PSEマーク問題雑感
PSEマーク問題にはそれほど私は関心がない。中古家電品と自分の生活の関わりがあまりないためだ。中古品市場に何か売ることもなければ、そういう市場から家電品を買うこともない。しいていえば十五年くらい前に販売されていた遠赤外線焼き芋焼き器がもう一機欲しいかなくらいのもの。その程度の認識の人間がこのエントリを書く。詳しい話はわからんということ。
PSEマークとはなにかついての基本の話は省略。その基本の解釈がいびつになったゆえに問題化したした側面があるにせよ。
この問題を聞いたとき、というか、ネットに反対運動が展開されたり、煽りかなと思えるようなエントリをいくつか目にしたとき、私が思ったことは、省エネタイプでない家電と世界基準の安全性のない家電はアファーマティブにリニューされてよいということだった。
そう思った最大の理由だが……。私は過去十五年間、何回引っ越ししたかな、よく引っ越しをして、その都度エアコンなどを買い換えた。こうしたおり、日本の家電はこの間、私の印象では省エネ技術と安全性の技術がどんどん進展していているのがわかった。これはすごいなと思った。エアコンについては十年ものにさっさとリニューを促す条例でもあれば省エネにいいのにとすら思ったほどだ。安全性についても同じ。グローバリゼーションというとネットではなんとなく批判の対象のようだが、家電品の安全性はグローバリゼーションで向上したように思えた。
まあ、そんなふうに思っているので、メモがてらの公開日記に「省エネタイプでない家電と世界基準の安全性のない家電はアファーマティブにリニューされてよい」と書いたら、いきなり匿名の批判コメントをもらった。もちろん公開日記だし、ある程度コメント制限はあるにせよコメントは公開しているのだから反論コメントがあってもいいのだけど、そのいきなりという感じと、理由なしで反意を私に向けてくることに、すごく違和感を持った。
というか、ああ、これか、と思った。PSE問題で、谷みどり経済産業省消費経済部長のブログが炎上したという噂も聞いていたが、これはきっと、ネットのなかでのPSE発言をチェックしまわる工作部隊のようなものがあるのかもしれないなと思ったのだ。私はそういうネットの活動が甚だ不愉快なので、宇多田ヒカルのKeep Trin'の「どうせなら標的になって泥に飛び込んで~♪」やろかいとも思ったが、率直に言って冒頭ふれたようにPSEマーク問題の重要性がわからん。へたれとこ。
こうした個人的なネットでの経緯もあって、今回のPSE問題はなんだか反対者がうさんくさいなと感じていた。なんかぜんぜん違う利権の背景があるんじゃないのかと疑問にすら思った。
昨日たまたまNHKのニュースを見ていたらこの問題についての経済産業省の最新アナウンスと解説があり、私の理解では、これってすっかりザル法というかナンセンスになった。関連のネットソースとして、読売新聞”PSEなし中古家電の販売、事実上容認”(参照)より。
電気用品安全法の安全基準を満たしたことを示す「PSEマーク」のない家電製品(259品目)が4月から販売禁止になる問題で、経済産業省は24日、マークのない中古家電について、当面の間、同法の対象外となっているレンタル扱いにすることで事実上、販売を容認する見解を表明した。
中古品販売業者が顧客に商品を一定期間レンタルした後に無償譲渡することを認める。中古品販売業者から猛反発を受けたための措置だが、安全対策そのものが骨抜きになる恐れもある。
この問題の一つの側面は、その「安全対策」である。サイト「市民のための環境学ガイド」の記事”電気用品安全法は悪法か”(参照)ではこう触れている。
安全を追求することによる消費者保護。検査を必要とすることによるコスト上昇。さらには、製品の廃棄を促進する可能性も皆無ではない。いずれにしても、こんな意味でのトレードオフが明確に見える法律だ。実害はそれほどでないと思われるので、まあ、トレードオフというものの存在を認識するには、良い練習問題のように思える。
安全とのトレードオフという課題が原理的には残ると言えるのだろう。
ただ、現実問題として中古家電品がどれほどの危険性を孕んでいるかというとそうでもないだろう。このあたりは先日話題になっていた松下ファンヒーターなどの問題とも関連する面はあるだろうが、いずれにせよ、リスク評価を日本社会がどう受容するのかということで、ま、現状でええんでないということであれば、ザル法でもいいということはあるだろうし、トレードオフということは、些細なリスクを捨ててもいいじゃんということでもあるだろう。
NHKのニュースの後でぼんやり思ったのだが、今回の電気用品安全法は、そう騒がずとも最初から経産省の不備でダメだったんじゃないか。
