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2005.03.05

ホリエモン・オペラ、間奏曲

 ホリエモン話の第三話。ってか、素人の私なんぞが口出しするこっちゃないが考えようによっては国民のお茶の間の話題なのでその分際くらいで枯れ木も山の賑わいもよかろうか。特にまとまった意見はない。ただ個人の勝手なブログなので勝手に賭けに出ると、裁判所沙汰について言えば、ホリエモンの勝ちでしょう。
 前回極東ブログ「負けたのか、ホリエモン」(参照)を書いた時点では、フジ主導と言っていいだろうが、ポイゾン・ピルもどきの新株予約権構想が繰り出されると私は思ってもいなかったので(ポイゾン・ピルというのは事前の意思表示)、ニッポン放送はホリエモンのものだろう、でも、本丸らしきフジは当面防御できたようなので、それだとホリエモンの「負け」っていうことかな、というくらいに考えていた。が、局面は変わったというか、より複雑になってきた。
 私の率直な印象は、フジテレビがなぜこんな策を繰り出してきたのか理解に苦しむというものだった。こんな手ありかよ? あまりこの問題のメディアでの反応を見ているわけではないが、そうした意見は、常に喧嘩両成敗的に緩和されるようだった。なんか、そーゆーことかぁ?
 ニューズウィーク日本語版(3・9)"フジ「毒薬」騒動の勘違い 敵対的な株買い占めや防衛策に驚く「M&A後進国」のお粗末"も、外人記者が書いた割に、どっちもどっち的なまとめになっているが、次の指摘は真っ当だろう。


 日本の一部のマスコミが「日本初のポイズンビル」と呼ぶニッポン放送び買収阻止策は、「フジテレビ以外のすべての株主を罰するものだ」と、スタンフォード大学法科大学院ロナルド・ギロソン教授(会社法)は言う。「どこからみても自己利益の追求で、日本の裁判所も認めないだろう」

 こうした問題で私はテクニカルな議論に立ち入るだけの知識はないのだが、大筋ではそういうものだと思う。であれば、裁判所の判断は案外単純に出るだろう。
 このあたりは国際的なビジネスセンスがどう捕らえるかかなとちょっとニュースを見ていると、朝日新聞"フジTOB トヨタ、応じぬ方針"(参照)が興味深い。

 フジテレビジョンとライブドアによるニッポン放送の株式取得合戦で、トヨタ自動車は4日、フジが7日を期限に実施している株式公開買い付け(TOB)に応じない方針を固めた。トヨタは、フジが提示している買い付け価格の5950円は市場価格(4日の終値は6500円)を下回っており、トヨタ株主への説明が難しいと判断した。また、市場での売却も「一方(ライブドア側)を利する」(首脳)として当面は見送る。


 フジの提示価格が市場価格より高ければ、TOBに応じても余計な観測を招きにくい。しかし、現状でTOBに応じればトヨタの株主利益に反する恐れが出てくる。事業展開、資金調達ともにグローバル化を進めるトヨタにとっては、透明性も確保した形だ。

 政治マターはやめてよねというところだろうか(電通はTOBに乗り気だよ、うひゃ)。そういう文脈で言うなら、外資も困ったなぁの顔色である。共同"過剰な外資規制に懸念 在日米商工会議所代表が"(参照)からも伺える。

 在日米国商工会議所のロバート・グロンディン代表は4日の記者会見で、ライブドアによるニッポン放送株取得に関連し「(外資が)お金を貸したから(放送局に対する)間接支配だというのはどう考えても過剰。ラジオ局やテレビ局の資金調達にも悪影響を及ぼしかねない」と述べ、外資による放送局への間接支配規制が行き過ぎた形になることへ懸念を示した。

 そういえば、これだけ日本が騒いでいるし、ホリエモンの外人向けの質疑もあったようなのでと海外のニュースを見ると…、粗方、スカポンです。海外では、それほど重要な問題でもないと見ているようだ。傑作はフィナンシャルタイムズ"Horimon plays his cards well"(参照)で、極東ブログなみのおちゃらけで飛ばしていた。

Horie's nickname, Horimon - after the cartoon monster, Pokemon - has become synonymous with brash and outrageous behaviour. An icon of youth, teenage girls are lining up to buy shares in his company. (Well, that's what he says at least.)

 「ホリエモン」って馬の名前の洒落かと思ったら、ポケモンですかぁ。そうですか。そういえば、ブログで「ホリエモン」とか書くなよみたいな意見もどっかで目にしたが、フィナンシャルタイムズがこれですよ。
 ガーディアン"Japanese whiz kid vows to win radio bid"(参照)も標題からすでに笑いを取っているし。ただ、この記事はなんか日本人が書いたのを訳したみたいな感じだな。
 れいの時間外取引云々についてはブルームバーグ"Japan Regulators Want Off-Floor Trading Law in Force by June 19 "(参照)から察せられるように外資的には終わったよ話でもある。
 さて、今後の展開だが。つまり、裁判ではホリエモンが勝つ、と、ニッポン放送はゲットする、と。で、フジの鉄壁の前で踵を返すかだが、毎日新聞"<堀江社長>総会で委任状含め過半数達成に自信 本紙と会見"(参照)でホリエモンが、また、また、面白いこと言っている。

ニッポン放送の株式を大量取得したライブドアの堀江貴文社長(32)が4日、毎日新聞のインタビューに応じた。フジテレビジョンとの同放送株争奪戦で議決権の過半数を獲得できなくても「6月の株主総会でプロキシファイト(委任状獲得合戦)になるだろう。自信がある」と述べ、経営権の獲得は可能だとの見通しを示した。

 面白いなぁ、ホリエモン。
 で、フジ側はどうするかというと、週刊文春(3・10)にも噂が飛んでいるように、「メディア初の共同持ち株式会社を作って上場し、他を未上場会社にする」という手に出てくるのだろうか。フジ側としては、なんか、すごい躍起なのだが、産経新聞をそのままオモテに立てないようにはするのだろう。
 いずれにせよ、前回このバトル、「穴熊」かぁ、と思ったが、こうして見るとなるほど長期戦になりそうだし、プロキシファイトみたいなものになれば、世間の空気の問題ということになるのだろう。
 というわけで、そろそろ各種の空気が絶妙に醸し出されている、っていう感じですかね。ただ、空気で経営はできないわけで、ホリエモン、どっかで豪快に滑るのだろうな。

