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2005.02.12

北朝鮮核保有宣言と六か国協議拒否

 10日北朝鮮外務省の発表には二点重要なことがあった。一つは核問題をめぐる六か国協議への参加を無期限中断したこと、もう一つは、核兵器を製造したとの初めての公式アナウンスである。
 すでに日本を射程に収めたミサイルを持つ北朝鮮が、さらに核兵器も保有したと公式にアナウンスしたという報道が流れた当初、日本国内には多少衝撃が走った。が、多少というところか。日本政府も早々に目新しいことではないとのアナウンスを出し、また、NHKなどの報道メディアも「核兵器ではない核兵器だ」と、に論点を移そうとしていた。いずれにせよ、しばらくして国内の危機感みたいなものは消えた。ブラフに対向するには無関心が最高である。
 もっとも、核兵器保有アナウンスなんてたいしたことないよ、てな論点は欧米のジャーナリズムには見られないようだ。もちろん、米国政府は基本的にはどってこないじゃんという対応をした。が、BBCなどコモンウェルス系の報道はかなり深刻に受け止めている。
 米国ジャーナリズムでもミサイルに搭載された北朝鮮の核兵器の影響について、それなりに詳しく扱っている。この点で私に一番わかりやすく思えたのはワシントンポスト"North Korea's Nuclear Path"(参照)だった。戦前のイラクより明確に北朝鮮は脅威だな、というのが見て取れる。
 ワシントンポストのこの図と限らないのだが、北朝鮮の核で覆われている圏内には欧米が含まれない。中東の問題やアフリカの問題に日本が実際には関心もたないように、あるいはかつてのリビアの核兵器開発に関心を持たないように、北朝鮮の核の脅威に欧米にはそれほどは関心をもっていない。しいていうとオーストラリアがかろうじて圏内に入るせいか、また、保守政権でもあるせいか、関心が高いような印象は受ける。
 改めて図を見ると、というか、見るまでもなく、中国とロシアがすっぽり覆われた形になっており、中ロとしては、今回の発表はかなりむかつくシロモノだったのではないか。
 実際のところ、北朝鮮の核兵器の脅威はあるのか、日本はどうよ、ということについてだが、以前にも触れたように、ミサイルを持ち、核兵器が開発されていても、それに搭載可能な技術と、さらに移動式の発射台を持たなくては実際上の軍事的な意味はない。せいぜい、汚い爆弾を東京あたりにアバウトにぶち込むくらいのものだろうし、その暴走は、独裁者金正日が「我が死後に大洪水あれ!」と叫ぶかによる。米軍は実質関東を軍事下に置いているので、米軍はある程度事前に察知するだろうし、金さんとしても、東京にアバウトに向けることはないのかもしれない。
 余談にそれるかもしれないが、米国時間10日にこれに合わせるかのように、MSNBC"New book reveals military code names"(参照)でConplan8022がすっぱ抜かれた。話は早々に朝鮮日報に伝染しているので記事"「北核施設先制攻撃の暗号は『Conplan 8022』」 "(参照)が日本語で読みやすい。


 米国の軍事分析家ビル・アーキンが3000にも上る作戦暗号を米国防部と中央情報局(CIA)の関連プログラムの説明とともに公開したとMSNBCインターネット版が10日、報じた。
 アーキンが最近「コードネーム」という題で発刊した本で公開された暗号名には、北朝鮮やシリア、イランの核施設とその他の危険物に対する極秘先制攻撃計画を意味する「Conplan 8022」も含まれていた。

 これ話自体はガセの可能性もあるが、移動式ではない核弾頭ミサイルは先制で叩くべし、というのは私には軍事のイロハであると思う。ただ、それが核施設まで延長されるものかはよくわからない。昨年秋から日本海に出ばっているイージス艦も案外MD(ミサイル防衛)のためばかりではないのかもしれない。
 今回の北朝鮮発表のもう一つの目玉は、六か国協議への参加の無期限中断だが、これはこの問題をある程度ワッチしてきた人には意外だったのではないだろうか。というのは、先日のブッシュ演説でも、わざとらに北朝鮮への言及を避けることで、この会議の地馴らしをしていると見られたからだ。当然、中ロもその了解にあるだろうと見られていた。結果は、もう金さんてば勝手なんだからぁ、である。
 金さん、何を考えているのか? どんづまって尻をまくった、というのがただの正解の可能性もあるが、それの波及でわはははというだけでは独裁者は長いこと勤まらない。いろいろ憶測はあるが、これも意外とお家の事情というのがあるのかもしれない。先日の日本を越えて飛んで行ったミサイルについても、発射されてから金さんが知って驚いたふうでもある。案外、さみしい独裁者なのではないか。今週の日本版ニューズウィーク"北朝鮮 国境に広がる覚醒剤の闇 対中販路拡大のツケで中毒者が国内に増えている"がなかなか傑作なのだが、このあたりの話も、かなりの実態を突いているのだろう。つまり、権力と関係した一部の富裕層はかなり芳ばしく発酵してきている。
 いずれにせよ、北朝鮮内で誰かは今回のブラフというか、ちゃぶ台返しでゴネ得を狙っているのは確かだろう。ということで、一番むっと来たあたりを眺めると、まぁ、中ロではないか。そのあたりから、なにか引き出せると踏んでのお商売の感じはする。
 今後の動向と日本の関わりは当然気になるところだが、これが案外というか当たり前というか、日本はなんにもできないのではないか。日本では拉致問題関連で北朝鮮制裁論が一部でわきたっているが、私はすでにそうした制裁が有効であった時期は終わったと思う。日本を外しても中国と韓国でなんとか北朝鮮の独裁者とその取り巻きは食っていけるようになってきた。特に韓国が政治の本音のところで統一朝鮮の看板で北朝鮮を背負い込むのを恐れているための太陽政策なんかも抜けられない止まらないかっぱえびせんになっている。中国としても、北朝鮮に自国の傀儡以外の政権が打ち立てられ、統一朝鮮みたいな民族主義みたいなものが隣接域に発生するのは恐い。もともと、中国はモンゴルだの北方民族が恐くてしょうがないものなのだ。そして、強面に見える米国もMDを推進する手前、北朝鮮よ永遠なれ、が本音である。
 こうした配置で、概ね日本はすでにずっこけているのだが、唯一方策があるとすれば、私がまだ幻想を持っているのかもしれないが、国連を使うことだろう。国連は、いまだ核保有の大国という前提で成り立っているのだが、それを崩すのが核の拡散だ。インドはしかたないなとはしても、パキスタンが保有国になってしまったのはかなりの失点だった。これに北朝鮮が加われば、あとはアラブ世界に連動するだろう、となると、国連の立つ瀬はない。というか、この側面では、EUもほぼ同じだろう。中国と結託したいEU(実体はフランス)としても、核のゲームは終わりにしたいはずだ。アナンとブレアあたりが動いたら、小泉でなくても日本人の雁首を並べてみてはどうか。
 それと、あまりこれは言及すべきじゃないかもしれないが、この構図を生温かく薄目で見ると案外日本国内の北朝鮮シンパと見られる勢力の居場所がないことに気が付く。昨今奇妙な小競り合いのような問題を引き起こしているかに見えるのは、なんとか将軍様にお仕えしている様子を誇示したいためなのではないだろうか。ま、このあたりは、洒落なんで、ここを狙ってうんこ批判はしないでね。その気力があったら、国連と反核の枠組みにリキ入れようや。

