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2006.04.18

どうする?アイフル

 消費者金融アイフル全店舗を対象とする業務停止命令が出たというニュースについて、よくわからないので、散漫な話になると思う。でも、ちょっと書いておきたい。
 このニュースについて、NHKのクローズアップ現代やニュース解説などを見ていると、アイフルの問題あるとされる業務よりも、グレーゾーン金利の問題に焦点を当てていることがわかる。
 グレーゾーン金利については知らなかったわけでもないのだが、ニュースを聞いていて随分世間の空気が変わったものだなと感慨深かった。今年一月に最高裁が出した「みなし弁済」について判決・判断が随分社会を変えたものだ。司法の力は大きいものだなと、とりあえず思った。この話については、日弁連のサイト”「みなし弁済」の適用に関する最高裁判決についての会長声明”(参照)が参考になる。


 本年1月13日及び19日、最高裁判所は、貸金業の規制等に関する法律43条(みなし弁済規定)について、利息制限法に定める制限利息を超過する利息を支払うことが事実上強制される場合は「任意に支払った」とは言えず、有効な利息の支払とみなすことはできないとし、「制限超過の約定金利を支払わないと期限の利益を失うとの特約による支払に任意性は認められない」とする判断を下した。

 払い過ぎ分の返却がその後可能になり、NHKのニュースなどでも多額の金額を返却してもらった人の話があった。
 日弁連のこのページの締めは問題の側面をよく表している。

多重債務者の数は150万人とも200万人とも言われ、破産者は年間約20万人、経済苦・生活苦による自殺者は年間8、000人にも達している。このような状況を直視し、当連合会は、貸金業界に対し、一連の最高裁判決をふまえ、その業務の適正を図ることを強く求めるとともに、今後とも、みなし弁済規定の廃止のみならず、出資の受入れ、預り金及び金利等の取締りに関する法律の上限金利を、利息制限法の制限利息まで引き下げることを求める立法運動など、多重債務問題解決の諸活動を行っていくことをここに表明する。

 ニュースを見ているときにも思ったのだが、こうした街金の問題がまさに問題になるのは、多重債務者の問題なのだろう。
 というあたりで、「ナニワ金融道」(参照)を思い出すのだが、すでにこの物語の世界は古い時代のことかもしれない。が、この物語では街金の儲けはまさに追い込みの部分にあった。そうしてきちんとカタにはめるということがポイントなのだなと当時若造の私は世間を見る目を変えた。と、加えて、こうした世界は多重債務を前提として成り立っているようだな、その情報ネットワークもあるだなと知った。
cover
ナニワ金融道
 気取るわけではないが私は街金のお世話になったことがない。連帯保証を食らって「いい勉強させてもらいましたわ」的なことはあるが、なぜ人が街金に手を出すかというのはよくわからない。貧乏ならそれに耐えろと思うのだが、そういうふうにはいかないのだろう。先日、終電を逃して広い街道をとぼとぼと歩いたとき、駐車場に模した街金が多くて驚いたが、それだけニーズがあるのだろう。そうした世界は自分の見えないところでとにかく愕然とある。なら、街金とかグレーゾーン金利が悪いというだけのものでもあるまい。おそらく生かさず殺さずの多重債務者をうまく育成していくことがこの業界の重要な戦略なのだろう。
 そう思っていたので、むしろアイフルの強行な取り立てという話を聞いたときは、それがないとは思わないし(それは想像もできるが)、その戦略では業界がそもそも生きていけないだろう。なんか変だなという感じがしたものだ。
 日経記事”消費者金融、成果主義見直し機運・アイフルは撤廃”(参照)を読むとむしろ成果主義による経営の失敗のようでもある。

アイフルは貸し付けや債権回収の目標を支店ごとに設定し、達成率が悪ければ支店全員の賞与が最大で6割下がる賃金制度を導入していた。関係者によると、目標額を回収できない社員が、やむにやまれず自らのお金で穴埋めする事例もあったという。

 「ナニワ金融道」の世界だとなんとか主人公が一人前の金融人になろうとしているビルドゥングス・ロマンでもあるのだが、昨今の街金はそういう人を育てることができなくなりつつあるのだろう。
 金融業の経営の指針の側面でアイフルはどうだったか。ざっくりニュースを見ていて、読売記事”拡大路線歪み生む アイフル業務停止 総合金融業を志向”(参照)が面白かった。