日本の官僚システムは業界団体を牛耳ることで権威を維持しているわけだが、今回のこの分野では該当業界を掌握できてなかったのだろう。やはり、きちんとした行政には、官僚の天下りを含めた強い利権の構造で業界を掌握するという前提が必要になるものだ。
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コメント
法の内容よりも原案にはなかった拡大解釈を行い中古も規制対象にし、告知も十分にされていなければ
そりゃ、中古業者にとっては死活問題だから騒ぎたくもなるでしょうね
投稿: うんこー | 2006.03.25 12:33
反対する皆様方のノリに、なにか人権擁護法案反対運動の方々との類似性を感じますね。
あまり根拠もないので陰謀論ですが。
投稿: 自由の敵 | 2006.03.25 13:18
>中古品販売業者が顧客に商品を一定期間レンタルした後に無償譲渡することを認める
「一定期間レンタルした後に無償譲渡」というのは、(株)生活創庫が営業方針として以前からマスコミ発表してたことなので、当然、経産省も認知してるとばかり思ってましたが………
投稿: ss | 2006.03.25 15:04
中古業者も対象にしたのは建前で、あんまり本気で取り締まる気は無かったんだけど、話が大きくなってしまい困った。……って感じじゃないっすかね。
ゲーオタの友人はレトロゲーム機が買えなくなると憤慨してました。
投稿: yoo | 2006.03.25 15:59
「まともに守ることが不可能な法律を作っておいて恣意的におめこぼししたり罰したりする事で陰に権力を行使する」というおきまりのパターンでしょ。これ大嫌い。
今回の件は池田信夫のこの文章がいちばんしっくりきた。
http://blog.goo.ne.jp/ikedanobuo/e/c67a9f430ffeae2f6c7b7f02478cd1de
投稿: き | 2006.03.25 17:49
便利さが向上したってのはわかりますけど、
安全性が向上したっていうのはあまり賛成できないですね。
松下のヒーターのように生命の安全を脅かすものの数が、10年前と今で減少していっているとは思わないので。10年前の制度の元、そんなに危険な製品無かったんじゃないですか。事故の増減ってそんなにあるのかな?
投稿: ほげほげ | 2006.03.25 18:24
家電製品を生産するためには、当たり前のことですが、エネルギーが必要となります。家電のエネルギーを論じる際には、消費電力だけでなく、この生産エネルギーも考慮する必要があると思います。
消費電力の大きい(まだ使おうと思えば使える)旧型品を捨てて、消費電力の小さい新製品を購入する。これでもって、トータルのエネルギー(製品生産に要するエネルギー & 製品を利用する際の運用エネルギー)を削減できる可能性がある家電製品は、
・消費電力が数百ワットレベル
・毎日、長時間の使用
・技術革新により、十年前の製品に比べて電気の使用量がおよそ1/2~1/3
の三つの条件が揃ったエアコンと冷蔵庫くらいでしょう。
もちろん、製品や使い方次第では、旧型品を使い続けた方が、トータルのエネルギーが低い可能性も十分あり得ます。
話題となっているPSE法は、エアコン・冷蔵庫だけでなく、あらゆる家電が対象です。エアコンだけを例に取って議論されるのは、こぼれ落ちる物も少なくないと思われます。
#松下のファンヒーター問題の本質は、機器の老朽化によるものではなく、機器の設計および修理方法に問題があったように思われます。
投稿: フランスパン | 2006.03.25 21:20
興味深く読ませて頂きました。
PSE 電気用品安全法を、素直に読む限り、これは、大きな規制緩和の1つですね。
http://www.jet.or.jp/consumer/pse/index5.html
これが成功する事で、多分野においても、同様な動きがあるかも知れませんが、そのような事が起きてしまっては、どこかの誰かの影響力が多大なる既得権が蝕まれるので困ると言うことなのかなと、ふと思ってしまった次第ですが、その既得権が例えば何か、どこなのかと考えると、ピンとこない自分の無知さ加減が情けないです…
もう少ししっかり見ておかないと駄目ですね。
投稿: valc | 2006.03.26 08:56
中古電化製品は、省エネだけで語る問題ではありません。今では、すたれてしまった、レコードプレーヤーや、オーデイオ機器は、過去の物のほうが、丁寧にしっかり物づくりがされています。その他にも、文化的にも貴重な物も多くあり、安全や省エネで片付けられません。
物にこだわりのない方は、どうでもいいとお考えでしょうが。私のように、物を買い換えられない、貧乏人のひがみでしょうか?
