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2005.07.16

「徒然草」を読む

 このところ、「徒然草」を読んでいた。学生のころやその後も折に触れて読んでいるのだが、今回は少し違う。現代語訳のない岩波文庫「新訂 徒然草」のを買ってきて、原文のままつらつらと読んでいた。

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新訂 徒然草
 歳を取るにつれ、不思議と古文がそのまま読めるようになってきて、古文を読むのが楽しい。古文は現代訳を気にせず読むのがいいものだ。と、もちろん、鎌倉時代から南北朝時代の日本語なのですべてわかるわけでもないが、文庫の注であらかたわかる。
 いろいろ思うことがあった。一つは、兼好法師も日本人だなということ。それは、つまり、自分も日本人だなということでもある。ものの感受性や批評性というのが、実に、日本人という以外ないようなありかたをしている。「家にありたき木は、松・桜。松は五葉もよし。桜は一重なる、よし。」ああ、まったくそのとおりだ。
 七百年近くも前の人なのに、日本人であるという感性ことはこういうことかなと感慨深い。これから日本という国が何年続くのかわからないが、あと七百年しても日本は日本なのかもしれない。もちろん、このブログは消え去り、徒然草のほうがその時まで生きるのだろう。
 もう一つは、法師め、若いな、ということだった。これは三十代の感性だな、今時分でいうなら「はてな」でぶいぶい書いている若造さんと似ている。と、読み進めるに、おや、これは四十代の感性だと思うところもあり、文庫の解説など不要と思っていたが参照するにこの文庫の校注の元を作った西尾実(受験参考書を書いていた人ではなかったか)の説では、執筆時の法師は三十代と四十代にまたがるとのこと。確かにそういう感じもするし、おそらく、最終的に編纂されたのは法師、五十近いことであろう。
 五十近いといえば今の私の年代である。それが、とても、実感をともなってわかる。と、どこでそんな年代が気になるかといえば、あまり品のいい話ではないが、女である。女との関わりで沈んでくるある種の思いが、三十代、四十代を刻印する。
 もう一つは言葉だの、しきたりだの些細なこだわりだ。「相夫恋といふ楽は、女、男を恋ふる故の名にはあらず。」なんだか、俺もそんな些細なこだわりを日記に書いているような希ガス、じゃない、気がする。
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モオツァルト・無常という事
 そういえば、ふと思い出して、小林秀雄「無常という事」の「徒然草」のところを読み直して、暗誦するほど読んだ本なのに、奇妙に、稚拙な文章に思えた。若いな小林、文章が駄目だぞ、とか思った。年表を見るに、これが書かれたのは昭和十七年、小林四十歳である。なるほどな、四十の文章だなこれはとか思って苦笑した。言うまでもなく、私なんぞの屑が批評の神様を論じるまでもないので洒落としてはあるが。
 細かいところもちょこちょこと気になった。例えば、百三段。

大覚寺殿にて、近習の人ども、なぞなぞを作りて解かれける処へ、医師忠守参りたりけるに、侍従大納言公明卿、「我が朝の者とも見えぬ忠守かな」と、なぞなぞにせられにけるを、「唐医師」と解きて笑ひ合はれければ、腹立ちて退り出でにけり。

 高校の時読んだ記憶では、「唐医師」ではなく、唐瓶子(からへいじ)で「平忠盛」の洒落であったような、と、岩波の注ではその解釈は廃されている。このあたりの校訂というのが、青空文庫とかへの収録を難しくしているのでもあろうが、さて、「唐医師」と介してこの段の面白みは通じるだろうか。率直に言ってよくわからないなと思った。
 校訂の問題ではないが、似たようなことで読み返して奇妙に引っかかったのは百五十二段などもある。

西大寺静然上人、腰屈まり、眉白く、まことに徳たけたる有様にて、内裏へ参られたりけるを、西園寺内大臣殿、「あな尊の気色や」とて、信仰の気色ありければ、資朝卿、これを見て、「年の寄りたるに候ふ」と申されけり。
 後日に、尨犬のあさましく老いさらぼひて、毛剥げたるを曳かせて、「この気色尊く見えて候ふ」とて、内府へ参らせられたりけるとぞ。

 さっと読めば、昨今のネット・モヒカン族のごとき心性は七百年前にもしかりとぞ、といった感じではあり、そして、そういう有様を法師は冷徹に見ているとでも四十歳の小林秀雄は言うであろうか。
 私が気になったのは、歴史である。自分の生き様が歴史に組み込まれてつつあるせいか、法師の言も、一つの歴史の姿として見えてくる。つまり、徒然草とはちょっと気の利いたエッセイといったものではない。ある苛酷な歴史を生きた同時代報告でもあるだろう。
 注にもあるが、「資朝卿」とは日野資朝(参照)である。