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2005.03.04

鳴かぬなら泣かせてやろうカナダ人、詠み人ライス

 またちと旧聞にして話題はまたカナダ。カナダが米国の進めるミサイル防衛構想に不参加を表明したこととその余波について、日本も他人事ではないので触れておく。
 先月24日、カナダのマーティン首相は米国主導のミサイル防衛構想(MD)へ不参加を正式発表した。予想外のことではないし、私もカナダの立場を指示する立場にいたことは過去エントリ(参照)でも触れた。
 それから一週間が経ち、事態の推移を見ながら、ちょっと苦い思いがしてきた。率直に言うと、MDなど技術的に無理だし、だから無駄だという考えだったのだが、それにブレが出てつつある。科学的な評価にはブレはない。問題は政治・軍事としてこれを見た場合の問題だ。このブレは、環境問題への評価にも自分の心の中では似ている。そう自問したのは、恥ずかしい話、私がMDを批判できるのは日本国政府が米国主導のMD推進の立場を明確にしているからだと言える。それって、オレ様、すごい卑怯じゃん。
 28日にウォール・ストリート・ジャーナルにかなり強い論調のカナダ批判の社説が掲載されたらしいのだが、オンラインでは読めないようだ。どっかにコピペでもないかとネットをうろついて、米人からのヘタレ・カナダ人への罵倒をしこたま見た。真性ヘタレの私はノックアウトになりましたよ。そーゆーことだよな。ったく、米国人ってのはこれだものな。もちろん、米国人がそういう輩だけではないのはわかっているさ。
 マーティン首相の今回の発表はカナダの強い反MDの世論を反映したもので、「カナダ紙トロント・スター(十二日付)の世論調査によると、米主導のミサイル防衛への参加に「反対」は54%で、昨年十月から1ポイント上昇。賛成は34%で3ポイント低下」(参照)。他のソースでは、七割近くがこうした立場にあるとも聞いた。この時期には、内政的には、マーティンに選択などないというところだろう。
 米国もそのあたりは、イラク戦争にカナダが不参加の意を示した時のように、多少は意を汲んでやるのかとも思った。クリスチャン・サイエンス・モニター"Don't blame Canada for missile-defense snub"(参照)がこのあたりの機微をうまく代弁している、というか、これを読めば、あらかた事態がわかる。
 だが、ある意味、こっちのほうがウォール・ストリート・ジャーナルより右寄りかもしれない。っていうか、日本も、NO WAY OUT! ということだな。
 その後の米国のオフィシャルな対応は、私にはやや予想外だったかなという展開になりつつある。ライスが露骨にカナダに圧力をかけたからだ。日本の国内報道は少ないようだが、CNN日本版"国務長官、カナダ訪問を延期、ミサイル防衛対立で"(参照)が触れている。


 ロンドン――米政府高官は3月1日、ライス国務長官が4月半ばに予定していたカナダ訪問を延期した、と述べた。カナダが、米国のミサイル防衛構想への不参加を先月下旬、発表したことへの意趣返しの措置ともなっている。AP通信が報じた。
 カナダ訪問の日程は改めて詰めるとしているが、具体的な期日は未定。

 没交渉というわけでもないは、同日ブッシュが動くアナウンスをしているからだ(ってか、ライスって頭いい)。日経"米大統領、カナダ・メキシコ両首脳と同時会談へ"(参照)を引用する。

ブッシュ米大統領は今月下旬、マーティン・カナダ首相とフォックス・メキシコ大統領を同時に米国に招き、3カ国首脳会談を開く方向で調整に入った。マクレラン大統領報道官が1日、記者会見で明らかにした。会談場所はテキサス州クロフォードの私邸になるとみられる。

 この際、マクミラン報道官は、MD不参加問題について触れ、「カナダとは長年にわたり、国防の優先課題について協力的に取り組んできた。今後もそうした関係を期待している」と強調したとのこと。
 クリスチャン・サイエンス・モニターのコラムが指摘しているように、実際のところカナダには選択肢はないに等しい。カナダは、MDを含めたNORAD(ノーラッド:北米航空宇宙防衛司令部)の共同防衛協定に昨年8月合意している。
 話を日本にシフトすると、日本はちゃくちゃくと歩を進めている。昨日の読売"イージス艦レーダー、05年度から日米で共同研究"(参照)などでもわかる。

日米両政府は、ミサイル防衛(MD)システムの要となるイージス艦のレーダー能力向上のための日米共同技術研究を2005年度から開始する方針で大筋合意した。

 私の読みはハズシかもしれないが、日米間のMDの問題は実際は中国原潜の阻止なのだろうと思う。他人事で言えば、米国が中国の核下に置かれてもすでに置かれている日本としては、へってなものだが、そうなったときの中国様とのお付き合いは、ちょっとご免被りたい。ので、この部分のMDっていうのはしかたないか。ああ、ヘタレだな、俺。

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2005.03.03

オーストラリア・ハワード首相には三倍返しが適当かと

 すでに旧聞となるのだが、先月22日、オーストラリアのハワード首相の決断で、イラク南部サマワの日本陸上自衛隊を支援するためにオーストラリア軍450人が増派されることになった。これまで自衛隊を守っていたオランダ軍がこの3月に撤収するため、その穴を埋める形になる。
 気になっていた疑問が私には三つある。一つは、この問題が日本国内ではそれほどには話題となっていなかったことだ。もちろん、報道されていないわけではないのだが、報道はベタ記事並に薄く、また、自衛隊派遣の時のような反対運動もなかった。なぜなのだろう。まるで日本社会は関心をもってないかのような印象がある。
 もう一つは一点目の疑問にも関係するのだが、オーストラリア国民の七割の反対を押し切り、選挙公約を破棄しても断行した、今回のハワード首相の決断の前夜にはどれほどの危機が内在していたのか? 危機はなかったのか。
 三点目は、こういう言い方もいやらしいのだが、これによって得るハワード首相の見返りはなにか? それがないわけもない。
 順に論述といった手間もないので雑記になるのだが、まず、一点目の日本側の無関心だが、これがよくわからない。自衛隊派遣の時に騒いだ一派は沈黙しているに等しい。これによって自衛隊や豪軍に被害が出るという”好機”を待っているのだろうか、と考えるのも穿ちすぎだろう。一庶民の感覚としては、やはり他人事なのだろう。ちなみに、豪軍増派は五月。オランダ撤退は三月。四月は残酷極まる月だとならないといいのだが、そこに空隙はないのだろうか。オランダ軍の総勢は1350人。それがすべて自衛隊防御に当たっていたわけではないし、防御のインテリジェンスの部分は英国の機関が当たっていたふうでもある。今後は英軍が150人、豪軍が450人と総勢で600人。自衛隊の総勢に近いのだが、その配分と現地の意味合いがよくわからない。イラクの治安については、大筋では改善に向かっているし、この間でも、それほど南部に大きな変化はなかった。とはいえ、守っているのはイラクの治安ではなく、パイプラインなのだろうが。治安の変化より期待されるのは、実は、イラク治安機関要員で約5500人に登る。かなりの数だ。が、当然、そこにイラク風の政治が発生することになるのでそれが返って危険になる可能性のほうが強いのではないか。
 二点目の今回のハワード首相の決断の前夜の危機なのだが、この情報が今ひとつ錯綜している。NHKのオーストラリア支局だったかの話では、かなりの危機的な状況が伺われた。日本語で読めるニュースとしては22日の読売新聞系"豪軍が450人増派へ、サマワで英軍の一部と交代"(参照)がある。


