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2005.01.29

ミューズリ(Muesli)

 先日のエントリに書いた「[書評]スイス探訪(国松孝次)」(参照)だが、この本の話のなかに、スイス人が発明したものの一つとしてミューズリがあった。そうだ、ミューズリだ、と思って、私は、またミューズリを朝食に食べ始めた。もう一か月以上食べている。長くは続かないのだが学生時代からの習慣で、ときおりミューズリを食べる。沖縄で暮らしていたころも、インターネットでチョコ屋に「アララ」というブランドのミューズリがあるのを知って、取り寄せて一時期食べていた。こうしたことはそう長くは続かない。気まぐれでもあるのだが、また始めたというわけだ。

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ミューズリ
 ミューズリとは…と思って手元のリーダーズの辞書をひいたら、ムースリ、と載っている。それはないでしょ。でも、スイス料理とちゃんと書いてある。

_n. ムースリ 《穀粉・乾果・ナッツ・蜂蜜などに牛乳を加えるスイス料理; 朝食に多い》.
[Swiss G]

 ネットのgoo辞書もひいてみた(参照)。

mues・li
_n. ミューズリ ((シリアルの一種)).
muesli belt 〔米俗〕 〔戯言〕 ミューズリー地帯 ((muesliを好むことに象徴される,中流・革新・環境保護派・女権擁護派等の人々が住む一帯)).

 こんなの好んで食べているなんて元リベラルの地が出ましたか…という洒落ではないが、私もこうした米国流の生活習慣の影響がある。
 で結局、ミューズリというのはなにかというと、とりあえずはシリアルの一種みたいなもので、実際日本だとそういうふうに広まっている、というか米人でもそうなのだが、ちょっと違う。ミューズリは、要するに押し麦だよ、ということなのだが、とネットをさまよっていたら、いい解説があった。allabout"ミューズリーの朝食"(参照)である。

最も身近なコーンフレークやオートミール、グラノーラやミューズリーもシリアルの中の1種類と言えそうですね。個々の違いはおおよそ以下のとおりです。
(1)コーンフレーク
挽き割りとうもろこしを蒸し、ローラーで丸ごとつぶして乾燥させたもの。
(2)オートミール
外皮を取り除いたオーツ麦を蒸してから圧縮し、乾燥させたもの。
(3)ミューズリー
主にオートミールをベースに複数の穀物をブレンドし、ドライフルーツ、ナッツ等を混ぜたもの。
(4)グラノーラ
ミューズリーに植物性油脂やはちみつ、糖類、シロップなどを添加してオーブンで焼いたもの。

 そういうことだ。リンク先には写真もあるのでわかりやすい。ただ、このガイドさんの食べ方は、現代欧米の主流ではあるけど、私はお薦めしない。健康がとかの理由ではなく、リッチに食べては押し麦のあの貧しい味わいが減るからだ。もっとも、長時間に水に浸しておくというのはオリジナルの食べ方でもある。高齢者にはいいだろう。
 このミューズリを作ったのは、マクシミリアン・ビルヒャー・ベナー(Maximilian Bircher-Benner:1867-1939)(参照)でスイスの医師だ。米国などでの通称はマックス・ビルヒャーでよさそうだ。彼はミューズリを治療食として作った。ちょっとネットを見たら、スイスインフォのサイトに詳しい邦文の話がある(参照)。

マックス・ビルヒャーがチューリヒで医者になった頃、医学は対症療法が主で、病気の症状が出てから、症状を軽くしたり、症状を取り払うことにあるという考え方が一般的だった。ビルヒャーは、日常の食事が健康に大きく関わると考え病気の予防には栄養の摂取が重要だと目をつけた。1904年にはチューリヒにサナトリウムを開設し、食事療法を実践する。現代にも通用する健康に対する考え方だが、当時は受け入れられなかったという。

 ミューズリは米国ではシリアルの扱いになっている…といえば、ケロッグが連想される。ケロッグを作ったケロッグ博士もまたビルヒャー博士の同時代の人だった。この二人は比較にはかかせないこともあり、説明でもこう触れている。

米国では1906年、ケロッグ兄弟がコーンフレークを発明。こちらは早速製品化され、今では売上90億ドルを誇る有名食品である。一方、ミューズリーは商品登録もなされず、ビルヒャーは「お金儲けは考えていなかった」とチューリヒ州立大学の医学史のエバーハルト・ヴォルフ氏。「唯一商品登録された彼の考案品は、りんごを擦り卸す金具の板だろう」と、ビジネスにはほとんど無縁に生涯を終えた。卸し金は日本の大根卸しとは違って、目が粗く、りんごは細切れのようになる。

 つまり、ミューズリのほうはオープンソースだったわけだ。ちなみに、この卸し金だが沖縄だとどの家庭にもある。「しりしり」に欠かせないのだ。「しりしり」がなんであるかについてはここで話すと長くなるので割愛するが。
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ケロッグ博士
 ケロッグ兄弟の兄、ケロッグ博士がどんな人だったかは、新潮文庫の「ケロッグ博士」を読めばわかるし、映画にもなった。本の釣りをひいておく。つまり、こういうことだ。