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2005.02.11

建国記念の日というのは春節、つまり旧正月なのだ

 建国記念の日は、辞書(大辞林)とかを見ると、「建国をしのび、国を愛する心を養うという趣旨で、一九六六年(昭和四一)制定、翌年公布。旧制の紀元節に当たる」とある。日本は独立戦争とかの歴史経験はないので、建国といってもあまりピンと来ない。
 この祝日ができた1966年というと、私は小学校二年生だが、この日についてあまり記憶がない。なんで「建国」とかは疑問に思ったかすかな記憶があるくらいだ。ちょっと計算してみると、当日は金曜日。当時の土曜日は学校は半日だし、職場も休日というのは少なかった。なので連休にはならかったはずだ。この同じ年、体育の日も制定されたのだが、そちらは担任の先生の結婚式の日だったので覚えている。いずれにせよ、あの60年代のころ、欧米の労働日数に日本も伍するべく休日を増やしたのだろう。というのも、日本人なんか個々に休みなんか取れるわけもないので(現在ですら)、その後も国民の休日がどんどん増えていった。こんなに国民の祝日のある先進国は珍しいのではないか、というか、なんでこんなに目出度い国なのかと思われているのではないか。
 日本の戦後の祝日は基本的に明治国家行事みたいのがベースになっている。なかでも傑作なのが七月二十日の海の日で、これは「海の恩恵に感謝し海洋国日本の繁栄を願う日として1995年に制定され、96年から施行」(広辞苑)とあるが、もとは昭和十六年の次官会議において「海の記念日」として制定されたもの。で、この日は、明治天皇が明治九年東北巡幸の際、灯台視察船明治丸で横浜に帰着したことに由来する。なんだかなである。
 同じようなからくりで建国記念の日の正体は紀元節である。紀元節は、手元のマイペディアをひくと、旧四大節の一つとされ、建国祭とも言われるとある。やっぱし、祭だ、わっしょい。
 この紀元節の起源だが、辞書などを見ると、明治五年太政官布告で一月二十九日を神武天皇即位の祝日と定め、翌年これを紀元節と命名したということになっている。が、ちょーっと待ったぁ、一月二十九日? そう、間違いない(古い)。
 なにがどうなっているのか? 入力側は一月二十九日で、出力側は二月十一日。いったいどんなメソッドが利用されているのか。そもそもクラスはなんだ? これが実にやっかいな話がある。しかし、ひとまず、初回の紀元節の話に戻ろう。
 明治政府は、紀元節を布告した同年に旧暦から新暦に改暦をやった。この改暦の切り替えは、明治五年十二月二日、と、ここまで旧暦で、そして、その翌日を新暦で明治六年一月一日とした。政府はこれを見越して、紀元節を新暦で一月二十九日とした。
 しかし、その時点で改暦をしなければ、この新暦一月二十九日は、あっぱれ、春節、狂喜発財、新年好、爆竹BANGBANG、つまり、由緒正しい旧暦の元旦なのである。もともと、紀元節は正月(旧暦)を祝うものなのだ。
 紀元節とは、正月(旧正月)なのである。正月はめでたいよね、ということなのだ。
 しかも新暦の布告は、その前年明治五年の十一月九日。当時は放送メディアなんかないから、全国にこの布告が行き渡ったのは正月(旧正月)が終わったあと。初回の紀元節というのは、大半の日本国民にとって、まったくもって、ただの正月だったのである。新暦みてーな西洋暦(グレゴリウス暦)でアジア人は生活することはできない。
 そもそも紀元節というのは、名前を見てもわかるように、「紀元」なわけで、暦法の起点という意味だ。そこが原点になっているのだから、元旦で当然。
 この祝日の元になった日本書紀ですら、ちゃーんと「辛酉年春正月庚辰朔、天皇即帝位於橿原宮」と書いている。
 じゃなぜ、現在の二月十一日にずれたのか。本来なら、春節(旧正月)なのだから、今年で言えば、二月九日が正しい。なのに三日ずれた。もちろん、ずれる理由は簡単で、現在の建国記念の日(紀元節)が新暦で固定したからである。しかたない近似値というやつか、なのだが、これにはもうちょっと歴史的なわけがある。
 初回の紀元節がすっかりただの旧正月という事態になって、西洋近代化を推進する明治政府が慌てた。愚民ども、正月じゃねーんだよ、神聖なる帝国建国の日なんだぁぁ!というわけである。
 それで翌年あたりの旧正月(元旦)にでもフィックスするのかと思いきや、このあたり、明治という時代がいかにも日本の歴史からはずれたすっとんきょうパラノイアみたいな時代だなと私などは思うのだが、初代天皇が祝ったとされる数千年前の、旧暦の正月元旦のその日を歴史的に実在の日と仮定して、そしてグレゴリウス暦に換算するということをやってのけた。Wikipediaによれば、こうだ(参照)。


この国民の反応を見て、これでは国民が新暦を使わなくなると危機感を持った政府は、神武天皇即位の日を新暦(グレゴリオ暦・陽暦)に換算して、紀元節を新暦の特定の日付に固定しようと考えた。水戸家の『大日本史』編集員であった藤田一正が、推古天皇以前の時代の日付について元嘉暦がずっと過去にも行われていたと仮定して逆算し、2月11日という日付を算出した。翌年からは2月11日に実施されることとなった。