ハワード首相によると、増派について数週間前からダウナー豪外相らが英政府と協議を続けてきた。また、18日に小泉首相がハワード首相に電話をかけた際、小泉首相から直接要請が行われた。21日にはブレア英首相からもハワード首相に電話があり、最終的に増派を決断したという。

 NHKの話でも同じような感じではあった。ちょっと歪めて言うのだが、必死だったのは、ブレだ。その背後で小泉がマッツ青だったかがよくわからない。この平成のスーダラ首相はメディアの見えないところで必死だったのか?違うんじゃないか。ブレアの必・死・だ・な、は、自国内での政争があるのだろう。ゴードン・ブラウンとの戦いか。ただ、それでも、ハワード首相が頷くあたりにはもっと深いコモン・ウエルスというか大英帝国があるのか…陰謀論ではないが、なんかもう一枚ありそうには思う。なんだろ。女王様が噛んでいるのか。いずれにせよ、ブッシュの影はそれほど濃くはなさそうだ。
 三点目のハワード首相の見返りだが…二点目の憶測にも関係するが、これが案外わからない。今週のニューズウィーク日本語版(3・9)に"自衛隊を守る豪州の打算 突然「警護役」を引き受けたハワード首相の思惑"という記事があり、英豪人のライターのものだが、これがなんかまじめくさったわりにぼわーんとした記事だ。案外この記事がほのめかすように、ハワード首相には世界の動向に対する豪州のあり方について強い長期ヴィジョンがあるのかもしれない。というか案外それが解の可能性はある。この人は案外、チャーチルみたいな(なわけもないが)英国の政治家の風でもあるのかもしれない。もうちょっと補足すると、北朝鮮と中国の問題に明確な意識をもっているのは、案外、ハワード首相だけということもありうる。
 日本国内的には、それって、FTAでしょ、キマリっしょ、という空気ではある。もちろん、豪側の読みを受けた形にはなっている。ベタ記事に近いが毎日新聞記事"豪野党党首:陸自の安全確保のためのイラク追加派遣を批判"(参照)を引く。

オーストラリア政府がイラク南部サマワで活動する陸上自衛隊の安全確保のため部隊のイラク追加派遣を決めたことについて、豪野党グリーンズのブラウン党首は23日、「イラク問題ではなく、日本との自由貿易協定(FTA)締結につなげるのが狙いだ」とハワード首相を批判した。

 常識的に考えてそれがないというのが無理でもある。ハワード首相は4月21日のオーストラリア・デーに合わせて愛知万博を見に来ましたってな感じでFTAのプッシュにやってくることになっている。タイミング的にはうまい。というか、日本側もお土産を用意しないといけない。おいくら?
 CNN日本語版の記事"豪、自衛隊支援にイラク・サマワへ兵450人増派"(参照)によるとこうだ。

 サマワに派遣する兵の規模は、軍幹部と協議の上で決めた。450人増派にかかる費用は年間2億5000万~3億5000万豪ドル(約210億~300億円)に上る見込み。

 もちろん、これで済む話でもないのだが、不謹慎なのでやめておく。日本としてはこの数倍返しをしないといけないので、日本政府側がなにどうするのかホワイト・デーのように今頃悩んでいるのはないか。
 ということで当方妙案があるのだが。米国との牛肉問題だが、なにが問題かって、最終的には米国牛肉を輸入するという落とし所がまずいのだ。ここは、ずどーんと、あと10年は米国牛肉は買わない。代わりに豪州牛肉を買うとすればいいのだ。そうすれば安心して豪州側も生産体制を整えることができる…と、これ洒落ですと書いておかないと誤解する人がいるかも。

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2005.03.02

エルンスト・ツンデルはカナダからドイツに”送還”

 非常にタッチーな問題なので書くに尻込みしそうだが、この問題に言及せずしてなんでブログをしている意味があるのだろうと思う。とはいえ一般的な話題でもないし、まして日本のブログに向いた話題でもない。
 話は、カナダ居住のホロコースト否定論者エルンスト・ツンデル(Ernst Zündel)が国外追放となり、ホロコースト否定を法で禁止するドイツに"送還"された、ということ。送還にクオート・アンクオート(参照)としたのは、適切な表現ではないかもという米人がよくやる含みだ。なお、その後、彼はドイツに到着し、逮捕された。
 私が最初このニュースを知ったのは昨日のサロン・コムのトップニュース欄だった。まだ追放前、そして逮捕前ではあった。とりあえず「はてなブックマーク」した(参照・会員制)。ニュースはAP系で"Canada set to deport Holocaust denier"というタイトルだった。同ニュースは他でも読める。


Feb. 28, 2005 | Toronto -- Canadian authorities prepared to deport Holocaust denier Ernst Zundel back to his native Germany, and authorities there said Monday he faces arrest on charges of inciting racial hatred on his return.

Zundel, author of "The Hitler We Loved and Why," has been held in a Toronto jail for two years while authorities determined whether he posed a security risk to Canadian society.

Federal Court Justice Pierre Blais ruled Friday that Zundel's activities were a threat to national security and "the international community of nations."

Zundel's attorney, Peter Lindsay, said his client would not appeal and was expected to be deported as early as Tuesday.