 日野資朝(ひのすけとも、1290年(正応3年) - 1332年6月25日(元弘2年/正慶元年6月2日))は、鎌倉時代後期の公家である。父は日野俊光。権中納言。
 1321年に後宇多院に代わり親政をはじめた後醍醐天皇に重用されて後醍醐とともに宋学(朱子学)を学び、後醍醐の討幕計画では中枢にいた。1324年に計画が北条氏が朝廷監視のために設置していた京都の六波羅探題に察知された正中の変では日野俊基らとともに捕縛されて鎌倉へ送られ、佐渡島へ流罪となる。1331年に後醍醐老臣の吉田定房の密告でふたたび討幕計画が露見した元弘の変が起ると、資朝は佐渡で処刑される。

 と、Wikiの解説だが、こう続く。

資朝が後醍醐天皇に登用される話は、吉田兼好の『徒然草』に記されている。

 法師め、この段を書きながら、資朝の末期を見ているのである。
 同じように同時代への符丁が、徒然草のあちこちに隠れているようにも思う。まるで、時事を扱うブログでもあるかのように。
 というあたりをオチにしてこの話はおしまい。なに? つまんね? だったら、斎藤孝先生の「使える!『徒然草』」でも読んでくれ。

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2005.07.15

「ほっとけない 世界のまずしさ」なのか?

 このエントリの標題は「ほっとけない先進国のアホさ」とでもしたかったのだが、そこまで言えるものでもないし、私のようなアホの筆頭にはよくわからないことも多い。ただ、アフリカの貧困に対する善意と援助の陰に隠されているものについては、やっぱり、書いておこうと思う。
 なにが隠されているか。これまでの極東ブログの話の流れで言えば、「端的なところ、中国様のご威光」とかになりそうだ。ダルフール危機についても、端的に言ってしまえばこういうことだ、つまり…
 南北内戦が片付いてきて、イスラム系スーダン政府が「け、南北問題では下手を打ったから石油の取り分が減ったじゃなねーか」と考え、さらに「もうこれ以上減らされるのはご免だな、じゃ、次にぐだぐだ言いそうな西のダルフールの住民を先手で追っ払っておけ」と考え、「なんか、うまい追っ払いの口実はないか? 古くからある住民対立を増長させておくのもいいが…なぬ!西側の反乱軍がいる! 大した勢力じゃない? 勢力なんてどうでもいい、おお、それだそれだ、それを口実に、やっちまえ! それなら民族虐殺じゃなくて内戦っていうことになるし、内戦っていうことなら、この手のブラフな国内問題宣言がお得意の中国様も国連でがんと我々を支持してくれるだろうし(石油の分け前を中国様が狙っているしな)。あー日本? 日本は大ジョーブ、だって…(筆禍予防の伏せ字 by finalvent)…」という漫画みたいな話だ。
 まったくダルフール危機でなにが内戦だよと思う(力のバランスをなぜ考えないのか)。先日反乱軍とやらの映像をNHKで見たが、あの映像だけでもGJ(グッジョブ)だった。反乱軍とやらはボロの銃をもった自警団というくらいなもので、スーダン政府軍のヘリでばばばばと空爆するのに、どうやって闘うというのだ? 「ヘリが来たら木登れ!」という訓練映像を見て、私は、泣けましたよ。
 スーダン政府にさらについていえば、原油高騰で、スーダン政府にガボガボゼニが流れ込んでいるのに、なぜさらに金銭援助? っていうか、その金で政府軍の民衆虐殺の軍備ができているっていうことこそ、ほっとけない倫理の貧しさではないのか。
 というわけで、そんなダルフール危機の原因のどこが「ほっとけないアフリカの貧しさ」のか、わけわかめである。「素材:シリコン 生産国:中国」のホワイトバンドって悪い冗談ではないのか。
 と、いうような話をしたいわけではない。
 そうではない。
 気になるのは、本当にアフリカの貧しさを解決するには、どうすべきかということだ。
 ダルフール危機については、この問題をマジに考えてきた世界のブロガーの意見はだいたい一致してきた。AU(アフリカ連合)の軍事力を強化して、民族虐殺を制止する力にせよ、ということだ。実際、政府側に石油代金よろしく兵器がばこばこ投入さればこばこ利用されて活用されている現状をどうやって制止させるのかといえば、調停の軍事力以外はない。そして、その軍事力をどう世界のシビリアンがコントロールするかということでもある。
 それはそれで、不可能な道筋ではない。
 中国様に国際世界でちょっと引いてもらって、国連がまともに機能すればいい。そのために日本が貢献しようというのに、なぜそこまで中国様が邪魔するのか、というか、日本の世界平和への意志への対立者として中国様がドカーンと浮かび上がっているのが現状の国連改革の問題である、と簡単に言えば、簡単に言いすぎだが…。
 問題は、その先、本当に自立的にアフリカの貧困を解決するというとき、まともな政府によって豊かな鉱物資源なりを分散するだけでいいのか、ということのように私は思う。
 私は間違っているのかもしれないが、重要なのは、農業ではないのか。農業を貧しい国家のなかに樹立させる援助となることが重要ではないのかと思う。
 ではその最大の障害はなにか。
 それは、先進国の自国の農業助成金(agricultural subsidies)制度ではないのか。
 そんなふうに考える人はいないのか、と思っていたら、いた。テレグラフだ、また。
 九日付”More to do to aid Africa”(参照)がよかった。
 まず、こう現状のアホさをまとめている。