 水戸家の大日本史だよ。これって、マジで亡命中国人を師と仰いだ水戸黄門様が始めた日本の歴史書事業であり、その帰結がグレゴリオ聖歌だよ、ららら♪、違う、グレゴリウス暦だ。そんなわけで、いずれにせよ、数千年昔にファンタジー・ノベルみたいにトレースバックしても、所詮は元嘉暦も旧暦の一つなので、現在の旧暦に近い時期にやってくる。
 明治時代が考えた日本の紀元なんてそんなものなのである。実は明治時代に再構成された日本の天皇制なんていうものも似たようなものなのだが。
 しかも、この話にはまだおまけがあるのだが、来年まだこのブログをやっていて、そのネタを思い出したら書くことにしたい。
 いずれにせよ、現代日本は、休日もひょこひょこフロートさせるのだし、特に建国記念の日の日付については法的根拠もない(政令による)なので、今後は、建国記念の日も、正しく、春節に合わせればいいのではないかと思う。いや、マジで。建国記念なんてそんなもの。いやいや、そんなふうにめでたいものだ。爆竹BANGBANGBANG

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2005.02.10

日本人ヤコブ病患者のこと

 社会不安をかきたてたい意図はまるでないし、最初におことわりしておくけど、日本のヤコブ病の状況が危険だ、というほど重要な話ではない。ただ、先日4日に発表された日本人ヤコブ病患者のニュースでなんとなく心にひっかかっていることがあるので書いてみたい。
 というのも、今週の週刊文春をめくっていたら"「狂牛病感染源が日本」だったらどうなる? 椎名玲 ついに日本人ヤコブ病患者発生"という記事があって気になった。なんというか、私の感じからすると「ま、普通そう考えるよね」と思っていたのだが、この記事を見るまで、世間とかネットをざっと見回すにあまり「普通」でもないようだし、危機を騒ぎ立てるほどのことでもないので、そんなものかと思っていた。
 文春の記事は飛ばしネタかなと思ってざっと読んでみた。総じて言うと飛ばしネタです。でも、ふーんと思うことがあった。例の一ヶ月英国滞在の話の信憑性に疑問を投げている点だ。


 しかし、そもそも本当に一ヶ月間、英国滞在していたのかが疑問なのだ。厚労省は亡くなった男性が英国にいたという確実な証拠をまだ何一つ掴んでいないという。ある政府関係者が衝撃の事実を話す。

 衝撃は笑劇の誤字かもしれないけど、こういうことらしい。まず、事実関係で重要なのは、情報の伝達は1月31日だったのかもしれない点。この点は、この問題を扱ったNHK「あすを読む」でもそんな印象を受けた。いずれにせよ、ヤコブ病の委員会から厚労省に報告が出された。

 知らせを受けた関係者が最も懸念したのは、狂牛病患者が出たことによる国産牛乳肉の風評被害。それを食い止めるために英国で感染したことにしようという運びになったのです。

 ほんとかねと思うが、記事によると、この英国渡航歴は、患者の七十歳を越えた父親からの聞き取り調査だけらしい。
 実は、そうなんじゃないかと私も思っていた。というのは、4日のニュース発表のトーンが変だったからだ。どう変かというと、例えば共同"国内初の変異型ヤコブ病 男性死亡、英国感染が有力"(参照)ではこう。まず、標題のようにその情報が有力というだけのこと。

昨年12月に死亡した50代の男性で、主治医の報告によると、牛のBSEが大流行していた1989年に英国に1カ月間滞在したという。
 確定診断した同省疾病対策部会CJD等委員会委員長の北本哲之・東北大医学部教授は記者会見で「ヨーロッパ以外の変異型の患者は全員、英国滞在歴があり、この患者も英国で感染した可能性が有力」と話した。

 時期が曖昧なのは渡航記録から確認されたわけではないことを意味しているのだろう。記事を見るとわかるように、結果からトラックバックしてできた話の印象も受ける。
 そのあと、患者についてのさらなる調査が必要だとも言われたが、一応、この患者が献血などしてないかという文脈に置かれた。
 その後、どうなのだろうか。渡航は確認されたのだろうか。すでに確認済みなら、この仮説はそれなりに重みがあるにはある。追記(2005.3.7):パスポートで渡英の確認ができたとの報道あり。
 記事にも触れているが、ヨーロッパ以外の変異型ヤコブ病の患者は全員英国滞在歴があるものの、一ヶ月滞在で感染した例はない。もちろん、ヤコブ病の感染は、実験的な類推では滞在期間によるのではなく、危険部位の摂取にあるとは言える。でも、この日本の厚労省の発表を聞いて、欧米の学者は眉をしかめたのではないかと思う。ただ、その様子の報道は欧米圏からはわからなかった。そんなことはなかったということかもしれない。
 文春の記事では、青山学院大学福岡伸一教授のコメントにつなげて、日本でも全頭検査開始前の牛が摂取されていた可能性を示唆している。
 で、ここで私としては、ちょっと苦笑してしまうのだが、私は全頭検査にはまるで意味がないと考えている。理由は食品の安全性については、特異な新知見でもない限り、欧米のスタンダードは科学的に妥当だから。全頭検査は無意味ということは、最近、ようやく日本でも広まりつつあると思うが、どうなのだろうか。
 変異型ヤコブ病の感染を防ぐには、危険部位の除去のほうが重要で、この点では、欧米のスタンダードとしてピッシング(pithing)が禁止が推奨されているはずだが、日本ではこの間も継続しているはずだ。現状はどうなのか、ちょっと調べてみたいが、なんで調べるのとか逆に疑われそうで恐い。
 今回のニュースに関して、実態がニュースからよくわからないのだが、先に触れたNHK「あすを読む」の話では、当たり前といえば当たり前だが、変異型ヤコブ病の認定は患者の死後解剖が元になっているらしい。生存時の状態では、年齢に比して診断して疑われるというくらいなことのようだ。実際、そういうことなのだろうとは思う。診断は非常に難しいと見ていいのだろう。
 真相はどうかなのだが、今後、変異型ヤコブ病患者が数名出てくるのようなら国内感染が疑わしいということになるだろう。潜伏期間は10年ほどなので、あと数年状況を見守っていくべきかなと思う。

追記(同日)
 ちょっと気になるインフォがあったので、追記。
"ピッシングしていると畜場はいくつ?厚労省・農水省のデータは評価に耐えるのか"(参照


訂正及び追記(12月10日):常々情報を頂いている方から、ピッシングを行っている施設の数についてご指摘を頂いた。上の記事で「11月16日の2回目の会合では、ピッシングをしているのは161施設中49施設と説明された」としたのは、この会合の議事録で「牛を処理すると畜場161 施設中、ピッシング中の施設が49・・・」と書かれていたためであるが、これは「牛を処理すると畜場161 施設中、ピッシング中止の施設が49 」の間違いだろうということである。前後関係からすると、確かにそのようだ。従って、12月6日の会合時に示されたピッシング中止施設45(160-115)と大きくは違わない。ただし、中止を「指導」しているというのに、中止施設が減っている(ピッシングをしている施設が増えている)のは理解できない。指導に逆らい、と畜場のやり方が実際に変わったのか(中止していたのに再開したのか)、それともアンケート用紙のどこに○をつけるかが気まぐれで変わったのか。どっちにしても、リスク評価の材料にするには不確実性が残る。