追記:パソコンや、プリンターが対象外なのは、おかしいと思います。自分たちが使用するので、除外したのでしょうか。PSEマークが無くても安全なんでしょうね!!
投稿: mamu200 | 2006.03.26 10:02
パソコンはPSEとは別基準で運用されてるからじゃなかったっけ
投稿: まろ | 2006.03.26 21:37
>PSEマークが無くても安全なんでしょうね!!
そういう話をしたいならこれくらい押さえておくべき。
投稿: HG | 2006.03.27 03:20
>今回のPSE問題はなんだか反対者がうさんくさいなと感じていた。なんかぜんぜん違う利権の背景があるんじゃないのかと疑問にすら思った。
>そう騒がずとも最初から経産省の不備でダメだったんじゃないか。
反対者はうさんくさい→反対運動が盛り上がり経産省方針変更→もともとダメだった。
ブログ主の脊髄反射ぶりと後だしジャンケンぶりに萌え。
投稿: | 2006.03.27 10:00
今回の反対運動で、うさんくさいのはアナーキーな坂本龍一とその取り巻きですね。「ビンテージの定義を政府に決められたくない」という発言は面目躍如。安全や秩序という観念はないようです。
他方、リサイクル業者の方々はけっこう純心かも? もともと倉庫一つ、トラック一台での起業が多く、インテリ臭さのない方々です。業界団体もなく、少なくとも今までは利権と無縁だったはずです。
利権といえば、マル共と民商がリサイクル業者を取り込もうと懸命ですね。赤旗は力が入ってます。
投稿: speed | 2006.03.27 11:20
ていうか、中古電気製品の価値がいきなりゼロになったら、資産課税ができなくなって財務省が困ることになるような。
投稿: むのじ | 2006.03.27 12:49
で、レンタル扱いにすると新たな固定資産税が…
投稿: 無粋な人 | 2006.03.27 13:24
ほら、来てやったぞ(笑
投稿: 名無し仔猫 | 2006.03.27 14:50
>speedさん
今回の件で一番胡散臭いのはPSEに関する検査機関、検査機器の製造・販売業者が新たな天下り先、利権を生み出すという部分です。
坂本龍一氏は発言内容や風貌から胡散臭く見えてしまいますが、音楽で飯を食っている方にとってこの法案は創作活動、表現の手段を制限する足かせ以外の何者でもありません。アナーキー精神などではなく、中古業者の方と同じく単純に生活に直結する問題なのです。
この楽器はOKだけどこっちの楽器はNG、とお役所仕事で決められてはたまったものではありません。そしてこれは音楽に限らず古き良き物を好む方々の自由も制限してしまいます。
集団で政府に抵抗する映像がアナーキー的に映るのはわかりますが、問題とされている部分の本質を見失うのは危険です。
投稿: こん | 2006.03.27 14:56
これは反対があって当然。
経産省の解釈は、旧法時代から中古電気製品の売買は違法だったというもの。こういう無茶はきちんと反対して潰しておかないとダメでしょう。裁量権の逸脱です。
また、PSEマークは日本製の最新技術家電だけが取得できるというものでもないため、中古家電を買いたいと思う人が選択肢に入れるPSEマーク付き新品家電は決して省エネ技術の優れたものにはなりえないでしょう。
投稿: スープ | 2006.03.27 21:50
CCCD騒動の時もそうでしたが、ネット住民による運動はファナティックになりがちで、反対意見に対して罵倒に近い批判が浴びせられる風景はよく目にします。今回も血が滴るPSEのロゴなど、はっきり言って悪趣味だと思いました。
