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2006.04.17

木村建設へ本格捜査、じゃないでしょ

 ことわざに「泥棒を捕らえてから縄をなう」というのはあるが、捕らえてから泥棒だと言わせようみたいなことがあっていいのだろうか。木村建設(破産手続き中)木村盛好社長ら同社役員に対する一斉聴取が開始されたというのだがその理由は「粉飾決算の疑い」だけ。なのにこの毎日新聞”耐震偽造:「核心」企業、木村建設へ本格捜査”(参照)の記事はなんだろう?


 耐震データ偽造事件の中核的存在、木村建設(熊本県八代市、破産手続き中)の木村盛好社長(74)ら同社役員に対する一斉聴取が始まったことで、地震に対するマンション、ホテルの安全性を揺るがせた問題が、捜査のヤマ場を迎える。一連の偽造物件の施工者としてコンサルタントや建築主から工事を受注し、姉歯秀次・元1級建築士(48)にコストのかからない設計を強く要求していた木村建設。警視庁などの合同捜査本部は、事件の真相を解くカギはコストダウンを追及した同社の経営体質にあるとみている。

 全然スジが違っているのではないか。記者はなんかの冗談で書いているのだろうか。粉飾決算の疑いがどうして耐震データ偽造事件の捜査のヤマ場になるのだ?
 さらに変な文章が続く。

 ところが、その後、姉歯元建築士と木村建設の密接な関係が次々と明らかになった。同社は、ヒューザー(東京都大田区、破産手続き中)が販売したマンションや、総合経営研究所(総研、千代田区)が開業指導したビジネスホテルで多くの工事を受注していた。

 姉歯元建築士と木村建設の密接な関係というのは業務上当然のこと以上の示唆がなくてこんな書き飛ばししていいのだろうか。また、ヒューザーは民間マンションであり、総合経営研究所はビジネスホテルで系統が違う。というか、いわゆるきっこスキームみたいな諸悪の根源系の陰謀論みたいな推理だと悪が源流にありで総合経営研究所のさらに上流? だとするとヒューザーは傍流になる。なので、木村建設を諸悪の中心に置いてみた?
 引用が多くなるし、またこのニュースについてはこの毎日新聞だけがボーガスというわけではないが典型例なので。

 国会証人喚問で姉歯元建築士は、構造計算書を偽造した「動機」を問われ、「仕事の90%ぐらいを木村建設から請け負っていた。鉄筋量を減らさなければ仕事を一切出さないと言われた」と証言。名指しされた篠塚明・元東京支店長(45)は法令違反の認識を否定したが、「価格競争自体はどの案件にもついて回る」とコスト削減を要求したことを認めた。

 これは確定したのだろうか?
 落ち穂拾い当選の保坂展人がブログ「保坂展人のどこどこ日記」”姉歯・耐震偽装事件の残された謎”(参照)でジャーナリスト魚住昭のコラムを援用して、重要な指摘をしている。

まず、第1の疑問は姉歯元一級建築士の最初偽装物件は、「グランドステージ池上」(昨年12月の証人喚問での姉歯証言)ではないのではないかという点だ。国土交通省に何度問いただしても歯切れが悪い。実は、国土交通省自身が姉歯元建築士による偽装物件の一覧表に掲載している物件に、川崎市のAマンションがある。グランドステージ池上よりも、建築確認申請が降りた時期は早い。しかも偽装も確認されていて、設計・施工は平成設計・木村建設ではない。「グランドステージ池上」から偽装が始まったのであれば、「弱い自分がいた」(姉歯証言)で納得できるが、別の設計事務所・施工業者で偽装物件が存在したとしたら、姉歯氏自身による物語は覆る。

 もしこの点が正しいとすれば、「姉歯氏自身による物語は覆る」とかきっこスキームがやっぱしボーガスでしたとか以前に、警視庁などの合同捜査本部のストーリーがひっくり返り、例えば、という限定が付くが、姉歯単独犯行説(参照)のようなスキームのほうが説得力を持つことになる。
 似たように変なのが、姉歯秀次元建築士の建築士法違反容疑だ。朝日新聞”知人宅で姉歯氏の印鑑押収 建築士法違反容疑で適用へ”(参照)にもあるがこれは別件だろう。