追記(2005.3.7)
 その後、同患者の英国滞在はパスポートで確認されたとの共同報道があった。
"英国滞在中の感染有力に 変異型ヤコブ病で専門委"(参照


 2月に確認された国内初の変異型のクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)患者について、厚生労働省の厚生科学審議会CJD等委員会は7日、会合を開き、牛海綿状脳症(BSE)発生国の英国に滞在していた1990年に感染した可能性が有力と判断した。
 厚労省によると、患者の男性は90年前半に24日間、英国に滞在していたことがパスポートで確認された。滞在中に変異型CJDの原因となり得る種類の牛肉を食べていたことも分かった。

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2005.02.09

新年好! ホリエモン

 新年好!
 ホリエモンによるニッポン放送株式買付けの話は私が適任であるわけでもないが、私なりに思うことも少しあるので、そのあたりをざらっと書いておきたい。
 話はよくある株式の公開買い付け(TOB)で、単純に言うと、会社乗っ取りだ。高校生とかもまれにこのブログを読んでいるようなで基礎的な話はパブリックトラスト"将来の株式公開も視野に入れている企業・経営者の方へ"(参照)でも読んどいてね。と、でも考えてみると、「上場するまでは最低限過半数51%以上の株式シェアは確保したいところです」がフジサンケイグループにはできなかったわけだ。フジサンケイグループの構造やお家の事情の基礎的なところは、Wikipediaの説明(参照)がわかりやすい。
 今回のケースは、私は当初、なんでホリエモンが日本放送を乗っ取るのかな、と思った。無知でした。日本放送がフジテレビの筆頭株主。なので、ようするにホリエモンがフジサンケイグループ全体を乗っ取るのでしょう、と。このあたりの構図は、かつて痛い目にあった朝日新聞だからこその記事"ライブドア、ニッポン放送株35%取得 フジテレビ照準"(参照)の図がわかりやすい。これを見ると、なんだか西武と国土開発みたいになっているのだな、歴史だなと思う。ついでに、頼近美津子のネタにするかという気にもなるがやめとこ。
 TOBについては、現時点だと現金を動かせるやつが強い。が、来年になると通称三角合併(参照)、つまり外資による日本企業の乗っ取りが活性化する、というわけで、外資の課税とかなんかより大きな問題になるようにも思う…が、と、そのあたりはなんだかわくわくするようなマネーゲームか、クレヨンしんちゃんの「やればぁ」でもある。
 が、米国でのAOLとワーナーのすったもんだを見てきた感じでいうと、メディア会社の乗っ取りというのは、内情に詳しいものが最終的には実権を握る。あるいは、マルチメディアと従来のメディア産業と経営者のびみょ~な力関係になりうる。ところで最近のスティーブ・ケース(Stephen M. Case)とググって見たら、よくわかんない。ちなみに、Googleでは、いつのまにかFrogleのリンクが結果リストのトップについてやがんの。つまり、そういう時代ですね、とその話は後でまたふれるかも。
 マネーの業界としては、ホリエモンより、村上ファンドのほうに関心があるのだろうが、私は、ホリエモンに関心があるので、彼自身はどう考えているのか、気になる。記者会見の話は"ニッポン放送の株式買付け記者会見レポート! ライブドア、放送業界への展望を発表"(参照)にあり、面白い。なかなかのエンタテイナー。冒頭いきなり、こう来た。Podcastingだよ。


Q.なぜニッポン放送なのか?
A.なぜフジサンケイグループのニッポン放送なのかというと、ニッポン放送関連とのシナジーを考えていきたいため。また、「livedoor ねとらじ」というサイトをオープンし、「Podcasting」を含め、ラジオとネットのリスナーは関係が深いと考えている。

 もちろん、前段はあった。彼のブログの4日のエントリ"2/4(金) 新規サイトが多数オープン。"(参照)である。

それと今日はいろんな新規サイトがオープンしている。まずはネットラジオの「ねとらじ」。常時数十のラジオ局が番組を配信している。ミニFM局のネット版みたいなものだ。ミニFM局と違い、全世界に配信できるのがネットラジオの強みである。今話題のpodcastingなどにももうすぐ対応予定だし、地上波ラジオ局とも連携していきたいと思っている。

 というわけで、Podcastingがメインに来るというわけではないが、そういう新しいコンセプトのラジオ放送のようなものにホリエモンが関心をもっていたのは確かだろう。話はさらに面白い。のだが、この公式なサイトにはなくて、R30"(期間限定)ライブドア堀貴文社長質疑応答"(参照)のカネにならない1時間タイピング作務のほうにある(他にもあるのかも知れないが)。

(NH、フジテレビの番組そのものへの影響を及ぼすことは?)動画コンテンツも音声コンテンツもそんなに詳しいわけじゃないので、今やられている方がいい方法を考えているんじゃないかと思うんですね。ただ、インターネットというメディアが、新聞にしろ雑誌にしろいろいろと変えていっているんじゃないかと思うわけです。人々のライフスタイルが、時間の使い方が変わっていると。HDDレコーダーはインターネットが作り出した製品だと思うんですよ。あれは中身、PCですからね。最近ソニーさんが面白い商品を多数出されてますけれど、ああいうテクノロジーはインターネットが育んできた、インターネットなしに生まれ得なかった機器なわけです。それがテレビに大きな影響を与えているんですよ。もう1週間分のテレビを全局分録画できるわけです。それってテレビの根底を揺るがす事態じゃないですか。今はいいですけど、それにあわせたコンテンツ作りの方法を考えていかないと、彼らは5万円で1週間分のテレビが全部録画できる機械が出たら、それを買って、ビジネスモデルは崩れちゃうじゃないですか。ミニFM局だって、今までは数百メートル範囲内しか聞いてもらえなかったのが、今や全世界の人たちに聞いてもらえるわけじゃないですか。そうすると、安いハードが買える時代になれば、我々が助言して行かなきゃいけないところが出てくるんじゃないかと思います。

