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2005.01.22

街中のタバコの広告

 ちょっとした街の風景の雑感を。
 どこの駅でも見られる光景なのかもしれないが、先日西武線の高田馬場の講内で壁を覆うほどのタバコの広告を見た。というか、当初白地の大きな立て看があるのかと思って近寄ってみたら、たばこの害について書かれた警告文で、それゆえにその左側の大きな写真がタバコのイメージ広告なのだとわかった。


喫煙は、あなたにとって肺がんの原因の一つとなり…

 タバコの健康被害のメッセージを広告に付与しなければいけないというのは知っているし、タバコの広告の面積比率によって警告も大きくしなければいけないというのも知っているが、これほどでかい警告文が公衆の場に、立て看のように掲げられているのは変なものだなと思った。奇妙な情報の空間を生きている気がした。
 もうちょっとなんというか、洒落っけというかユーモアっていう心はないものか。伊藤園の「おーい、お茶」の缶についている川柳(新俳句というのか)みたいなものを公募してみてはどうか。

若いとき禁煙しとけば小金持ち
肺がんの理由はタバコだけじゃない
おやじより長く生きたいタバコ消す
こっそりと道行く人に根性焼き

 だめかな。
 広告のほうはこの警告文とは関係ないような風景写真のようなものだ。無意識的な印象を喚起させたいとの狙いなのだろうが、その分、警告文が孤立したように浮き立つ。それでも、この警告文があれば、タバコの広告なのだという連想が確立するから、たぶん、この警告文にどんな写真を付けてもタバコの広告ができるんじゃないだろうか。
 それにしても、こんなに大きなたばこの広告が必要なのだろうか。駅の構内だと、なにげなく横を過ぎていくと、壁の模様のようにしか見えない。タバコの広告だとはわからない。遠目で見ようとすると線路に落ちそうだ…と、なるほどこれは向いのフォームから眺めるように出来ているのか。
 と考えて、そういえば、こういうでかいタバコの広告を屋外に設置してはいけなくなったのではなかったっけと思いだした。よくわからない。自分はタバコを吸わない。タバコの煙も嫌になった。臭いに敏感なたちなので、服などに付くタバコの臭いも嫌だというくらだい。が、もっと嫌なのは、私の印象だが、歩きタバコがいっときより増えたことだ。他の人の歩いているなか、火のついたものが触れるかもしれないのにと思うと、以前は怒りがこみ上げてで誰彼となく怒鳴りつけたが、最近はしない。世の中を生きるというのはこういう愚か者に慣れることでもある。
 そういえば、タバコの規制がこれからもっと厳しくなるのだっけと、ちょいとニュースを調べるとそのようだ。朝日新聞記事"たばこ規制強化へ本腰 14省庁が初の連絡会議"(参照)に話がある。

たばこがもたらす健康被害の防止をめざし、世界保健機関(WHO)が主導する「たばこ規制枠組み条約」が2月に発効するのを前に18日、厚生労働省や財務省、文部科学省など14省庁の連絡会議の初会合が開かれ、たばこ広告の規制強化など今後各省庁で取り組むべき施策や協力のあり方が話し合われた。

 読み直すと屋外広告の禁止は四月からのようだ。つまり、この春からタバコの広告が風景から消える。
 私はテレビドラマなどあまり見ないのだが、それでもタバコの登場するシーンは少なくなったなと思う。自主規制のようなものがあるのだろう。そう思って、関連ニュースを見ていたら朝日新聞記事(2005.1.14)"少年漫画誌の喫煙場面、平均8.7カ所 厚労省調査"でこんな話があった。

 少年漫画雑誌には喫煙場面が1冊当たり8.7カ所もあるが、たばこの害についてのメッセージがほとんどないことが、厚生労働省の研究班による調査でわかった。たばこ業界の自主規制で未成年がよく読む漫画雑誌には広告こそないものの、公衆衛生の専門家の間では漫画そのものが広告の役割を果たしているという見方があった。その実態が数字で裏付けられたといえる。主任研究者の鳥取大医学部の尾崎米厚助教授(環境予防医学)は「漫画雑誌が未成年者の喫煙に影響を及ぼしている可能性がある」と指摘している。

cover
『鉄人28号』
公式ガイドブック
 これも規制するのだろう。もぐら叩きみたいな感じがする。そういえば、私が鉄人28号好きというので先日「『鉄人28号』公式ガイドブック」を貰った。中身はネットの公式ページとそれほど変わらないのでちょっとがっかりしたのだが、話のなかで今回のリメークでは正太郎にピストルを持たせることができなかったとあった。なるほどな、その分村雨がぶっ放していたのだが、それでも私が子供のころ見た正太郎はピストルをばんばん放っていた。あれを見て私が影響を受けたか…あほくさ。
 少年探偵がピストルを持たないとしてもそれは所詮フィクションのこと。最初からありもしない光景だ。だが、あのでかいタバコの広告はもうすぐ私たちの街の光景から消える。人にもよるのだろうが、こうした光景について、なにが加わる変化より、何かが消える効果のほうが、弱いものの、鈍く長く残る違和感になるような気がする。