 ある意味でよくまとまっている。ある意味というのは、米人向けということだ。これをさらっと読めば、カナダに逃れていたヒットラー礼賛の危険な極右ドイツ人が本国に送還されるということになる。そう来たか。
 気になって、Googleを当たってみたのだが、米国での主要なニュースソースではあまり触れていない。ニューヨークタイムズやワシントンポストでも触れてないように見える。そう来たか。
 代わりに当事者であるカナダでは話題になっていることがGoogleからわかった。すると…と思って、カナダ在のSoredaさんのブログ"セカンド・カップ はてな店"(参照)を覗くと、予想したとおり、この話題に触れていた。言葉を借りるのだが、「ちょっとこう、なかなか言いづらい話ではあるのだが…」という感じに共感する。翌日のエントリ(参照)にも関連の有益なコメントがある。特に、ツンデルがドイツ系カナダ人ではないという点だ。
 さて、これはいったいどういう問題なのだろう? APのニュースを聞いて、「うんだ、うんだ、じゃ、ベコっ子の様子見てくべ」といった普通の米人の態度でいいのか。っていうか、そういう普通の米人はこのニュースさえ知らないかもしれない。ということは周辺的なことだ。まして日本での報道はゼロかもしれない。
 この問題の根幹は、あまりはっきり言うのも躊躇うものがあるが、私は「ツンデルは思想犯だ」ということだと思う。思想によって処罰をされるということが先進国であり得るという恐怖の事件だ、と。
 しかし、米国知識人や日本のいわゆるリベラルは、こう考えているのではないだろうか。つまり、「ツンデルの思想というのは、ヒットラー礼賛でホロコースト否定という思想である。いくら思想とはいえ、こうした思想とそれを広めようとする思想活動は犯罪である」と。
 そこまで”リベラル”ではないにせよ、10年前の、1995年1月のマルコポーロ廃刊事件を思い出すだろう(参照)。そして、「ああ、これはアレやコレと同じ、触らぬ神に祟りなし系だね、じゃ、健やかにスルーで決まり!」っていう結論に至る。私も、そうだ。断固してツンデルの主張の内容についてはスルーに決め込ませていただく。骨の髄までヘタレであるので、そこのところよろしく。
 というわけで、ホロコースト否定だの歴史修正主義といった話題には触れたくもない。というか、そこは豪快に括弧に入れさせていただく。
 問題は、繰り返すが、現代の先進諸国において思想犯罪なんてものがあっていいのか?ある種の思想というのは制限されるものなのか?ということだけである。
 私は、いかなる思想であれ、思想犯という考えは論外ではないかというふうに、か弱く思う。それって人権の基本ではないかと、か弱く思う。朝日新聞が今朝の社説で説くように「さまざまな分野での人権侵害を見すごさぬよう改めて心したい」(参照)という意見に、小さく賛同する。
 が、そうではないという視点もある。というか、ツンデル、英語読みではアーネスト・ズンデルだが、世界通信情報サミットとかいうサイトの「ネチズンの登場と新しい 民主主義社会―ネットワーク社会問題解決への世界協調」(参照)でこう触れられているのが参考になるかもしれない。話題は「ネットワークと人権」ということらしい。

 高木さんが差別問題に関する事例を挙げておられますが、その他の事例をということですので、以前の知識の蓄積で恐縮ですがふたつの事例をご紹介してみます。
ひとつはネット上のhate propagandaの問題です。欧米ではそこそこ有名な事例なのでご存じの方もおられるでしょうが、ドイツ系カナダ人のアーネスト・ズンデルという人がやっているhorocaust denialのホームページです。「ホロコーストは存在しなかった」という主張をネット上でも行っているのですが、カナダの刑法ではhate propagandaは刑事罰の対象であり、サイトを立ち上げることが禁じられたため、「表現の自由」が無制限のアメリカのサイトで「表現の自由」を行使しているのです。
 カナダは憲法で「表現の自由は法律の下に制限される」ことになっていますし、アメリカは憲法で「表現の自由は制限されない」ことになっていますので、両国の対応とも論理的には正しいものであると思われます。
 それでは日本はどうかというと、「ホロコーストはなかった」という論文を掲載しただけで雑誌が廃刊に追い込まれてしまう。表現の自由を擁護すべきマスコミやジャーナリストや知識人がこぞって自らの首を締めてしまうという状況は全く非論理的なんですよね。論理的ではないので、欧米人にはこのような日本の状況を説明するのは誠に困難です。論理的な説明を可能とする最も好ましい方法は、表現の自由の規制を法律で明確に定めることであろうかと考えます。
 逆に、表現の自由を無制限に認めるという立場に立つのであれば、例え見解に反対の場合であってもその見解を制限すべきではない。他の人権保護との競合があったとしても、その見解の発表の機会を制限をすることは許されないと考えなければならないでしょう。アメリカはこの点で徹底しています。徹底しているからこそ、反論のし甲斐があろうというものです :-)
 ちなみに、最近のカナダのシンクタンクの調査では、インターネット上のhate siteは既に千を超えている状況であるということですが、カナダのISPは自主規制しているので、ごく一部の州を除いてはhate siteは存在しない。ところがアメリカは無制限の表現の自由があるのでhate siteの巣窟になっている、というのが調査結果として報告されています。

 というように、ツンデルについては、10年ほど前、インターネットの規制ということで話題になった人でもあった。
 で、このコメントだが、大筋はこれでもいいのだが、実はある意味で重要な点で錯誤がある。「ドイツ系カナダ人のアーネスト・ズンデル」という読みは別として、Soredaさんがコーションを出していたように、彼はドイツ系カナダ人ではないのだ。しかも、このあたりがあまりも絶妙な味を醸し出していて絶句してしまうのだが、関連して、"セカンド・カップ はてな店"(参照)を引用したい。

 カナダ人だったら追放にはならんのですよ。40年ぐらいカナダにすんでるけど彼は市民権取得を拒否されていた、だからドイツ人ママ。でもって取得を拒否された後アメリカに行ったんだが、アメリカは彼をオーバーステイでカナダに戻しています。
 で、2年間の独房収監を経てこのたび原国籍であるドイツに追放deportした、と。

 Soredaさんがおっしゃるように、この事態、なんと言っていいのか言葉に窮するのだが、ツンデルは40年以上もカナダで暮らしていてカナダの市民権取得が拒否されていた。
 それがツンデルの思想活動の背景にあるのかわからないが、アメリカに一時移動しネットで活動するものの、米国は微罪で彼をカナダに放り出す。米国はこの問題に手を汚したくないという真性ヘタレという点で私のお仲間なのである。っていうか、大人って汚なすぎる、なにが人権だよ、国籍が先行してんじゃんと、言いたい気持ちをヘタレの私はぐっと抑える。洒落はさておき、つまり、ツンデル送還の問題には、この人権と国籍の問題も絡んでいるのだ。この件について、人権擁護派さんたちがなんていうのか聞いてみたいが、ヘタレか、あるいは、思想犯ってもありぃってことになるのだろうか。
 9.11で俄に日本で有名になったチョムスキー御大はそうではない。"Thoughts on Zundel"(参照)でBrian O'Connorはこう指摘する。

I can't help thinking about an incident in the early 1980s when Noam Chomsky defended holocaust denier Robert Faurisson's right to free speech and took much heat for it by folks who couldn't perceive the difference between defending someone's right to speak and defending the substance of what they say. After being attacked from all sides he wrote a brilliant response titled "His right to say it". Part of it I've included below.