ただ、だからといって何の根拠もないまま工作部隊や利権の背景云々と言い出すと陰謀論になってしまいます。また、そもそも楽器やオーディオ機器などの愛好家にとっては暴挙に近い法律なので、「よくわからんけどアファーマティブにリニュー」などと書かれてしまうとカチンと来る人もいると思いますよ。
投稿: | 2006.03.27 23:12
家電業界が、新しい家電を売りたかったのと、中古業者が目障りだという法案でしょう。
古い家電より、古い耐震基準で作られた建物の方が危険だと思うが、そちらは規制しないのか?
投稿: | 2006.03.28 19:09
> 古い家電より、古い耐震基準で作られた建物の方が危険
それはまた別に議論すべきでは
投稿: | 2006.03.29 11:44
古いゲーム機とか、
βのビデオデッキとか、
あるいは発掘した8ミリフィルムや8ミリビデオとか、
そういう古いメディアを再生する機器に対しては、
PSE問題は暴挙というか、あり得ない事態ですよ?
新品/PSE付きが手に入らないもの、新品購入が現実的でないものが多々あります。
単なる家電なら、コンデンサが劣化して発火とか、プラグやコードが傷んで発火とかあり得るので、理解もある程度できますが。
そもそもの解釈では、ケーブル切ってジャンクとして販売するのも禁止されてたぐらいですからね…。
ネットで反対してる人には、このような立場から見ている人も多いはずです。
投稿: | 2006.04.04 13:02
古い記事にコメントしますが、一ユーザーとしてPSEのような家電製品の安全性基準は必要と思います。理由はあります。
先日、PCと外付けHDD(ACアダプタ動作)を接続しようとした所、感電しました。USBで感電するのです。
初めての経験であり、普通このような事は起こらないのです。
色々と調べて明らかになった事は、そもそもPCの電源設計は海外を想定しており(アース端子)、いずれにせよ回路設計がおかしい事と、それによってシャーシにAC100Vからの漏洩電流が流れること、そしてケーブルTVなどの同軸は絶縁されていないのでこの経路を迂回し、
漏洩電流が流れ、私がPCにUSBを接続する際に
感電したのです。
多くの人は輸入された海外製品を使っていて、それらを家電やPCに接続している場合、電気的に全ての機器が影響するのです。
(日本製であっても海外設計の電源ユニットを使用している場合もあります。)
チューナやVTRなど、テレビに接続するならケーブルTVの同軸に何らかの形で電気的に接続してます。
そこから流れる漏洩電流に私は感電したようなのです。
これを証明することは簡単で、異なるPCの金属製シャーシやマイナス側電極同士をテスターの交流レンジで測定すれば漏洩電流が測れます。
昔の日本製のTVやVTRは、映像/音声ケーブルの端子を触れただけで感電することなどないのです。
何故なら、一次側と二次側が絶縁されており、漏洩電流が流れないように設計してますから。
こうした現状を放置しておけば、感電や漏電事故が起こるでしょう。
対策としては、PCのスイッチング電源回路に対策を施す、絶縁トランスをPCと商用電源の間に挟む、ケーブルの同軸を電気的に絶縁する、などがあると思います。
これだけ世の中に不適切な電源設計された製品があふれてしまって、みなさんどうするつもりなんでしょうか。
こういう事実があると知らないのでしょうか。
投稿: | 2011.02.13 00:36