1907年、一組の夫婦がコーンフレークで有名なあのケロッグ博士経営の療養所を訪れた。博士の健康法を信奉する妻が、胃痛と不眠に悩む夫を連れてきたのだ。オオバコの種子とヒジキの食事、菌の排出のための一日5回の浣腸、電気風呂やら泥風呂、振動ベルトに電気毛布、そして厳格な禁欲生活…。過酷な科学的治療に夫は疲れ果てる―いまアメリカで最も笑える作家が贈る抱腹絶倒本。

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ケロッグ博士
 おもしろおかしく書いてあるが、これがけっこう実話だったりする。まったく、アメリカ人の健康強迫症は、そういうわけで今に始まったことでもない。この手の米国の変な博士はウイルヘルム・ライヒとかぎらず五万といる。
 というか、ビルヒャー博士とケロッグ博士の違いが、もしかすると欧州と米国の文化の違いでもあるのかもしれない。
 ところで、ミューズリって健康にいいのか? よいと言われている。最近の米国では一段落ついたもののローカーブ(低澱粉)や旧石器ダイエット(Paleolithic Diet)またはゾーン・ダイエット(Zone Diet)などが騒ぎだったので、ミューズリにはあまり新味な話題はない。ちなみに、ケロッグのシリアルのGI(グリセミック指数)は商品によってはまばらだが、主流のものはけっこう高い。これに対して、ミューズリは、ビルヒャー博士のオリジナルに近いものは低いようだ。たぶん、ダイエットにも向くだろうと思う。ミューズリ・ダイエット…流行らないよね。
 私といえば、先にちょっと触れたように押し麦(参照)だよね、これ、という感じで食べている。なんか貧しいものを噛み噛みして食うのがいいのだ。ああ、人間ってこういう貧しいものを食って生きる生き物だよねと思う。ま、全然違うのだけど、ちょっとくらいそう思う。

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2005.01.28

中国政府は国際世論を受けてチベット僧の死刑を軽減した

 26日付のVOA"China Commutes Tibetan Monk's Death Sentence(中国政府はチベット僧への死刑を軽減する)"(参照)を読んだとき、少し複雑な気持ちがした。話は死刑が宣告されていたチベット僧が終身刑に軽減されたということだが、端的に言えば、冤罪である。この事態を事実上伝えない日本のメディアの大半は論外だが、世界はこの問題に注視してきた。幸い、国内ブログではこの話題を扱うところが少ないわけでもない。
 昨日この話題をエントリにするか実は奇妙にためらう感じがあった。チベット問題はどうしようもないという思いと、今回の減刑は世界の声がそれなりに中国に届いたということではないか、お前は声を上げなかったではないか、という悔恨があったからだ。それと、ニュースの波及を一日観察したいという思いも多少あった。
 ニュースについては、VOAよりも、この問題を経時的に扱っているブログ「北朝鮮・チベット・中国人権ウォッチ」の昨日のエントリ"テンジン・デレク・リンポチェの終身刑減刑が正式に決定!"(参照)にある新華社報道の訳文「チベット僧侶の死刑判決は終身刑に減刑された」が読みやすいだろう。


 成都・1月26日(新華網)-中国南西部の四川省高級人民法院はテロリストによる爆撃に関与したチベット人僧侶の2年間の執行猶予付き判決を終身刑に減刑した。
 この日に下された法廷の裁断によると、テンジン・デレク・リンポチェとして知られる阿安扎西(A'an Zha)は政治的権利を終身的に剥奪された。
 この裁断は、彼は死刑執行日を迎えるまでの過去2年間の間に再び故意に法の基準に違反することはなかったため、法廷は阿安扎西に対する死刑判決を終身刑に減刑したのだとした。

 問題の全容については、邦文では"TSNJ緊急行動:チベット人僧侶テンジン・デレク・リンポチェの死刑執行中止をもとめる緊急行動にご協力ください。"(参照)が詳しい。英文では"Trials of a Tibetan Monk:The Case of Tenzin Delek"(参照)にかなり詳細な情報が掲載されている。「はてな」でも「チベット人僧侶死刑執行問題」(参照)がキーワードにはなっている。2ちゃんねるにも専用のスレッド"【チベット】緊急アピール【弾圧】 "(参照)がある。これらは、ネットをベースにした新しい、国際的に開かれた市民活動の萌芽のようでもある。
 「はてな」は簡素に伝えている。なお、事態が多少進展したので書き換えたほうがいいだろう(非難ではないよ)。追記(2005.1.29)新情報が追加されました。

チベット人僧侶死刑執行問題
 2002年12月2日、中国政府がチベットでテンジン・デレク・リンポチェに死刑判決を下した。東チベットで起きた爆破事件に関与した容疑である。
 この事件を冤罪であるとして、亡命チベット人コミュニティやアムネスティなどが抗議している。
 2004年12月2日現在執行猶予期間は切れ、いつ死刑が執行されるかわからない状況である。

 2ちゃんねるの先スレには、同じく先のTSNJから、この問題提起が引用されている。

テンジン・デレク・リンポチェがこの爆破事件に関与したという証拠は全くなく、 裁判は弁護士の立会いも許可されず明らかに不公正なものでした。 現在、刑の執行を憂慮する世界中の政府・NGOが、 テンジン・デレク・リンポチェの死刑判決を取り下げ、釈放するよう、中国に要求しています。