Let's continue to fight to abolish this undemocratic security certificate but lets also acknowledge that its net is wide - and will certainly widen with time - and we mustn't pick and choose which of its victims to defend. They are all victims of the same injustice. They are all being denied the right to a fair trial, the right to be free of arbitrary detention, the right to see the evidence against them and to face their accusers in open court.

[BEGIN QUOTE] Faurisson's conclusions are diametrically opposed to views I hold and have frequently expressed in print (for example, in my book Peace in the Middle East?, where I describe the holocaust as "the most fantastic outburst of collective insanity in human history").

But it is elementary that freedom of expression (including academic freedom) is not to be restricted to views of which one approves, and that it is precisely in the case of views that are almost universally despised and condemned that this right must be most vigorously defended. It is easy enough to defend those who need no defense or to join in unanimous (and often justified) condemnation of a violation of civil rights by some official enemy.[...]

It seems to me something of a scandal that it is even necessary to debate these issues two centuries after Voltaire defended the right of free expression for views he detested. It is a poor service to the memory of the victims of the holocaust to adopt a central doctrine of their murderers. [END QUOTE]


 同サイトにはブッシュ叩きで有名なジョン・カミンスキ(John Kaminski)の言葉もある。

"Ernst Zundel is our barometer of freedom, and that forecast is dreadfully stormy as his hope for freedom wanes. Held for 18 months in solitary confinement in kangaroo-court Canada without charges and without the ability to defend himself, he faces imminent deportation to Germany where he will likely never leave prison again..."

 ツンデルというのは私たちの自由のバロメーターなのだと私も思う。
 先のBrian O'Connorも"If it can happen to him, it can happen to you. Or me.(こんなことが彼に起きるなら、同じことがあなたに起こりうる。もちろん私にも)"と言う。そうだよね。
 いかなる思想であれ、思想によって人が裁かれるっていうのは恐いことだ、おー恐い。
 今朝のロイター"Canada deports Holocaust denier to Germany"(参照)では、昨日のAPよりニュースに陰翳が出てきている。ここではツンデルにこう語らせている。

Zundel never backed down from his views and said it was libelous to brand him a hate-monger.

"I've made my contribution to this country. I've paid my taxes," he told reporters in 1998.

"How dare you tell me what I can say and I cannot say? ... Canada has become an absolutely Stalinist, repressive, censorship-happy society, if you are a dissident."


 この見解は私はまともだと思う。
 日本では、ツンデルについて、「ツンデルだって、穴熊? あれって、UFO論者のリアル・●チガイでしょ」といったふうに見る意見がある。例えば、"町山智浩アメリカ日記"の"「華氏911」でいちばん怖い場面"にこうコメントがある(参照)。長いが基本的なインフォも含まれているので引用したい。

# TomoMachi 『やっぱりカナダのズンデル! だと思った! このズンデルがどういう男なのか、今すぐ本屋に行ってと学会編「トンデモ本の世界」の第一集を読んでください。この本は私が編集した本ですが累計で30万部超えたベストセラーなので、ズンデルがどういうバカなのか少なくとも30万人は知っています。この本を読んだ後でもズンデルを信じ続けられますか? ちなみに落合信彦の本についての箇所です。ズンデルの爆笑事実が書いてありますよ。だってこいつ、北極には大きな穴があってそこから地球の内部に入れると信じていて、地球の内側にはナチの残党が住んでいて、UFOはそのナチの秘密兵器だと信じてるんだよ! しかも地球の中のナチ国に行く資金を集めようとカギ十字マークのフリスビーを通信販売してるんだ! だからちゃんとしたネオナチ(どんなだ)はズンデルだけはバカにしてます。こんなバカに味方されたくないって。そりゃそうだ。UFOやら地球空洞説信じてフリスビー売ってるひきこもりの中年ナチマニアじゃ、カッコいいナチのイメージが汚れちゃうもんね!』
# TomoMachi 『で、ズンデル以外に何かネタ元はないの?』
# avon 『私はツンデル個人がどういう人物かというのは知りません。ですのでその本はぜひ読んでみたいと思います。ご教示ありがとうございます。資料の例として挙げたのは比較的近年に行われた裁判で、ニュルンベルグ裁判よりはずっと公正な状況で行われたからです。仮にツンデル本人がバカチンだったとしても、最終的に無罪判決を勝ち取ったわけですから、ツンデルがバカ=ツンデル裁判も無意味・無価値とは言えないと思うのですが。』
# TomoMachi 『ズンデルは正しいから無罪になったのではなくその言論自体が社会的に無意味で無価値だとみなされたからです。ただの引きこもり実質無職負け犬中年の妄想だからね。落合の本でも有名になったからズンデルというのは読書家からも、それにナチマニアの間でも失笑ネタでしかないんだよ。ネオナチだってよほどのバカでない限りズンデルのこと言われると怒るよ。あんな負け犬引きこもり妄想オタク中年と一緒にするな!って。ていうか、はっきり言うけどドイツの歴史云々偉そうにいいながらズンデルの地球空洞説も落合信彦本も知らないなんてユダヤ人問題について偉そうに大人に対して反論する資格がケツの毛ほどもない。勉強して出直して来い! 特にナチ・マニアの人たちはそう言うと思うよ。もしかして中学生ですか? だったらしょうがないと思うけど。』
# avon 『学が無いのはその通りなので認めます。この件に関する町山さんのスタンスはわかりましたので、とりあえずはその本を探してみます。』
# TomoMachi 『ズンデルって本当にどこの町にも一人はいる電波系のオジサンにすぎないんだよ。いるでしょ、自分の家の周りに気が狂ったようなビラを貼ってるババアとか。そんな負け犬引きこもりの無意味で無価値で一銭の得にもならないことにこだわる前に、まず社会的に必要とされる一般常識から身につけて自分の生活を救ったほうがいいよ。ユダヤは殺されてないと主張しても別にいいけど、きっと誰にも相手にされないし、たぶん彼女もできないし(だってそんなこと主張してる奴ってキモくね?)、会社の上司からも嫌がられるし、友達もできないし、どんどん自分の一生を惨めにしていくだけだよ。ドイツの人がかわいそう? 君ドイツ語もできないしドイツ人の知り合いもいないから関係ないじゃん! そういう研究したいならしてもいいけど、まず高校行って就職するほうがいいんじゃないの? まずドイツ人より君が幸せになるために。』
# TomoMachi 『要するに一般に共有されてない知識にこだわると孤独になり、一般に共有された認識をまず身につけると社会的にも経済的にも向上するということ。それをやってからヘンなことにこだわればいいの。』

