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2006.03.15

量的緩和政策の解除だって

 量的緩和政策の解除について、私にはよくわからない。だから、ちょっとだけ書いておく。
 量的緩和政策は、庶民的な感覚からすれば、結果的に、家計部門から金融部門への所得移転、つまり、庶民の貯金が利息で増える分を銀行の儲けにしちゃったなということだった。その損失額は三百四兆円だという試算もある。日経”超低金利で家計に304兆円の「損」・日銀試算”(参照)より。


 日銀の白川方明理事は23日の参院財政金融委員会で、バブル崩壊後の超低金利で家計が得そこなった金利収入が累計で304兆円にのぼるとの試算を明らかにした。長引く金融緩和が家計に大きなしわ寄せをもたらしたとの見解を示した。

 もっともそれだけ金利が得られる状態という仮定は正しいかとか、金利がそれだけ得られる状況なら企業活動も活況であり所得も増えただろうといった議論も成り立つのかもしれない。私はよくわからない。が、たとえ所得が増えてもその再配分は現状より良かったかは疑問だ。老人や若者へはやはりしわ寄せになったのではないか。
 また、低金利時代でも銀行が儲けを出していたということは、ちょっと小狡い頭があれば、それ以上の金利はどっかで稼げたってことだろう。
 どっかって?
 ニューズウィーク日本版3・22、ピーター・タスカ「量的緩和解除の落とし穴」がヒントになりそうだ。

 もっと注目すべきなのは、バブル崩壊後の日本の投資家が停滞した自国経済を敬遠し、海外に資金を回したことだ。アメリカの債券市場を中心に、ニュージーランド・ドルなど高利回りの通貨や、債務担保証券やファンド・オブ・ファンズ、プライベート・エクイティーといった新しい金融商品にも資金が流れ込んだ。
 日本の資金が国内で投資されるようになれば、これまでの投資先は主要な買い手を失いかねない。日本の投資家のように、過大評価されている資産に喜んで大金をつぎ込む買い手は、二度と現れないだろう。

 皮肉屋のタスカらしいフカシと言いたいところだが、それでも前提として、日本の投資家は自国経済を敬遠して稼いでいたとは言えるだろう。ま、そんなことは庶民にはできないから銀行が儲けたんだよなと私なんぞは思う。
 タスカの懸念についてはよくわからない。この先を延長していくといろいろ愉快な陰謀論もできそうなのだけど、そうした推測は私には向かない。それ以前に、量的緩和=低金利という理解はどうよというのもあるだろう。
 話を戻して量的緩和政策の解除はこれでよかったのか。私は以前からそうだが、こうしたテクニカルな話は海外メディアのほうを信頼している。フィナンシャルタイムズはなんと言っていたか。
 ”Bank of Japan starts the return to normal”(参照)では、二点強調していた。

Two points need to be stressed: the first is that deflation has barely ended; the second is that monetary growth remains feeble. Note that the consumer price index (less food) in January was still 2.7 per cent below where it had been in December 1997 and was also no higher than in August 2002. Yet price levels as well as changes in price levels matter, since a long period of falling prices has increased the real burden of debt. Moreover, over the last two years the average rate of growth of broad money has been under 2 per cent. This hardly suggests monetary conditions have been too easy. The withdrawal of excess liquidity may shrink the money supply or at least slow its growth. That hardly seems wise after so long a period of deflation.

 一つは、日本のデフレは辛うじて終わった、つまり、ぶっちゃけ終わってないよ、ということ。違う? 私にはごく当たり前の現状認識だと思えるけど。
 二つめは、通貨供給量増加という点ではまだまだ弱々~、ということ。なので、過剰流動性が抑制されると通貨供給量増加もなくなる。"That hardly seems wise"というのは、馬鹿みたいじゃん、ということ。締めはこう。

The Bank of Japan has now taken a step towards the orthodox and is taking a risk in doing so. Let us hope that it will not, as a result, damage the recovery now under way.

 最後の一文はうっとりするような英文だな。シェークスピア演劇みたいだ。でも、この英国風の言い回しを普通の日本語にすると、馬鹿みたいな量的緩和政策の解除はヤメレってばさ、となるのではないか。
 とはいえ、事実上、短兵急な動きはないので、どうということでもない。ロイター”日銀の量的緩和解除に対し、市場は予想通り冷静な反応=IMF高官”(参照)はこう伝えている。

国際通貨基金(IMF)高官は13日、日本銀行による量的緩和政策の解除について、金融市場はこれを冷静に受け止めたとの見方を示した。

 つまり、やっぱり、とりあえず、どうってことはないのだろう。

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コメント

野口旭さんの<エコノミストたちの歪んだ水晶玉 経済学は役立たずか>はお読みになったでしょうか

投稿: | 2006.03.16 17:53

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» 量的緩和政策について [texte]
極東ブログ: 量的緩和政策の解除だって 極東ブログより. まあこれについてコメントするほどの知識もないが,いわゆる公定歩合について,現実に教科書通りの効果が得られるのかには興味がある.まあ消費者心理とでもいうのだろうか,金利を極端に下げることによる消費の落ち込みはじっさいかなり大きいのではないか.うーん,ここでは単にメモ書きにしておく.... [続きを読む]

受信: 2006.03.17 00:01

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