Yet there is a danger that increased aid and debt relief will appear patronising, a latter-day version of the white man's burden, without corresponding reforms in the developed world.
【試訳】
増加する支援や債務帳消しは、恩着がましさとなり、かつての「白人の責務」(参照)となる。そこには、先進国との対等な応答などない。

 そして、こう続く。

Having failed to commit his G8 colleagues to a fixed date for doing away with farm subsidies, he expressed the hope that the Doha Round of trade negotiations would agree to their elimination by 2010, at a meeting in Hong Kong this December.

Given the difficulties already experienced by the round, that seems wishful thinking. Yet the removal of subsidies by the European Union and the United States would have a much more beneficial impact on African economies than increased aid.

Mr Blair's persistent championing of Africa has, with the Live8 concerts and the Gleneagles summit, paid off politically. His success is deserved. But it still has to be translated into effective aid programmes and furthered by abolition of an iniquitous system of agricultural subsidies.


 テレグラフの主張をなぞるだけだが、アフリカの貧困を救済しようとするブレア首相らの熱意は意義のあるものだが、先進国の農業助成金の撤廃が伴わなければ、その効果は充分ではないと言えるように思う。
 この問題に絞れば、今後の見通しは、WTOでのBRICsとG20が関係してくるのだろう。大連で開かれていたWTO非公式閣僚会議では、農業分野関税引き下げ方式について、一定割合で一律削減する方式が提案された。
 この決定がアフリカの未来の農政にどれだけ関わるのか私にはよくわからない。なんとなくではあるが、貧しい国は新興の途上国グループからも取り残されていくというこになるのだろうか。

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2005.07.14

カール・ローブ(Karl Rove)を巡って

 考えようによっては先日の「極東ブログ: 米タイム誌取材源秘匿問題雑話」(参照)の続きの話とはいえないこともないが、米タイム誌取材源秘匿のもとの取材源がカール・ローブ政治顧問兼次席補佐官だったという流れになり、米国民主党およびリベラル派を中心とした勢力(つまり大統領選挙負け組)が、これをきっかけに一気にブッシュ叩きの祭を始めている。言うまでもなく、ローブは大統領選挙においてブッシュのブレーンであった。事実上、ブッシュのスタッフのなかのボスであると言っていい。
 単純に言えば、誰がCIAの工作員かということは知っていてもしゃべっちゃいけないのに(そんなことをすればその工作員の生命が危ぶまれる)、ローブは大統領選挙でブッシュに有利に持ち込むために、これに違反して暴露したというのだ。
 とはいえ、ディテールが私にはよくわからない。この問題は、反ブッシュの色合いをもっていることから日本のジャーナリズムも喜んで取り上げているかのように見えるが、どうも要領を得ない。つまるところ、「だから、ローブは法律に違反したのか?」という点がどうもクリアではない。どうなのか?
 APと提携したFOX News”Cooper Details Rove Conversations About Plame”(参照)では、そのあたりをこうまとめている。


The leak case is problematic for the administration on two fronts. First, is the question of whether Rove, or another administration official, broke the law in revealing Plame's identity. The 1982 Intelligence Identities Protection Act makes it a crime to knowingly reveal an undercover agent. Only one person has ever been convicted of violating the act.

Second, is the political problem of keeping on a staffer at the center of a scandal. Even before Rove helped Bush to his first major victory over Democratic superstar and former Texas Gov. Ann Richards in 1994, he was a trusted consultant to President George H.W. Bush. The Bush clan is known for prizing loyalty; turning Rove out of the administration would be a hurt felt both professionally and personally.