 金融庁から全店舗を対象に業務停止命令を受けた消費者金融大手のアイフルは、ライバルのアコム、プロミスなどがメガバンクの出資を受け入れる協調路線を取っているのに対し、独立路線で収益拡大を目指していた。福田吉孝社長は、銀行業参入を検討するなどの積極経営を打ち出したが、その一方で、社員教育や顧客対応がおろそかになり、無理な取り立てなどの歪(ひず)みを生んだ可能性がある。

 ひどい言い方をすると、街金というのは実態は銀行の別業務だろうと思っていたので、アイフルの裏の銀行はどうなんだろということでニュースに当たっていた。が、アイフルの場合は、むしろ、逆に銀行を食おうという意志があったのかもしれないな……そのあたりが逆鱗に触れたのかもなという印象はもった。
 アイフルという企業の歴史にも関心をもってちらと調べてみたのだが、なんだかあまり素人の覗き込むような世界ではなそうな、またまた京都のたたずまいがありそうなので、やめにした。

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コメント

一定の確率で起きると見込まれる貸し倒れリスクを考慮すると、高金利を設定せざるをえないが、上限金利を規制されれば貸出審査を厳しくせざるを得ず、サラ金からも「借りられない」人間が増加するので、かえって闇金融が跋扈するという話を聞いたことがあります。
商法との整合性も重要でしょうが…。

投稿: cru | 2006.04.19 00:41

銀行と組まずえすたぶりっしゅめんとの方々に上納金を払わなかったので他と同じことやっててもここだけ潰されますた、といういつものパターンでは。ほりえもんと一緒。

投稿: あ | 2006.04.19 08:44

>cruさん
それはまさしく彼らが主張する理論ですね。

投稿: うの | 2006.04.19 11:30

cruさんがお聞きになった論理は、年利100%規制だろうが40%規制だろうが20%規制だろうが通ってしまう論理なので、私もナンセンスかと思います。

投稿: スープ | 2006.04.19 18:59

いやあ、全くそのとおりだと思いますが、現実問題として、商工ローン恐喝事件→上限金利改正以来、闇金が跋扈しだしたという論理だったと思うんですが、この辺の因果関係、否定できるんですかねえ。

詳しい方、ご教授いただけるとありがたいです。

投稿: cru | 2006.04.19 23:51

出資法はサラ金地獄の時に109.5→40.004%
九州を中心とした日掛金融(日賦貸金業者)が問題となった時に40.004→29.2%
わたしの記憶ではこんな感じですが、いずれも取り立てに問題があったはずです。当局は取り締まりもせずに放置して何か目論んでいる時に急に張り切りだすようです。
金利の規制が強化されればcru さんの言うとおり、与信のバーは高くなりますから一部の利用者はアットローンやモビットへ。バーを超えられない人は怪しいところに流れるでしょうね。今までもそうでしたから。前回同様に中小の業者は消え去って、一部のグループが巨大化しウワウハですよ。

投稿: 磯部焼き | 2006.04.20 00:00

磯部焼きさま>なるほど。ありがとうございます。
まあ、結果的にどこが利益を得ているかと動機が直結するとは思いませんが(この場合、利潤の低下+「合法的」市場規模の縮小がありますから)、当局の恣意性(誰が得してるんだか?)に辟易ということだけは確かかも?

投稿: cru | 2006.04.21 01:10

サラ金に借りる時点でもかなり抵抗あるひとが多いと思うんですよ。
それなのにサラ金に断られたからヤミ金で借りるなんていう人がどれだけいるんでしょうか?
自分はどれだけ困ってもヤミ金でお金借りる様な度胸ありません。
だってヤクザになにかお願いしに行くのと同じでしょ?
そんな自爆行為をする人はほとんどいないと思います。
つうかヤミ金なんてどこにあるのかすら自分は知らない。

ということで普通は借りれなかったらあきらめる、だと思いますよ。
金利を下げて貸し出し審査が厳しくなるならそれでいいんじゃないでしょうか。
サラ金以外は誰も困らないのでは。
借金にそんなに頼らなきゃいけない時点で生活がおかしいと思うし、
安易に借金に走る傾向を止めるのはいいことだと重います。

投稿: わ | 2006.04.21 04:59

子供の小遣いの話してる訳じゃないんだが。
あきらめる、じゃ済まない人が少なからずいるから闇金がはびこる訳で・・・

投稿: ○ | 2006.04.21 11:06

知り合いに多重債務者がいるのですが、ちょっとだけ紹介します。彼に聞くと、消費をするトリガが複数あり、借金をすることより一時の享楽を求めてしまう傾向があるようですね。たとえば風俗や高価な趣味などに傾倒しすぎて、浪費をする。すると給与日前にお金が足りなくなる。そこでやむにやまれずお金を借りる。すると一時的にお金の心配がなくなる。それをしばらく続けると最初抵抗があった借金にも、だんだん感覚がマヒしてしまうようです。