 個々には、変だよホリエモン、「HDDレコーダーはインターネットが作り出した製品だと思うんですよ。あれは中身、PCですからね」って違うとか思うが、そんなことはどうでもよろし。問題は、「それってテレビの根底を揺るがす事態じゃないですか。」というところだ。裸の王様って裸じゃん、である。
 類似のことについては、先日の極東ブログ「iPodで笠碁を聞きつつメディアの将来を憂う」(参照)でも触れた。他にも2003年時点の極東ブログ「PSXがわからない」(参照)でも触れた。
 問題は、テレビの根底が覆るってどういうことか、なのだが、単純なところでは、CMが飛ばされるわけで、CM収入を基本としたテレビ局運営が難しくなるということ。ただ、現実的には、ホリエモンが先を見すぎているというか夢想しているのであって、実際には朝日新聞ですらまだ500万世帯くらい戸配があってなかなかくずおれないように、テレビもマスの部分はあまりにでかいので早々に変化することはない。強いていえば、NHKのハイビジョンが頑張って、ペイTVがあたりまえのコンテンツを作るかということで、昨今アホーなNHK不払い運動が起きているが、むしろ、NHKに別の桟敷に移ってもらうほうがメディアの世界は変化してよい…飛ばし過ぎか。
 穏当なところでは、CMがコンテンツとリレーショナルになるというか、GoogleのAdSenseみたいになるというか、さっきびっくらこいたFrogleとの連携みたいなものにある程度なるだろう。もう一つは、生活コンサルト的なものか、囲い込みか…いろいろあるにはあるのだろう。
 もしかすると、そうしたちまいCM戦略ではなく、どーんとホリエモン情報帝国が実現するのかもしれない。生活の情報がそこで完備するような、かつてのNTT藩や日立藩みたいなものの情報ヴァージョンだ。考えてみれば、S学会でも実際には、ある意味で情報帝国ではある、し、その内部の力が経済や政治にじわ~っと出てくる。
 話がおちゃらけになってしまったし、冷静に見れば、ホリエモンの夢想はただのマネー軍団の看板でしかないのだろう。でも、いずれ裸の王様はくしゃみをする。

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2005.02.08

ひろしです。もんじゅ再開でも明日が見えません。

 1995年12月のナトリウム漏れ事故で運転停止となった高速増殖炉「もんじゅ」だが、この5日、西川一誠福井県知事は運転再開の前提になる改造工事を了解し、6日に発表した。この問題をどう考えたらいいのかと思ったが昨日はそれほど話題になるふうでもない。が、どういう契機なのか示し合わせたように今朝の大手新聞社社説で、読売新聞、産経新聞、日経産業新聞が取り上げていた。驚くべきことでもないというか準備できていたはずなのに一日遅れたのはなぜなのか、鈍いだけか。それと朝日新聞と毎日新聞がスルーしているのはなぜなのか、ちょっと奇妙な風景でもある。
 三紙の論調は、単純に言えば、産経がイケイケ、読売がスカスカ、日経が算盤あいまへんがな、ということなのだが、もう少し今回の決定経緯を見ておきたい。
 話の根は深いのだが、今回の動向の端緒は、先月28日の原子力委員会の新計画策定会議の発表による。これによると、もんじゅの運転を早期に再開させ、10年以内に「発電プラントとして信頼性を実証するとともにナトリウム取り扱い技術を確立するとした」(参照)、と苦笑を招く。しかも、もんじゅ再開後の実証炉については05年度末の「実用化戦略調査研究」で国が方針を決める。先延ばし先延ばし。
 なので、まだ一年は先延ばしかと思っていたところ、昨年年末にバーターで福井県が要請していた新幹線福井駅の工事が認可。ということで、年が明ければもんじゅ再開秒読みということだったが、1月は水面下の動きだったのだろうか。2月に入り、3日、核燃料サイクル開発機構の殿塚猷一理事長が西川知事と面談。さらに5日の時点で中山成彬文部科学相の記念写真の刈り出しが決まり、6日の会談で最終的に決まった。
 今後のスケジュールだが、核燃機構は手はず通り即座に資材調達を開始。秋頃から工事に着手。その後1年の確認試験があり、実際の運転再開は3年後程度になりそう。つまり、2008年再開というところ。
 で社説だが、まずどうでもいいよの読売新聞社説"もんじゅ改造 運転再開へ信頼性を高めよ"(参照)だが、安全性にだけ注意すればいってよしTokyo-a-go-go的なスカ。笑いのポイントはココ。


 多彩なタイプの高速炉が検討されているが、「もんじゅ」は商業発電をも目指し、技術的に最も進んでいる。フランスなどは研究参加を望んでいる。
 ウラン資源はまだ豊富なだけに、当面は軽水炉の利用や改良に比重を置く国が多い。だが、中国やインドのように、将来のエネルギー確保のため、高速増殖炉の開発を加速している国々もある。

 確かにフランスは噛んでいる。また、読売は肯定的に書いているつもりだろうが、この技術にこだわっているのは、中国、インド、そしてここに書いてないけどロシア。他の国では、苦笑の歴史に終わっている。
 産経新聞社説は、ある意味、面白いものを読ませていただきました、なのだが、これ、"もんじゅ改造 認可まで10年は長過ぎる"(参照)だ。標題からもわかるように10年も放置プレーはなにごとかと怒る怒る。つい、ナトリウム漏れも、パンツぱんくろうのおしっこ漏れみたいに、たいした事件じゃないよとまで筆が滑る滑るスキーのぉ風切る速さラララ♪である。

 「もんじゅ」は平成七年十二月八日、試運転中に二次系の冷却配管の温度計が折れ、冷却材のナトリウムが漏れて大気中の水分と反応、火災が起きた。国際原子力機関(IAEA)の判定では、1から7までの事故レベルのうち事故とはいえないトラブルの範疇(はんちゅう)の「レベル1」だった。

 そういうこっちゃないのは、原子力行政の全体を見ればわかるのだが、端的に言うとこの一派には、何を言っても通じないでしょう。
 さらに、ナンセンス・ユーモアはコレ。つまり、結語。

 高速増殖炉は使用済み核燃料を再処理して取り出したプルトニウムを主燃料とする原子炉で、資源小国のわが国では避けて通れない選択だ。また実験炉ではあるが同じ方式の「常陽」(茨城県大洗町)は昭和五十二年四月の臨界以来大きなトラブルもなく正常に運転されている。
 高速増殖炉の実用化は難しいとか、開発の意義が薄れたなどという非科学的な評論家の言に惑わされることなく、開発は冷静に進めるべきだ。