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2005.01.21

春節限定、中台直行便

 今朝の読売新聞社説"中台直行便 対話再開の糸口となるのか"(参照)で、春節限定(今月29日から来月2月20日まで)の中台直行便の話題について触れていた。同社説には特に論点もないし、このエントリでもたいしたネタがあるわけではない。が、気になる話題なので触れておく。
 来月になるが2月9日、春節(旧正月)の帰省に合わせ、大陸中国と台湾の双方の航空会社が直行チャーター便を運航することが実務協議で決まった。中国旅客機の台湾乗り入れは、1949年の中台分断後としては初めてとなるが、すでに一昨年に同種の春節期間限定の台湾人帰省のチャーター便が飛んでいるので、その意味では今回が二度目になる。中台間の政治的緊張緩和が望まれるということでは、ある意味で来年以降の継続も望まれるところではある。
 特に、大陸中国側では、この三月に予定されている全国人民代表大会(全人代)で、台湾独立を武力でも阻止するというとんでもない「反国家分裂法」が制定されることになるので、今回の直行便が和みの話題にもなればということもある。まあ、それとこれとはまた別の話というのが中国のわかりづらさでもある。
 このあたりに関連して、どういう意図なのか、あるいは特に意図もないのか、共同が流した"台湾住民の大陸離れ警戒 中国、圧力と融和使い分け"(参照)も興味深いといえば興味深いものがあった。直行便には政治的に大陸中国側のメリットも大きいという読みである。


【北京16日共同】中国が春節(旧正月)休暇期間中の直行チャーター便運航で台湾と合意した背景には、台湾住民の「大陸離れ」に対する危機感がある。独立志向の強い陳水扁政権への圧力をかけ続ける一方で、融和姿勢も打ち出すことにより、台湾の反独立勢力を後押しする狙いがある。

 こうしたやりとりはいかにも中国人らしい面があり、私にはよくわからない。ただ、現実の要請というものもある。
 読売新聞の社説でも触れているが、政治・軍事の反目とは裏腹に、経済の一体化というか、台湾は日本同様中国市場への依存を深めている。台湾の大陸中国への累計投資額は300億ドルを超えるとのことだが、それが大きいのか小さいのか私はよくわからない。しかし、台湾からは家族を含め百万人規模の台湾人が大陸に在住しているというのは事実で、今回の春節チャーターはこの巨大なニーズを背景としている。
 話がずっこけるのだが、中華の鉄人陳建一のエッセイを読んだとき、父健民の古里と墓を訊ねるというくだりがあったことを思い出す。彼は日本人なので、外省人ではないのだが、それでも台湾の外省人の心性をちょっと伺い知る感じはした。台湾人のアイデンティティは簡単には理解できないようにも思う。が、いずれにせよ大陸とのつながりは心性としても切りづらいだろう。民間レベルの交流は取り敢えず維持されるべきだろうとは思う。
 今回の直行便なのだが、沖縄に長く暮らした者としては、航路のディテールが興味深かった。あまりこの話題に触れているニュースはなかったようだが、沖縄の管制にも関連している。産経ビジネスi"中国、台湾と「直行便」合意 29日から香港経由せず48便"(参照)が伝えている。産経は台北で新聞を発行できるだけあって、こうした情報に強いようだ。航路の違いを前回との差で説明している。

 しかし、今回の場合、チャーター機は香港には駐機せず、香港上空を通過するだけ。さらに、台湾側は迂回ルートとして、香港のほか、韓国や沖縄の管制空域の通過を主張したが、中国が拒否した。中国としては、迂回地を香港だけにしたことで、「中国の国内事務」として処理できるからだ。
 仮に、韓国、沖縄の迂回ルートを認めれば、「中台問題は中国の国内問題」との原理原則が崩れてしまうことになる。しかも、前回では、中国内の乗降地点は上海の1カ所だったが、今回は上海のほか、北京と広州の2地点が加わり、中国が主張する「直通」に近づいている。

 私の関心を端的に言えば、ほぉ、共産党は沖縄の管制を外国だとしてくれたのかである(国民党も同じだが)。
cover
この厄介な国、
中国
 こんな話、当たり前といえば当たり前だが、当たり前が通じないのが中国人である。なんとでも言う。「てめーで言っていて言葉に酔っているのかお前、本音はどっちだ」と日本人は思うが、中国人に本音などない。あれだ、ジョージ・オーウェル「1984年」のダブル・シンク(二重思考)というのがマジで別に矛盾を起こしているわけでもない。それでいて道徳心がないとか情熱がないわけでもない。日本人とはおよそかけ離れた心性だというだけのことだ。逆に彼らから見れば日本人は愚か者にしか見えないだろう。
 この国内便か国際便かの話で、邪推に近いのだが、沖縄の管制が外国になっているのは、もしかすると米軍の手前かもしれないとも私は思う。これが全面的に日本人に帰還されると、中国側としては小日本(シャオリーベン)が剥き出しになるので、さて、どうなることやら。
 誰もが知っていることかもしれないが、現在沖縄では那覇から毎日上海へ直行便が出ている。そして、以前から那覇と台北には直行便がある。だから、那覇でトランジットすれば台北と上海は簡単につながるし、乗り継ぎ客は多いといえば多いのだが、政治化する可能性もあり、現状では細い。稲嶺知事はさらにオリンピックを当て込み北京直行を期待しているが(参照)、それよりも、この台北上海を太くしておいたほうが利益が上がっただろうという感じもする。トランジット中にちょっとギャンブルでもできれば、博打好きの中国人のことだからカネががんがん落ちるのにな。しかも、日本人や沖縄人からは隔離できるから社会問題にもならないのに。
 そういえば、私が利用していたころは那覇の国際便は実にローカルな感じで空港使用料もなかったが最近はどうだろうか。運び屋がと米人が行き交う昔の那覇の国際空港が歴史の風景になったのかなと感慨深い。

