陸自空挺部隊に限り迫撃砲や砲弾をリヤカーで運ぶこともあるとか。駐在武官などがそれをみて感動(?)する、という話も聞いた記憶があります。

投稿: ■□ Neon / himorogi □■ | 2006.05.08 12:54

そういえば、リヤカーの衰退と反比例してネコ(一輪車)をよく見るようになったのはどういう経緯なのだろう。

投稿: ■□ Neon / himorogi □■ | 2006.05.08 12:59

災害時に使うために、折りたたみのリヤカーを用意している自治体も多いです。
リヤカーと言えば、秋葉原では段ボールを集めるおじさん達をよく見かけたものです。
再開発が始まってから滅多に見なくなりました。それと同時に道ばたに段ボールにくるまるおじさん達も。
彼らは今いずこ。

投稿: 謎の人 | 2006.05.08 19:00

我が家では未だにリヤカーを使用しているので、この記事自体に衝撃を受けました。ちなみに我が家は農家で、主にネギくずの廃棄などに使っています。私が子供の頃(といっても10年前程度ですが)には友達と乗り回して、戦車ごっこをしていたものですが……。

投稿: KAWAJI | 2006.05.08 19:30

重い?「コンダラ」は、思い「込んだら」なのでは無いかと思いました。

投稿: | 2006.05.08 23:08

リヤカーといえば、リヤカーで世界を30年も歩いているこんな人もいます。

地平線通信.2006.4
田吾作、地球二周目へ! 永瀬忠志
http://www.chiheisen.net/_tsushin/_tsus2006/tsus0604.html


投稿: Hiro | 2006.05.10 12:08

上↑のHiroさんも指摘されていますが、リヤカーは人力冒険旅行のツールとしては一定の実績があるようです。『ビーパル』誌あたりでもリヤカーを牽いて旅をする人の連載があったような記憶があります。現代的なリヤカーの一例↓。
http://www.truetools.jp/html/unpan/drawncart/drawncart.html

投稿: shitai | 2006.05.10 22:23

終風さんもがんばったって年ですから。
ここは参考にはなりますけどいまどきの人ってもっと別の感性で動いています。しかもそんなつまんないそれが確実に歴史を未来に向って刻んでいる現実。
いままで毎日更新はすごいですけど、ちっと神様の目線路線で傲慢かましつつ同時に一歩引きながらも、今はいい頃合で休みとるべきじゃないかなと思ったり。
ユダだって2000念陽の目を見なかったことを入れれば休むのもまた風流かなと。
日々エントリを拝見するのは楽しみにしてますけど、
てか病気じゃないですよね?

投稿: クロロ | 2006.05.11 01:37

>ここは参考にはなりますけどいまどきの人ってもっと別の感性で動いています。
「あんた感性古い」って「最近の若者は」と同じ、それだけじゃ何の意味もないつまんない煽りですね。頭悪そうに見えますよw 流行が好きならしょこたんブログでも見てれば?

投稿: akino | 2006.05.12 01:04

こういう自分が若いと思いこんでるアホの雑音に負けずに、普通の人のために書いてくださいね。
全くバカが自己主張する時代になって困ります。
モチベーションの一種になるのはわかりますが、いっそコメント欄っていらないんじゃないでしょうか?
一喜一憂するのもばかばかしいですよ。

投稿: akino | 2006.05.12 01:07

ちょっとコメント誤解されたみたいなんですけど、そのままだときついしわざわざ説明しなきゃいけないのかな。
>別の感性
ってとこは、若い人(自分含めて)はfinalventさんほど頭が回らないんで愚考して出てきた回答をそのまま実行に移してしまい、でもそれが世の中の動きとなって残ってしまう悲しい現実のことを言っています。
>つまんないそれ
は若い人のその感性ですよ。
まあ毎日更新が途絶えたけど大丈夫ですよ、落ち着いて次のエントリ待ってますよのエールを分かりにくく書いたつもりなんですが、やっぱ釣れてしまいましたか。

投稿: クロロ | 2006.05.12 09:34

コンダラ=整地ローラーですね。

こんな冗談ページもあります。
http://www.nishiarai.net/nichikon/

投稿: 中宮崇 | 2006.05.14 08:13

>やっぱ釣れてしまいましたか。
いまどき釣り宣言って(わらい

投稿: >クロロ | 2006.05.19 09:23

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