 この問題を世界がどれだけ注視してきたかは、Google Newsの"Tenzin Deleg"検索例(参照)でもわかるだろう。英文のニュースとしてはBBC"Tibetan monk 'broken' by China "(参照)がわかりやすい。また同ページからは関連するBBCのニュースのリンクなどもある。公共放送というのはこういう情報を提供するものだと思う。
 話を少し一般論に移す。チベットの問題は難しい。日本のメディアの大半がこの問題に沈黙しているのも、日本の国益についてそれなりの意識があってのことからだろう。単純に対中カードとして人権問題を取り上げて済むというわけにもいかないし、いわゆる人権団体も結果的であれ、それなりに政治的な権力のバランスの中にある。また、ひどい言い方だが、チベット問題は解決するには遅すぎたようにも思う。今後のビジョンは簡単には描けそうにはない。
 この話題で、私はダライ・ラマを思いだし、昨今のAppleのiPod話題につられて、Think different"(参照)を掲げていたのは何年前だっただろうかと思い出していた。あの広告にもダライ・ラマがいた(参照)。

While some see them as the crazy ones,
we see genius.
Because the people who are crazy enough to think
they can change the world, are the ones who do.

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2005.01.27

フェロモン研究は未知の次元に突入

 ネタはちゃんとした科学研究なのだが、このエントリは与太話である。もっと重要な話題があるんじゃないのか、例えばイラク石油食糧交換プログラム不正疑惑でアナンが聴取された(参照)とか。しかも朝日新聞とNHKが仲良くこのニュースをスルーしているみたいとか。しかし、特に新事実はないのだ。なので、与太話へ直行。
 ネタ元はロイターの"Secret Ingredient for Elderly Romance"(参照)だ。標題を訳すと「高齢者ロマンスのための秘密の成分」か、といきなりイミフだが、読むに、ますますなんなのだこの話ではある。


A mystery chemical isolated from the sweat of young women seems to act as a romance booster for their older counterparts.
【試訳】
若い女性の汗から抽出された謎の化学物質は、より高齢なご相手のためのロマンス促進剤として機能するようだ。

 な、なんだ、それ? とにかく、フェロモンらしい。ここには書いてないがこの汗は腋の汗(armpit sweat)です。

Pheromones are airborne chemicals secreted from the body and recognized by their smell. Humans and animals emit pheromones.
【試薬】
これらのフェロモンは人間の体からこっそり揮発される化学物質で、その存在は臭いでわかる。人間や各種の動物はこの種類のフェロモンを発する。

 同じネタのお話はニューサイエンティストの"Sex pheromone spray boosts senior romance"(参照)にもある。
 よくわかんないが、話はこういうことらしい。つまり、若い女性の腋の汗には、男性のその気にさせるフェロモンが含まれているらしいのだが、それは閉経後の女性にも効く……効くってどうよ、なのだが。このフェロモンをアレンジしたところ、彼女たちの愛情表現など活動が活発になったというのだ。
 なんのために?
 いや、閉経後の女性をおとしめて言うのではなく、いったいこういう研究はなんのためにやっているのだろうかと疑問に思ってオリジナル論文が閲覧できるかとサーチしたら、ありました。"Pheromonal Influences on Sociosexual Behavior in Postmenopausal Women"(参照)がそれ。

To determine whether a putative human sex-attractant pheromone increases specific sociosexual behaviors of postmenopausal women, we tested a chemically synthesized formula derived from research with underarm secretions from heterosexually active, fertile women that was recently tested on young women.

 試訳を省略するけど、さすがに研究論文だけあって、いきなり社会的な前提も背景も問わずに始まってしまうのだが…さて、閉経後女性のロマンス香水ってなんなのだろうか、依然わからない。ニューサイエンティストの記事では、これで儲けるつもりはない、とのことだが、さてさて。
 とま、ネタはそれだけ。なんとなく思ったのは、欧米人の女性の場合、自己の性欲みたいのが自己承認の意識とかなり重なる部分があるのだろうか、ということ。日本ではあまり報道されないのだが、欧米というか特に米国の場合、女性向けのバイアグラみたいな薬剤のニーズは高く、サプリメントなどもそういう分野(sexual enhancers)がある。いや、そもそもバイアグラ自体が女性側ニーズのようでもある。日本ではこうしたニーズはどうなんだろうよくわからないのだが、もしかすると…とよからぬ連想が働くが筆禍を招きそうなので避けるのであった。
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シェリ
 そういえば、先日、ひょんなことから、コレットの「シェリ」とついでに「シェリの最後」を読んだが、意外に面白かった。「牝猫」より面白いかな。同じコレットでも、「青い麦」はちょっと違うかなという感じはするが、それでも、案外コレットの文学って、男ってトホホ、ということかもしれない。
 与太話なのでオチはないです。

追記(2005.1.28)
産経新聞系で昨日午後このニュースが出た。そっちのほうがわかりやすい?ので参照用に。"人造フェロモンが著効=高年女性が男性ぞろぞろ引き付ける"(参照)より。


