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2006.02.07

「新たな食料・農業・農村基本計画」は何処へ

 農政のニュースがなかなか見えづらいように思うが、「新たな食料・農業・農村基本計画」(参照)が今年に入ってじりじりと動き出している気配を感じるので、この時点でのメモをしておきたい。この大枠のタイムテーブルは次のように五カ年計画みたいに見える。


 今後の政策推進の指針となる食料・農業・農村基本計画については、食料・農業・農村基本法において、食料・農業・農村をめぐる情勢の変化、施策の効果に関する評価を踏まえ、おおむね5年ごとに見直すこととされています。
 この基本計画については、前回策定時(平成12年3月)からおおむね5年が経過すること、また、農業の構造改革の立ち遅れなど危機的な状況が深まってきていることから、平成15年8月、新たな基本計画の策定に向けた作業に着手し、同年12月には、農林水産大臣から、食料・農業・農村政策審議会に対して、このための諮問が行われました。

 内容については「新たな食料・農業・農村基本計画」にまとまっているのだがざっと読んだ感じでは問題がつかみづらい。特に大臣談話が要領を得ない(参照)。日本語を学べとは言わない。日本語の問題ではなく論理とか情報整理とかプレゼンテーションとかの問題だからだ。しかし、このあたり問題についてメディアというかジャーナリズムというかいまいち仕事してなげな雰囲気は感じる。
 粗っぽい言い方になるのだが、背景にあるのはまずウルグアイラウンド(参照)。ここで農産物の貿易規制は関税のみということになる。これにWTO(参照)で関税にも規制がかかり、ほぼ間違いなく上限設定ということに向かう。コメの関税率七八〇%というのはもうありえないでしょう、と。
 いわばこの外圧で農政が抜本的に変化しなくてはならないのだが、ここでいう農政とはなにかというと、これも粗っぽい言い方になるのだが、農家への補助金の撒き方ということだ。従来なら国際市場を事実上遮断していたことや米の買い上げなどがあり、システムとしてカネが農家に流れ込むようになっていた。しかし、このシステムはもう終わり。しかし、農家にカネを流さなくてはならないのは、東の空から朝日がのぼるのと同じくらい自明なことなので、さてどうカネを農家に渡すか……ということでみなさん知恵を絞った結果、外国から四の五の言われないいい方法を思いついた。カネ、直接あげればいいじゃん、そんだけ。
 価格支持政策から所得支持政策とも言う。で、そのプランが「経営所得安定対策等」(参照)ということなのだが、これがまたよくわからない。要するに、カネを直接農家にあげるんだけど、カネが足りないということらしい。なので、あげる農家を選別ということになる……わけにもいかない。そんなタブーに触れようものならホリエモンはホリのなか、ブログには糞米到来となってしまう。タブーに触れちゃいけない。というわけで、こーゆー時は農家のみなさんに考えて結論を出していただく方式にするわけでこれで揉め事が局所化される……のかな。揉め事なんて滅相もない。タブーはタブーである。ところで農家のみなさんといってもマレー貘としすぎなので、集落営農ということにして、こうなる(参照)。

ひとつの農家では解決できない地域の農業のいろいろな
問題を集落のみんなの知恵と力を合わせて解決し、
農家も集落もみんなが良くなる農業を進めていくこと、
そしてより豊かな集落づくりにつなげていくこと、
それが集落営農です。

 いいなぁ農村の和やかさ。しかし、ニュース的に取り上げるとちょっと娑婆の香りになる。例えば、陸奥新報WWW-NEWS「県選出国会議員と農業者が意見交換会/青森 約140人が参加、与党議員らが集落営農取り組み促す」(参照)はこう。

