ムハンマド風刺画騒動雑感
ムハンマド風刺画騒動にもあまり関心が向かなかったのだが、基本的にこの手の風刺漫画自体に関心がなくなったこともあるかもしれない。
いや関心を持っていた時期はあって、というか、当初ハヤカワで出ていた「進化した猿たち(新潮文庫)」(参照)は全巻読んでいた。高校生くらいの時だっただろうか。その後、自分自身英語圏の文化との関わりのなかに置かれたとき、こうした一コマ漫画のコアのイメージというのがいろいろと文化の理解に役立った。文化の背後にある思考法・フレームのようなものをよく示していた。
森田拳次(参照)の作品もよく読んでいた。この人のセンスは国際レベルだなと思っていた。最近の森田拳次の作品といえば「マンガ・ぼくの満洲」(参照)だろうか。個人的には「丸出だめ夫」(参照)が好きだったが再読してみるとどうだろうか。関係ないが、「がんばれロボコン」(参照)は石森章太郎か。なんか時代だな。
ムハンマド風刺画騒動を国際問題として見た場合、日本人はどう考えるべきかというと、「カワセミの世界情勢ブログ: 欧州とイスラム世界のムハンマド風刺画騒動」(参照)の、特に追記に尽くされている感があり、付け足すこともないように思えた。
実際に今回は小国デンマークの一新聞が発端であるに過ぎない。それをゼロもしくはそれに近い状況にしようと試みるには、法規制以外の方法はない。欧州の多くのメディアがそれに危惧を抱くのは当然過ぎるほど当然だろう。
ふと気になるのは、ソースを持ってくるのが面倒なので記憶によるだが、最近英国で特定宗教を侮蔑することを禁じる法律ができたはずなので、そのあたりの関連はどうだろうか。
ついでにぶっちゃけ的に言うと、現在反感を持って騒いでいるイスラム教徒たちにどうすることもできないのだろうし、そのことがやはりイスラム教の本質的な部分に関わっているのではないかと思える。まあ、それ以前に多分に、インターネットのメディアというもの興隆と欧州における移民の問題はあるのだろう。
カワセミさんの指摘のなかで、「比喩が難しいが、日本人としては皇室に対する態度に重ねてそのような発言になっているのではないだろうか」というくだりがあり、そのあたりの比喩的な理解というのは実にやっかいだ。私の好きなミスター・ビーンのコントに壁に貼った英国皇太子チャールズの写真を壁ごと切り取るという不謹慎きわまるネタがあり、あれを爆笑につつむ英国民のセンスは実に高度なものだと思う。が、それを日本の皇室でやられたらと思うと私の感性としては許容できない。もっとも、外国人が日本の皇室を愚弄する漫画などいろいろあるし、それはそういうものかと思うだけだが。
話が散漫になるが、日本版ニューズウィークには日本をからかう一コマ漫画がよく掲載されるが、その出典のほうが逆に笑えることが多い。お里が知れるというやつ。総じて、アジアの新聞社の一コマ漫画というのはなんとも言えない微妙なものがある。例えば、「第7回アジア漫画展>出展作家紹介」(参照)などを見るとそれ自体がアートの文脈のようでもあり、苦笑とまで言わないがリアクションに難儀する。
このリスト中に「ナデロ先生」(参照)の李泓雨があり一九四九年生まれとある。もうちょっと年上の人かと思った。この手の独自の笑いの境地にある日本の代表といえば植田まさし(参照)だが、一九四七年生まれ。まあ、そんなものなのか。ちなみに、この機にウィッキ先生を読むと、一九六九年中央大学文学部哲学科卒業とある。意外といってはいけないのだろうが、その哲学と青春記を読んでみたい気がする。すでにあるのだろうか。
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コメント
「マンガ・ぼくの満洲」のamazonのリンクが変になってます。
投稿: jiangmin | 2006.02.06 13:17
jiangminさん、ご指摘ありがとうございます。修正しました。
投稿: finalvent | 2006.02.06 13:58
こんにちは
デンマーク紙のイラスト掲載から4ヶ月後に
これほど激しい抗議を呼んだ原因のひとつは、
ノルウェイのキリスト教系誌の’付加’にある
ように思います。
http://www.mediawatchwatch.org.uk/?p=339
投稿: serena | 2006.02.07 01:51
はじめまして
>ふと気になるのは、ソースを持ってくるのが面倒なので記憶によるだが、最近英国で特定宗教を侮蔑することを禁じる法律ができたはずなので、そのあたりの関連はどうだろうか。
これのことなら、1月末に否決されました
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk/3873323.stm
http://news.bbc.co.uk/1/hi/uk_politics/4664398.stm
投稿: てっく | 2006.02.12 08:23
てっくさん、こんにちは。ブレアの意図どおりではないのですが、法としては成立しているのではないでしょうか。
投稿: finalvent | 2006.02.13 20:45
JMM361Exでの高田ケラー有子さんの紹介によるとデンマーク外相が声明で
「デンマーク警察は、コーランを焼くことは罪であり、その行為は終身刑に値すると明言しています」
といっているそうです。日本よりかなり厳しいですね。
投稿: き | 2006.02.14 02:50
補足:EUは死刑禁止なので終身刑が事実上の極刑です。日本でいえば
「コーランを焼いたら死刑」
に相当しますね。聖書を侮辱することが極端に重い罪なのは一神教の文化なのかな?
投稿: き | 2006.02.14 22:48