英科学誌ニュー・サイエンティスト最新号は、若い女性が分泌し、無意識のうちに男性を引き付ける作用があるとされるフェロモンを人工的につくり、閉経期の女性に投与したところ、男性を大いに引き寄せる効果があったとの実験結果を紹介している。

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2005.01.26

お次はジンバブエとベラルーシかな

 少し旧聞に属するが、米国時間で18日、ライス米大統領補佐官は国務長官への就任承認を審議する上院外交委員会の公聴会で、キューバ、ミャンマー、北朝鮮、イラン、ベラルーシ、ジンバブエの六か国を「圧政国家」と名指しした。記事的には毎日新聞"ライス米補佐官:北朝鮮など「圧政」と批判 米上院公聴会"(参照)が読みやすいだろう。
 当然、前回の「悪の枢軸」の拡張版かとも思えるのだが、この三国は、イラク、イラン、北朝鮮だった。イラクは潰した。なので、残るはイランと北朝鮮かと考えても不自然ではないし、今回の「圧政国家」リストもこの二国はノミネートされている。上位ノミネートっていう感じだろうか。これに、キューバとミャンマーが続くのは、米国とか欧米の雰囲気からするとそれほど違和感はないのだが、ベラルーシとジンバブエと来ましたかというあたりで、率直なところ、私はちょっと意表を突かれた。と、いうのは当方がそれだけ世界認識が甘かったなということでもある。
 ベラルーシと言われれば、地理的に見て、先日のウクライナ騒動の関連だろう。大統領選挙に関連したどたばたで日本では実際にはそれほど関心が持たれなかったし、西側メディアはこぞって元米人内儀を持つユーシェンコ支持に回ったが、東部域やロシアは西側の陰謀だと見ていた。実際、かなりの人員がポーランドから動員されていたようだが、あまり報道はされていない。このスジを過剰に読むと愉快な陰謀論ができるのだが、大筋で見ると米国政府側がそのまま西側勢力に荷担していたとも見づらい。いずれにせよ、ポーランドに隣接するベラルーシだからなにかきな臭い動きは今後もあるのだろうとは思う。
 ライスの上院公聴会演説から二日後にブッシュの就任演説があり、民主主義を世界に広めることが世界の安全につながるとか毎度のしょうもないクリシェだったのだが、ライスとの関連で見れば、次の軍事攻勢はこの六カ国ですかととりあえず米メディアがワザトラの祭にしたのもそれほど違和感はない。そのあたりはブッシュ側もわかっていたのか早々にパパ・ブッシュまで出てきて釈明している…のだが、普通に考えてベラルーシへの軍事攻勢というのは考えづらい。ま、選挙切り崩しのようなことか。
 そして残るは、ジンバブエということだが、これもわかりづらいといえばわかりづらい。私などの世代からするとジンバブエといえばローデシアである。つまり、コモンウェルスというやつだ。1980年独立したものの、ちょっとねの事態だったのは、Wikipediaとかを参照するといいだろう(参照)。


19世紀後半に南アフリカ会社に統治された後、第一次大戦後にイギリスの植民地に組み込まれ、イギリス領南ローデシアとなる。
 1960年代から黒人による独立運動が行われていたが、民族自立までの道のりは険しく、1965年には、世界中の非難の中、植民地首相イアン・スミスによって白人中心のローデシア共和国が独立を宣言し、人種差別政策を推し進めた。これに対して黒人側も、スミス政権打倒と黒人国家の樹立を目指してゲリラ戦を展開するが、イギリスの調停により、100議席中、20議席を白人の固定枠とする事で合意。1980年の総選挙の結果、ジンバブエ共和国が成立し、ムガベが初代首相に就任。

 その後の白人所有大農場問題については今日は触れないが、ライスがこの六か国にジンバブエをノミネートしたとき、私がとっさに思ったのは、フランスにとってのコート・ジボアール問題のようなものが、英国にとってのジンバブエ問題と言ってよさそうだから、英国側が米国になにか泣きつきをしているのか、ということだ。ご安心あれ、この着想から陰謀論を仕上げる気はない。当面はワッチしていくだけだ。
 北朝鮮もそうだが、ジンバブエもけっこうお調子者の国家なのか、ライスのノミネーションに脊髄反射しているようでもある。翌日にイラクと共同宣言などを出している。ヨハネスブルク在毎日新聞白戸圭一記者による"ジンバブエ:イランとの関係強化 核開発も支持"(参照)が詳しい。

20日発足した2期目のブッシュ政権のライス新国務長官はジンバブエを「圧政の前線基地」と指弾、圧力を強める構えをみせた。ムガベ大統領はイランのほかにも中国からの技術導入などに積極的な姿勢をみせており、強まる米国の圧力を前に、米国に対抗する国々との関係強化を通じた体制存続に躍起となっている。

 ここで「圧政の前線基地」としている用語が、国内で流布されつつある「圧政国家」だ。毎日新聞でも先のライスの記事を読めばわかるがこちらを使っている。が、原語では"outposts of tyranny"で、白戸記者の用語が原義に近い。が、英語の語感すると、「独裁政治会社の支店」みたいな感じもあり、ブッシュの世界観としてはスターウォーズ同様なんか宇宙の悪の本店みたいのがあって、それに支店の国家としてあるという感じなのだろうか。いずれにせよ悪の本体を意識させるこの発想には、ちょっとついてけねー、ではある。
 具体的に重要な点は、白戸記者の記事にあるジンバブエと中国との関わりである。ちょっと古いが11月の時点で新華社で次のニュースが流れた(参照)。