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2005.01.20

イラク石油食糧交換プログラム不正と日本国内報道

 イラク石油食糧交換プログラム疑惑が「疑惑」といったレベルから脱しつつある。予想されていたこととはいえ、一昨日大きな転機があった。暗躍していたイラク系米国人が米国裁判で起訴事実を認めた。つまり、このプログラムに不正があったことはかなり明確になった。
 被告はイラク系米国人サミール・ビンセント(64)で、1998~2003年にかけて、制裁をすり抜けて石油の闇取引をするため、国連及び米政府の担当者にロビー活動を展開し、さらにこの闇取引から500万ドルほどの利益を上げていた。
 基本的なことを繰り返すとまたブログのレベルが低いぞとお叱りを受けるかもしれないが、この不正はフセイン政権が国際世界を騙していたという不正でもあるのは当然だが、重要なのは国連が噛んでいたからこそできた不正だった。国連は制裁の裏側で石油の闇取引に荷担していたのである。その意味で、この問題の一つの焦点は国連ではある。が、本丸はこの不正の重要なプレーヤーが米仏露という国家が絡んでいる点だ。米国の手が汚れてないわけはない。ロシアもそうだが、ロシアの石油ビジネスはすでに大きな転機にあり、やや陰謀論的な推測なのだがプーチンはこの問題で事実上ブッシュとあるレベルまで合意ができているだろうと私は推測する。問題は、フランスだ。すでに一部高官が名指しされ、スイスの闇口座なども一部は事実上は解明している。これにアナンの息子コジョも噛んでいると見られるのだが、現状ではコフィーへの疑惑は一部は明白に解明されているものの、大枠のイラク石油食糧交換プログラム疑惑のなかでは解明されていない。当然、このスジ上にアナンとシラクがいるのだが、こう言うといかにも陰謀論みたく日本では聞こえのだろうが、私の感触ではこれはすでに国際的な常識である。
 つまり、問題は、この問題を誰がどこまでなんのために解明するのか、ということになっている。端的に言えば、イラク石油食糧交換プログラム不正は、EU対米国、国連対米国、OPEC対ブッシュ&サウジ王家、という対立の利害のカードゲームとなっている。
 どうしたらいいのかだが、この問題は日本の国益も関連してきているので、単に真相を明らかにせよという単純な主張にはならない。特に国連に大金を拠出しているのだからそれ相応の矜持が必要なのだが言うに虚しい。
 ちょっと言い過ぎだが、この問題について日本の体制左翼の認識は甘すぎてというか、端的に言うと中国の代弁しかしていないので困ったものだなと思う。言うまでもないが昨年の貿易実績を見ても明らかだが中国はEUとの関連を深め、米国&ドルから離れつつあるし、米国はそうした対立をいいことに日本をからめた中台緊張に軍産業の活路を見いだそうとしている。また、OPECやサウジといった旧体制の石油産出国との関連で中国はアフリカや南米に権力を伸ばそうとしているのだが、それはそれで大国面して勝手にやってもいいともいえるのだが、アフリカの人権問題への配慮があまりに乏しい。特にダルフール問題への国連の関与の足を引く効果を上げていて、嘆かわしい。中国は元来自国民を国軍で殺戮するような国家なので人権を説くのは無意味だが、それにしても、もう少し表向きだけでも国際ルールとして人権を配慮してもよさそうなものだ…がそのあたり国内の体制左翼は自民党橋本派並に頭が古い。せめてガーディアンでも読んでゴードン・ブラウンでもプッシュしてIMFの金(キン)の解体でも支援しろと思うのだが…。
 話を戻す。今回がサミール・ビンセントが罪を認めたというニュースだが早々国際的にはトップニュースとなり昨日の極東ブログ・エントリ「朝日新聞の変な外信」(参照)をささっと書いているときにすでにGoogle News(米国)の国際ニュースのトップ項目になっていた。が、上にうだうだ書いたように今回の解明それ自体がニュースバリューを持つという時節でもなく、むしろ、日本人として見ると、このニュースがどう国内に報道されるかということが重要だと思えたので、昨日はそのようすを時折ワッチした。
 結論から言うと、国内報道が出た。先日、これも極東ブログ「国連ヴォルカー調査が発表された」(参照)を書いた時点では、国内報道はどうなってんだと思ったものだが、以降子細に見ると、主要紙もそれなりにベタレベルだが言及はしていた。その意味で、今回の報道もベタ程度には出るだろうなとは期待した。というわけで、話を日本との関わりにおいて、国内での今回のニュース報道について少し話を移すというか、このエントリのネタはそちらのほうが主眼でもある。
 正確に追ったわけではないが、国内報道の流れは、こんな感じだったかと思う。意外なのだが、TBSが先行していたようだ。該当ニュースは"石油食糧交換計画巡る不正疑惑で起訴"(参照)である。時刻は、8:30。


 国連のイラク石油食糧交換計画をめぐる不正疑惑で、18日、アメリカの司法当局はイラク系アメリカ人の男を 起訴しました。
 「1996年から 2003年にかけて、 ヴィンセント被告は 9百万バレル以上の石油を 数百万ドルで売ったことを 認めている」(アシュクロフト司法長官)
 起訴されたのはイラク系アメリカ人のサミール・ ヴィンセント被告です。

 内容の流れを見ると、これはCNNからの流用っぽい。CNNにも邦文"石油食料交換計画の不正、イラク生まれの米国人を訴追"(参照)が上がったので、邦文ではあり邦文報道は時間的には遅れているのだが、比較してみると面白い。

(CNN) アシュクロフト米司法長官は18日、記者会見し、旧フセイン政権下のイラクに対する国連の人道支援事業「石油・食料交換計画」をめぐる不正疑惑について、イラク系米国人1人を訃報取引などの疑いで訴追したと明らかにした。
 長官によると、ニューヨークの連邦地裁に訴追されたのはサミール・ビンセント被告(64)。同被告は外国政府の代理人として必要な登録をしないまま、98~03年にかけてフセイン政権の指示に従い、経済制裁緩和のため秘密裏のロビー活動を国連や米政府担当者に対して展開した。またイラク原油900万バーレルを転売して、300万~500万ドル(約3億~5億円)の利益を得たという。
 長官によると、ビンセント被告はニューヨーク連邦地裁で同日開かれた審理で、罪状を認めたという。

