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2005.04.23

最近のオーストラリア関連のちょっとした話題

 日本国内では中国の対日デモの話題に隠れて日豪首脳会談はそれほど注目されなかった。会談の主眼は日豪FTAだが、その締結に向けた研究を二年程度かけて行うことで合意したとのことだが、悪しき先延ばし感が拭えない。日本の自衛隊を守る任務を受けてくれたオーストラリアに対して手厚く返礼すべきであると、先のエントリ「オーストラリア・ハワード首相には三倍返しが適当かと」(参照)で期待していたので私は残念に思う。
 日豪関係はただこうした日本人の道徳観だけの問題ではない。中国の経済的なプレザンスが高まるなか、豪州と日本の連携はより重要になる。幸い官邸側にはその認識があるらしく、多少ではあるがその姿勢を明かにした。産経新聞”FTA研究 豪の中国シフト警戒 日本"うまみゼロ"”(参照)がうまく伝えている。


 日豪間での自由貿易協定(FTA)を視野に入れた研究会の発足が二十日、首脳会談で合意された。農業分野の関税引き下げを警戒する農林水産省が猛反発し、通商担当者も「鉱工業品の関税はすでに実質的に撤廃されており、日本のメリットはゼロ」と断言する中での官邸主導の決断だ。その背景には、自衛隊のイラク派遣をめぐる日豪関係への配慮や、将来の資源外交をにらんで中国との関係を深めるオーストラリアを日本側に引き止めようする思惑もある。

 まったく日本の敵は日本の中にありという感じだが、巨大国家は米国などでもそうしたものなのでだからこそ国策が重要になる。
 ここで少し話の矛先を変える。ハワード首相や、イラク派兵反対の世論も強いオーストラリア国民はこの日豪首脳会談をどう受け止めたかというと、いや、それどころじゃないニュースがオーストラリアを覆っていた。
 それは、九人のオーストラリアの若者が、国際的に非合法とされる芥子由来物質の運び屋としてインドネシアのバリ島デンパサール空港で捕らえられたことだ。インドネシアでは最も重い国家的な処分が予想される。ざっと見た限り日本ではこのニュースはあまり報道されていなかったようだが、ベリタ通信というサイトと連携したライブドアニュース(参照)で比較的詳しく読むことができる。比較的読みやすい記事はBBC"Nine Australians arrested in Bali"(参照)にもある。
 日本語の記事に私の知る限り事実認識での問題点はないが、テーマをバリ島が問題拠点とするのは本質的ではないかもしれない。バリ島だと運搬者を観光客にまぎれやすいということだけだろう。他にも合成系がメルボルンで話題になったこともある(参照)。
 とはいえ、バリ島に絡んだ同種の事件が目立つことも確かで、特に昨年十月に話題となった「オーストラリア人女性(27)」はいまだに英連邦では大きな話題になっている。国内で読みやすいニュースはないようなので、気になる人はBBC"Australia's Corby faces life"(参照)を参照されるといいだろう。こちらのケースではかなりの同情が集まったのだが、今回の九名については、もちろん十代の子どもも含まれているのでその点で同情される要素も大きいのだが、デンパサール空港での唖然とするような当時の映像なども公開されており、オーストラリアの受け止め方も異なってきているようだ。
 今回のケースではオーストラリア当局も周到に動いたようだ。背後にはより大きな組織の存在が疑われている。
 こうしたオーストラリアでの社会的な話題だが、直接的には日本にはまだまだ関係ないニュースだと言えるし、日本の場合は類似の分野でもより異なった問題がある。が、留意しておいてもいいことではあるだろう。

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2005.04.22

暗いニュースリンクでもたぶんあなたに熟考してほしくない暗いニュース

 先日のエントリ「朴東宣のことを淡々とブログするよ」(参照)の続編というか、続編なんか書きたいわけでもないのだが、老いたるオリエント・ギャッツビー朴東宣問題の余波がさらに北朝鮮問題にまで広がっていて、極東ブログ的には時事のログとしても無視できない。
 事態の紹介を兼ねて日本語で読みやすい記事として産経新聞”北担当特使の職務停止 国連のイラク支援計画疑惑”(参照)を引用したい。