呉邦国・全人代委員長、ジンバブエを公式訪問
【ハラーレ1日新華網】全国人民代表大会(全人代)委員長の呉邦国氏は1日午後、ジンバブエ共和国のハラーレに到着した。 同氏は「両国は国交が樹立してからの24年間、国際情勢の変化にかかわらず順調に発展し、政治上の信頼関係、経済貿易上の協力関係ともにますます強まっている」と語った。また、ジンバブエ政府および国民が国家独立を守り、経済発展に向かって努力していることを高く評価した。

 なにもすべて裏で中国が絡んでいるというわけでもないし、本店は中国とまで言う気もないが、現在の世界の経済構造上、中国としてもこうした世界戦略に出ざるを得ない。ただ、それが中国の統制された国策なのかわからない点が困る。
 ちょっと呆れるのだが、また中国は春暁ガス田群あたりをうろつきだしている。読売系"中国新鋭の駆逐艦、東シナ海ガス田付近で確認"(参照)はこう伝える。

 巡航ミサイルを搭載した中国海軍のソブレメンヌイ級駆逐艦2隻が、東シナ海で中国が開発を進める「春暁ガス田群」付近の公海を航行しているのを、海上自衛隊のP3C哨戒機が22日夜、発見した。
 中国海軍の最新鋭艦である同駆逐艦の航行が日本の監視海域で確認されたのは初めて。日中両国が天然ガス開発などをめぐり対立している海域であることから、防衛庁は「海洋資源の獲得に向けた中国の示威行動ではないか」(幹部)と分析している。

 胡錦濤政権が是認しているのか、あるいは海軍が統制できていないのかと考えれば、後者と見るほうが妥当だろう。まったくもって中国というのはこういう国なのである。ということが頭に入ってれば、24日、自民党本部で行われたベーカー米大使講演(参照)も日中に友好を持ちかけたみたいな単純なスジでないことくらいはわかるはずだが。

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2005.01.25

OECD対日経済審査報告と毎日新聞社説でちと考えた

 理解してないこと書くんじゃねーと言われそうだが、気になるので書く、というか、ブログを通して教えていただければ儲けものという不埒な意図である。話のきっかけは昨日の毎日新聞社説"財政展望 本当に破たん避けられるか"(参照)である。内容の大筋は毎度毎度の、一部財務省パブリシティですかぁ、みたいなのだが、ちょっとスルーできないなと思ったのは、経済協力開発機構(OECD)対日経済審査報告とのからみだ。まず、毎日新聞社説の提起はこう。


 内閣府と財務省が中期の財政展望を公表した。また、経済協力開発機構(OECD)も対日経済審査報告で、財政再建に注文を付けた。日本経済が国、地方を合わせて国内総生産(GDP)の1.7倍もの長期債務を抱え、財政政策が機能不全に陥り、金融政策に過度の圧力がかかっている状況下では、財政再建の信頼できる改革と展望を提示することは何よりも重要なことである。

 OECD対日経済審査報告のキーワードが入ってなければスルーなのだが、そこを毎日新聞社説はどう捕らえているのか気になって読むのだが、そこがわからない。
 話が錯綜するかもしれないが、毎日新聞社説としては、状況をこう見ている。つまり、構造改革や予算改革が加速化できなければ、公債等の対GDP比率は190%に近付き、国債発行の幾何級数的な増加が起こりかねない、と。

それを避けるには、国債発行を減らしていくしかない。財務省は国債の海外での消化拡大を目指し、投資家説明会を開始した。海外の投資家の保有比率が高まることで、相場の乱高下を危惧(きぐ)する声もあるが、一方で、市場での評価も厳しくなり、常に有利な条件で消化できるわけではなくなる。財政改革の一助にもなりうる。

 国債発行を減らすというのはそうかもしれないとは思うが、海外の投資家の保有比率が高まるというのはわからない。あんなもの買うやついるのか?
 私がよくわかってないのだが、国債発行を減らすというのはそうかもしれない、として、それでどうやってデフレを克服せいと? もうデフレじゃないのか、と。まぁ、それとこれとは話が別かもしれないので、これはこのくらい。
 当初の問題意識に戻るのだが、OECD対日経済審査報告関連で、毎日新聞社説はこう書く。話のスジは、基礎的財政収支の黒字化が13年度と見られているということについてだ。

そうであれば望ましいが、OECDが指摘するように、仮に、基礎的財政収支が黒字化しても、国・地方の公債と借入金の残高が200%を超えている可能性がある。

 この点をOECD対日経済審査報告で確認してみた。キーワードは200%ということで単純に見たので、基本のハズシかもしれないが、該当箇所と思われるのはこれだ。"Economic Survey of Japan 2005: Achieving fiscal sustainability"(参照)より。

Even if consolidation advanced at the 1/2 per cent of GDP pace included in the Perspective, it would take more than a decade to meet the target, by which time gross debt might have risen to 200 per cent of GDP or more, imposing a significant burden on the economy and increasing the possibility of a rise in the risk premium.