 それに遅れて10:54にニューヨーク18日時事(参照)が流れた。が、この記事では起訴までにしか触れられていなかった。時間的に見て、すでにCNNやABCなどでも出ていたので、時事の側になにか問題がありそうだ。
 共同も出してきた。共同記事は地方紙にコピペ(Copy&Paste)で配信されるので、記事数は増えた。むしろ、大手紙側がよくわからない。大手紙の外信をまとめているgooの外信のリストには上がっていないようだ。
 共同の記事はネットから閲覧できる最初のものとしては、徳島新聞"石油交換疑惑で初の訴追 米国人が違法に利益"(参照)があるが、そのタイムスタンプを見ると、" 10時38分"なので時事より速い。

【ニューヨーク18日共同】アシュクロフト米司法長官は18日、記者会見し、経済制裁下にあったイラク向けの国連の人道支援事業「石油・食料交換計画」をめぐる疑惑で、イラク生まれの米国人1人を旧フセイン政権のために違法な活動をした罪で訴追したことを明らかにした。この疑惑での訴追は今回が初めて。

 後半があるが、内容はほとんどベタ。時事のベタ記事は無視されることも多いので、今回の報道の事実上の引き金となったのは共同のようだ。が、繰り返すようだが、共同はできるだけ無色な記事としているので、その意味がわかりづらい。その点、先のTBSでは、こんなオチがついている。

 まもなく退任予定のアシュクロフト司法長官が、このタイミングで起訴したのは、国連に対する けん制とみられてます。

 昨日の極東ブログ・エントリ「朝日新聞の変な外信」(参照でひいた朝日新聞の外信と比べると、お楽しみいただけるかと思う。
 共同の記事のまま流せない大手紙だが、遅れて東京新聞が記者名入りで"旧フセイン政権 代理人罪認める 国連支援事業公判"(参照)を出したが、共同ベタに近い(仕事してね)。毎日新聞は、この問題を一昨年前からときたまワッチしてきたこともあり少しヒネリがある。以下はトリビアネタになりそうだ。

同被告は58年に渡米後、ボストン大を卒業。陸上選手として活躍し、64年にはイラクのオリンピック代表の1人にも選ばれている。

 と微笑んで終わりという以上に、サミール・ビンセントは当然対外フセイン派なので同じく人間の盾などで活動した日本国内の同派ともつながりがあるのではないかと私は推測する。
 毎日新聞外信で優れているのは次の点だ。

 この起訴を機に、米司法当局の捜査や国連の独立調査委員会(委員長、ボルカー前米連邦制度理事会議長)の疑惑解明に弾みが付きそうだ。

 ヴォルカー調査はまだ終わっていない。6月にさらに報告書が出るらしい。この点は、むしろCNNが面白い。

石油食料交換計画の不正疑惑を調べている米独立調査委員会(委員長・ボルカー前米連邦準備理事会(FRB)議長)は、同被告から事情聴取できるよう希望するとコメントを発表した。

 つまり、ヴォルカーとしては後手に回ったというか、ばっくれるわけにもいかないか、ということなのだろう。
 以上、今回は国内報道の側に焦点をあてたのだが、今ざっと大手紙の外信を見るに、まだニュースは上がってないようだ。大手紙がこれからどう出てくるのか、それと、共同がどう外信を捌いているのかが気になるところだ。
 っていうか、こんなの、英米圏のネットを覗けば筒抜けに見えることなので、ブログが興隆してくると、こうした日本での外信の流れに別の流れがでてくるのではないだろうか。ブログはジャーナリズムかとか、一次ソースがとかいう議論より、国際的なニュースと外信の関係がブログで底上げすると、日本国内の対外的な世論の質も変わってくるだろうと思う。

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2005.01.19

朝日新聞の変な外信

 朝日新聞バッシングをしたいという意図はないし、こんなのスルーしといてもいいかなとも思ったのだが、この手の問題は日本国内のネットではあまり話題にも上らないだろうし、記録として残しておくのもいいだろうかとも思うので、簡単に書く。国連の石油食糧交換プログラム不正疑惑についての16日付の朝日新聞記事"アナン事務総長、対米改善へ動く 国連高官すげ替え"(参照参照)についてだ。
 話の概要は新聞記事らしく冒頭に書かれている。


アナン国連事務総長が、「国連たたき」を続けるブッシュ米政権や米議会との関係改善策を探っている。米側の覚えが良くない高官の一部をすげ替え、意思の疎通を向上させるのが眼目のようだ。米政府との関係悪化に気をもむ米民主党系の外交畑重鎮たちの助言をいれた結果と言われる。だが、関係悪化の根底にあるイラク問題を巡っては、アナン氏も譲歩の姿勢は見せておらず、効果を疑問視する声もある。

 一読、なんだかなぁという感じだが、でもこの程度なら朝日新聞だものね、産経新聞だって別の意味でこんな程度だものね、と思う。
 ついだが、この話題のニュースとして重要なのは次の点だ。

 高官すげ替えの第1弾は、3日に発表されたマーク・マロックブラウン国連開発計画(UNDP)総裁の国連官房長併任だった。

 つまり、マーク・マロック・ブラウン(Mark Malloch Brown)が重要人物ということ。この話は彼が英国人ということで、いつもなら芳ばしい対立を描くガーディアンもテレグラフも仲良く嬉しいなのトーンの記事だったのが笑えた。ニューズウィークにもインタビュー記事が掲載された。日本版には掲載されないみたいだが。
 ちなみにガーディアン"Take the lead, Kofi "(参照)は今回の人事をこう描いている。

It is understanding of the need for change that has brought Mr Malloch Brown from the UN development programme to Mr Annan's office, which is braced for a forthcoming report on the oil-for-food row and the certainty that it will give Washington more ammunition. Supporters of the UN, like this newspaper, are often accused of being too reverential. That is to misrepresent the reality of an organisation that can only be as good as its members. The UN is far from perfect, but the only world body we have, still dominated by the victors of the second world war, and needs reform, not marginalisation.