 まず、法的な部分の最低ラインがクリアになると事態の予想もしやすいのだが、どうもそうではない。私の見る限り、これは、政治的なけじめといった問題でもあるのだろうが、どちらかというと、ただの政争というだけのように思える。
 ちなみにこのエントリ執筆時の日本での報道はこんな感じだ。読売新聞”タイム誌記者が大陪審証言、ローブ氏側と合意の上”(参照)より。

 クーパー記者は2時間半にわたる証言の後、記者団に対して、情報源の秘匿の原則にもかかわらず証言を行ったのは、記者の弁護士とカール・ローブ大統領次席補佐官の弁護士との間で合意書が交わされたためだと確認し、記事の「情報源」がローブ氏であったことを事実上、認めた。
 一方、ローブ氏の弁護士は13日、ローブ氏が工作員の実名を明らかにしたことはないとして、違法行為はなかったとの立場を示した。

 話は前後するが、このところサロン・コムなどリベラル派の報道を見ていると、ローブもチェックメイトかという印象を持っていたのだが、十三日付けのウォールストリート・ジャーナル”Karl Rove, Whistleblower”(参照)が、小気味よいほどローブ擁護にまわっていて面白かった。

Democrats and most of the Beltway press corps are baying for Karl Rove's head over his role in exposing a case of CIA nepotism involving Joe Wilson and his wife, Valerie Plame. On the contrary, we'd say the White House political guru deserves a prize--perhaps the next iteration of the "Truth-Telling" award that The Nation magazine bestowed upon Mr. Wilson before the Senate Intelligence Committee exposed him as a fraud.

 民主党だのマスメディアがローブを巡って四の五の言っているが、ローブは正しいのだ、彼のお陰で嘘つき野郎が暴露されてよかったのだ、といった調子である。話を読み進めていくと、民主党とCIAがイラク戦に関連して大統領選でブッシュ潰しにかかった策略がローブのお陰で粉砕されたから良いのだという感じで、このところの問題とはあまり関係なさそうではある。しかし、その話にお付き合いすると、ようするにイラク戦の評価ということになる。私としては、その論法で現状の問題の可否を迫るというのも、なんだかなという印象を持つ。
 ついでながら、一昨年秋のどたばたはこういうことだった。この年の一月、前期のブッシュ大統領は一般教書演説で、イラクはアフリカからウランを購入しようとした疑惑があると主張したところ、その情報について、ジョゼフ・ウィルソン元駐ガボン米大使(民主党)はその前年CIAの仕事として調べたが信憑性が薄いと反論した。ブッシュ窮地といった展開になったが、保守系ジャーナリスト、ロバート・ノーヴァック(Robert Novak)がこれに反論。この反論は、政府高官情報として語られたものだが、ウィルソン元大使がニジェールに派遣されたのはCIA工作員である彼の妻がCIAに働きかけたためだとした。単純に言うと、ウィルソン元大使の発言はCIAがブッシュ潰しに動いていた謀略だということ。先のウォールストリート・ジャーナルではこのあたりのことで英国資料なども参照させ、ブッシュ支援側で補強もしている。なお、昨今の問題でもある、タイム誌、ニューヨーク・タイムズ紙はノーヴァックに続いて、この政府高官情報に関わった。
 こうした流れで、さらにブッシュ叩きの民主党側の反論として、「じゃ、その政府高官って誰よ?」ということになった。二年近くも前のことだ。
 それがなぜ今頃くすぶりだすのか私はよくわからない。
 イラク戦争の是非云々は基本的にすでに神学論争の領域に近いので、私は、その立場を決めてからこの問題を論じるという気にはならない。くどいようだが、今回の件では、法的な問題と倫理なりの問題の線引きがどこで落ち着くかという点が気になる。
 ローブがこければブッシュは打撃を被ることなり、米政府の勢いが低下するということで二次的に日本もその時点で巻き込まれるだろう。
 さて、個人的なローブの評価だが、率直に言えば、私はローブを援護したい心情がある。彼という人間に関心があるからだ。ローブにはバチェラーの学位すらないたたき上げの人間であり、そしてここまで勝利してきた。しかも安逸な戦いではない戦いを勝利してきた。そして、いよいよブッシュがレイムダックとなるかならないかという、歴史にその意義を問う最後の決戦が近い。このスキャンダルはその緒戦でもあろう。
 後世の歴史家もきっと、ローブという人間に関心をもつだろう、この緒戦をくぐり抜ければ。

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2005.07.13

六か国協議再開は期待薄だがその先は

 六か国協議についてはあまり気の進まない話題だが、気が進まないで済むことでもないし、ニューヨーク・タイムズのクリストフのコラムが面白いと言えば面白いのでそのあたりにひっかけて少し書いてみよう。
 その前に六か国協議だが、私の見渡せるブログだと毎度のことながら、カワセミさんの「対北朝鮮政策における一提言」「対北朝鮮問題に関する提言(補足)」がわかりやすいといえばわかりやすい。氏の見解に同意というわけではないが、次の表現は六か国協議の重要な側面をうまくついていると思う。