国連報道官は二十日、「イラク石油・食糧交換プログラム」の不正事件をめぐり、独立調査委員会の調査対象となった北朝鮮問題担当のストロング事務総長特使(カナダ)について、疑惑が解消するまで職務を停止すると発表した。
 職務停止は本人の決断で、アナン事務総長も同意したという。特使は北朝鮮への人道支援問題をはじめ、六カ国協議では北朝鮮に参加を促すなどしてきた。職務停止により、国連の北朝鮮に対する働きかけが事実上中断することになる。
 ストロング特使は、イラクの旧フセイン政権のために米国内で無許可のロビー活動を行い、その見返りに同政権から二百万ドル(約二億千四百万円)を受け取った疑いでニューヨーク連邦地検に告発されている韓国人ロビイスト、朴東宣容疑者と親交があった。

 話をいきなり核心にもっていくと、問題は、国連の北朝鮮問題で朴東宣がなんらかの意図をもって関わっていたのかということだ。残念ながら、現状では、そこがまだはっきりしない。現状では、ストロング特使は、その職務遂行のための背景知識を得るために、北朝鮮出身の朴東宣のアドバイスを受けていたことは認めているものの、その影響はなかったとしている。
 ないわきゃないだろーこのー、というのが、率直な印象だが、そのあたりから、若干陰謀論の影が出てくる。それにしても、常識的に考えて、朴東宣は国連の北朝鮮問題に介入したい意図があったとまでは言える。だとすると、それは、朴東宣個人のものか、韓国か、北朝鮮か、あるいはあれかということになる。その先はまだ見えない。
 問題は当然国連側ストロング特使にもある。ウォール・ストリート・ジャーナル”Stale Kofi”(参照)も、控えめにと言っていいと思うが、問題点を指摘している。余談だが、「ステイル・コフィ」というタイトルは洒落ていて笑える。

Even if Mr. Strong had the best of intentions, his decision as a high-ranking U.N. official to be involved in any business relationship with the star bag man of Koreagate suggests seriously odd judgment.

 国連の幹部がこんなうさん臭い人間と関わること自体おかしい。
 ウォール・ストリート・ジャーナルはここから毎度の国連批判になるのだが、日本国内での報道が少ないので当方も繰り返しておきたい。

We have seen signs that Saddam, via Oil for Food, corrupted officials and businessmen worldwide--though apart from legal investigations in the U.S., this aspect of the scandal in countries such as Security Council member states Russia, France and China, not to mention such crossroads of Saddam's commerce as Switzerland and Syria, has barely been scratched.

Now we have the charges by U.S. prosecutors that Koreagate's Tongsun Park shuttled millions in bribe money from Saddam Hussein to two high-ranking U.N. officials, referred to in the complaint as "U.N. Official #1" and "U.N. Official #2." Outside the U.N., the hunt is on to discover the identities of this duo.


 リフレイン部分はさておき、この国連幹部との関わりは重要な問題でもある。
 日本国内のメディアでは先日のヴォルカー報告で、アナン潔白!で終わりにしたい空気を醸そうとしているし、表向きはそれ以上の追及は無理めでもあったのだが、ここに来てヴォルカー報告ってどうよという動きが国連内部から出てきている。一例としてフィナンシャルタイムズ”Volcker report 'did not' exonerate Annan”(参照)をあげておきたい。標題のとおり、アナン免罪とはいかないよ、ということだ。

A UN-commissioned inquiry into Kojo Annan's business dealings did not necessarily exonerate his father Kofi Annan, the UN secretary-general, senior US State Department official warned on Thursday.

“It is probably an exaggeration to say the Volcker report exonerated the secretary-general,” said Mark Lagon, deputy assistantsecretary of the bureau of international organisation affairs, during a visit to New York.


 ヴォルカー報告の作成側からも愛想を尽かされている。

It was revealed on Wednesday that two senior investigators on the Volcker commission had resigned. Mark Pieth, one of three chairs of the commission told the Associated Press they felt the latest report played down criticalfindings.