 ガーディアンも左派というかリベラルな新聞だが、朝日と比べるとなんと謙虚な姿勢だろうかと思う。彼ら自身と国連の関係を理解し、そして国連は完全ではありえないという現実的な視点を持ち合わせている。朝日新聞もこのレベルになるといいのだが。
 話を戻して、朝日新聞の先の記事だが、これを読んで、おお、燃料投下だ!と思ったのは次のくだりだ。

 米政府や議会の「国連たたき」は、表向きはイラク・フセイン旧政権時の「石油と食糧の交換計画」での不正疑惑を持ち出すという形をとることが多いが、根源は国連がイラク政策を批判し続けることへの不満にある。

 こんなの新聞が書いていいことなのか。なんの根拠も示されていない独断でしかないよ。極東ブログも陰謀論とかご指摘を受けるけど、ここまで独断はしてないと思うが。ま、それでもブログと新聞は違うはずだが。
 私の見落としかもしれないけど、それまで朝日新聞って石油食糧プログラム不正を扱ってきただろうか。コフィーのだめ息子の不正とか扱ってきたのか。それどころから、ヴォルカー調査の結果について触れていたのだろうか。十分ではないけど、国連に問題があることはこれまでの過程で明白になっている。国連も一部だが非を認めている。というか、より多くの不正が暴かれることへの防戦にあるように見える。確かに米政府や米議会は国連を批判することが多いが、それでもこの記事の独断のような話ですむことではない。今朝もこの問題の新たな進展のニュースがニューヨーク・タイムズを含め各紙で上がっている。一例は"Virginia Man Pleads Guilty in Oil-for-Food Inquiry"(参照)である。
 このあたりも、苦笑ということかなと思うのだが、が、その先はテクニカルに困惑した。というか、ここがこのエントリのキモなのだが。朝日新聞記事はこう書く。

 こうした動きに関し、国連寄りの論陣を張ってきたニューヨーク・タイムズ紙の社説は10日付で「不当かも知れないが、ワシントンの協力が必要だから」と高官すげ替えもやむなしと断じた。民主党系重鎮の意向と軌を一にした動きとみられる。

 ここで私は、おやっ?と思ったのだ。あれ、ニューヨーク・タイムズ社説ってそうだったっけか?
 ここでちょいと確認なのだが、朝日新聞のこの記事だと、ニューヨーク・タイムズがなぜ「ワシントンの協力が必要だから」としたのか、どう伝わるのだろうか?
 記事の冒頭を繰り返す。

アナン国連事務総長が、「国連たたき」を続けるブッシュ米政権や米議会との関係改善策を探っている。米側の覚えが良くない高官の一部をすげ替え、意思の疎通を向上させるのが眼目のようだ。

 つまり、関係改善=「ワシントンの協力が必要だから」というふうに読まれるのではないか。
 当のニューヨーク・タイムズ社説"Housecleaning at the U.N."(参照または参照)の対応部分を読んでみよう。こう書いてある。

It is no secret that the re-elected Bush administration would like to force out several highly competent officials who have disagreed with it over Iraq or other sensitive issues. Some may have to go, however unfairly, since the United Nations cannot do its very necessary work - from helping tsunami victims to delivering on the promise of real help for the billions trapped in absolute poverty - without at least minimal cooperation from the United States.

 つまり、国連が津波被害者や絶対的貧困援助という仕事をするためには、最小限であれ米国の支援なしにはできないよ、というのがニューヨーク・タイムズ社説の意図だ。ただ、米政府や議会からの「国連たたき」を受けているのでしかたなしに高官すげ替えという妥協をしたというのではないのだ。国連には大きな任務があるのだから、この妥協もしかたがない、というように国連の責務の自覚に主眼が置かれている。そこが朝日新聞記事から読みとれるだろうか。ニューヨーク・タイムズの立場はガーディアンのように基本において国連が不完全なものであるという認識が前提になっている。
 朝日新聞の読解力って大丈夫?的問題なのか、意図的なねじ曲げなのだろうか。
 朝日新聞の記事はエール大学国連研究所のサタリン上級研究員の言葉を借りて締めている。がこれもなぁ。

このため、サタリン氏は「ブッシュ政権は今後も声高ではないにせよ、アナン氏批判を続け、米議会も国連に批判的な姿勢を崩さない」と、今回の関係改善の試みに悲観的な見方をしている。

 人の言葉を借りているけど、朝日新聞は、米国と国連の関係はうまくいかないよというのだ。
 朝日新聞って、改革されない不正体質の国連と米国がうまくやっていけ、とか思っているのだろうか。それ以前にアフリカ問題などでも自縄自縛の現状でもいいと思っているのだろうか。やれやれ。

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2005.01.18

NHK番組改変問題について朝日新聞報道への疑問

 NHK番組改変問題については先日極東ブログ「NHK従軍慰安婦特集番組の改変問題って問題か?」(参照)で触れた。体制左翼が安倍晋三潰しにボケかましたましたかくらい思っていたのだが、若干問題が奇妙な錯綜したかに見える方向に進みつつあるので、自分なりの整理のメモを書いておきたい。
 端的に言って、問題はなにか?
 まず、「従軍慰安婦」は当面問われていない。それはこの問題が四年間寝かされていたことでもわかる。それに関連していた直接的な政治勢力についても同様に当面の問題ではない。「女性国際戦犯法廷」についても同様だ。こうした問題は当面、カプセル化(内容に立ち入らない)としていい。
 問題はまさにこれを問題として切り出してきた朝日新聞の報道の文脈で見るべきだろう。つまり、2点になる。(1)朝日新聞はなにを問題としていたか、(2)朝日新聞の報道に問題があるのではないか、ということだ。
 資料はネット上では次のとおりだ。