 基本的に私の意見は以前のエントリと同じで、6ヶ国協議は破綻しているという考えだ。外交交渉の場としては、手を尽くしたが失敗したという形を整えるためのものと考えている。

 たしかにそういう印象を受ける。そして、この先にこう続くのも同意しやすい(が同意はしない)。

そして米国の政権内で路線対立があるという事は、日本が軍事的な内容も含めた実質的な負担を負うという決意も含めて意見を表明すれば、その路線決定にかなりの影響力があるという事も示している。

 前提となるのは、米政権内に対立路線があるのかという点で、ある程度米国という国を見ている人間なら、常識的にそりゃあるでしょと言いたいところだが、私はこの点ではためらう。軍事というのはある合理性をもっており、米国は基本的に軍事の合理性においてはそれほど外すことがないと考えるからだ。もっともそんなことを言おうものなら、イラク戦の失態はどうかと突っ込まれそうだが、まさにあの失態こそその合理性の無視でもあった。
 そのあたりの亀裂が北朝鮮政策にも反映しているのか、というふうにも切り分けられるのだが、よくわからない。私はライスを買いかぶりしているのかもしれないが、なにか裏があるようにも感じる。
 カワセミさんの指摘でもう一点、このあたりの国際常識を日本のジャーナリズムが共有してくれればなと思うのは、これだ。

 クリントン政権の時の失敗でも分かるが、通常兵器に大きく劣る北朝鮮が核カードを欲しているのは切実感がある。これはむしろ米国のような軍事大国が理解し辛いことかもしれない。あのような途上国は、核さえ持てば日頃うだつのあがらない状況を大きく改善できると考えるものなのだ。

 それはイラクでもそうだし、ずばり言ってしまえば、イラク戦開戦のときこそこそと逃げ回っていた金正日は核宣言をしたことで、少し安心しているのだ。そのあたりの心理はなかなか現代日本人にはわからないし、そして、やや言い過ぎのきらいはあるが、金正日のこの心理の延長には韓国の国家的な大衆心理もある。中国も日本も恐いので核が欲しいという幻想があるのだ。日本の左翼陣営にもかつてのソ連の核への親和性を思うとそうした思いを共有しているのかも知れない。「主体思想」というのはそういうことなのだ。
 話を冒頭で触れたニューヨーク・タイムズのクリストフのコラムに戻すが、該当のコラムは”Behind Enemy Lines”(参照)だ。クリストフは、今月九日からアーサー・サルツバーガー(Arthur Sulzberger)ニューヨークタイムズ会長のお供という名目で(でないと入国禁止状態)、北朝鮮を訪問しており、副主席や外務大臣(でいいのか)とも直接対談してその内容を掲載している。ちなみにこのあたりのサワリが、夏の爽快感をもたらしている。

General Li said that if the U.S. launched a surgical strike, the result "will be all-out war." I asked whether that meant North Korea would use nuclear weapons (most likely against Japan). He answered grimly, "I said, 'We will use all means.' "

 単純に読めば、米国がイラク攻撃をしたように、直接的に北朝鮮に攻撃するなら、日本に核弾頭をお見舞いしてやるぜということで、ま、毎度の話でもある。ただ、このあたり、韓国とかには別のコノテーションとして伝わるのだろう。これにつられてクリストフはこう書いて締めるあたりが、民主党的な与太だよお前さん、という感じはする。

So don't let the welcome resumption of the six-party talks distract us from the reality: Mr. Bush's refusal to engage North Korea directly is making the peninsula steadily more dangerous. More than at any time since the Cuban missile crisis of 1962, we are on a collision course with a nuclear power.

 洒落はさておき、問題は、端的にいえば、六か国協議がナンセンスという以上に危険な時間稼ぎになっているという点だ。それは、そうなのだろう。

Mr. Bush is being suckered. Those talks are unlikely to get anywhere, and they simply give the North time to add to its nuclear capacity.

Li Chan Bok, a leading general in the North Korean Army, made it clear that even as the six-party talks staggered on, his country would add to its nuclear arsenal.


 問題は、私の見るところでは、要するに核の拡散ということだと思う。

Kenneth Lieberthal, who ran Asian affairs for a time in the Clinton White House, put it this way: "If they get those two sites up, that then creates the potential for them becoming the proliferation capital of the world."

 北朝鮮がプルトニウム胴元になるのだろう。
 率直に言うのだが、日本の左翼や中国様やその他の愉快な仲間たちは、北朝鮮にも平和的な核利用があっていいだろう言い出すのではないか。しかし、それを是認するのが危険なのだ。クリストフが言うように、「その手に乗るな(Don't bet on that.)」ではある。

Officials insist that the new reactors are intended solely to provide energy for civilian purposes - and that in any case, North Korea will never transfer nuclear materials abroad.