 自民党県連会長で元農水相の大島理森衆院議員は「価格維持政策は、もはや世界的には認められない」とし、直接支払い制度に移行する経営所得安定対策の狙いを説明。「最大のカギは(対象となる)集落営農づくりだ」と取り組みを促した。
 一方、民主党の横山北斗衆院議員は「小泉内閣は農業者をも、勝ち組と負け組に色分けしようとしている」と批判。共産党の高橋千鶴子衆院議員は「(同対策には)基本的に反対」とし、「価格と所得補償の二本柱で予算を組むべきだ」と主張した。

 ここはそれ諸悪の根源は小泉政権とか自民党とかいうことでひとつ……というのはブログ的な世界とか言っちゃうわけにもいかない。しかし、問題はようするにカネだという本筋をとらえ、無い袖は振れないとか言わないで、袖にたんまりカネを入れることを考えていくのもよろしいのではないか、というのが農政問題だったら……。
 ニュースでもブログとかでもこの話題あまり見かけないような気がすること自体気になるようなならないような。

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「社会」カテゴリの記事

コメント

いつも楽しみに読ませていただいてます。

WTOと農政改革の相関は、以下の記事が触れていましたが、
http://www.sankei.co.jp/news/051223/morning/23kei002.htm

> 外国から四の五の言われないいい方法を思いついた。カネ、直接あげればいいじゃん、そんだけ。

生産量に応じて増える補助金は「貿易歪曲的」、
農家の所得を補填する直接支払いは「非貿易歪曲的」というWTOルールは
このHPの下段に解説をみつけました。
http://tokyo.usembassy.gov/j/p/tpj-j20031023d2.html
途上国の農産品に対抗するため、アメリカも欧州も金の撒き方には苦労しているようですね。

> 要するに、カネを直接農家にあげるんだけど、カネが足りないということらしい。

そういう見方もできますが、補助金に限りがあるのは自明であり、
むしろ農水省は制約の中で、
兼業三ちゃん農家を淘汰する意思があるように思えますが…
このあたりは、票田を守りたい農水族議員と微妙な温度差があるのでは?

> WTO(参照)で関税にも規制がかかり、ほぼ間違いなく上限設定ということに向かう。コメの関税率七八〇%というのはもうありえないでしょう、と。

ドーハ・ラウンドで上限関税(100~150%)の設定は不可避なようですが、
農水省はコメを例外扱い(重要品目)とすることで
上限関税を緩和(300~400%?)し、
打撃をやわらげるという落としどころをねらっているのではないでしょうか?

投稿: speed | 2006.02.07 13:02

>むしろ農水省は制約の中で、兼業三ちゃん農家を淘汰する意思があるように思えますが…

 思える、じゃなくて、ある、なんですけどね。減反政策とか、結構露骨にやってきてますよ。

 そもそも今現在の農家の大半は戦後農地改革で棚ぼた式に資産ゲットした元小作人ばっかりですからね。今の感覚で言うと、民間会社の課長級以上(労組じゃない人)は会社持っていいですよ自分の所属部署をそのまんま会社にしちゃってオッケーですよ、みたいな。そういう状態。戦前から何百年単位で持ってる地主で今も農業にこだわってるのは、本当にごくごく僅か。リーマンいじめで派遣社員が増えたのと同じような感覚を農政に持ち込もうってことですかね。大雑把に言って。

 でもそういうのって、ウチみたいな真性農民には通用しないんですよね。兼業だろうが三ちゃんだろうが超零細だろうが、先祖伝来の土地を手放す訳が無い。断固としてしがみつく。

 農政改革によって淘汰されるのは、戦後地主が主だったところだと思いますよ。
 で、そういった手合いは土地なんて転がすネタくらいにしか思ってないから、そういうの相手に下手な駆け引きなんかしたら、またぞろ土地バブルが復活しそうな悪寒も。