 まず誤解から自分の身を守る意識が先行するのがヘタレの悲しいサガだが、私はこの町山智浩氏の意見に反対ではない。批判もしてない。というか、「ズンデルって本当にどこの町にも一人はいる電波系のオジサンにすぎないんだよ。」で終わりとできるならそれでよかったとすら思っている。
 今回の事件は、別の言い方をすれば、「電波系のオジサン」を思想犯にしてしまったということだ。だから、そんなことがあっていいのか、という問題でもあるのだ。
 しかも、今回の事態はドイツ側の報道で私にはよくわかったのだが、カナダ政府のテロ対策の一環としての活動なのだ。すでに触れた話のカブリも多いが、Die Weltの翻訳を引用する(参照・オリジナル)。

That today 65jaehrige lived since 1958 in Canada and is particularly as a publisher of right-extremist writings admits become. Among other things he sent the appearing irregular "Germania circular away", which contains anti-Semitic theses. He had striven several times in vain for the naturalization in Canada. 2003 it had tried to receive the American nationality however from the US authorities to Canada had been pushed away. Since then it had been arrested on basis of a new Canadian anti-terror law in Toronto.

 つまり、カナダではテロとの戦いが思想犯の根拠になっているのだ。なんてことなんだろう。

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2005.03.01

~はチルダ、^はなんといいますか?

 以前、「はてな」(参照)の質問から、&の書き方の話をネタにしたことがあった(参照)。今回もそれの続編みたいなもの。「~はチルダと言うそうですが、^はなんといいますか?」(参照)を拝借。
 で、このネタ、それほどどってことでもないのでパスしようかとも思ったのだが、寄せられた回答にちょっと思うことがあるので書いてみたい。
 寄せられた回答やその後の追加の話題(参照)は、なんとなく、「アクサンシルコンフレクス」に落ち着きそうでもある。ま、それで間違いでもないのだが…しかし…と私などは思ったのだった。ちょっとキーボードを見て考えてもわかると思うけど、アクサンシルコンフレクスがあそこのキーにあるのは変…でしょって、私は日本語キーボードではないので、他のマシンを覗きに行くとさらにあれれ?ではある。
 もちろん、この手の話にズバリの回答というのはない。例えば、#とかもなんと読むかについていろいろ説がある。ま、この記号については、また「はてな」とかでネタに上がったら書くかもしれない。Perlのあれがなぜshebangと呼ぶかとかね。
 で、普通というか、伝統的には米国的には、^は、カレット(caret)と呼ぶ。ニンジンは(carrot)だね。なので、はてなの掲示板いわしにはこう書かれていた。


キャロットじゃなくとキャレットですね
人参じゃあしょうがないです。
うちの会社内にもキャロットと言う社員が大勢居ます。
いちいち訂正してられません。まったく。

 それが、米発音では同じなのです。辞書によっては違った発音記号を当てているのもあるけど(分けて発音する人もいるけど)、同じです、はい。というわけで、米語の発音という点でははたして訂正する意味があるかはよくわからない。余談だけど、現代日本人がニンジンと言って食っているあれはまさにキャロット。ニンジンっつうのはもっと細長くキャロットほど甘くはない。
 カレット(caret)とでニンジンは(carrot)は米発音で同じだけど、スペリングは違うように、同じ言葉というわけではない。キャロットみたいにとんがっているからカレットというわけではない。ただ、とんがっているからハット(hat)はそうらしい。
 似たような回答のこれも…。

http://dictionary.goo.ne.jp/search.php?MT=%A5%AD%A5%E3%A5%ED%A5%C3%A5%C8&kind=jn...
国語辞典 英和辞典 和英辞典 - goo 辞書
>頭にぴったりとつく、半球状の帽子。

キャロットって 帽子のことなんですね。

http://park.zero.ad.jp/~zbc91479/kiiboodo.html
白の辞書~キーボードの謎~



質問者のコメント
頭にぴったりとつく、半球状の帽子。

イスラム系などの祭司がかぶっている帽子でしょうか? 「^」全然半球状じゃないですね。


 それは、確かにキャロットだけど、フランス語のcalotte。というわけで、発音がまるで違う。そのRとLは、全然違う音なわけです、日本以外だと。
 じゃ、カレット(caret)って何か?だが、それはgoo辞書だとこう(参照)。

car・et
━━ n. 脱字記号, キャレット (∧).

 説明はこんだけ。
 なので、補足すると、これは、もともと、ラテン語の"careo"(欠損している)から来た言葉(careo, carere, carui, cariturus)。で、これは、脱字記号。なぜ、脱字記号?
 ラテン語で「欠損している」というのがこの記号に充てられたからだ。この記号は「ここに脱字がありますよ」という差し込み位置と差し込み文字を示すのに使う。これは、タイプライター時代、けっこう使ったものだった。
illust
 この「はてな」の質問と回答を見ながら、オリベッティのレッテラとか使っていた世代は私あたりが最後になるのだなぁという隔世の感も打たれた(いや、もう少し下の世代にもいるようだった)。DECのVT-100のキーボード(GにBELLってあるやつ)とか、101以前のIBMの大型のキーボードとか、AltキーはAPLのためにできたとか…自分が博物館入りのような錯覚に襲われる。
 そういうわけなので、「はてな」の掲示板にあるこれ(|)の話も、脱字記号という意味では同じなのだ。

Re:キャロットじゃなくとキャレットですね
キャレットって | となってるやつかと思ってた。

 回答には、JISではアクサンシルコンフレクスらしいともあった。ITU-Tの影響っぽいのか。あれの公式文書はフランス語だしな。とちょっと見たら、ISO-8859-1ではcaretだった。