 この部分について言えば、毎日新聞社説が外しているわけでもないのだが、この先はこう続く。

The negative impact of the high debt in Japan, however, is limited by the high private-sector saving rate and the low level of interest rates. Nevertheless, the medium-term plan should be more ambitious, even though special circumstances make fiscal consolidation more challenging in Japan than in other OECD countries. At a minimum, the government should achieve its goal of a 1/2 per cent reduction in the budget deficit per year.

 というわけで、トーンとしては地味な緊縮財政でなんとかなるっしょ、というのがOECD対日経済審査報告のように思える。それって毎日新聞社説のトーンと違うような…。
 些細な点だけ取りだしたようだが、ざっとOECD対日経済審査報告を読む限り、全体として毎日新聞社説のトーンとは逆のように感じられる。そのあたり、どうよ?というのが、冒頭、気になるということだ。
 OECD対日経済審査報告については、国内ニュースとしては、日経"OECD、日本の量的緩和解除は物価上昇率1%メドに"(参照)があった。先にちょっと触れたが「それでどうやってデフレを克服せいと?」というのの対応がやはりメインになっているとみてよさそうだ。

政策の焦点を「デフレからの脱却に当てるべきだ」と強調、金融の量的緩和策を巡り「日銀は解除の条件について、例えば物価上昇率1%とするなど十分高く設定するように」と注文を付けた。

 そして、具体的にはこう。

量的緩和策については、仮に消費者物価がプラスに転換しても拙速に解除しないよう強調した。日銀政策委員会が2003年10月に公表した解除の条件に基づくと「インフレ率がわずかでもゼロ以上になれば解除の可能性があり、日本経済がデフレに押し戻されかねない」と懸念を表明した。

 私もざっとOECD対日経済審査報告を読んだが、そんな感じだ。そして、この報告書を、単純な話、そっくり日本の財政政策にすればいいのではないか、あるいは、すでにそういうことになっているという感じもする。
 誤解されかねない言い方だが、毎日新聞社説批判とかではないが、今回の毎日新聞社説のトーンはたぶん財務省の一部あるいは特定の派の代弁ではあるのだろうが、対外的にみると随分ローカルな意見だなという感じがする。
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自治体破産
再生の鍵は何か
 が、だが、毎日新聞社説は明確に書いてないが、これってやがてくる地方財政の破綻実態への衝撃に備えよということではないのか。「日本経済が国、地方を合わせて国内総生産(GDP)の1.7倍もの長期債務を抱え」のポイントは「地方」か。
 先日、「自治体破産―再生の鍵は何か」を読んで、地方自治体というのはかつての銀行のように制度上破綻できない仕組みになっているだけで、実態は破綻に近いようだと思った。呆れたのだが、団塊世代地方公務員の退職金などのメドもまるで試算されていないようだ。

二〇〇七年度に大量の退職者が予想されているにもかかわらず、日本の多くの自治体がそれに対する備えも充分にすることなく、いたずらにときをすごしているのは無策の批判を免れないではないだろうか。この問題に関する限り、自治体の多くが「出たとこ勝負」を決め込んでいることが懸念される。

 ちょっとうなってしまう。地方自治に関してまだ開示されていないファクターが大きく、実際にはOECD対日経済審査報告のシナリオみたいには進まないのではないのか、っていうか、そのあたりがクリアに見えないものかと思う。

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2005.01.24

偽札騒ぎも変な話だった

 偽札騒ぎも一段落したのだろうか。私は変なニュースだなと思ってこの騒ぎを傍観していた。明確にこれという意見があるわけでもないのだが、気になることをいくつか書いておきたい。
 まず、昨今の偽札騒ぎなのだが、これがいつから話題になったのか、といえば誰でも、この年初を思うのではないか。いわく寺社で使われたと。そういうニュースをよく聞かされた。しかし、気になって調べてみたのだが、偽札のニュースはどうもそれ以前から各月満遍なく発生している。時系列に追ってみて、どこかに際立ったエポックがあるのだろうかと2002年くらいまでサーチしてみたが、特にない。うんざりしたほどだ。お笑いがてらだが、昨年の正月にもこんなことがあった。読売新聞(2004.1.3)"元旦に偽1万円札 石川の寺社で15枚"より。


 初詣で客でにぎわう石川県内の寺と神社で一日、偽一万円札計十五枚が使われていたことが分かった。石川県警は、同一グループによる偽造通貨行使事件とみて捜査している。

 繰り返すが、このニュースは一年前のものである。ついでにもう一つ、これも昨年のニュースだが読売新聞(2004.2.4)"偽札、使いに使ったり900万円分? 県内でも38万円発見"より。なお、記事中の県内とは静岡県のことである。

 野迫被告は関東から九州の各地で偽千円札約七千枚と偽一万円札約二百枚を使ったとみられ、県内でも二〇〇二年十一月―二〇〇三年三月に、野迫被告が使ったとみられる偽千円札二百六十七枚、同一万円札十二枚が見つかっている。偽札は、野迫被告がパソコンとカラープリンターで作ったもの。肉眼で偽札と判別が可能な出来だといい、野迫被告は自動販売機やパチンコ店の両替機で使用していた。

