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2006.05.28

初恋の味

 カルピス。なんてもうギャグにもならないのかと思ったら、JMAMというサイトの”「創業者から何を学ぶか」経営コンサルタント・市川覚峯第3回”(参照)が冒頭いきなりこれで飛ばしていた。声はできたら浜村淳で。


初恋の味といえばだれもが知っている、あのカルピス。もう80年もの間、初恋を続けてきている。甘酸っぱい独自の味を生み出したのは三島海雲という、純情一途の男であります。

 ここで歌が入るといいんだけど、先に進む。

 寺の息子として生まれた三島は、13歳で得度し、本願寺の大学寮に学び、“国利民福”つまり国の利益と人々の幸福を常に考える人生観を抱きます。
 25歳で中国大陸に渡り、大隈重信の勧めで蒙古の緬羊の改良に着手します。そして日本のために万丈に気を吐く大活躍をします。ある時彼は蒙古の家の軒下の瓶に入った、甘酸っぱい乳と出会います。蒙古の人々が健康で兵隊も元気があるのは、この乳のおかげであることを確信した彼は、この味を日本に持ち帰って人々を救おうと“民福”の心に燃え、何年も、何年もかかってカルピスの商品化を成功させます。

 「羊をめぐる冒険」(参照)を連想させるエピソードだが、彼が日本にもたらしたのは脳内羊ではなく、甘酸っぱい乳だった。いやあれは甘いってことはないけど。
 大隈重信はカルピス誕生のエピソードにも関わっているらしい。”COBS ONLINE:20世紀の発明品カタログ 第12回 「不老長寿の夢を求めて 初恋の味、カルピス」”(参照)はこうエピソードを伝えている。ちと引用が長いが、面白い過ぎなんで。

 明治天皇、崩御。その訃報を知った国民は悲しみに包まれ、大君の御霊を追って自害する者も少なくなかった。国中に末世的風潮が蔓延していたこの頃、ときの元老・大隈重信は、「国力の源は臣民の健康にある」との信念のもとに、大正元年、イリア・メチニコフの大著『不老長寿論』を大日本文明協会から出版した。
 メチニコフは大隈と同時代に生きたロシアの生物学者で、その主著『不老長寿論』は、文字通り不老長寿の実践的なテクノロジーを述べた快箸だ。いわく、人間の老化は、腸の中の廃残食物の発酵や腐敗によって有害な菌が発生することか要因で、それを抑えるためには乳酸菌飲料を摂ることが重要である……。その主張は、腸内の善玉菌と悪玉菌のバランスを保つことによって免疫カを高め、老化を抑制する、という現代医学の見解と一致し、今日の乳酸菌ブームの最初の医学的根拠となる。
 そして『不老長寿論』の出版から7年後、世界に先駆けて乳酸菌飲料の量産化に成功した男がいた。その男の名は三島海雲(かいうん)。商品名を"カルピス"という。

 「不老長寿の実践的なテクノロジーを述べた快箸」の最後のところは「怪著」とすべきかもしれない。私はポーリングとメチニコフの晩年のトチ狂いに関心をもって精力的に調べたことがあった。この分野のメチニコフ学説は単純に否定されているだろう(だって菌が腸に届かないんだし)と思ったが、日本では面白いことにヤクルトなんかでもそうだけど、メチニコフ学説のカルチャーが胃酸にも耐えてしぶとく生きていてなかなか無下に否定もできない空気が漂っていて、とか思っているうちに同じく辺境というか北欧で生き延びたメチニコフ学説がプロパイオティクスとして息吹き返してきて、なんだかわけわかんないになってきた。それはさておき。
 この時代の乳酸菌飲料の興隆はいまひとつわからないのだが、軍隊が兵士のカルシウム摂取のために牛乳を採用しようとしたけどゲリゲリな試験結果じゃんという背景があったと推測している。ちなみに日本人がカレーライスを食っているのも軍隊が不味い肉でタンパク質を摂取させようと工夫したもの。どっちも、戦後学校給食の柱となっているあたりが日本って今も戦時体制って感じだが、特定的なアジアからのツッコミはこのあたりにはない。知らないんでしょね。と連想だが、いつだったか、旧ソ連人生まれユーリ・イルセノビッチ・キムというカネも権力もあるオカタの個人的な趣味の映画セットの町をなんかのおりに映像で見た。ユーリさんは日本映画のファンでもあるらしく、そこに昭和初期の日本の風景セットもあって懐かしかったのだが、町のセットには乳酸菌飲料の張り紙広告なんかもあった。へぇって思った。それもさておき。
 でなんで牛尿なんだと昔知人の米人が笑っていた。いや日本ってそういう国なんだからさ。他にも、力塩基汗汁(ポカリスエット)とかじわっとクリープとか、いろいろ、ある。
 歴史的には「カルピスの誕生」(参照)にこうある。