 これらを経時的に見ると、当初の問題は、中川昭一現経産相、安倍晋三現自民党幹事長代理がNHK番組に政治的に介入したかという点であった。"NHK番組に中川昭・安倍氏「内容偏り」 幹部呼び指摘"(参照)を引用する。

 01年1月、旧日本軍慰安婦制度の責任者を裁く民衆法廷を扱ったNHKの特集番組で、中川昭一・現経産相、安倍晋三・現自民党幹事長代理が放送前日にNHK幹部を呼んで「偏った内容だ」などと指摘していたことが分かった。NHKはその後、番組内容を変えて放送していた。番組制作にあたった現場責任者が昨年末、NHKの内部告発窓口である「コンプライアンス(法令順守)推進委員会」に「政治介入を許した」と訴え、調査を求めている。
 今回の事態は、番組編集についての外部からの干渉を排した放送法上、問題となる可能性がある。

 よく読むとわかるが、この報道では、中川昭一と安倍晋三が介入したとは直接的には触れていない。その可能性があるとすれば問題だということになっている。
 ここで朝日新聞はわざと曖昧にしているのだが、単純な話、悪いのは、(1)中川昭一と安倍晋三なのか、(2)NHKなのか、ということになる。さらに、話を単純にするのだが、今回の問題を仕掛けた側の意図は、中川昭一と安倍晋三の政治的な失墜を狙ったものだろう。しかし、そこがうまく行かなければ、弱り目のNHKが悪いという二番目のスジにしてしまえ、ということだ。
 事実関係で、その後明かになったことは、この当初の朝日の報道が与えた印象とはことなり、番組の編集直しの状況は、この二者の関わり以前から進められていたことだ。むしろ、NHK内の編集過程でNHK側の要請で2者に意見を求めたとみてよさそうだ(中川については不明な点もあるが、安倍についてはそういうことのようだ)。追記(同日)この点は朝日新聞に掲載された"安倍晋三氏の主な発言 NHK番組改変問題"(参照)から妥当に推測できる。

《1月13日のコメント》「面会は、NHK側の『NHK予算の説明に伺いたい』との要望に応じたもので、こちらからNHKを呼んだ事実は全くない。NHK側から、自主的に番組内容に対する説明がなされたものであって、こちらから『偏った内容だ』などと指摘した事実も全くなく、番組内容を変更するように申し入れたり、注文をつけたりした事実もない。

 すると、中川昭一と安倍晋三を狙った(1)のスジでは、そのターゲットはすでに外したと見てよく、(2)のNHK側のあり方を責めるという流れに朝日新聞は持ち込みたい、ということになる。そのあたりが、今日付の"NHK番組改変問題、本社の取材・報道の詳細"(参照)に現れてきている。が、それでも、(1)のスジ、つまり、中川昭一と安倍晋三を狙ったスジは完全には外されてはいない。引用する。

 番組編集作業が進み、翌01年1月13日から試写が始まった。NHKの番組制作局教養番組部長は19日、「取材対象との距離が近すぎる」と指摘。それを受けて修正が重ねられた。24日、部長は「改善がみられない」とし、以後の制作作業はNHKが引き取り、直接進めることになった。26日には、民衆法廷に批判的な秦郁彦氏(当時は日本大学教授=日本近代史)をインタビューすることを決めた。
 当時、番組内容の一部が右翼団体などに漏れ、20日すぎからNHKに対して放送中止を求める電話やメールが殺到。27日には、政治団体のメンバーが応対に出た職員ともみ合いになり、別の団体も街宣車で乗りつけた。
 こうした事実は当時、朝日新聞も詳しく記事にしている。

 《放送直前の改変》
 編集作業が終わり、教養番組部長からOKが出たのは28日午後11時ごろ。番組は44分。
 それが再び大幅変更されたのは29日夕。番組制作局の局長室で松尾氏と国会対策の野島氏も参加した「異例の局長試写」(NHK関係者)があった。開始前、番組制作局長はスタッフに「(国会での予算審議の)この時期にNHKは政治と戦えない。天皇有罪とかは一切なしにしてよ。番組尺(長さ)が短くなったら、ミニ番組で埋めるように手配して」と述べたという。


 つまり、中川昭一と安倍晋三との面談のあった29日のその日に番組の改編があったのだから、中川昭一と安倍晋三の介入があったのだろう、というのが朝日新聞が今言いたいことらしい。このあたりは、「異例の局長試写」という表現で記事中に強調されている。
 問題は、つまり、29日夕の「異例の局長試写」と中川昭・安倍晋三面談の関係だということになる。
 事実関係としては、「教養番組部長からOKが出たのは28日午後11時」が重要になる。
 この点の事実関係については、雑誌「創」(2002年1・2月)に掲載された記事"坂上香「私が見たNHK番組「改編」と過剰な自主規制」"が参考になる。ネットではすでに流布されている(参照)。事実関係の部分だけを読むと、「異例の局長試写」は28日夜に決定していたことがわかる。だとすると、中川昭一と安倍晋三との面談は二次的なものになる。
 「女性国際戦犯法廷」を推進したVAWW-NETジャパンの公開文もこの事を間接的に支持している。"なぜNHKを提訴するのか"(参照)より。

