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2006.01.11

シャロン後メモ

 ごく簡単に。脳内出血で倒れたイスラエルのシャロン首相の政治復帰は事実上不可能と見ていいようだ。それにしても、アラファトといい絶妙のタイミングでアウトになるものだとも思うが、シャロンの歳が七十七歳であるとすればこうした退場はまるで予期されないものでもなかっただろうし、実際、エルサレム・ポストの”Report: Sharon had undetected vascular disorder”(参照)などを見るとそうした予期について目下政治の責任問題化しているようでもある。元ネタはハーレツらしい。


Prime Minister Ariel Sharon was suffering from an undiagnosed vascular brain disorder that can be worsened by the blood thinners he was taking before his massive stroke last week, the Haaretz newspaper reported Tuesday.

If the disease of the blood vessels in the brain had been diagnosed when Sharon suffered a first stroke on December 18, doctors most certainly would have not prescribed the blood thinners due to the risks, a senior doctor treating Sharon told Haaretz. The ailment was discovered only after Sharon suffered a massive stroke last week, the paper said.


 読みようによっては陰謀論のようにも読めるところがオツだが、直接の引き金となったわけでもあるまい。小渕総理の時の対処もなぜウロキナーゼという話が若干あったが消えた。すべて済んだことになった。
 もともとシャロン首相の政治行動は側近でも予期しかねるところがあり、リクードを飛び出してカディマを結成したものも、突然の独断ではあったようだ。
 とはいえ、結果論からすればカディマの結成はその後のイスラエル国民の支持という点では成功だったわけで、シャロン自らが倒れなければその流れに変わったのかもしれない。
 シャロン後の問題は当然、カディマがシャロンを失ってもシャロンの路線を維持できるかという点にある。カディマの支持者はシャロンのカリスマ的な力に引き寄せられたとするなら、この路線は大きな岐路となるが、私はそうでもないのではないかと思う。
 ガザ撤退を強行したシャロン首相の行動はイスラエルという国が存続していく上ではもっとも合理的な選択であった。そういう合理性がイスラエルの国のなかでどう支持されるかということがイスラエル側の今後を決めるのだろう。が、支持されるのではないだろうか。ノーベル平和賞受賞者シモン・ペレス元首相も老骨に鞭を打っておもてに立つようだ。
 ただ、そうしたその合理性は労働党側にもあるだろうし、労働党側が案外盛り返しても大筋での変化はないように思える。
 パレスチナ問題では他方パレスチナ側の動向が気になるが、この焦点はアッバス議長ではなく、先月の地方選躍進したハマスということになるのだろう。「極東ブログ: 国連がハマスに資金供与の疑惑?」(参照)でもふれたが、ハマスは一概にテロ集団というふうに決めつけられるわけでもない。合理的な政治プロセスに乗せていくしかないのではないか。
 米国はどうでるか、だが、よくわからない。ブッシュのある意味で必然的なレイムダック化が進み中間選挙を控えている状況で、大きな外交策は出てこないようには思う。それに、イランのほうが大きな問題となってしまった。

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コメント

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投稿: 草子 | 2006.01.11 21:47

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