 日本のジャーナリズム的にはボルトン擁護の米国側の牽制でしょうくらいで話を納めようとするのではないかと思う。しかし、そんなチープなオチで済むわけでもないだろう。
 余談めくが、朴東宣は韓国ではなく東京に潜んでいるという話もある(参照)。奇妙な山が動くとも思えないが、ブログなんてたいしたことないとプロのジャーナリズムが小馬鹿にする前にせめて朴東宣東京潜伏問題に食いついてもらいたいものだ。

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2005.04.21

子供の停学(不登校)はコレステロール不足が原因のひとつかも

訂正(2005.4.22)  当初のエントリでは"School Suspension"実態としては日本の場合「不登校」にしていいかと思って訳しましたが、やはり正確ではありません。訂正しました。不正確なエントリになってしまったことをお詫びします。

 海外のビザールは日本のブログのネタになりやすくなったので、このブログで取り上げるほどでもないかなとは思うが、20日付けのロイター”Low Cholesterol in Kids Linked to School Trouble(子供の低コレステロールが学校で問題行動に関連している)”(参照)が面白かったので、最近この手の話をしてなかったこともあり、さらっとネタにしてみたい。
 標題からもわかるように、子供の場合、血中コレステロール濃度が低いことで不登校停学など学校でのトラブルが発生しやすいという研究報告が出た。ガセだかわけのわかんないトリビア系の話ではなく、話の元はしっかりしている。American Journal of Epidemiology(April 1, 2005)”Association of Serum Cholesterol and History of School Suspension among School-age Children and Adolescents in the United States(米国就学児童青少年における不登校停学履歴と血中コレステロール濃度の関係) ”(参照)である。概容もそれほど医学的な用語で書かれているわけでもないので読みやすいし、ロイターもこれをけっこうベタに引用しているのだが、それでニュースのほうを引用しておく。


Children and teens with low cholesterol levels seem to be more likely to be suspended from school, according to researchers. They suggest that "low total cholesterol may be a risk factor for aggression or a risk marker for other biologic variables that predispose to aggression."
【試訳】
就学時期の子供で血中コレステロールの低い子の場合、不登校停学になりやすいとこの分野の研究者が指摘している。曰く、「血中総コレステロール値が低いと攻撃性のリスクが高まる。つまり、生物学的に見て攻撃性を誘発しやすくする指標にもなる。

 調査は米国で行われたもので、現代日本人のイメージだと、米国人の子供ってコレステロール高そう、と思われがちだ。が、それはそれとして、六歳から一六歳の4千852人を調査したところ、低コレステロール児童に学校でのトラブルが多いという傾向が見られた。人種間でも違いがあるとのことなので日本にそのまま適用できないかもしれないが、概ね日本の子どもにも当てはまるだろう。
 なぜそういうことになるのかという点については、ロイターの記事でも元となる調査でも踏み込んでいない。
 こうした問題に素人推測はよくないのだが、それでも、これまで、大人を対象にした各種の研究で、低コレステロールが自殺や事故死を増加させていることが明らかになってきているので、そうした関連と見ていいだろう。
 また、少し古いがランセットに掲載された"Low serum cholesterol and suicide"(1992 Mar 21;339(8795):727-9.)では、血中コレステロールの低下が脳のセロトニン低下を招き、その結果攻撃性抑制が難しくなっていると指摘しているが、おそらくそのあたりの影響なのではないか。成長期の子供だとそれがさらに強く影響を出すと考えてもよいように思える。
 とま、話はそれだけなのだが、だからというわけではないが、子どもヘルシーな朝食は和食だみたいなしょーもない話を昨今聞くが、和食か洋食はどうでもいいとしても、アレルギーの問題がなければ、子どの朝食には卵一個はつけておけと思う。それと若い女性も同じだと思うけど、言っても無駄か。