10年ほど前
パソコン通信のBBSで話題になったことがありまして、JIS用語ではアクサンシルコンフレクスだ、という結論でした。FORTRANの教本にもそう書いてあり、パソコンのオマケの読み上げソフトもそう呼んでいました。今はきっと読み方が変わったんですね。

 というわけで、時代が変わり、^ってカレットといって脱字記号だよ、と言うのも正論ではなくなったわけだ。
 そういえばと思って、Wikipediaをひいてみた(参照)。"This is a disambiguation page "とはあるものの、ここでもCircumflexがメインになっている。時代だな、スヌーピーみたいにタイプライターを使うのは、ローバート・サミュエルソンくらいなものか。が、Wikipediaにはこうもあった。

in Windows API terminology, it means text insertion point indicator (whereas the word cursor is reserved for mouse pointer)

 というわけで、タイプライター時代の名残は、Windows APIに残っているということだろうか(って^の記号かどうだか)。

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2005.02.28

漁業に遠慮して日本のスパイ衛星打ち上げは延期だ、とBBCが伝える

 今朝のエントリにアップすべくたるいネタを用意していたのだが、なんとなく、H2Aの話に急遽差し替え。とはいえ、重要というほどの話でもないし、日本の衛星ビジネスに当方が詳しいわけでもない。クサシという意図はないのだが、なんだかなぁコレという思いが強くなったのでざっと書いておきたい。
 私の見落としってことはないと思うが、H2A打ち上げ成功について、大手新聞社社説では朝日新聞だけが触れていない。なぜなんだろう? 余談だが、朝日新聞のサイトはニュースをちょこちょこ書き換えているようだ。Irregular Expression"朝日新聞は自社の「記事改変問題」をどう説明するか?"(参照)にその経緯があって笑った…で済まされることじゃないな。せめてdel/insタグで修正の履歴は残してほしいものだ。もう随分昔の話だが、こういう笑い話があったのを思い出した。「スターリンでもできないことがある。それはプラウダを発行しなおすことだ。」 ところが朝日新聞ってそれやっているじゃん。
 さて、他紙の社説でのH2A打ち上げ成功の話だが、読売"H2A成功 復活への足がかりが得られた"(参照)が、いけいけどんどん、といったところか。そう悪い話でもない。今回のキモは気象衛星だったが、情報収集衛星についても言及している。


 H2Aは来年度、三回の衛星打ち上げを予定している。災害監視に力を発揮する陸域観測技術衛星、MTSAT2号、日本の安全保障に重要な情報収集衛星と、どれも失敗は許されない。

 毎日"H2A成功 信頼性向上へさらに努力を"(参照)はややテクニカルな話に傾き、情報収集衛星の話はスルー。ちょっと国寄りのトーンは強い。

ロケット打ち上げをはじめとする宇宙開発は、やはり自前の技術を確保しておきたい。その期待に、JAXAもメーカーも協力して応えてほしい。

 産経"打ち上げ成功 さらなる努力を重ねたい"(参照)がなぜか情報収集衛星に触れていない。代わりに衛星ビジネスに主眼を置いている。このあたりの産経のスタンスがよくわからない。もしかすると手の込んだアイロニーなのかもしえない。私は日本の衛星ビジネスは絶望的だと思う。

 日本の宇宙開発は、H2Aロケットの民間移管の途上にあり、三菱重工業が主役になることが決まっている。今回の打ち上げでは株式会社のロケットシステムが中心的な役割を果たし、形の上では日本初の商業打ち上げが実現した。
 だが、世界の衛星打ち上げビジネスの市場は以前に比べて一段と厳しさを増している。衛星打ち上げの需要減に加え、廃棄ミサイルを再利用したロシアのロケットは価格破壊をもたらしている。
 H2Aロケットが国際市場で生き抜いていくには、これまでに倍する努力が必要である。

 日経"H2A、信頼回復まだ一歩"(参照)は、遅れて出したわりに、特に見るべき内容はない。が、しいていうと、ここが重要か。産経の社説でも触れてはいたが、三菱重工業かぁ、と。

H2Aは、国産ロケットの高コスト批判を受けて、打ち上げ費用を抑え、宇宙ビジネスへの参入も狙ったロケットだ。すでに三菱重工業が運用する形で民間移管することが決まっている。だが、前回の失敗で移管時期など細目の協議は止まったままだ。移管を円滑に進め、外国の衛星打ち上げの商談も進むよう、さらに技術の完成度を上げ、高い信頼性、安定性を示すことが重要だ。

 久しぶりに社説を舐めてみたわけだが、なんだかなという印象はある。NHK「あすを読む」で「科学大好き土曜塾」の隊長さんが詳しく説明していたが、衛星ビジネスの標準的な成功率である9割のラインに日本が乗るのはあと16回の連続成功が必要らしい。日本は年間3本くらいか。するとあと最短であと5年。失敗を含めて8年くらい……お話にならないのでは。
 とはいっても、日本が衛星技術を持っているという誇示だけがその意味かもしれないとも思っていたのだが、昨日のBBC"Fishing season delays Japan satellites"(参照)には笑った。

Fishing season delays Japan satellites
The launch of two spy satellites in Japan has been put on hold for the third time - because it coincides with the fishing season.
【試訳】
漁業期間の都合で日本の衛星計画は遅れる
日本のスパイ衛星の打ち上げは三度目の延期に迫られた。理由はというと、漁業シーズンにかち合うからである。

 その言い方はないだろとか日本人である私はちょっと思うのだが、記事を読むに、ふーん、そういうことなのか。つまり、国際的に見れば、ポイントはスパイ衛星を日本が自前で運用するということと、そうした国策レベルの話が漁業民の生活より優先順位が落ちる、と。
 BBCの記事の文章は淡々として凝った皮肉というわけでもないが、こりゃ、しかし、結果として皮肉な話だな。というか、日本って外側からはこう見えるわけか。
 そういえば、読売新聞でこのところ「国家戦略を考える」という連載をしていた。22日"第1部(16)宇宙開発、政府ちぐはぐ"を読み返すと、ちゃんと漁業保護について触れている。

仮に商業衛星を二月末までの打ち上げで契約した場合、悪天候で二月中の打ち上げを見送ると、次に打ち上げが可能なのは六月二十六日以降になる。「こうした遅延は賠償金の対象となる恐れがあり、受注自体がおぼつかない」と中間報告は記している。

