« ユダヤ人 | トップページ | 量的緩和政策の解除だって »

2006.03.14

あの時代、サリン事件の頃

 地下鉄サリン事件が起きた一九九五年三月二十日、私は東京に居なかった。沖縄の海辺で無意味に暮らしながら、かつで自分がよく乗った地下鉄のことを思い出していた。その一年前なら、私は殺されていたかもしれないとも思った。一九五七年生まれの私は、一九九四年、三十七歳だった。私より一回り年下の一九六九年生まれの人なら、あの時、二十五歳だっただろう。そしてその人は今年三十七歳になるのだろう。
 沖縄に持って行った本はごく僅かだった。本など読みたくもない時期だった。例外は「沖縄キーワードコラムブック」。この本にはあの頃の沖縄の現在が感じられた。初版は一九八九年、沖縄出版より。翌年続巻が出た。編集のまぶい組が後のボーダーインクになったかと記憶しているが違っているだろうか。ボーダーインクのワンダーはそれから購読していたが、昨年末に終刊した。先日バックナンバーフェアが開催されていたと聞いた。琉球新報”「ワンダー」が終刊 バックナンバーフェア開催”(参照)より。


足かけ16年にわたり編集長を務めた新城和博さんは、終刊について「これまで沖縄ブームを横目でにらみつつ、一つのサイクルが終わったかな、という感じ」と語った。
 フェアでは、同誌のバックナンバーをはじめ執筆者ら関係した人の著書を販売、表紙を手掛けてきた大城ゆかさんのイラストも展示されている。

 私も一つのサイクルが終わったのだと思う。大城ゆかのイラストも好きだし、「山原バンバン」(参照)は愛読書だ。いろいろ思いが去来するが、今でも、と言ってもいいだろう。ところで、なんで「山原バンバン」かって? 教えないよ。
cover
美麗島まで
 「沖縄キーワードコラムブック」のコラムニストのなかで、その名前をどうしても覚えてしまったのが与那原恵だった。「美麗島まで」(参照)の奥付で確認してみたが、やはり「よならはらけい」と読む。その読みの齟齬のような話も「沖縄キーワードコラムブック」には書かれていた。
 彼女は一九五八年、東京生まれ。私と同級生か一学年下か、いずれ東京で同じ時代の風景を見てきた。彼女はあの頃(今でもだろうが)頻繁に沖縄を訪れ、しかし東京に戻っていたことだろう。
 彼女のエッセイで忘れられないのは、当初「宝島30」に掲載された「フェミニズムは何も答えてくれなかった―オウムの女性信者たち」だ。これはその後、「物語の海、揺れる島」(参照)に収録された。書架にあるはずだと探したが、見つからない。貴重な写真が掲載されている本でもあるので、もう一冊購入するか。
 元の文章に当たることができないので記憶に頼るのだが、「フェミニズムは何も答えてくれなかった―オウムの女性信者たち」はまさに標題通りのルポだった。年代的には、与那原のように三十半ばから二十代半ばまでの女性たちが、ある何かをフェミニズムに求めたがそこから答えが得られずに、オウム信者となったというものだった。もちろん、私の記憶違いもあって重要なディテールを取り違えているかもしれない。が、私はそれを雑誌で読み、エッセイ集で読みながら、そうなのだろうと思っていた。フェミニズムに答えがなかった、というある感触はよくわかった。フェミニズムはここではもっと広義にしてもいい。
 もちろん、私は男で、女性の二十代後半からの生き様が抱え込む問題というのはわからない。だが、そう言っておきながら矛盾するが、わかるという感触は持っていた。現在、非モテとして若い男性が議論しているテーマのいくばくかはあの時代のフェミニズムへの希求に似ているのではないかと思うが、そういえば反論されるのでしょうね。
cover
笑う出産
やっぱり産むのは
おもしろい
 オウムに答えを求めたその年代の女性たちはその後どうしたか? わからない。たぶん、答えはさらになかったのだろうと思う。そして、その喪失の始まりは、やはり一九九四年頃のある時代の空気として覆っていたとように感じられる。書籍で象徴するなら、まついなつきの「笑う出産―やっぱり産むのはおもしろい」(参照)が出たのが、一九九四年。ベネッセが「たまひよ」を出したのはその前年の一九九三年。失われるはずの十年の明るいといえば明るい前哨戦のようでもあった。アカルサハ、ホロビノ姿デアラウカ。
 そして十年が過ぎた。「わたしたち」はどこに行ったか。もっとも、そのレンジは、現在の三十五歳から四十五歳というあたりとぼける。世代論的な区切りというより、あの何かを求めた空気を背負った部分だ。
 私についていえば、ブログなんてもので饒舌に語り出した。しかし、言葉にもならない薄闇のような思いはある。そして、しだいに語りづらくなりつつもある。

|

« ユダヤ人 | トップページ | 量的緩和政策の解除だって »