「カルピス」の”カル”は、牛乳に含まれるカルシウム、”ピス”はサンスクリット語で、仏教での五味の次位を表す”サルピス(熟酥=じゅくそ)”に由来します。本来は五味の最高位である”サルピルマンダ(醍醐味)”から、”カルピル”としたかったところですが、音声学の権威である山田耕筰やサンスクリットの権威である渡辺海旭に相談をし、歯切れが良く、言いやすい「カルピス」と命名しました。

 音声学の権威やサンスクリットの権威も普通に英語は知らなかったと、Don't piss me off! 英語だとなのでCalpico。だけど、寺の子三島海雲の仏教の思いというか七カルマくらい思いが入っているのかもしれないカルピスもなかなかいいじゃん。
 「カルピスの誕生」を読んでいくと水玉デザインについての説明はある。

「カルピス」の発売は、大正8年の7月7日。七夕の日に発売されたことに因んで、天の川、すなわち銀河の群星をイメージした包装紙が、大正11年に当時の宣伝部員によってデザインされました。最初は青地に白の水玉模様でしたが、後年、白地に青の水玉模様に変わり、「カルピス」のさわやかさを伝えるものとして、いまだに古さを感じさせない優れたデザインと評価されています。

 だが、あれの説明がない。歴史を消しちゃうのもなと思い、ウィッキペディアを見るとあれについてこうある(参照)。

元々は、パナマ帽を被った黒人男性がストローでグラス入りのカルピスを飲んでいる様子の図案化イラストが商標だった。これは、第一次世界大戦終戦後のドイツで苦しむ画家を救うため、社長の三島海雲が開催した「国際懸賞ポスター典」で3位を受賞した作品を使用したものだが、1989年に“差別思想につながる”との指摘を受けて現行マークに変更された。

 ネットではThe Archive of Softdrinksというサイトの”Calpis Water”(参照)がもう少し詳しい。

 また、黒人マークは1923年(大正12年)に制定されたが、これは第一次世界大戦後のインフレで特に困窮している美術家を救うため、ドイツ、フランス、イタリアでカルピスのポスターの懸賞募集が行われた。その中から選ばれたのが黒人マークで、作者はドイツのオットー・デュンケルスビューラーという図案家であった。
 黒人マークは1980年代になると国際化時代の背景から人種差別的な問題を提起されたり、黒人差別をかかえる国々から反対意見を展開されるようになり、企業イメージの面で不利ということで1990年に使用を中止することとなった。

 あの絵もネットにあるだろうと思ったら、「こんなんみっけ」(参照)というページにあった。
cover
カルピス
マンゴー
 菅公学生服とか水原弘と由美かおるの大塚製薬ハイアースの看板とか、東芝エスパー君とか……廃れゆく日本の懐かしい風景でもある。
 あ、むりむりのアフィリエイトっぽいけど、カルピス・マンゴーはけっこう旨いです、いやマジで。

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コメント

>ちなみに日本人がカレーライスを食っているのも軍隊が不味い肉でタンパク質を摂取させようと工夫したもの

旧軍のレシピを見ると「肉でタンパク質を摂取させ」るのに十分なほどの量の肉は入っていないんですがね。
昨今はともかく、20~40年前の学校給食も同様です。

http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4061459163/qid=1148790383/sr=8-5/ref=sr_8_xs_ap_i5_xgl14/250-0865792-5822635

投稿: SS | 2006.05.28 13:29

海軍カレーについては、じゃがいもでビタミンCを摂取させるため、という話を聞いたことがありますがどうなんでしょう?

投稿: 山口 浩 | 2006.05.29 00:27

http://10.studio-web.net/~phototec/(THe戦闘食)さんの
「モンゴル軍レーション試食レポート」偏にカルピスの元の馬乳酒の説明が面白いですよ。
文字通り馬の乳を原料に攪拌発酵させた飲み物であり、馬が乳を出す7~9月の間しか飲まれません。酒といってもアルコール度数は2%程度と低く、酔うための飲み物ではなく、お茶感覚または医食同源の薬として飲まれています。馬乳酒には各種のビタミンやミネラル、カルシウムなどが含まれていて高血圧、中風、心臓病、肺結核など様々な病気に効果があると言われ、肉類を主食とする遊牧民がビタミン不足などの栄養失調等の病気にかからないことの理由の一つに、・・続きは本文をどうぞ!

投稿: ようちゃん | 2006.05.29 07:02

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