 あのなぁ、常陽ってどうよぉ、って怪傑ゾロリのインチキコイータみたいになってしまうが、あれは、あくまで実験炉なので高濃縮度ウランを使っている。というわけで、あくまで理論的な実験設備であって、実用技術とかほとんど関係ない。
 っていうか、このあたりで、こんな事を素人の私が書くと、だね、率直に言って、れいのソニー・ゲートキパーみたいものから反撃が来るでしょうか。ま、それがブログちゅうもんですが。
 それにしても、「非科学的な評論家の言に惑わされることなく」と宣うところがさすが産経新聞ですな。夕刊止めてコンビニ販売とかして、それなりに新聞会社経営立て直しに向かう無鉄砲な気概が感じられて好ましい…かよだが、思わず、全共闘世代みたいに、「本音を言えよ」とからみたくなります立春の今日このごろだが、ようするに、左がかった説を鵜呑みして言うのだが、常陽は軍用転化可能なプルトニウムの保管場であり、もんじゅも軍転用可能なプルトニウムができる。これに併せて、また転けるかなのH2Aはあくまで民需用だが、あれがアッパレどかんと上がれば、日本って平和憲法の下で本気になったらICBMができますと万全の技術を世界に誇示できる。陰謀論みたいにそれが目的とは言わないけど、国際世界からそう見えないわけがない。日本もそれがわかっているから、きちんとIAEAの認可を受けている。ピーター・タスカが先日のニューズウィーク日本語版に高いお守りを買えと暗にMD推進をお薦めしていたが、そういう文脈にも近い。いずれにせよ、このあたりの国策をどのレベルで推進していいのか日本は難しい状況にある。
 産経社説みたいな国策論から離れて、今回の核燃料サイクル開発機構殿塚猷一理事長、必・死・だ・な、でもそうだが、この産業セクターの意義も非常に大きい。ゲートキパーズもたぶん抱えているだろうことはどうでもいいが、その内在的な問題が結局、福井県という地方自治体の経営に延長される形になっている。単純に言うと、ここでリストラなんかしようものなら、またまた※人が出るよぉ、こわいよぉの世界でもあり、ちょっとどうしていいのかわからない。
 話が重くなったので、明快に算盤を弾く日経社説"もんじゅ改造後の展望示せ"(参照)にしゃらっと移るのだが、こう。

 高速増殖炉は核燃料を燃やしながら、核燃料となるプルトニウムを生み出す。このため、計画当初は「夢の原子炉」としてもてはやされ、もんじゅは発電炉の先駆けとなるはずだった。しかし、事故で安全性に不安を持たれたうえ、経済性の点でも建設費が約5900億円もかかり、事故で運転を停止していても炉の維持に年間80億円程度もかかるなど、魅力がかなり色あせている。
 このため、2030年ごろに目指していた実用化は遠のき、実証炉の計画は立ち消え状態になっている。原子力委員会は昨年、原子力発電所の使用済み核燃料を再処理してプルトニウムを利用する核燃料サイクル路線の維持を決めた。だが、プルトニウムを効率利用する高速増殖炉の実用化は、判断を2015年まで棚上げすることにし、開発計画をあいまいなままにしている。

 というわけで、そういうこと。見通しが立たないのだ。ま、国策なんで採算ベースっていうだけのものでもないにせよ、ちょっと高すぎる。以前ラジオで聞いた再処理工場についての環境エネルギー研究所飯田哲也所長の話だと、再処理の工程に必要な予算は13兆円。国は8兆円はなんとかなるけど、5兆円の足が出る、これが国民負担になるのでしょ、ということだった。スパンにもよるけど、増税などけっこう目に見える負担にはなるだろう。
 で、どうする?
 この問題がいまいち気乗りしないのは、日本という国は、結局、原子力発電を維持しないとやっていけないでしょう、という現実がある。だから、反原発的な社会運動も、もんじゅと同様に明日が見えない状態になる。クリーンな環境エネルギーなんて笑い話はパスしたいし。
 日本のエネルギーの石油依存率は高くて問題とも言われるが、効率よく使うなら、また、世界に石油市場があるならこれほど効率なことはないとも言える。言えば言えるというだけかもだが。それと、めちゃくちゃな余談みたいだが、先日のアチェの津波でも、石油代替となるべきLNGについてスマトラ島のアルン・ガス田の行方に日本は必死だった(参照)。あれを思うと、日本のエネルギー問題は単純には進まないとわかる。それでも、もんじゅは違うんじゃないのかとは、思うが。

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2005.02.07

ファルージャに入った反米フランス人が捕まっているという話で

 すでに国内の朝日新聞でも報道されているが、イラクのファルージャで反米武装勢力に参加していたフランス人3名を米軍が拘束していることが明らかになった。最初に報道したのはフランス時間4日付けフィガロ紙(すでにアーカイブ済み)で、他の報道はすべてこれに拠っている。朝日新聞記事"反米武装勢力に参加の仏人3人を米軍が拘束 仏紙報道"(参照)ではこう伝えている。


 同紙によると、3人は昨年11月、米軍などが行ったファルージャ総攻撃後に拘束された。うち2人は22歳と19歳で、それぞれ中東系とアフリカ系のフランス人。2人はイラクに「義勇兵」を送り込んでいた容疑で仏当局が捜査中の在仏イスラム過激派組織に参加、昨年4月にシリア経由でイラクに入ったという。残る1人の身元は不明。

 「昨年4月にシリア経由でイラクに入った」というくだりが、昨年の4月の状況(参照)を思い出すとなかなか含蓄が深いものがあるが、もう少し事実を見ていこう。日本語で読める記事としては毎日新聞記事"在仏過激派が暗躍 米軍と戦闘"(参照)が詳しい。

 フランスのテロ担当情報機関・国土監視局(DST)は先月下旬、在仏イスラム教徒の若者をシリア経由でイラクに送り込んでいたとみられるグループを摘発、11人を逮捕した。
 さらに、仏紙フィガロなどによると、同グループに所属するとみられる若者3人が昨年末、イラク中部ファルージャなどで米軍との戦闘に加わり、拘束されたことが分かった。現在はイラク南部の米軍基地の刑務所に拘置されているという。3人は昨年3月、イラク中部で昨年後半にテロや戦闘で死亡した別の3人とともにパリを出発したという。

 この記事がよく出来ているのは、フィガロの特ダネの背景を暗示させる情報が含まれている点だ。この点はCNN日本版の記事"仏のイスラム教徒3人を拘束、イラク武装勢力に合流と"(参照)が短いながらもさらに補足になる。

 3人はいずれも、フランスにある密航ルートを通じて、イラクに潜入。うち、パリ居住の22歳と19歳の2人は2004年春にイラクに入国、同11月に米軍などが攻略した中部ファルージャの戦闘で捕まった可能性が高いとしている。
 残る1人が拘束された経緯などは不明。フランス情報機関は先月下旬、パリ東部に本拠があるイスラム強硬派のイラクへの送り出し組織を捜索、イラクへ向かう直前だった2人と、ネットワーク首謀者とみられる人物1人を逮捕し、組織を壊滅したと述べている

 問題の根幹は、フランス人の過激派がファルージャで例の4月ごろから活動していたというより、その組織性にある。この先の背景の構図については、国内報道は欧米紙に比べると弱い。ニューヨークタイムズ記事"3 Frenchmen Among Those U.S. Military Holds in Iraq"(参照)はこの点に触れている。

According to lawyers involved in the case, Mr. Benyettou held court in the mosques, preaching jihad and benefiting from his aura as the brother-in-law of Yousef Zemmouri, a member of an Algerian terrorist organization, the Salafist Group for Preaching and Combat, who was deported in 1998. Many people involved in the case suspect that there are more authoritative figures behind Mr. Benyettou, though there is no evidence that his activities are part of a larger network. Similar recruitment rings have been discovered in Germany and Italy.