 他に滑走路の問題の問題にも触れていたが、要するに、種子島じゃ、衛星ビジネスって話はむりむりという結論しか出ないようだ。いや、それって外国でやればという結論が出る。ということで、キリバス共和国を借りる話が進んでいたらしい。

 日本は二〇〇〇年、キリバス共和国との間で、約22億円を投じて周辺整備を行う代わりに飛行場を借用する協定を結んだ。「日本版スペースシャトル」と言われる無人宇宙往還技術試験機(HOPE―X)の着陸場として使うためだった。だが、予算削減のあおりでHOPE―X計画が凍結され、昨年秋、借用協定を打ち切ることになった。

 ま、キリバスはダメでしょう。もうすぐ沈むしって、ブラックジョークはやめとけか。それにしても、こうなったらひょっこりひょうたん島の精神である。つらい時には笑っちゃえ、進めぇ、ひょっこり日本島。

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2005.02.27

スペインのご事情、EU憲法とレグラリサシオン

 2月20日に実施されたスペインでの、EU(欧州連合)憲法の是非を問う、加盟国で初めての国民投票だが、賛成多数が見込まれることもあり、それほどには話題にはならなかったようにも思う。私としても、ふーん、スペインでしょ、EUに労働者を送り込む側の国でしょ、補助金とかもがーちょーんと貰っているじゃん、観光で食ってる面も多いしね、で、賛成だってか、ふーん、といった感じであった。
 国内の報道などを見るに、賛成が76.73%と反対の17.24%を大差で上回ったとして喜んでいるトーンが感じられたが、ふと昨日のエントリを書いたあと考え込んだ。この選挙の意味は、投票率も42.32%のほうではなかったか。そのあたりの雑感を書いてみたい。
 話の枕に日本経済新聞記事"スペイン、EU憲法に77%が賛成・投票率は42.32%"(参照)を引用しておく。


 同日深夜(日本時間21日朝)に官邸で記者会見したサパテロ首相は「スペイン国民は欧州の歴史を作った」と各国の先陣を切る投票でのEU憲法承認の意義を強調。「スペインが切り開いた道にしたがって後に続いて欲しい」と述べ、今後国民投票を予定している加盟国に呼び掛けた。焦点の投票率は2004年6月に実施した欧州議会選挙の45.1%を下回ったが、圧倒的な賛成票によって投票所に足を運ばなかった「サイレント・マジョリティー」の幅広い支持を印象づけた。野党の国民党などが投票前に与党の責任を追及する目安としていた「40%」も上回り、国内的にもサパテロ政権への求心力を高める結果と受け止められている。

 前半はどうでもいいし、お目出度いトーンもスルーして、今回の投票におけるスペイン国民の無気力さという点から見ると、昨年の議会選挙の投票率を下回ったわけだ。これはれいのテロ後の反発だったのかもしれない。スペイン国内的には、今回の投票では、40%を割るかというところがテロ後のサパテロ政権の事実上の承認ラインだったようだ。で、この結果の42.32%は、日経の記事のように「サパテロ政権への求心力を高める結果」と見るのは難しいように思う。
 関連ニュースを見直してみた。欧州側では一応安堵。米国はさして関心もないという印象だがそれでも日本よりは報道はある。読みやすいところで、CNNジャパン記事"スペイン国民投票、EU憲法を承認 加盟国で初"(参照)がわかりやすい。

 スペイン内務省によると、総票数1330万票のうち、EU憲法に賛成が76.4%。反対が17.4%、6%が白紙投票だった。投票率は有権者役3500万人のうち42%にとどまった。
 今回の結果を受けて、スペイン議会が批准の是非を決める。スペインは1986年のEU加盟以来、計860億ユーロ(約11兆6100億円)の補助金を受けており、与野党ともに、EU憲法を支持している。

 気になったのは6%の白紙票だが、これが抗議の意図なのかがわかりづらい。もしそうなら、投票率から事実上この分を減算してもいいのではないか。EU憲法を蹴飛ばそうとした前政権のアスナールの影響がまだ残っていると見るのも難しいだろうが、それでも反EUの気風はまだまだスペインにはあるのだろう。とすると、他の国も推して知るべしかもしれない。CNN報道にあるこの補助金だが、来年からはこれが東欧にまわるので、むしろこの時点での投票はかなり仕組まれた印象も受ける。
 ところで昨日のエントリでCASA ROSSAのエントリをぱらぱらと読みながら、スペインに関連して、"不法滞在者 80万人に査証発給へ!"(参照)が気になった。先日スペインで行われたレグラリサシオン(regularización:大赦)である。ニュース的な話については、2月12日の読売新聞記事"スペインが不法移民を合法化 EU諸国、流入懸念し批判"を引用しよう。

 スペイン政府は、国内に滞在する不法移民約百万人に対して一定の条件を満たせば、滞在、労働許可証を付与する大胆な合法化策を今月七日から実施した。移民はいったん、滞在、労働許可証を得れば欧州連合(EU)域内を自由に移動できるため、他のEU諸国からはスペインの政策に早くも批判が高まっている。
 スペインは、不法移民にとって欧州諸国への玄関口となっており、現在、南米、北アフリカなどからの不法移民がスペイン国内で建設業や農業などに従事している。
 同国が不法移民の合法化に踏み切ったのは、地下経済のあぶり出しにつながり年間数百万ユーロ(数億円)程度の税収増も見込まれるためだ。

 先日読売の外信は使えねーとかタメ口をこいたが、反省。よく書けている。というわけで、記事を読んでいただければわかるが、スゲーなである。まず、これってEUに対外民を取り入れるお安い窓口だし、しかも地下経済の吸い上げって、なんだか、それって※クザ?みたいな感じだ。
 今回のEU憲法投票を前にしてのレグラリサシオンなのかよくわからないが、CASA ROSSAのエントリにもあるように今回が初めてではなく、6回目である。
 今後もこの施策が通じるのだろうかということもだが、この状態を他EU諸国がどう見ているかというと、読売記事標題にもあるようにかなりむっとしている。しかし、ここでEU憲法はGOGOにしておきたい…ま、つらいところか。
 今後この流れ、つまり、EU憲法成立への機運と不法移民のバランスはより深刻になっていくのだろう。この当たりのEUの事情が世界にどう跳ね返ってくるのは、私にはよくわからない。大局的に見れば、洒落でなく、EU自体がイスラム圏になりうる。

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