Don't bet on that. If Pyongyang gets hundreds of weapons by using the new reactors, there will be an unacceptable risk of plutonium's being peddled for cash.


 話を端折るが、だから、というわけで、クリストフは米国が二か国直接対話に持ち込めというふうに展開していく。どっかで聞いた話だよなとは思う(ケリー大統領候補のあれだよ)。
 私も甘ちゃんかもしれないが、こうしたクリストフのフカシの背後で、実際には北朝鮮と米国の二か国のチャネルは動いているようでもあり、なんとなくだが、本音のところでは金さんが恐いのは中国様かも助けてくれブッシュぅぅというスジが読めないこともない。ま、そのスジで推す気はさらさらないが。
 「極東ブログ: NPTの終わり?」(参照)で日本版ニューズウィーク国際版編集長ザカリアのフカシを取り上げたが、ニューヨーク・タイムズといい、メディア攻勢で北朝鮮の体制転換をぷくぷく吹いているのは、中国へのメッセージというだけのことかもしれない。確かに、朝日新聞とかが泡吹いて、六か国協議の正否は米国と北朝鮮にありと中国様をかばうわけだが、北朝鮮の命運は中国の手の元にある。もともとも北朝鮮は米国の対中国戦略のための恰好のダミーでしかない。そのあたり、中国様もわからないではないので、やっぱここは金さん潰しておくほうが儲け儲けという転換があるかどうかということだ。
 なんとなく考えると、そのほうが儲けのようにも思うが、中国様はがんと動かない。江・フランケンシュタイン・沢民が頑張っているからというスジだけでもないだろう。なんか「お前さんこと陰謀論」とかまた言われそうだが、中国様としても内政を弾圧するためにも米国という敵国が必要なのではないか、まだまだ、当分。

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2005.07.12

普天間飛行場の嘉手納基地統合が動き出す

 この話題、あまり書くのもなんだが、ちょっと報道のバイアスというか雲行きが怪しいのでこのあたりで簡単にメモしておこう。普天間飛行場の移転の問題だ。
 結論から先に言うと、やはり、嘉手納統合で決まりそうだ。というか、それっきゃないことは十年前からわかっていたことでもあり、この話はもう一年近くも経つのかと感慨があるが、「極東ブログ: 沖縄県内代替基地なしの普天間飛行場返還は好ましい」(参照)や、「極東ブログ: 米軍機、市街地墜落の意味」(参照)でも触れた。
 今回の動きは、琉球新報”嘉手納統合は暫定 普天間飛行場”(参照)が詳しい。


在日米軍再編で、普天間飛行場の嘉手納飛行場への統合を10年程度の暫定とし、その後は県内の他の米軍基地内に移設する方向で政府が検討していることが9日までに分かった。複数の政府・与党関係者が明らかにした。代替施設予定地はキャンプ・シュワブ内陸上か嘉手納弾薬庫内が有力。嘉手納飛行場への統合の期間を区切ることで、地元の理解を得たいとする狙いがある。ただ嘉手納飛行場への統合は周辺自治体の反対が強く、政府内にはなお、慎重な見方もある。基地の所在する地元の動向が行方を占うことになりそうだ。

 話の手前、辺野古近くのシュワブ案がふかされているが、それはありえない。っていうか、ワロタ的なフカシ。
 くどくどした話はさておき、簡単に言えば、あとは米国側の決断だけの問題でもある。というのは、同記事にもあるが、嘉手納統合に決まってしまえば日本は口出しできない。

日米地位協定第三条は、基地内の「設定、運営、管理」は米軍の自由裁量と定めており、法的には日本政府も自治体も関与できない仕組みになっている。

 こうした流れになっているので、泡を吹いたように、嘉手納統合案否定の動きがぞろぞろと出てきた。すごくわかりやすいのは、ライブドアニュースも提携する赤旗”普天間基地返還要請へ/宜野湾市長・学生らが訪米/沖縄”(参照)である。

米海兵隊普天間基地の早期閉鎖・全面返還を米国政府などに要請するため、同基地を抱える沖縄県宜野湾市の伊波洋一市長は十日午前、那覇空港を出発し、関西空港経由で米国に向かいました。


 伊波市長は「日米協議の中で沖縄の声が反映されるよう現状を的確に伝えたい。『普天間』はこれ以上放置できず、県内移設では解決しないことを訴えたい」と強調。新膳さんは「(米軍ヘリの墜落現場で)そのとき、その場所で感じたことをストレートに訴え、若者の代表として基地はいらないものだということを伝えていきたい」と決意を語りました。