 戦前から農地を保有していない農家からは強制的に召し上げてもいいと思うんですけどね。負の遺産を解消する意味でも。

投稿: 私 | 2006.02.07 20:48

今現在500万戸くらいある農家を100万戸くらいまで減らす目算があるとかないとか。伝聞ですが。

投稿: 私 | 2006.02.07 21:10

やる気のある農家にやらせるで、今は石川の農家が1軒で夫婦と息子夫婦の家族経営で75Haを耕して先日農業大賞を受賞しました。収穫時期をずらすと人手を上手くコントロールできる事と3,5haから20倍にも委託農業で増やしてるので感心しました。規制を外してやりたい気のある農家に減反や補助金などやらなくても採算の取れた経営が出来る証拠です。1960年の日本の米作農家の収量は10アールで448キロ、で世界一を誇り米価は1俵4162円だった。40年後の99年には10アールで510キロ、米価は1俵1万5千528円の高い米。一方米国は10アールで700キロ以上の収量、価格は1俵4千円だ。味も日本に負けない米を作り出してる。中国はにほんから「コシヒカリ」と「一目ほれ」の原種を持ち帰り日本の最新鋭精米ラインを設置した。三井物産や伊藤忠、ニチメンの精米工場を手本にして日本向けを狙ってる。それを運搬するのは旧満鉄。問題は農産物の品種の勝手な持ち出しは禁止しないのは苺、林檎、金柑などの努力された改革農家が報われない。無断で違法な泥棒行為をしてでも自国民が飢えようとも中国は外貨獲得に有効な手段として内陸部が食糧難でも輸出攻勢を仕掛けます。日本国内のやる気の農家に好きなだけ米を作らせる、最低35ヘクタール無いと採算は取れない。零弱小農家は保護しない。農産物の品種改良された作物の無断栽培は違反で取り締まるべきです。品種改良には長い年月の苦労が篭められています。至急改善しないと正直・勤勉努力が報われない。
細切れ田んぼでは思いっきり米を作れない!本物の農家は近隣から信頼されて田んぼを任されて請負で独力で増やしたのです。
農政は補助金をつけるのが悪い!、我が家は不在地主で農地を没収された。ただで手に入れた小作はずる賢い、やる気も無くて甘えてばかり、昔無料で手に入れた田んぼだから死ぬ気で農業・米作りが出来ないのです。

投稿: ようちゃん | 2006.02.08 04:21

コメの関税を下げたらコシヒカリなんてわざわざ作らないでしょう。
畜産の篤農家に飼料用米くらいは需要があるかもしれません。

投稿: cyberbob:-) | 2006.02.08 07:31

食べ物を粗末にすると、食べ物に泣かされるんですなぁ。ま、これも世相ですかね。

投稿: 私 | 2006.02.08 22:37

よくみかけないのは単に「よくわからない」人が多いからでは(農業関係のブログやサイトではそこそこ話題になってはいますし)。

実際、農業関係の諸問題は分かり難い内容ですから…失礼ながら上でコメントされている方達ですら基本認識が間違っているくらいですし。
副業農家への補助金なんてほとんどありませんし(産地づくり交付金で「生活」できる農家は皆無かと)、日本の農家数は既に300万戸を切っていますし、主業農家に至っては100万戸もいません。
農地改革への受け止め方はそれぞれでしょうが、当時の純小作農は全農民の3分の1程度でしたし、「一握りの地主が村の農地を殆ど占め…」なんてせいぜい東北日本でしか適用できません(農産物生産の向上や土地流動性を高めたといった「功」の部分もあります)。
コメの関税が引き下げられたら、大規模主業農家は副業化・離農せざるをえないでしょうね。農産物価格に依存せずに家計を維持できる副業農家はそこそこ残るでしょうが(飼料米は高コスト過ぎなのです)。

「新たな経営安定対策」は過保護と喧伝されながら実際は世界一農業保護が手薄い事を鑑みれば少しは「マシ」になるとは思いますが…、
フランスやアメリカの現状をみると楽観視もできませんね。

○日本:農家所得直接補償、自由化に耐えられる仕組み?
http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/agrifood/asia/highlight/03102401.htm

投稿: テンペ | 2006.02.08 23:00

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