 パソコンによる偽札流通?は2002年からあった。これに関連したマニュアル本もあるらしいので、そのあたりが取り敢えずはエポックなのだろうか。
 昨今の偽札騒ぎは、もちろん過去の同種のニュースに比べれば量的にも多いのかもしれないし、広がりがあるのかもしれない。だが、それにしても、ここで騒ぐというのは、そうした、問題量のスレショルド(閾)を越えたということか。つまり、量が質に転換したとなのだろうか。
 この程度で陰謀論とか邪推と言われてもなんだかなと思うのだが、誰でもまず納得するだろうが、偽札騒ぎは新札の登場と軌を一にしている。ということは、これって新札の話題の一環でそそられて出てきただけのことではないのか。とすると、誰かが煽っているのか、新札が出るようになったので多くの人が紙幣に関心を持つようになってみて、あれま、これって偽札だわ、と気が付いたのか。いずれにせよ、今回の偽札騒ぎは、その程度のことではないのか。
 パソコンで簡単に偽札ができるようになったし、マニュアル本もあったらしい、というのが取り敢えず近年の偽札史のエポックの一つなのだろうが、もう一つは、端的に言うけど、北朝鮮が関係している印象がある、と書くとヘンテコな攻撃を受けそうなので、ニュースで傍証しておく。読売新聞(2000.9.7)"北朝鮮船員使用の偽1万円札 「和D―73号」と同一 警察庁鑑定"より。

 大阪府泉大津市の助松港で七月二十一日、停泊中の北朝鮮籍貨物船の乗組員が支払った家電製品の代金から見つかった偽一万円札三枚は、約二年前に大阪や福岡などで出回った偽一万円札「和D―73号」と同一であることが七日、警察庁科学警察研究所の鑑定でわかった。


国内ではあまり使われない写真製版のオフセット印刷で偽造されたとみられ、警察当局は海外の偽造団が関与しているとみている。

 他にも類似の話はあるのだが、ここから妥当に推測できるのは、当局側は一連の系統の偽札についてはある程度まとまった情報を持っているのではないだろうかということ。この他、関連する情報も当局側はだいぶ持っているようだが、奇妙に出てこない。
 今年の偽札騒ぎに戻るが、「それってお賽銭じゃないの?洒落でしょ?」という疑問がある。それがどの程度の割合を占めるのかニュースからははっきりわからないのだが、お賽銭なら洒落じゃないのか。もちろん、これはまじめくさった議論もできる。ネットを見たらNAVER"お賽銭に偽札をつかうのは違法なの?"(参照)にこんな問いがあった。

別に商取引が行われているわけでもなく
祈祷とか御札代とかではなく、純粋なお賽銭に偽札をつかうのは違法になるのでしょうか?

 回答がいろいろ上がっているのだが、納得しますか。ポイントは「賽銭であっても、偽貨を直接流通に置くことに変わりなく行使に当たる」のかだろう。そうなのか。それほどマジに疑問に思うわけでもないが、沖縄でもそうだし中華圏全体には宗教儀礼に使うのだが、紙銭(カビジン)というものがある。偽札といえば偽札だが、さすがにそうした誤用のないほどのデザインではあるが…。この儀礼用の札は、本土の葬式でも最近では六紋銭を印刷した紙を使うのと同系だ。この話をすると長くなりそうなので控えるが、賽銭箱に紙銭を投げたら、違法なのだろうか?
 もう一点。今回の偽札騒ぎは新札との関連でもあったのだろうが、そのせいか、日本の新札技術は素晴らしい的な話もうんざり聞かされた。ネットで読めるものでは、例えば"世界最強!新紙幣の偽造防止技術"(参照)がある。

今回の新紙幣には、前記のように急増している紙幣偽造に歯止めをかけるべく、世界最先端の偽造防止技術を駆使していることが特徴だ。

 というのだが、ちょっと苦笑する。最先端はオーストラリアのポリマー幣(参照)ではないか。私の理解が違っているかもしれないが、登山地図などに使う材質と類似のものだろう。私が子供のころはお風呂でも読める本とかで話題になったものだ。
 ポリマー幣が偽札を作りづらいという話は、シドニー在のブログを書かれている平野さんの"偽札対策はオーストラリアにおまかせ!?"(参照)に詳しい。
 日本ではなぜポリマー幣を導入しないのだろうか? 意外と日本のパソコン技術だとそれでも偽札が作りやすいということなら面白いのだが、実際のところ、日本は日本の紙幣技術にこだわっているだけからではないか。あれは一種の和紙で、材料は伝統のコウゾ・ミツマタってやつだ。印刷技術も伝統のなんとか…みたいなお話。たしかに、日本の紙幣は他国の紙幣よりは長持ちしそうではあるが。
 いくら日本の紙幣技術が優れていても、と、思うのだが、米国などの場合、日常生活で100ドルを持ち歩くことは少ないだろう。だが、日本人だとある程度のランクのビジネスマンだと、昔鈴木健二が言ったように歳の倍の万札を持ち歩かないとサマにならない。日本ではクレジットカードがまともに機能していないこともなのだが、結果として日本の場合はアンダグランド経済がでかすぎるからなのではないか。なんか、しょーもない印象だが、優秀と言われる日本の紙幣はアンダグランド経済との関連にあるような気がするのだが。

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2005.01.23

国連がハマスに資金供与の疑惑?