 現状ではそのフランスにおける背後組織は充分に解明されていないのかもしれないが、より広域な国際的な組織的なネットワークがあると推測してもいいだろう。この記事でも触れているが同様のケースはドイツやイタリアにも見られた。
 ファルージャで反米活動を行う国際的な組織が単一なものなのか、あるはどのような構図になっているのか、日本との関連があるのかといった点が、今後注視していく必要はあるだろう。
 話が少しずれるのだが、この対外的な反米活動家が4月にイラク入りしたのはシリアが拠点だった。ここでは端折るが他のケースでも、反米テロのヘッドはシリアにあるという情報は散見しているが、対シリアの米国の外交は、制裁を行っているというわりには弱い。陰謀論的なスジを考えたいわけではないが、なにか面倒な経緯があるのだろう(参照参照)。
 今回のフィガロ発の報道だが、状況から見れば、ライスの渡仏にきっちりスケジュールを合わせましたということから見て、米国側のリークなのだろう。明日8日に予定されているライス米国務長官とシラク大統領及びバルニエ外相との会談でもこの話題がふっかけられるのは火を見るよりも明らか。ライスはなかなかしたたかということなのだろうか。"Forgive Russia, ignore Germany and punish France"、なるほどね、かも。

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2005.02.06

国連によるイラク石油食糧交換プログラム不正問題、動向など

 米時間で3日、ヴォルカー元連邦準備制度理事会前議長を委員長とする、国連によるイラク石油食糧交換プログラム不正問題の、国連側の独立調査委員会が、このプログラムの最高責任者だった国連幹部ベノン・セバンの不正を認める報告書を出した。これを受けて、アナン事務総長は、歌舞伎縁者演技のごとく衝撃を受けたとか言ったものの、しゃらっとセバンの不逮捕の外交特権を停止する声明を出した。
 国連不正をワッチして来た者には、内容については特にどってことないものだが、私の率直な印象では、やっぱし尻尾切りはしましたか、とは思った。米国の昨今の動向を見ているとアナンをレイム・ダックにしたほうがメリットがあるので追及はこのあたりでシャンシャンになっているのだろうと推測していたからだ。今後、この不正追及がアナンの息子コジョに及ぶか、さらに端的に言って、フランス大統領シラクに及ぶかだが、どうだろうか。ま、ないかな。
 今回の発表では、さすがにもう完全に国連不正疑惑、といった段階を終えたので、国内メディアもバックレは効かないでしょうから、さて、どう出ますか、というあたりが興味の的でもあった。特にこの問題をスルーし続けたNHKと、できるだけスルーしたかった朝日新聞が見ものである。なお、読売新聞については内部にこの問題を扱うだけのインテリジェンスがないようにも見受けられる。毎日新聞は実は内部的にはこの問題を経時的に追及しているのだが他の問題でもそうだが、現代音楽的な不協和音にしかならない。共同は、すでに投げやりというか適当に垂れ流し始めている。
 朝日新聞としては1月の時点である程度内部で摺り合わせがあったのだろう(外部でも摺り合わせしたい社風なのだろうけど)。前回の報道"イラクでの「石油と食糧の交換計画」疑惑で報告書公開"(参照)では、疑惑はまだ明らかになったわけではないととりあえずしているものの、今回の動向を読んでダメかのトーンはあった。


 旧フセイン政権時代のイラクに向けた国連の人道支援をめぐる疑惑について、独立調査委員会(委員長・ボルカー米連邦準備制度理事会前議長)は9日、国連から提出された内部報告書を公表した。汚職の証拠は見つからなかったが、国連の管理や運営に「落ち度があった」とする内容。
 疑惑は「石油と食糧の交換計画」に関するもの。旧フセイン政権高官がリベートをとり、アナン事務総長が任命した国連高官もわいろを受け取ったとの疑いが浮上していた。米議会は不正額を213億ドルに及ぶとしている。

 今回の"国連幹部の行動「不適切」 イラク支援疑惑で独立調査委"(参照)では、私の印象だが内部的な摺り合わせ報告のように聞こえる。

 疑惑に関連して独立調査委が中間報告をまとめたのは初めて。最終報告は今年夏までにまとめられる予定。

 そして次の手も打っているようだ。

 中間報告は、96年に国連が計画遂行のための銀行を選定する際、ガリ前事務総長が、決められた入札規則に反し、フランス系銀行を選んだことも指摘。今後、国連による人道支援事業の進め方や、国連改革議論などにも影響を与えそうだ。