さらに少しずつ(2万づつとか)で借金の金額が増えても、大した差に思わなくなるようになってしまうと、だんだん借金が累積していく。

そして、その限度額に近づいたときにヤミ金に行くんだと思います。そうするとまたお金の心配がなくなる。そして元の習慣のトリガに消費の虫が動く。その後はなし崩し的にヤミ金からの借りませんか?という話が入ってきて、多重債務者への道へ・・・となる。

彼はそれだけで500万ほどの借金を作ってました。。。

投稿: kazuya | 2006.04.21 19:14

↑この程度の借金太郎なら、金が無いなら諦めろ、で済ませばいいんでない? 普通に。

>子供の小遣いの話してる訳じゃないんだが。
>あきらめる、じゃ済まない人が少なからずいるから闇金がはびこる訳で・・・

 …と言うほどのことでもない。我慢しろ馬鹿以上終わり、なだけちゃうんかと。


 私の近所の多重債務者例で言うと、成り立ちは kazuya 氏の書き込みとほぼ同じで、額面は2000万円だった。普通は数百万円で打ち止めの筈なんだけど、どうやったら1000万円の壁を越えられたのやらw


 まぁ基本的に、借金太郎になることを厭わないような人間は借金以外の局面でも(いろんな意味での)負債を抱えかねない人物ですから。やっちゃったんであれば、それ見て縁切っても遅くないっつうか。そういう人間を遠慮会釈なく小ばかにしたり食い物にするのが、まっとうな大人の務めだと思います。
 生かして為にならない人間は逝かして吉。そんだけでしょ。

投稿: 私 | 2006.04.22 01:36

>サラ金に借りる時点でもかなり抵抗あるひとが多いと思うんですよ。
>それなのにサラ金に断られたからヤミ金で借りるなんていう人がどれだけいるんでしょうか?

かなりいるんじゃない? ま、人口における比率でいえばさ、↑のような幸せな環境に住んでる人がほとんどなわけだが。
「身の回り」なんてレベルでかんがえりゃ、そりゃあまりいないのかもしれないが「社会」としてかんがえりゃ
1000人にひとりでもいりゃ、そりゃかなり大きい話しになるわけで。

で、「確実な身の破滅」がせまった切羽詰まった状況にあれば、一時しのぎとはわかっちゃいながら、、
となりうるひとが一定以上存在することは世の諸々な事例をみりゃわかることですな。

投稿: | 2006.04.23 15:36

 出資法と利息制限法の区別が付かない人の割合が九割を超えているとの話が十九日クローズアップ現代のなかで出てました。グレーゾーン金利の存在を今回はじめて知った人もずいぶん多かったのでは?これでは銀行、金融庁からの天下り、消費者金融、そちら系の人々が結びついて形成される目に見えない同盟の前には食い物にされるしかありません。

投稿: kazu | 2006.04.23 23:25

自分は8年前多重債務抱え弁護士に頼んで任意整理しました。
でも5年たちサラ金(大手)にいつた所すんなり融資してくれました。実際サラ金あるから闇金みたいな。まともに働いていたら返せないかと思います。(29.5%)でも

投稿: 桜 | 2006.04.27 22:45

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追記:finalvent さんはアイフルは他の消費者金融系企業とは逆の路線を志向したために(幾つかの要因が重なって)、こうした状況に陥ったとお考えみたい。 (cf.極東ブログ:どうする?アイフル そんな“京都のたたずまい”からすれば田舎モノがいきなりわけのわからんこと言いおって、はじめからわかってて借りたんだろうに、というところなのかな。 にしても無人契約機や広告でこうした会社とうまくつきあってた取引先の方々って、ある程度時間が経てばこうなることはわかってたと思うんだけど、そのあたりはどうなんだ... [続きを読む]

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ほとんど審査らしい事をせずに高利で金を貸すサラ金は厳しい取立てが命ですよね。借りる方もそれは百も承知で借りるわけで、甘い誘いに乗ってとか、誠実そうな営業マンが返済遅れたらひょう変したとか言うけど、返さないのが悪いですね、基本的には。誰だって人に金貸して返してくれなかったら怒るでしょ? どのブログを見てもサラ金に対する感情的な書き込みが多いですが、この問題はなぜサラ金屋が全国ネットでテレビCMをはれるほどデカくなったのかと言う事でしょう。こんな国他にないですよ。 悪いのは大手銀行です。 ... [続きを読む]

受信: 2006.05.03 15:04

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