ブッシュ・胡錦涛会談はなんだったのだろう
ブッシュ・胡錦涛会談はなんだったのだろう。二十二日付け朝日新聞社説”米中会談 試される「利害共有者」”(参照)が記すほどとぼけた話でもあるまい。
イラク戦争で「単独行動主義」の失敗を味わった米国と、国際的な地位を上げたい中国。両者の協調が形を伴ってくれば、春霞(はるがすみ)は消えて初夏の青空が広がるだろう。そう期待したい。
朝日新聞の冗談はさておき、CNN”ブッシュ大統領、胡首席と首脳会談 妨害行為に遺憾表明”(参照)を見るとやはり成果と呼べるものはなかったようでもある。昨今の課題としては、イラン問題が焦点になるだろうに。
ハドリー米大統領補佐官(国家安全保障担当)は首脳会談後、CNNとのインタビューで、両首脳がイランの核問題について「よく話し合った」と強調。「両首脳は、イランの核武装が地域の安定を脅かすとの認識をあらためて確認した」と述べた。
ブッシュと胡錦涛はイランの核について何を話したのだろうか。
というところで、そもそもイランの核を育ていたのは中国だったなと思い出す。しかし、なぜか最近そういう報道を見かけなくなった。
〇三年六月一一日読売新聞”イラン、未申告ウラン「中国から輸入」”ではこう伝えていた。一段落の短い記事なのであえて全文を引用したい。
イランが1991年に国際原子力機関(IAEA)に未申告のままウランを輸入していた問題で、同国のアガザデ副大統領兼原子力庁長官は10日、「ウランは中国から約1・8トン輸入した。(イラン中部の)イスファハンに原子力関連施設を作る目的だった」と述べた。副大統領はまた、「(輸入ウランは)全量が保存されている」と説明、核兵器への転用疑惑を改めて否定した。(アンマン 久保哲也)
それから三年経つのだが、そのウランの行方はよくわからない。国際原子力機関(IAEA)の元に管理されているのだろうか。
というところで、ウランを輸出側の中国だが、その中国が今やウランをオーストラリアなどに求めているのが現状である。この間エネルギー事情が大きく変わって輸出国から輸入国へ転換、というようなお話だったらいいのだが、そうではないだろう。つまり、中国がイランに輸出したのはウランだけというわけはなく、技術も付いていたはずだ。
さらに話が遡るが九八年三月一四日読売新聞”中国、イランとウラン製造で秘密交渉/ワシントン・ポスト紙報道”にはこうあった。
十三日付の米紙ワシントン・ポストによると、米国と中国が昨年十月の首脳会談でイランの核開発計画への協力中止で合意した後、中国がイランに対し、兵器用ウランの製造に役立つ数百トンの化学物質を輸出する秘密交渉を進めていたことが発覚した。
探すと、この手の話はついセプテンバー・イレブン前にはよく見かけたものだが、このところあまり見かけないようにも思う。
端的に言えば、イランの核を育てていたのは中国だったわけだが、その中国が現在の中国内のどういう権力と対応しているのか。
ブッシュ・胡錦涛会談で、いくらのんきなブッシュさんとはいえ、こうした背景を米国が知らないわけもなく、まして昨今のイランの強行姿勢に関連して中国にきちんと釘を刺すことをしてないとも思えない。
そういえば、竹島問題で日韓の衝突を回避すべく日本側をくじいたのは、毎日新聞”竹島問題:衝突回避 土壇場一転決着”(参照)ば米国だったそうだ。
「米国から圧力がかかった。このことは首相官邸にも伝わっている」
谷内正太郎外務事務次官のソウル派遣が決まった20日、政府筋はこう語り、米政府が日韓対立への懸念を非公式に伝えてきたことを認めた。東アジアは中国の台頭と北朝鮮の核開発という不安定要因を抱えており、「米国の同盟国同士でけんかするのはまかりならぬということだ」と別の政府関係者は分析する。
李承晩ラインの李承晩を育てたのは米国なんでそんなものかということかもしれない。あるいはあれがマッカーサー・ラインだからか。とはいえ、米国は案外細かいところで気を使っているのかもしれない。
| 固定リンク
« 形と実態 | トップページ | ソロモン諸島の暴動 »
「時事」カテゴリの記事
- 歴史が忘れていくもの(2018.07.07)
- 「3Dプリンターわいせつデータをメール頒布」逮捕、雑感(2014.07.15)
- 三浦瑠麗氏の「スリーパーセル」発言をめぐって(2018.02.13)
- 2018年、名護市長選で思ったこと(2018.02.05)
- カトリーヌ・ドヌーヴを含め100人の女性が主張したこと(2018.01.11)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント
竹島は、アメリカ様の日韓離間策時のためのスイッチなんでしょうか。だとして、そんなものもう必要ないのですが、アメリカ様には分からないのかな。
投稿: Sundaland | 2006.04.23 20:45
まぁ、アメリカの横槍はこの田舎芝居では最初から織り込み済みなんではないかな、と思います。つまり日本の意思だけで止めたのではなく、アメリカの圧力というカタチにしておけば、調査中止で韓国に譲歩したと国内的に謗られる可能性も減るわけです。
だいたい既に韓国はアメリカから見捨てられてますし(というより韓国自身が中国側に寝返ってる現状をアメリカが認識してるというか)、一方で日本までアメリカを不甲斐なく思い始めて中国側につくことをアメリカは恐れてますからね。
日本としては韓国が実効支配してる根拠の怪しさを国際的にアピールできた時点で目的を達したんじゃないかなー。
投稿: ■□ Neon/himorogi □■ | 2006.04.23 20:53
>昨今の課題としては、イラク問題が焦点になるだろうに。
ここをはじめ、何カ所かイランとイラクを間違えてませんか?
あと、米国の横槍は韓国にもあったでしょう。反米運動を刺激しないために報道されていないだけで。
日本がアメリカの横槍をうまく利用したというところではないでしょうか?
投稿: Baatarism | 2006.04.23 22:20
Baatarismさん、こんにちは。ご指摘、ありがとうございます。とりあえずの部分修正しました(ココログが事実上編集出来ません状態)。
投稿: finalvent | 2006.04.23 23:01