 捜査本部は、当初耐震強度が基準を満たしていないとして建築基準法違反の疑いで調べを進めてきた。しかし、構造計算には複数の方法があり、計算方法によっては耐震強度が基準の1を超えたり下回ったりするケースがあることも明らかになった。こうした事情もあり、不正の立証がより確実な建築士法違反の適用をまず優先したとみられる。
 国土交通省が姉歯元建築士を告発した建築基準法違反容疑では、量刑は50万円以下の罰金だが、建築士法違反(名義貸し)は1年以下の懲役も可能となっている。

 こんなのありか? 「不正の立証がより確実な建築士法違反の適用をまず優先した」って笑いを取っているのか。耐震データ偽造事件と関係ないだろ。朝日新聞がほのめかしているように、懲役も可能というふうに罰を重くしたいという思惑なのか。
 ホリエモン逮捕についてもそうだが、朝日新聞”堀江被告公判 東京地検、証拠を開示 短期決戦へ”(参照)を読む限り、当初のしょっ引きと地検への持ち込みにスジが通っているようには思えない。また、このくだりも失笑するしかない。

一方、手続きの進行は、東京拘置所に勾留されている堀江前社長の保釈に影響するかもしれない。「公判前に争点が明確になれば、証拠隠滅の可能性は減り、勾留の必要がなくなるはずだ」と考える弁護士は少なくない。だが検察側は「主要な証人尋問が終わるまで隠滅の恐れがあり、それまで堀江被告の保釈はない」と強気の姿勢を変えていない。

 まったくホリエモン拘留の理由が私などには納得できない。
 むしろ、アローコンサルティング事務所箭内昇代表の「あえてホリエモン批判への異論を唱える」(参照)の意見のほうがすっきりする。

 そもそも会社法や証券取引法関連の刑事責任の認定は専門家でも難しい。会計上の解釈を伴うことが多いからだ。長銀事件でも関係会社向けの貸出金を不良債権とみなすかどうかが最大のポイントだったが、当時の一般的な解釈ではグレーといわれていた。
 今回のライブドア事件でも、たとえば投資事業組合を使った売買が自己取引かどうかは純粋に法律的にはグレーだ。
 だが、当事者が「粉飾」や「虚偽」を意図していた場合は完全にクロになる。だからこそライブドア事件でも検察はホリエモンに厳しく「自白」を迫っているのだろう。
 しかし、特に金融関連の事件について、金融庁などの告発を待たずにいきなり検察が乗り出し、しかも供述中心の証拠固めで攻め落とす手法には大いに違和感がある。

 話を戻して、耐震データ偽造事件について木村建設から何か出てくると警視庁などの合同捜査本部が確信しているのだろうか。確信しているのだろう。どうしてそんな確信がもてるのか、理解しづらいが、いずれ出てくるものを見てまた考えよう。

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コメント

戦前、警察が建築許可を出していたことを念頭に置けば、
今回の対応はそれほど不思議なことではないでしょう。
現在でも実務上、安全条例等で建築の制限を志向している
ところを見ると、建設関係の許認可業務を欲しているのがうかがえます。
そのせいか、権限を持っている消防とは仲が悪かったりしますけど。

投稿: 無給建築士 | 2006.04.18 12:28

「落とす=自白を強要する」ことが出来れば、別件だろうが、グレーだろうが構わないというのは大いに違和感ありますねえ。
世論に押されて「社会正義」ってのも大いに違和感あり。姉葉単独説は結構説得力を感じますし。コスト削減の強要があったことがただちに犯罪を形成するわけもなかろうと。
しかし自白中心主義を脱却したら刑法犯の検挙率が下がって治安が悪化するってのも困るし。
といっても、経済事犯の検挙にまで「なんでもあり」ってのも…。しかも「一罰百戒」の不平等性の気配。
ともあれ、自分が不条理にその立場に立たされたときのことを想像すれば、どんな場合でも「なんでもあり」は、願い下げです。

投稿: cru | 2006.04.19 00:53

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