マネックス・ショック
昨日ボケなエントリを書いているさなか、東証が全面安で売買停止となった。あれま。世の中では、ライブドア・ショックということになっているらしい。ま、それはそうかもしれないんだが。しかし、これはマネックス・ショックでしょ。
時事としてはロイター”[焦点]信用取引の投げで連鎖安、東証システム問題も加わり予断許さず”(参照)がわかりやすい。
<マネックス・ショックの余震も継続>
一部の証券会社が17日にライブドアの株券について、信用取引の担保掛目をゼロとする措置を実施したことも、影響が継続している。マネックス・ビーンズ・ホールディングス<8698.T>傘下のマネックス証券は、ライブドア<4753.T>および同社と関連のあるライブドアマーケティング<4759.T>、ライブドアオート<7602.T>、ターボリナックス<3777.OJ>、ダイナシティ<8901.Q>の計5銘柄の代用有価証券掛目をゼロに引き下げたが、17日の後場に下げが激しさを増したのは、これが要因との見方が出ている。
17日の朝方は“ライブドア・ショック”だが、17日後場からの下げを“マネックス・ショック”と呼ぶ関係者も少なくない。
「マネックス・ショック」は狭義には一七日のマネックス証券の信用取引の担保掛目ゼロ措置を指しているが、この記事のように広義にとらえていいように思う。事態の基本的な話は、FPN-ニュースコミュニティ”許されざるマネックス証券”(参照)がイロハから書かれていてわかりやすい。
ニュースではそのあたりどう報道するのかなと十時のNHKニュースを見たら、マネックス証券の名前は出てこないものの、一応この事態と経緯をそれなりにきちんと取り上げていた。が、新聞報道などではあまりこのスジがはっきりと出てこない。今朝の新聞各紙社説では完全にネグられていた。
多少扱った例として、読売新聞”ライブドア株、問い合わせ殺到”(参照)はこうなっている。
一方、ネット証券各社の調査部門は、ライブドアグループに東京地検特捜部の捜索が入ったことから、相次ぎライブドア株の評価を下げた。楽天証券は最高のAから最低のEに。また、マネックス証券は同株の担保価値をゼロにした。
株の評価を変えるというのと担保価値をゼロにするというのは全然次元の違う話ではないのか、というか、マネックス証券がこういう対処を取らなければ、事態は違っていたのではないか。
マネックス証券としてもその事態の推測ができなかったのかもしれないし、私もこの措置を十七日の時点で知っていたがこんなランドスライドを起こすとは思ってもいなかった。デイトレの規模はそれほど大きくないし、むしろオイルマネーみたいのがどかんと流れているわけだから大きい枠の運動で決まるだろうなと思っていた。違っていた。
そういえば当のマネックスの松本大社長のブログの今朝のエントリ”金融列伝 JM その2|松本大のつぶやき”(参照)は含蓄がある。
JMは金融界の英雄です。本来は近づきがたい存在であるJMと親しくできることに、私はいつも感謝しています。
今日はとても辛い日でしたが、そんな時に笑顔で現れて、励ましてくれたJMは、文字通り地上に降りた天使のようでした。
私の勘違いかもしれないのだが、マネックス証券としては今回の措置がまずかったとは考えていないのだろうし、新聞報道などが「マネックス・ショック」をなんとなく避けているのもそれが違法行為でもないという配慮でもあるのだろう。
代わりに日本の報道では、いや海外でも同じようなものだが、東証のシステムの不備が指摘されていた。たしかにそれはあるだろうが、日経社説”脆弱な構造映した株式市場の混乱”(参照)のユーモアは秀逸だった。
東証は19日以降、取引時間を短縮する一方、証券会社に投資家の注文をまとめて発注することで注文件数を抑制するよう要請した。インターネットを利用する投資家の小口注文がシステムへの負荷を高めていることに対応し、投資家に冷静な判断を促すための措置だが、これといった決め手がないのが実情だ。
そうじゃないだろ、火に油を注いだんじゃんとか野暮は言うまい。ユーモアといえば……と他にも思うがそれほどたいしたことでもない。
私は株については塩鮭を持っているだけなので昨今のことはわからなくなったが、株式市場というのは波乱もまたネタだし、今朝の寄りつきはいいんじゃないかとは思っていた。日経”日経平均、大幅反発で始まる・買い戻しの動き優勢に ”(参照)を見るととりあえずはいい。ま、これが終日続くかわからない。
当のマネックス・ショックについては、特段対応というのもないので、デイトレによいお灸というくらいの話になるのだろう。もっとも、現場にいた人はきつい鉄火場であろうが、株は昔からそんなものでもあった。
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コメント
排除すべきものは早くやるに越したことがないでしょ。
投稿: durian | 2006.01.19 15:25
まあマネックスも顧客流出は避けられないでしょうね。果たして生き残れるのやら。
投稿: Baatarism | 2006.01.19 15:27
疑わしきは罰せずが憲法の理念ですが、経済の世界では疑わしいだけでこんなひどいことがまかり通るんですね。
ルールは破ってないからなにしたっていいジャンって言うのは堀江さんの弁だったように思うけど、政財界の重鎮の方々はそれを暗に批判してたよなぁ。
まあ堀江さんはルール破らなかったらなにされたっていいと思っているだろうから文句は言わないだろうけど。
投稿: だいぶつ | 2006.01.19 16:40
潰れてもいないのにいきなり担保価値ゼロなんて、これをやられて株を投売りさせられた方はたまらんだろうね。