 22日付のウォールストリート・ジャーナルの寄稿にちょっと気になる話があった。"The U.N. at Work"(参照)がそれだが、標題のヒネリは今ひとつわからないのだが、副題"The world body gives financial support to Hamas."はわかりやすい。つまり、国連がハマスに資金援助をしている、というのだ。
 ハマスは、Wikipediaの説明を借りると「パレスチナのイスラム主義団体で、パレスチナ解放運動の諸派のうちいわゆるイスラム原理主義と呼ばれているものの代表的な組織である」(参照)ということになる。極東ブログの過去エントリでは「アハマド・ヤシン殺害」(参照)でハマスについて少し触れた。いずれにせよ、イスラエル側からは、ハマスはテロリストに見える。
 ウォールストリート・ジャーナルの話のポイントは一応書き出しにある。


In 2003 and 2004, the Israel Defense Forces captured documentation showing how the U.N. Development Program was regularly funding two Hamas front organizations: the Tulkarm Charity Committee and the Jenin District Committee for Charitable Funds. The donations varied--sometimes $4,000 and sometimes $10,000. Receipts and even copies of thank-you notes to UNDP were discovered.

 イスラエル国軍が入手した文書によると、2003年と2004年に、国連開発計画(UNDP)がパレスチナのハマスに4千ドルから1万ドルの資金供与を行っていたというのだ。
 本当かなと思って、例によってGoogle Newsを軽く当たってみたのだが、この話はそれほど話題にはなっていない。また、話題になっていたとしても、どれも、この記者ドーアー・ゴールド(Dore Gold)に関わるものばかりなので、その意味ではそれほど信憑性はない。ニューヨークタイムズやワシントンポストなどでもこの話題は扱われていなさそうなので、現状では、ここから愉快なストリーを仕立て上げる気にもならない。が、それはその程度の話だとしても気にはなる。
 記者ドーアー・ゴールドは、イスラエルの元国連大使でその意味で国連の内情に詳しいと言えるだろう。私は読んでいないのだが、国連の不正をテーマにした"Tower Of Babble: How The United Nations Has Fueled Global Chaos"(参照)という著作もある。
 ものの書きようともいえるのだが、イラク石油食糧交換プログラム不正と同等に国連には問題がある、として話を仕上げるあたりは、関心をそそられる。

Besides getting to the bottom of the Oil-for-Food scandal, it is equally vital to get the U.N. to halt its backing of recognized international terrorist groups.

 ただ、ここでちょっと注意したいのは、彼がハマスをそのまま国際的なテロ組織だとしてしている点だ。
 というあたりで、さて私の感想なのだが、私としてはこのニュースの信憑性は確かなものだとは思えないこともあるが、ハマスを最初からテロ組織に同値して話を進めるのには、ちょっとひくものがある。ハマスはパレスチナの福祉的な組織でもある。Wikipediaの解説はそれほど偏ったものではない。

ハマースはパレスチナ解放の大目的のイスラエルとの妥協を拒否し、自爆テロなどの過激なテロ行為をも辞さない過激派組織とのイメージが強いが、パレスチナ住民にとっては、医療・教育などの福祉を、機能不全に陥っている自治政府にかわっておこなっている自助組織の意味合いが強い。

 とするなら、国連がこれに資金供与するのもそれほど不思議なことではないのではないかとも思える。もちろん、それがイスラエル攻撃の過激な活動の資金ともなっていた可能性があるとしても、現状の国連ではそこまで管理はできないだろう。
 その意味で、記者ドーアー・ゴールドの結論を私はちょっと皮肉に読む。

True, the U.N. is a huge complex of many sub-organizations--and it may be difficult to monitor everyone. But the U.N. has a duty today to clean up its act before it asks for the trust of Israel or any law-abiding member of the international community again.

 今日の国連の組織は下部などが特に複雑にあり十分に管理できない、というのはそうなのだろう。だが、現実問題、そう簡単に是正されるわけもないのだし、さらに現実問題でいうなら、イスラエルが多少手を汚してでも、正常に機能できるように関わっていくしかないのだろう、あるいはそれが無理なら別の仕組みで対応する…と言うに、他人事のようだが、この問題は実務レベルの問題になりうる。
 この話、右派のウォールストリート・ジャーナルに掲載されたということは、なんらかの米国でのロビー活動と結びつくのだろうか、というあたりも気になる。大筋でいうなら、イスラエル軍部が意図的にリークしているのだから、次ステップの動きがあるのだろう。
 なんとなくだが、この記事でイラク石油食糧交換プログラム不正にからめて書いているわりには、そのスジではなく、イランとイスラエルの関係のスジに流れていきそうな気はする。
 それでも、現状ではどうなるのかよくわからない。というか、それ以上の読みをする能力が私にはない。あると思っている人もいるみたいだけどね。

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