 本土左翼の手前、本土移転が言えないところが沖縄のつらいところで、そうなると誰もが納得する「米海兵隊普天間基地の早期閉鎖・全面返還」ということになる。が、これは、端的に言えば、米国内の実質の植民地や軍事同盟国への移転ということで、グアムやオーストラリアに移せということに過ぎない。それで問題が解決かよということろが、旧左翼的な反戦主義が実はナショナリズムに同値しているということでもあり、その先の話もあるが言うも野暮な状態だ。
 だめ押し的な引用だが共同系”宜野湾市長が訪米に出発 普天間の米本国移転を要請”(参照)より。

 沖縄県宜野湾市の伊波洋一市長は10日、同市の米軍普天間飛行場について、米本国移転によって早期返還するよう米政府などに要請するため、関西空港経由で米国に向かうため那覇空港を出発した。

 話を少し変えて、普天間飛行場はさっさと廃棄しないといけないのだが、訓練などは幾分か本土移転になるのではないかというか、そうしないといけないのだろうという思いは小泉首相にもあるらしい。そのあたりはけっこうまともな政治家の感性でもある。
 くどいが、嘉手納統合がベストだとは私もまるで思わない。嘉手納付近の住民に負担が増えるからだ。普天間飛行場を現状のままだらだら放置し、効果のない正論の声をあげて自己満足に陥るよりはマシだろうというくらいでしかない。そんなことをしている間にまたヘリ墜落のような大惨事の危険性が増すだけなのだ。
 この手の話は書くだけ無用な反発を招きかねないのでうっとおしくなりつつあるし、いわゆる右派とか軍事系みたいな人もけっこう外すことがある。米海兵隊が沖縄に駐屯しているのは象徴的な意味しかない。

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2005.07.11

アフリカの貧困というパラドックス

 アフリカの貧困について。特にサハラ以南について。不用意に書くネタではないが、頭のなかに引っかかっているままにするより少し書いておこうと思う。
 と言ってネタ元はけっこうベタにNewsweek日本語版7・13”アフリカ大陸 「極貧」の虚像”である。標題からわかるように、アフリカ全体を極貧とする見方は虚像だということ。この話はアフリカ問題に関心を持つ人にとってはある意味で自明なことでもあるのだが、昨今、というか今回のG8の影響もあるのだろうが、アフリカ=極貧、というイメージが流布されているように思う。ダルフール問題なども、貧困ゆえの内戦といった雰囲気まで醸し出されているように感じる。圧倒的な政府軍の民衆虐殺のどこが内戦やねんとツッコミたくなるが、マスコミは、形なりの反乱軍なりでもあれば内戦ということにしてしまうのだろうか、実態なんかどうでもよくて。
 ボヤキはさておき、Newsweekの同記事だが、端的な数字をこう語る。


 だが実のところ、アフリカを覆う暗いニュースの背後には、明るい光が垣間見える。民主選挙によって選ばれた国家元首は、30年前はわずか3人だったが、今では30人になった。
 アフリカの主要25カ国(人口の4分の3を占める)は、着実に経済力を伸ばしている。IMF(国際通貨基金)の予測によれば、今年のアフリカ全体の経済成長率は5%だ。

 というわけで、数字の上ではただ極貧というものでもない。
 ちなみに、同記事によれば先日のサミットにおけるアフリカ債務取り消しで棒引きになるのは、3000億ドル中の140億ドル。Newsweekは「焼け石に水だろう」としているが、無駄ではないというものの、問題の全体構造を変えるものではないようだ。
 総じて見れば、資源が豊かなアフリカはきちんとした政府が存在すれば、自力で経済回復できる素地はあると言ってもよいかもしれない。特に、原油高騰はアフリカに、しょぼい倫理的な援助以上のカネをじゃぶじゃぶと流し込んでいる。
 二〇〇五年のGDP伸び率で見ると、一位アンゴラ13.8%、二位スーダン8.3%、三位ナイジェリア7.4%、コンゴ(旧ザイール)7.0%ということで、スーダンの伸び率は高い。貧困がダルフール危機の背景にあると言えるわけもないし、日本からのゲンナマの援助が必要というのも疑わしい。
 問題は、政治、というか、政治が不能状態になった場合の調停力だろう。なぜ政治が不能自体に陥るのかは、独裁政治とその背景にあるものだが、今日はあらためて触れない。
 そして、これらとはまた少し違った次元で深刻なエイズの問題がある。