「歴史」カテゴリの記事

コメント

読んでたら涙が出てきました。

投稿: Applood | 2006.03.14 19:31

 みんなネタ無いのね。松永さん話がトピックスとはいえ、安易に乗りすぎでしょ。とか言って。

 ちなみに私はサリン当時東京某所で徹夜仕事をしておりまして。丁度その日に限って丸の内線で帰ろうとしてたんですな。理由は、丸の内線は綺麗なお姉さんが多いから。
 さて帰るかと思った頃になって別件の仕事が急遽入ってきて居残りさせられ、結果的に被害に遭わなくて済みました。別件の仕事が入ってこなかったら、時間的に被害に遭っていても不思議じゃなかったですな。
 今となっては、運が良かったな、と思うほかないんですけど、それでは話が済まない人も多数おられるわけで。

 人生いろいろ、人それぞれとしか言いようが無いです。

投稿: 私 | 2006.03.14 21:59

もう十一年ですか。
サリン事件は私が勤める会社の真下で起きました。
当時その会社は結構耳目を集めていて、てっきり右翼か何かが、嫌がらせの為に、ガスみたいな物を撒いたのではないかと言われてました。

投稿: durian | 2006.03.14 23:29

なんだかのんびりしたコメントが多いですが、そんな事を言っている場合じゃないですよ。

松永英明氏(はてなid:matsunaga)氏の件ですが、

はてなのほうにも書かせていただきましたが、かなり重要なことなので、(というか、finalventさんが心配です)こちらにも書かせていただきます。

特に「はてな」内で彼がつるんでいる元オウムメンバーたちは危険です。
オウムの一連の犯罪に松永氏がどれほどの関与があったかはわかりませんが、実行力だけはある連中ですから、本当に気をつけてください。

以下、はてなの投稿のコピペです。

氏は今でもアーレフのメンバー(それも高い地位)だとの情報もありますし、
finalventさんもあまりこっちには関わらないほうがいいのでは・・・
オウムのライターとして、1995~2000年ごろには「河上イチロー」名でかなりの影響力を持ったライターだったようですね。
・あめぞう残党watchその2
http://ex9.2ch.net/test/read.cgi/net/1130934064/
を見ると、彼の他にもオウム真理教の残党は「はてな」を拠点にしているようですね。

以下、松永英明氏関連のリンクです。
------------
カーマ=アニッチャ=パンニャッタ=パンニャーヤ=ムッタ=デーヴァ
こと福井利器(ふくい・としき)、現在「松永英明」、
河上イチローことデーヴァ福井利器さん関係の秘蔵資料をご紹介します。
http://yokohama.cool.ne.jp/sinzinrui/deeva.html
あめぞう残党watchその2
http://ex9.2ch.net/test/read.cgi/net/1130934064/
河上イチロー=F氏(オウム信者)=松永英明=きっこ?関係検証スレ
http://news18.2ch.net/test/read.cgi/news2/1142093764/
---------
野田敬生 ESPIO
http://espio.air-nifty.com/espio/
某弁護士日記
http://sky.ap.teacup.com/takitaro/
河上イチロー極限資料集
http://www.makani.to/cult/special/kawakami.html
松永英明ブログ
http://d.hatena.ne.jp/matsunaga/
http://kotonoha.main.jp/
nekoneko―これまでの経緯
http://d.hatena.ne.jp/nekoneko/20060309#p1
Artaneのブログ
http://d.hatena.ne.jp/artane/
きっこの日記
http://www3.diary.ne.jp/user/338790/

---------
2ch関連

投稿: hiroshi | 2006.03.14 23:34

2ch関連です。

http://find.2ch.net/?STR=%BE%BE%B1%CA%B1%D1%CC%C0&COUNT=50&TYPE=TITLE&BBS=ALL

http://find.2ch.net/?STR=%A4%AD%A4%C3%A4%B3%A4%CE&COUNT=50&TYPE=TITLE&BBS=ALL

投稿: hiroshi | 2006.03.14 23:35

東京で地下鉄に乗る生活になるとは想像もつかなかった25歳でした。10年前。

ああ、1年になるんだなぁ。と思ったその日、白馬で友達が事故に遭い他界しました。

それから今まで、海外旅行中の友達をテロで亡くしました。

ああ、友人が亡くなったりするんだなぁ。と、実感せざるを得ない10年でした。

地下鉄の中で無造作に置いてある缶(ゴミ)を見て、ゾッとする時があります。

投稿: ucco | 2006.03.15 00:59

黒崎さん自身が若い時分に病的に強い影響を受けたオイディプスコンプレックスの経験があって、それを投射したのかも知れない。
洗脳、マインドコントロールへの警戒感が当初から強かったように思う。
私なんかはオットリしてるから、ママゴトが化けるかナーぐらいだったんだけど。
まぁ、緩やかならば洗脳もマインドコントロールも巷にありふれてるような気がして、危険視しても仕方ないと思う。

