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2006.03.05

ダルフール危機がチャドに及ぶ

 三日付けUNHCR ニュース速報”チャドとスーダン双方から国境を越える人びとが続出”(参照)で、チャドとスーダンの国境地帯の治安が悪化したことから、その両方向の難民の移動が報告されている。端的に言えば、チャドのダルフール化が進みつつある。この機に、その後のダルフール危機についていくつか気になるところをメモしてみたい。
 二月二十八日共同”ダルフール人道危機、チャドにも拡大 米紙報道”(参照)はニューヨーク・タイムズの孫引きで次のように伝えていた。


 28日付の米紙ニューヨーク・タイムズは、スーダン西部ダルフール地方のアラブ系民兵が隣国チャドに越境し、抵抗する住民を無差別に殺害、少なくとも2万人のチャド人が家を追われ、国内避難民化していると報じた。

 スーダン政府を背景とするジャンジャウィードがチャドに侵入していると見ていいのだろう。
 同記事ではアフリカ連合(AU)軍の限界も伝えている。

ダルフールには7000人規模のアフリカ連合(AU)部隊が展開しているが、資金難のため近く国連に任務を引き継ぐ見通し。国連は1万―2万人規模の新たな大型平和維持活動(PKO)部隊派遣計画の策定に入っている。

 識者は当初からAU軍では問題の解決にほど遠いことを認識してはいたものだが、私も含めてできればAUがこの問題を解決できればという期待を持っていた。もう限界とすべきだろう。
 およそ大規模な虐殺を制止させるにはそれなりの対処が必要になる。個々人の倫理に還元できる問題ではまるではない。
 ダルフール危機については死者数がわからない。日本での報道は私の見た範囲では初期の七万人説があるくらいでその後それ以上の被害であることがわかりつつあるが死者想定数が消えた。「極東ブログ: ダルフール危機報道について最近のメモ」(参照)で触れたように、四十万人という理解が妥当なのだろう。
 共同はニューヨーク・タイムズの孫引きをしていたが、同紙の二月二十二日付けの社説”Beyond Strong Words on Darfur”(参照・有料)では、一瞬これは本当にニューヨーク・タイムズかと疑問に思えるようなブッシュ大統領の支持から切り出されていた。

It's good that President Bush is now talking tougher about the need for more robust military action, including increased support from the NATO alliance, to stop the killing in the Darfur region of Sudan. What would be even better would be a United States commitment to provide specialized reconnaissance and air support for the United Nations force being planned for Darfur later this year.

 ちなみに結語はこう。

It's not America's job to police the world. But Darfur is a special case, which the Bush administration has rightly described as genocide. Mr. Bush has shown that he understands the scope and urgency of Darfur's crisis. The next step is for him to accept the role America needs to play in a timely solution, before thousands more people needlessly die.

 ベースにはAU軍限界の認識がある。それにしても、いわゆるリベラル派からようやくNATO軍もという線が見えてきたことはこの問題の認識の広がりを示すものだろうとも思われるし、EUの状況の変化も大きい。この間、イスラム暴動なども大きなうねりとなってか、フランス、というかシラク大統領は親米的な路線に転換した。
 日本もあまり対岸にいるということもできなくなるのだろう。二日付け共同”米大使、スーダンPKOで日本の部隊派遣に期待”(参照)ではボルトン米国連大使の日本への要望を伝えている。

 ボルトン米国連大使は一日の共同通信との会見で、国連が検討しているスーダン西部ダルフールへの新たな平和維持活動(PKO)部隊派遣について、PKO設置が決まった場合には「日本が(部隊に)参加してくれるなら大歓迎だ」と期待感を示した。

 問題のもう一つの軸はいうまでもなく国連である。改革は迷走しているかのようにも見える。なかでも国連改革の主眼とも言われる人権理事会設立がうまくいかない。今日付の共同”国連人権理、土壇場で難航 議長案に米が“拒否権””(参照)はこう伝える。

理事会設立は昨年9月の国連総会特別首脳会合で合意。現在の国連人権委員会(53カ国)には、政府系民兵による住民虐殺が指摘されるスーダンなどが名を連ね、「完全に破たんしている」(ボルトン米国連大使)との批判が出ている。このため、理事会に格上げし機能強化を図ることになった

 共同は曖昧にしか触れていないが、中国の思惑はある。

中国の王光亜国連大使も「(当面の課題が一段落する)6月末ぐらいまで議論を封印する方向に傾きつつある」と話しており、13日までに打開策が見いだせない場合は設立がずれ込む可能性が高まるとみられる。

 ちなみに同記事の次の結語は呆れて物が言えない。

常任理事国の拒否権を盾に、安全保障理事会を仕切ってきた超大国、米国。今回の動きは「一国一票、拒否権なし」の総会でも、状況次第では米国が事実上の拒否権を行使できる国連の実態を映し出した。

 先のニューヨーク・タイムズ社説の危機認識とあまりに差がありすぎる。

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コメント

まずい…まずいですねこれは…。
AUが軌道にのってくれればベストなんでしょうが、先日NHKのBSで見た限りでは、入り口の段階で躓いている状態で、とてもきたいでそうもなし。
ルワンダでもそうだったですが、数千単位の部隊ではとても収集つかないと思います。イラクに送る以上のリスクが目に見えます。
せめて中国様が、武器の供給等を控えて…というのは、公にできないものなんでしょうね。

投稿: とまと | 2006.03.05 22:18

例の諷刺画問題はムスリムの不満に火を点けてEUをアメリカに接近させる陰謀が?
なんて妄想したくなります。

投稿: 煬帝 | 2006.03.05 23:52

いつも勉強させていただいております。
米国のテレビドラマER(シリーズ12)でダルフール関連の
エピソードがありましたので、トラバさせて
いただきました。エントリも紹介させていただいて
おります。ご参考まで。

投稿: taka | 2006.03.11 01:52

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う〜ん時間が無い。というわけで前回までのような 正確なリキャップができません。しかもなぜかテレビ画面 上に頼りのキャプションが出せず、管理人のおぼつかない リスニング能力に [続きを読む]

受信: 2006.03.11 01:49

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