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2005.07.10

ポジティブ・シンキングとやら

 たるい話。ポジティブ・シンキングとやら。七日の「はてなブックマーク」の人気エントリー(参照)に「Dr.米山の活脳塾 グチは他人にとってもネガティブ・エネルギー」(参照)というのが上がっていた。それほど人気の記事というものでもないようだったし、ブックマーカーズのコメント(参照)も、たるい感じのが多かった。いまさらポジティブ・シンキングはないだろだし、それを脳に結びつける「脳内革命」も古い話だなと思って、この本の情報をみると一九九五年出版。十年も前になるのか。そういえば、ポジティブ・シンキングといえば、斎藤澪奈子(参照)も亡くなったな。
 Dr.米山の話はというと、サワリはこんな感じかな。


 「疲れた」と言うとさらに疲れてしまうのは、このように脳が活力の出るような働きをやめてしまうからです。ですから、いくらつらくて、疲れていても、口には出さないことが大切です。

 こういうのって、仕事なんかでリーダーになっている人にはけっこう当てはまる部分がある。人との関係ではこの手のやせ我慢が必要になる。もっとも、集団を率いるならそれなりに兵卒を休ませる必要もあるわけで、そのあたりは難しい。また、疲れというのも昼寝すればいいだけのもあるしもっと深いものもある。むしろ、深いところで人生とかブログに疲れちゃうのはどうなんだろうか…。

 グチを言っていると、脳の真ん中あたりにあって、感情をチェックしている「扁桃体」という組織が働き、怒りとか不愉快な情報として、目の前の情報をとらえ、その結果を大脳皮質に送ってしまいます。そのため、「無視しろ」というような、否定的な行動を取るように命令が出てしまうのです。

 この言及を支えている論文とかあるのか知らない。というか、Dr.米山のこの説では、グチ言う、というのが、そのまま口に出して言葉で言うというストレートな意味なので、一種の言霊信仰みたいな感じは受ける。実際は、こうした脳に関わる問題は感受の時点で認識と関わっているのだろうから、口を付いて言う・言わないはそれほどの意味はないのではないか。
 ネタとしてはそのくらいの話なのだが、十年前の脳内革命とかそれ以前もあるのだが、そのポジティブ・シンキングってやつ。これって、日常実行している人が世の中にはいる。なんかすげーテンション高くてなんでもポジティブ・シンキングという感じな人間って百人に一人くらいいるのではないか。ホリエモンなんかもそのクチだろうか。あまり彼から個別にネガティブな言葉は聞かない。が、全体はすごいネガティブというかニヒリズムみたいなものを感じるが、というか、この手の人って、かなわないなとだけ思う私のような小人は、ドン引く。
 Dr.米山のポジティブ・シンキング説でそっかもなと思うのは、ダメ癖みたいなものだ。そういうのはある。そしてこうしたダメダメのパーセプション(感受性)というか、感受性のサーキットみたいののフレーム(枠組み)というのは、ちょっとした弾みでリフレーミング(枠組み再編)ということが可能なことがある。リフレームして生き方がころっと変わってハッピーというのもないわけではない。…のだが、その当たりは、同じくDrの付く、Dr苫米地の領域なので、私はパス、と。
 ポジティブ・シンキングといえば、その手のものに私もトラップしたことがある。最初は、中学生のころなんかの勘違いで亀井勝一郎とか読んでいるつもりで谷口雅春の本を読んで、そうかと元気付いてしまった。そのままの人生だったら、京セラを起業していたかヤオハンを潰していたかわからないが、なんとなく、れれれと逸れて、小林秀雄とか読み続けた。
 ポジティブ・シンキングではないのだけど似たような経験としては、グルジェフという神秘家の思想に影響を受けたことがある。その説をチープに解説するウスペンスキー「奇蹟を求めて」に、人は否定的な表出をすべきではない、という教えがあって、なんだかよくわからないのだが、試してみた。
 英語ではnegative expressionだったか、たぶん否定的な感受があってもそれを表出してはいけないという教えらしい。たぶんグルジェフの思想のなかでは内的配慮(internal considering)というのと関係があるのだろうが、それはさておき、そんなものかねと試してみた。三つわかった。
 一つは、否定的な表出というのは自我をプロテクトする行為に組み込まれているようだなということ。二つ目は、否定的な表出というのは対人関係のなかでは支配の行為パターンのようにもなっているのだなということ。もう一つはこの手のエソテリック(秘儀)的な修行は、本とかメディアで読んでホイホイ真似するもんじゃないということ。ある種の東洋的な修行というのは、わけもわからずに実践するもんじゃないというのが多い。
 結果的には、この修行は、麻雀勝負師とか自然に行なっている。「げ、まずい手じゃん」とかいうのを顔にもおくびにもださないのが勝負師。なので、この修行の結果なのか、勝負師ってちょっとすごみがある。
 この関連でほかにもいろいろ思うことはあるけど、今日のたるい話は終わり。

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