まるで銀行の貸し剥し。
マネックスは、零細デイトレーダーを切り捨てる方針なんですかね。
投稿: いんちき | 2006.01.19 16:59
もともと、マネックスは日興、みずほが金出してるだけあって、信用取引には否定的なんだよ。
まあいきなり0%にするのはどうかと思うが、東証さえまともならこんなにさがら無かったと思うんだけどね。
3月過ぎてからまた下げるだろうけど調整がどのくらいになるかは微妙だろーなー。
投稿: ash | 2006.01.19 17:36
強制的に投売りさせられたあげく、
今日は力いっぱい上がっているのが、火に油を注ぐ予感。
仕手株でもないのにふるい落としにかけられるとは、
夢にも思わなかったろうなぁ。
投稿: いんちき | 2006.01.19 19:03
それにしても、恣意的すぎる「事件」ですね。
>報道されているように関係会社の利益の付け替えが粉飾と呼ばれて証券取引法違反に問われるのならば、日本の銀行はすべて粉飾決算まみれの決算をついこの間までつづけていたのだ
http://bubblebuster.cocolog-nifty.com/fudosan/2006/01/post_7574.html
投稿: ななし | 2006.01.19 19:45
これ読んで爆笑しました。
http://zaraba.qp.land.to/up/src/1137608005488.jpg
投稿: 秋蔵 | 2006.01.19 21:33
>もともと、マネックスは日興、みずほが金出してるだけあって、信用取引には否定的なんだよ。
それは違うのでは。信用取引に慎重だったのは、松本大。彼は株取引に初心な素人にも株取引を広めるため、といってマネックス発足当初は信用取引を扱わなかった。
でも顧客の伸びが他のオンライン証券に比べるとイマイチだったので信用取引も始めた。日興ビーンス取り込んだときは、日興のシステムに付随してプログラム取引もできるようになった。
日興が信用に慎重てのは意味不明。もともと信用取引はリスクヘッジの手段でもあるので、現物のみだとリスクヘッジしにくい。
自分も昨年、マネで株取引やってたのだけど、もうマネでは取引再開しないだろうなぁ。
投稿: ■□ Neon / himorogi □■ | 2006.01.19 21:58
マネックスショックで損はでてませんが、マネックス解約することにしました。
投稿: こーへい | 2006.01.22 12:44
ちょっと教えてほしいのですが。
追証が払えないとどうなるの?
http://question.excite.co.jp/kotaeru.php3?q_id=1904427
「しかしライブドアのようなストップ安張り付き銘柄は、全約定するまで決済できないかもしれません。すると、決済したときには保証金ないし担保株を売却した金額以上の損失が発生している場合があります。これを俗に「アシ」と言います。アシが出た場合も、当然顧客がそれを支払わなければなりません。」
つまり、マネックスのように強制決済した方が「顧客にとっては」マシだったのでは?とも受け取れるのですが...詳しい人、わかります?
もちろん、顧客保護と市場に与えた影響とは話が別ですが。
投稿: joujim | 2006.01.22 18:53
>JOUJINさん
強制決済によってさらに売りが加速された
場合、傷が広がる顧客もいます。
誰かが救われると誰かがその分損をして
いるのですから、マネックス内の顧客に
おいてもそれは言えるでしょう。
投稿: だめにん | 2006.01.23 02:16
となると、マネックスの決断は
良い面と悪い面を両方持っていたわけで
プラスマイナスゼロで問題なし ということで
よろしいですか?
投稿: | 2006.01.23 05:52
>強制決済によってさらに売りが加速された場合、傷が広がる顧客もいます。
確かにそうで、私のポートフォリオも傷みました。ただ、今回売りが加速した原因として、「素人でも信用取引ができる→よく考えないでライブドアなどボラリティが非常に高い株を担保に取引している人もたくさんいるだろう→こりゃ投げ売りされるのではないか」という連想があったのではないか、とも考えています。
マネックスの顧客保護、という観点から見た場合、ライブドアを担保にして信用取り引きをする客=初心者=キズが浅いうちに無理矢理損切りさせる、という理由もあったのかな、と。それが市場に大きな影響を与えたのが今回かなりまずかったのですが。
まあ、素人であろうとなんであろうと、自分で判断して損切りするのが当たり前であって、証券会社が無理矢理損切りさせるものではない、というのは正論だと思いますが。
投稿: | 2006.01.23 11:24
あ、すいません。上のはjoujimです。その上のものは違う方のご意見ですが。
投稿: joujim | 2006.01.23 11:26
護送船団方式の証券業界にマネックスは一石を投じたって事かな?
結局、他の証券会社のリスク管理はなってないって事が浮き彫りになっただけじゃん。
マネックス1社が数銘柄の掛目変更したって市場全体を暴落させるほどの力はあるはずもなく。。
問題の本質が分からずに、思惑や噂に振り回されて狼狽する個人の投げに外資が売りを重ねてきたってとこだろ。
マネックスが外資と組んで何か企んでたとか言う奴もいるけど、悪い事たくらんでんなら皆の注目引くような掛目0発表なんてやらんだろ。
程度の低い凍死家にスケープゴートにされただけ、ある意味マネックスも被害者なんじゃねーの?
投稿: | 2006.02.03 12:04