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2005.04.20

アドビのマクロメディア買収について雑感

 あまり社会全体に影響のあることでもないし、IT分野においてもごく限られた領域だとも言えるのだが、Web分野のクロニクルとしてアドビ(Adobe Systems)のマクロメディア(Macromedia)買収について、ごく感想みたいなものだが書いておきたい。ざらっと書くので間違いも多いだろうと思う。
 話は、18日、米国アドビ社が同じく米国マクロメディア社を34億ドル(3600億円)相当の株式交換で買収することに同意したことが発端。単純に言えば、マクロメディア社がこれでアドビに吸収される。米国での話だが、この統合は日本の部門にも影響する。あれだ、アルダスがアドビに統合されたときみたいにごちゃごちゃするのだ。
 アドビ社のビジネス分野だが、新聞報道などでは、パソコンディスプレイに印刷状態に近い文書表示を可能にするPDFファイル作成・表示といった点に関心が持たれているようだ。確かに米国ではそうかなと思うが、国内では米国に比べるとまだそれほどPDFは活用されていないようでもある。それでも、フジとライブドアの合意文書なども早々にPDF文書で配布されたりしているので、普及してないわけでもない。PDF文書についてはインターネットエクスプローラーなどブラウザーに統合されているので、一般の利用者でも閲覧・印刷は特に問題なく利用できる。問題はむしろ行政機関や教育部門でのペーパーレスとデータベースの改革だろう。
 統計を見てないので勘で言うだけなのだが、国内でのアドビの利益部門はまだPDFではないだろう。パッケージソフトとして売れているのはデザイナー御用達のイラストレーターやフォトショップなどで、これらがどれも伝統の味を生かした高額だ。ソフトのパッケージが事実上壊滅しているのに(一万円以上は売れない。年賀状ソフト群の醜悪なことよ)、アドビのこの一群と、それと誰が買ってんだかわからないが(皮肉です)マイクロソフトのオフィスだけがパッケージ売りで生き残っている(あとOSと開発環境かな)。
 出版分野では、アドビはインデザインというDTPソフトを出していて、これも普及しているといえばそうなのだが、DTPのデザイナーはクォークという10年来進歩しねーソフトをギークに使っており、MacOXへの対応が進めばそちらにさらに流れ込むのではないか。DTP分野でのアドビは少なくとも国内では端ものやアートワークを除けばイマイチだろう。と、このあたりの印象はちょっと外しているかもしれない。
 マクロメディア社と言えば、バカフラ作成でネラー御用達のフラッシュという動画作成ソフトがあるが、と書いた時点で、すでにフラッシュの本質を外している。フラッシュが、フューチャーウェーブ・ソフトウエアを買収して売り出したフューチャー・スプラッシュ・アニメーター(これがフラッシュの語源ではないか)はベクターアニメーションソフト(線画を計算処理して動かす)として定番になったが、マクロメディアとしてはその記述言語であるアクションスクリプトを高度化させ事実上ジャバに育て上げ、最新の開発環境ではジャバやドットネット・フレームワークに劣らないものにまで改良したのが、ほとんど普及しなかった。インデザインとクォークの関係でもそうだが、技術者を要する技術の普及はまさにその技術者集団というかその労働者市場のありかたに依存しているように思われる。
 同様にと言っていいと思うが、マクロメディア社はビジネスのかなりの主軸をサーバー・ビジネスに移しコールドフュージョンに賭けたのだが、VOAなどでは利用されているが、これも普及しなかった。やはり技術者の層の問題だと思う。加えて、雑ソフトと見なされているが米国ではある程度普及したコントリビュートもブログブームとあいまったCMSの動向に取り残された。
 マクロメディアとしては、フラッシュと同じく有名な、ドリームウィーバーというWebページ作成ソフトを出しており、おそらく七割程度のWebデザイナーに利用されている。今回の吸収合併で一番不安に思えたのは、このWebデザイナーの層ではないかと推測する。特に、アドビ側には対向ソフトとしてゴーライブという煮ても焼いても食えないものがあり(もちろん愛好家もいるのでこんなことを書くとうんこが飛んでくるでしょうけど洒落ですよ)、ドリームウィーバーがそれに統合されては困るし、この配下で動くで画像ソフト・ファイヤーワークスがディスコンになると困るなというWebデザイナーは多いだろう。
 ちょっと批判を浴びる覚悟でいうと、実はそのあたりも、フラッシュ・ユーザーと同じ様相になっていて、マクロメディアとしては、ドリームウィーバーはすでにHTMLエディターではなく、Webサーバーの総合管理ツールを志向していた。これがまるで市場に理解されず戦略的にこけていたのだ。
 さらに辛辣な言い方だが、HTMLエディターとしてのドリームウィーバーももはや限界にきていた。これは一概にドリームウィーバーを責められないのだが、事実上CSSによるデザインができないのである(と言うとWebデザイナーに大丈夫ですと言われるが)。このため、トップスタイルという別ソフトを組み込もうとしたり、その会社を買収しようとしてこけたり(このあたりの事実関係は違ってるかも)して失敗した。CSSデザインを先行するなら、Webデザイナーは誰にも言えないけど、IBMホームページビルダーを使っていることすらありえるということにもなる。というか、Webデザインというときのアート面のデザインとトリックの側面がうまく統合できなくなってきている。
 マクロメディアに辛辣な感想になってしまったが、この分野の技術の現状としてはすでにマクロメディアは限界に達していたと思う。このブレークスルーを買収後のアドビが克服してくれるかなのだが、たぶん、もっと暗い状況になるだろう。Webデザイナーにとっては苛酷な時代になるのだが、その分、才能のあるWebデザイナーが活躍できる時代なのかもしれない。
 同様の技術的なデッドエンドは、PDF技術とフラッシュのSWF技術にも見られる。どちらも、幸いにして、こららの文書形式は独占されていない。その意味で、サードパーティが参入できる余地があり、しょぼい安価なソフトがちらほらと出ている。が、いずれもPDFはXMLと統合され、また、SWFのベクターグラフィックスの部分はSVGに統合されるべきだろう。とはいえ、これらも要するにそれを支えるエンジニアやデザイナーの労働市場に依存するだろう。
 業界的には、いよいよ、アドビ、マイクロソフト、グーグルががちんこの時代になるのだろう。そしてちょっと毛色が違うけどアマゾンやタイムワーナーも深く関わるだろう。具体的にどうがちんこするかというのが、技術面で単純に接近しているのではないで、しばらくは奇妙な状況になるだろう。
 いずれにせよ、日本のWebサービスの状況はあまり変わりない(ニーズもない)。現場はいろいろ右往左往するだろうし、携帯電話のニッチなビジネスのあだ花から博打こいたニューリッチにもあまりビジョンはないだろうと思う。