投稿: トリル | 2006.03.15 02:47

以上、想像でした。

投稿: トリル | 2006.03.15 02:48

>>トリルさん

地下鉄サリン後、自分に到底理解できないであろうことに洗脳だのマインドコントロールだのと言って恐怖を与えるその手の話は聞き飽きました。
その手法こそマインドコントロールそのものなのだと何故気づかないんだろう。
あんな事件があったのだからちゃんと科学的に定義したほうがいいと思います。いまだにそれができないで言葉だけが独り歩きしています。

投稿: cyberbob:-) | 2006.03.15 06:36

↑科学的な定義は大概反応が遅いか結論出るのが遅いので、その間に侵食される可能性を打ち消すために(恐怖感による)逆洗脳状態を施すのは、ある意味理に適ってるんじゃないかと。万全とは言いませんけど。
 科学って根源はカルト行き着く先もまたカルトって認識ですかね。そもそも宗教学から発達したものですし。

 孫子読め、のほうが対処法としては宜しいんじゃないかと。

投稿: 私 | 2006.03.15 10:15

>アカルサハ、ホロビノ姿デアラウカ。

 お日様が昇ってるのを観ていずれ沈むと思うに似たり。そんなときは、日はまた昇るとでも思えば又吉。

 沖縄逝かずにラテンに逝けばよかったのに。

投稿: 私 | 2006.03.15 12:04

でも又吉は沖縄なのでは

投稿: | 2006.03.15 13:40

安田好弘弁護士がらみでいろんな報道があった日の記述でもあることを、ここに記しておこう。

投稿: synonymous | 2006.03.15 17:00

孫子嫁、か。
賢い消費者教育の方が、庶民的で良いんで内科医?
逆に広告代理店の手法やセールスマニュアルを消費者に教えるとか?
定義をしても、ほとんどの人が強度の差・質の差が線分上に並ぶだけじゃなかろうか?
一旦付いた恐怖心は取り除けないんじゃ無かろうか?
行き過ぎた暗示がお互いにセーブできるように会話をしたいね・・・・そうするとセールストークは不可・資本主義も不可か?

投稿: トリル | 2006.03.16 01:50

マーケティングと洗脳とでは、思考範囲の拡大を狙うか縮小を狙うかでまったくの別物です。
ちゃんと使い分けたほうがいいですよ。

投稿: cyberbob:-) | 2006.03.16 09:56

>cyberbob:-) |さん

拡大・縮小?
本当かね?
其れは目の前の現実に当てはめるにはあまりに単純でめでたくないかと私は思うけど。

いや、比較研究には有効だと思うy。

投稿: トリル | 2006.03.16 22:04

前者は多様性を志向しますが後者は排他的になります。
恐怖心はそのものを科学的にしらべることによって取り除けます。
と思うのですが、どうなんでしょうねえ。

投稿: cyberbob:-) | 2006.03.16 22:32

>恐怖心はそのものを科学的にしらべることによって取り除けます。

 これは、さすがに「研究者の傲慢さ」だと思いますが。取り除けませんて。取り除けるなら前世紀までに完了してますて。

投稿: 私 | 2006.03.16 22:59

アントレプランナーの身体を張った自爆ギャグの方が多様性の指向があると思う。

自分はマーケティングは拡大よりも分類や囲い込みという風に捉えている。
枠からはみ出るには予測できない世界に飛び込むしかない。

投稿: トリル | 2006.03.17 00:08

×アントレプランナー
○アントレプレナー

だったっけ?