 全文を引用するわけにもいかないのだが、参照先で読んでいただければわかるが、これが結語になっている。問題の核心は、朝日の記事では触れていないが、これもあっさり言ってしまえば、フランスはこの不正に深く噛んでいたから、フセイン擁護をしていただけなのである。次回の報告でフランスの関与がどこまで出るかなと朝日新聞内部では摺り合わせしているのではないか、というのは半分洒落。
 朝日新聞は、セバンについても、その弁護士の言い分「セバン氏は1セントたりとも受け取っておらず、報告も証拠を示していない。政治状況の中で、調査委にスケープゴートにされた」を強調していた。たしかに、セバンについてはたいしたことではない。というか、朝日新聞も後に触れるNHKもこの問題を日本の自民党議員の汚職みたいな構図に持ち込もうとしているのだろう。が、それはそれほどたいした問題でもない。また、朝日新聞はアナンの息子コジョの疑惑には触れていない。コジョが切られればアナンは終わる。国連の一つの時代が終わるというか、国際的にはすでにそうなのだが。
 今回の報道では、私がワッチしてきた範囲ではNHKが始めてこの問題に触れた。ちょっと感慨深かった。先日のイラク選挙後、さすがに柳沢秀夫解説員だけに勝手にしゃべらせるのはまずいんじゃないの空気をなごませるために外信関連の解説委員が「あすを読む」で雁首を揃えていた(オヤジばっかし)。ふーん、和やかな摺り合わせだなというか、奇妙な大人な人たちでしたが…と、ちなみに柳沢解説員の単独の「あすを読む」の回では、スンニ派をどうするのかぁということを異様なまでに強調していた。滑稽だった。だって、フセイン体制下でシーア派とクルド人がどんな扱いになっていた考えてもみなはれ、であるよ。この人、よほど石油不正にまみれたフセイン独裁体制がよかったのだろうね。とま、NHKはもうしばらくこの分野の偏向は続くのだろう。ま、この問題ではNHK批判している声はあまり聴かないし、面白いなNHKと受け止めてもいい。
 で、NHKの記念すべきニュース"国連幹部 石油不正提供に関与"(参照)だが、実に要領を得たもので、この文章量ならこう報道するしかあるまいが完璧になっている。こうした点、NHKってやっぱ職人だよね、この伝統芸は守らなくてはとは思う。いずれにせよ、新聞社のように枠を広げて報道するのは難しいだろうから、とりあえずはこんなものだろう。
 以上、朝日とNHKの報道だが、これで取り敢えず、日本国内でも、国連に多大な拠出をしている日本国民の誰もが、国連によるイラク石油食糧交換プログラム不正問題を考える土台はできた。なので、さて、大手紙は社説で扱うのかなと思ったら、スルーでした。欧米紙は一様に社説で触れていたのだが…ちょっと、この状況はなんなんでしょ、苦笑、か。
 産経新聞の外信は以前からそうだが、今回"国連幹部の不正確認 独立調査委が暫定報告書 イラク石油食糧交換プログラム事件"(参照)でもかなりしっかりしたものだった。

【ニューヨーク=長戸雅子】イラクの旧フセイン政権時代の国連石油食糧交換プログラムの不正事件を調査している独立調査委員会(委員長・ボルカー前米連邦準備制度理事会議長)は三日、プログラムの最高責任者だった国連幹部の不正を確認する暫定報告書を公表した。この幹部に不正はなかったとしてきた国連の内部調査の甘さが露呈され、同時に旧フセイン政権と癒着した国連が、結果的に同政権の延命を手助けしたとの疑惑がさらに強まった。

 問題の核心は、まさに「旧フセイン政権と癒着した国連が、結果的に同政権の延命を手助けしたとの疑惑」なのだ。もうちょっというと、日本では、大量破壊兵器が見つからないことから米国は大義なき戦争をしたということに納めているが、多少親米的というかブッシュ贔屓に見るならそういう隘路に押し込まれただけでもある。とか書くと反発を招くのだろうが、私はそれほどこの点に関心があるわけでもない。問題は、今後、こうした事態に国際社会がどう機能するかということだ。
 産経新聞の記事で、産経色かなと思うのは、ヴォルカーの置かれた状況について言及しているくだりだ。

 一方で、不正事件を同様に調査している米議会やその関係者からは、ボルカー氏率いる独立調査委員会の中立性そのものに疑問を示す声もあがっている。
 有力シンクタンク、ヘリテージ財団の研究員は、独立委員会のボルカー氏が米国連協会など親国連組織の要職を務めたことがあり、そうした経歴がきちんと公開されていないと指摘。国連協会が事件をめぐる国連やアナン事務総長への批判に対し、「政治的意図に基づいた攻撃」と国連擁護に回っていた点などを指摘し、独立委員会の中立性に疑問を呈した。

 しかし、これはそれほどたいしたことではない。所詮、国連側の調査委員会なのだし。
 米英圏での報道では、今回のヴォルカー報告はすでにそれほどインパクトはなく、むしろ、アナンのレイムダック化でどうよ、また、この不正疑惑は米国が知りつつ黙認していたのではないか、という論調が出てきている。痛い腹はあるだろうとは思う。ブレマーだのチャラビだのあの愉快な人々のスラップスティックには、愉快な陰謀論みたいな筋書きはあるのだろう。
 今回の報道に合わせたわけでもないだろうが、この問題は、シェル石油にも、当然波及してきている。サロン・コムでは"Shell denies any knowledge of kickbacks"(参照)がそのあたりを伝えていた。記事冒頭にAPの明記はないが、ソースはAPのようだ。

Feb. 4, 2005 | Geneva -- The Royal Dutch/Shell Group denied Friday that it had any knowledge of kickbacks paid by a Geneva-based middleman it used to buy oil from Iraq under the U.N. oil-for-food program.

Shell bought about 6.4 million barrels of Iraqi crude oil from African Middle East Petroleum, or AMEP, which has told U.N. investigators that it paid an illegal surcharge to obtain contracts from Saddam Hussein's regime.


 常識的に見ると、クロでしょ。しかし、この話は、示し合わせたようにフィナンシャルタイムズが出した記事"Shell's year of extremes"(参照)にも関係しているのだろう。

Oil companies are experiencing extremes: record highs in profit and lows in reserve replacement. The most egregious example is Shell. Yesterday it posted record annual earnings for a European company, but yet again cut its overall reserve figure and admitted that last year it could book only enough new proved reserves to cover between 15 per cent and 25 per cent of that year's production.

If such a ratio of stocks to output continued, Shell would obviously soon run dry. The company will probably be able to make up some reserve ground quite legitimately, simply by re-booking as marketable over time some of the reserves it has just had to downgrade in acknowledgement that it has flouted industry reserve accounting rules. But it is clear Shell will struggle to get reserve replacement back to 100 per cent, a level that its better managed peers are only barely achieving.


 石油業界について私は詳しいわけではないのだが、シェル潰しあり?みたいになってしまっては世界は困るのだろう。今回の国連不正疑惑とシェルの関連とかきちんと読んでみたいようにも思うが、いずれにせよ、この問題は過去や国際政治の力学というより、国際世界の台所の問題なのだろう。
 現状の世界の原油はサウジにかなり依存しているが、これがそのまま推移していけるのかわからない。中国はなりふり構わず世界の油舐めひょんと化している(環境も問題なんすけど)。ロシアのユコスは実質国有化され、しかも、ロシアの産油能力はサウジを上回ったようだ。石油にまつわる陰謀論はそのスジのエンタテイナーに任せるとしても、こうした配分の見取り図の変化は、ジオポリティックス的な効果を世界にもたらすだろう。ライスがロシア政治の専門家というのは、吉と出るか凶とでるかスカと出るか…いずれ、世界はそういう台所事情に大きな変動要因を持つのだろう、なと思う。っていうか、国連不正問題は、その意味では、すでに歴史の領域に半分足を突っ込んでいる。

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