その後明らかになったのは、12月27日に制作された番組を1月19日に見た担当部長が「法廷に距離が近すぎる」と修正を命じ、その結果24日にできた完成納品版をさらに修正した台本で28日出演者の一人にコメントの取り直しをさせ、同日わざわざ右翼学者のインタビューを急遽追加して、「法廷」たたき、「慰安婦」たたき発言をさせたのです。

 すでに28日の時点で急遽修正取材が進められている。であれば、当然、その確認もこの時点でスケジュールに乗ったと考えられる。つまり、NHK内部的に28日でOKが出たとは考えにくい。いずれにせよ、この点からも、中川昭一と安倍晋三との面談は二次的なものになる。
 朝日新聞としては今回の報道で、中川昭一と安倍晋三がNHK番組に介入していたか、ということを提起したかったのだろうが、その影響はあるにせよ、二者の介入は、二次的なものに過ぎず、であれば、「こうした事実は当時、朝日新聞も詳しく記事にしている。」(参照)という以上のことが今回明かになったわけでもない。
 朝日新聞が今後するべきことは、NHKバッシングのスジに逃げ込むのではなく、中川昭一と安倍晋三の関与がどのようなものだったかということを明確にすべきだろう。
 具体的には29日の「局長試写」で当時の松尾武・放送総局長と国会担当の野島直樹・担当局長が改変した内容が次の3点であったと朝日新聞は言う。

(1)秦氏のインタビューを大幅に増やす
(2)民衆法廷を支持する米カリフォルニア大学の米山リサ準教授の話を短くする
(3)「日本と昭和天皇に慰安婦制度の責任がある」とした法廷の判決部分のナレーションなど全面削除

 であれば、中川昭一と安倍晋三がこの三点にどのように関与していたかを問わなくてはならないはずだ。そこが明かになれば、それはそれなりにニュースの価値があるだろう。そこが問われないなら、朝日新聞というのはジャーナリズムなのか世論の疑問を積み重ねることなるだろう。

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2005.01.17

むーちー

 10年前の阪神大震災のことも思うが、その話題はあえて避けたい。泥臭い国際政治の話題も避けて、また沖縄の話。
 今日は旧暦の十二月八日。本土でも事八日としてかつては重要な日だった。事八日には二月の事始めと十二月の事納め(御事納め)があり、今日は事納めである。何を納めるかというと仕事。農事を納めるのが基本だが、針供養などをする地方もある。いずれ、これから新年(春節)に備えるのである。と、辞書をひいたら、二月八日に正月を納めるともある。
 沖縄では「むーちー」の日である。「むーちー」は餅(もち)である。沖縄に暮らしていたころ、「むーちーの言葉は餅と同じですよね」と何の気なしに年配の方に言ったところ、困ったナイチャーだという顔をされたことがある。餅は餅、むーちーはむーちーである。なんか、この「である」が沖縄っぽいが。
 ムーチーは、丸大でもかねひでも売っている餅粉(上新粉と同じかとちなみにウチナーンチュに訊いたら違うというが説明がわからない)を練り、名刺大に平たくし、月桃の葉で包んで蒸したものだ。最近ではできたものが丸大でもかねひでも売っている(くどい)。
 月桃は沖縄では「さんにん」とも呼ばれるが、ショウガ科の植物で、ボタニカルガーデンの写真(参照)がわかりやすいが、上部の写真は斑入りキフゲットウ(黄斑月桃)だが、これは沖縄には少ない。丈は二メートルを超える。あちこちに野生であるかのように見えるが、さにはあらずして、ムーチー用なのである。私が沖縄で暮らし始めたころから、月桃の葉(かーさ)をスーパーマーケットで売るようになり、オバーたちが呆れていた。
 月桃は花も美しい。英語ではシェルジンジャー(Shell Ginger)とも言うが、花の形が巻き貝のように見えるからだ。米人がけっこうこの花を好む。芳香が強い。フィリピンなどでは食用にもなる。
 ボタニカルガーデンには実の写真もあるが、これがサンニンの語源に当たる。漢字で書くと砂仁だ。元来の生薬砂仁、つまり縮砂は月桃とは異なるのだが代用されていたようだ。よく仁丹に月桃が含まれているといった話を聞くが誤解だろう。
 月桃の実は、インドネシアのバリ島に行ったとき、現地のハーブマーケットでなんとかカルダモン(呼称を忘れた)として売られていた。なお、ボタニカルガーデンの縮砂の項目(参照)に「漢方の縮砂とは別物」とあるが話は逆ではないか。
 花の芳香は、ムーチーの葉(かーさ)を蒸したときも同じで、この香りを嗅ぐとウチナーンチュはムーチーを思う(ウチナーンチュにしてみるとあまり月桃の花の香りを楽しむことはないようだが)。稀代の食通古波蔵保好の「料理沖縄物語」(絶版)には、むーちーが蒸し上がる風景をこう描いている。