投稿: トリル | 2006.03.17 01:18

>自分はマーケティングは拡大よりも分類や囲い込みという風に捉えている。

 私は、マーケティング=囲い込み、くらいに考えてました。なので、洗脳・マインドコントロールと親和性が高いのかな、と。
 どっかのマーケ屋さんも宗教経験おありのようですし、そういった系統の方々は洗脳・マインドコントロール系の技術・話術を、稚拙ながらも使おうとするでしょ。なんつって。

投稿: 私 | 2006.03.17 02:10

自営業としてのR30さんは自爆ギャグ付きで利用はフリーなので、楽しませていただいてます。
マーケティング=コンサルタントってのは仕事そのものが・・・・・ムニャムニャムニャ。
いやいや、そういう人の助言を必要?としている方たちが居るんですよ、金出してでも。
きっと頭が良すぎて自分が何をしたら良いのか判らないというのを逆手に取るにはおもろいポジションかも知んないです。
気が狂うか、ぶっ飛んでしまわないか、半分ワクワクしていますけど。

投稿: トリル | 2006.03.17 03:28

そういや、フナイ総研も宗教臭いね。
手帳とか雑誌が定期みかじめ料でお守りなの。
総会屋は?キネマ旬報はどう?
歴史があって重々しくなると宗教ポなるか?
ま、もうどうでもいいや。

投稿: トリル | 2006.03.17 23:44

>歴史があって重々しくなると

…かどうかは知らんですけど、勝手知った身内同士でつるんでるときは宗教ウゼー、で。よく知らないけど有能な人? が沢山入って勢力作るようになると、そこに宗教が発生すると思ってますが。
 「組織」なんてまさにそのものですし、変にデッカクなっちゃったら宗教臭いと思いますなあ。

 短期間(5年以内)で急速にデッカクなるとこなんか、ヤクザ・宗教以外にありえねーって感じ。

投稿: 私 | 2006.03.18 00:07

 老病死苦や不慮の事故なんかを扱う区域職域も宗教臭い。人間にとって絶対の領域を食い物にするから、たち悪いなぁって感じ。

 アンタッチャブルは放っとけ、っての。

投稿: 私 | 2006.03.18 00:10

絶対の領域は変人押し通すしかないか(苦笑)

お米美味しかった、とR30さん?
以前、話振ってたけど、釣れた?「私」さん。

馴れ馴れしくて御免ね、ちょっと気になってたのよ。

投稿: トリル | 2006.03.18 02:23


>お米美味しかった、とR30さん?
>以前、話振ってたけど、釣れた?「私」さん。

すまんですが、意味がよう分からんです。

投稿: 私 | 2006.03.18 11:57

ん。

「私」さん、わざわざ意味の分らん文章に答えてくれてありがとう。

その話は取り下げます。

投稿: トリル | 2006.03.18 18:45

ところで、アルファコメンターという便利な言葉は初めて目にしたんですが、finalventさんの、えーと、発明なんでしょうか?
いや、色んな意味で的確だなと。
括って語るのに面白いかも知れんですね、ソレ。

いや、長々と済みません。

投稿: トリル | 2006.03.19 02:09

ググると、あまり無さそうだけど既出でしたね、アルファコメンター。
進化するとアルファコメンテーターになる?
鮫島さんガンバ!!

投稿: トリル | 2006.03.19 21:24

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: あの時代、サリン事件の頃:

» [雑文]信仰告白 [早く人間に成りたーい。right]
言葉の磁場 http://shinta.tea-nifty.com/nikki/2006/03/religion_28b9.html あの時代、サリン事件の頃 http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2006/03/post_3708.html なんか、オウムが騒がれていた頃に関して色んな人が振返っていらっしゃる。 自分は今は24歳なので、自分的にあの時代と言えばオウムより酒鬼薔薇聖斗。 あの事件が起こったことをテレビで知った時、14歳の... [続きを読む]

受信: 2006.03.14 23:10

» カリスマブロガー・松永英明氏ファンクラブ結成! [松永英明さんファンクラブ]
現カリスマブロガー・絵文録ことのは著者、はてなの本著者、 元オウム真理教(現アーレフ)幹部・松永英明氏(id:matsunaga) (河上イチローさん・福井利器(ふくい・としき)さん)ファンクラブを結成しました。 まずはこのへんから・・・ http://www.sv15.com/diary/matunaga.htm 有名ブロガー・松永英明氏が元オウム信者と告白 ミニまとめ http://d.hatena.ne.jp/syujisumeragi/20060315 はてなは松永氏とともに沈没すべきでは... [続きを読む]

受信: 2006.03.15 20:02

» [ことのは騒動] 「カミングアウト」直後の虚脱な調子  [けろやん。ブログ。]
  昔からこのブログを読んでくださる方、及び「canon rock」検索して辿り着かれた方、ブログ世界の話が続いていて、恐縮です。しばらく、お付き合いいただければ、と思います。 −−−   「ことのは騒動1.0:宴の前夜「ゴシップ」調子」の続きです。当該エントリの最後... [続きを読む]

受信: 2006.05.20 19:28

« ユダヤ人 | トップページ | 量的緩和政策の解除だって »