わたしは、かまどのそばで、この芳香を堪能しながら、蒸し終わるのを待ったものだ。子供のころの楽しかった思い出に、きまって「さんにん」の香りがつきまとっている。

 ある年代以上の沖縄の人にとてむーちーというのはそうものなので、今日はオバーたちは一生懸命にむーちーを蒸し上げて宅配便で内地に送り出す。これで郵便局が月桃臭に満ちるほどだ。そして明日、本土にいるないちゃーは「こんなに喰えないやっさ」とか思いつつ、飯前にむーちーをひたすら食べる…。この季節は沖縄が一番寒い季節なので、「むーちーびーさ」(むーちーの寒さ)とも言う。
 「料理沖縄物語」にはむーちーについての興味深い話がいろいろある。昔は餅米を石臼で挽いて作ったらしい。作業を読んでいるとソテツの実の晒しにも似ているようではある。また、むーちーには愉快な伝説もあるのだが、ここに書くのは控えよう。
 沖縄のむーちーの由来は中国によるもだと思われている。だが、本土でも八日餅、八日団子の風習があり、私は行事は本土由来ではないかと推測している。しかし、現在のムーチー自体は、これはインドネシアやマレーで地元を旅行した人なら誰でもわかるが、この起源はクエ・ピサン(Kue Pisang)だろう。
 クエ・ピサンは、名前のとおり、クエ(菓子)をピサン(バナナ)の葉で包んだものだが、正確にはクエ・ピサンのピサンは内に入れるバナナのことかもしれない。よく見かけるのは、米粉にココナッツミルクと砂糖を加えバナナと一緒にバナナの葉で包んだ蒸し上げたものだ。月桃の葉は、おそらくダウン・パンダンの代用なのだろう。
 沖縄のチャンプルとインドネシアのチャンプールが同源であることは疑いようもないが、沖縄の民衆文化の伝承は表面的な歴史研究からまだまだわからないことがあるのではないかなと思う。

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2005.01.16

対流圏オゾン

 先月6日の話だが海洋研究開発機構が"過去約30年間に我が国上空の対流圏オゾンが広域で著しく増加"(参照)という発表を行った。この研究に関わった秋元肇プログラムディレクターの話を昨年ラジオで聞いて、なんとなく気になっていたので、この話をネタに少し書く。
 話は該当の発表を読むほうが早いかもしれないのだが、この話は少し難しい。


独立行政法人海洋研究開発機構(理事長 加藤康宏)・地球環境フロンティア研究センター大気組成変動予測プログラムの秋元肇プログラムディレクターとマニッシュ・ナジャ研究員は、長期にわたるオゾンゾンデデータの解析から、1970年から2002年の約30年間に我が国上空の対流圏オゾン(注1)が広域にわたって著しく増加していることを明らかにした。この原因として、東アジアの大陸起源の窒素酸化物放出量の上昇が、光化学反応が活発な春から夏に風下側の我が国のオゾンを著しく増加させてきたことが示唆された。

 問題の対流圏オゾンだが、テキスト中にある注釈参照ではこうだ。

対流圏(地表)のオゾン:対流圏では、自動車や工場等から排出される二酸化窒素(NO2)が、太陽光により酸素原子と酸素分子に分解され、オゾンが形成される。光化学スモッグの主な原因で、人間の健康や農作物・森林などにとっても有害な大気汚染物質。IPCC第3次報告書では二酸化炭素、メタンに次ぐ第3の最も重要な温室効果ガスであるとされている。

 それでも少し分かりづらいかもしれない。というのは、ここで話題となっている対流圏オゾンは、よく環境問題で取り上げられるオゾンホールなど成層圏のオゾンとは違う。対流圏・地表というのは地上から10kmくらいまでの上空を指す。
 対流圏オゾンは、二酸化炭素、メタンに次ぐ第三の重要な温室効果ガスとされているが、ちなみに、温室効果ガス(GHG:Greenhouse Gas)には、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、対流圏オゾン(O3)、フロン(CFC:クロロフルオロカーボン、HCFC:ハイドロクロロフルオロカーボン、HFC:ハイドロフルオロカーボン)がある。農業・酪農はエコ的なイメージあるが、実際にはメタンや亜酸化窒素をけっこう吐き出す元凶でもあるので、困ったことだ。
 対流圏オゾン、つまり、私たちが日常接するオゾンガスは、こうした温室効果以外にそれ自体が有害でもある。先の注釈にもあるように光化学スモッグの原因になる。
 こうした環境問題が認識されると、脊髄反射のように稚拙なエコ運動みたいなのが連想されるのだが、では、どうやって対流圏オゾンを減らしたらいいのか、とかね。私たちはどう取り組むべきか…というのが、すでにトラップなのである。
 状況はこうなのだ。

我が国ではほぼ横ばいないし減少しているが、中国における放出量は増加し続けている(図3)。これらのことから中国や韓国など大陸起源の窒素酸化物放出量の上昇が、光化学反応が活発な夏季に風下側の我が国のオゾンを著しく増加させてきたことが推定される。この研究結果から、我が国の光化学オキシダント問題の解決のためには、東アジア全域における対策が必要であることが示唆される。

 単純に言って日本の問題ではないのである。今回の研究は全世界レベルで行われているので地球視野で見るなら東アジア全域の問題ではあるのだが、実際にこの環境問題で苦しむ日本の側から見ると、中国や韓国など大陸起源の窒素酸化物放出量でもある。日本国内で見るなら窒素酸化物や炭化水素の排出量は横這いか減っている傾向にある。国内努力の問題ではないな。まいったな、ということだ。
 こうしたスジで考えればどういう対処があるべきかは明白なので、エコ命のみなさんには活動の方向をとちくるわないでとお願いしたい。
 話が重たいので関連したトリビア的な余談で締めたいのだが、これも先月21日のロイター・ヘルスのニュース"Smelling Citrus Oils Prevents Asthma in Rats"(参照)が面白かった。柑橘系のエッセンシャル・オイルがネズミの喘息を予防するというのだ。ずばりネタじゃん、という感じだが、読んでいくと、これが私たちが触れるオゾンに関係しているというのだ。

Study author Dr. Ehud Keinan explained that the citrus ingredient is called limonene, and it likely protects against asthma by "burning" inhaled ozone, which can increase inflammation in the lungs.

 つまり、オゾンが間接的に喘息の引き金となるのだが、そのオゾンを柑橘系のエッセンシャル・オイルの香りがオゾンを防ぐのだそうだ。
 ほんとかねという感じだ。実験は人間じゃなくてネズミでしょ?とも言えるが、他生物から見れば人間とネズミは近い動物でもあるので、そうかもしれない。ま、こちらは、あまりマジにとらないでねの愉快な話だ。

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