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2005.04.19

ホリエモン騒動終結、私的総括

 ホリエモン騒動が終結した。アドビがマクロメディアを買収したという新ネタに比べると、もはや興の乗る話題でもないが、このブログでも存外に踏み込んでしまったのでけじめというか自分なりのまとめというか感傷というか、そんなものを簡単に書いておきたい。それで自分でも終わりにしたい。
 フジテレビとライブドアとの最終的な合意についてのニュースの引用などは省略する。単純に言えば、フジ側はライブドアが取得したニッポン放送株を高値ですべて買い取り、さらにライブドアの株も引き受けて株主になるということ。また、フジとライブドアは「放送とインターネットの融合」とかの題目での提携のために、推進の委員会を設置する、と。後半の提携話はたぶん誰も期待していない。
 私の印象は、この結果は存外によかったんじゃないかということ。フジも随分大盤振る舞いをしたものだなということ。
 それと、自分とブログの関係と言えばそれだけのことだが、この二ヶ月間、メディアが煙幕吹き散らし、ブログも利害に絡んだ式神を飛ばしまくったなか、このブログもなんとか暴風に耐えたかな、ということ。つまり、このブログからすると、この決着は想定内の範囲だった。前回の極東ブログ「終わったのか、ホリエモン」(参照)で私はこう書いた。


単純な話、ホリエモンもカネを張って勝負に出て、それにフジ側も乗ってしまったのだから、ニッポン放送からお帰り願うとしても帰りの駄賃くらいは出さないとホリエモン側としてもお商売にはならない。

 恐らくこの間フジとライブドアでは、帰りの駄賃でもめていただけで、SBIとかの話も壮大な煙幕だった(参照)。なんとかあの煙幕でもこのブログは吹き飛ばないでいられたかなと。
 ホリエモンとしては、当初は、そうした「帰りの駄賃」には目もくれず、ニッポン放送の取得にこだわりつづけたわけだが、そこにそれほど固執しないのも、想定の範囲内ではあっただろう。だが、前回私は先の文章の前にこう書いていた。この時点で、ニッポン放送を手放すスジを読めていたわけではなかった。

確かに、ホリエモンがフジテレビを取得するかという点ではそういうことかなとは思うが、ニッポン放送については、たとえそれが資産価値としては空っぽでも、また多少難題はあるにしても、得ることはできただろう。その意味で、負けでもないし、AAで終了と大書する、ということでもないとも言える。ただ、ホリエモンもこの件で多額の金を動かしており、それがこの結果では、メリットが実質なし、だろう。それに、他事業から推測しても、ニッポン放送の経営の才覚もないだろう。

 つまり、私は、率直に言うと、ホリエモンはもっと愚かしくクラッシュするだろうと思っていた。結果はそうではなかった。そして、そうならなかったことはよかったことではあるのだろう。
 結局どっちが勝ったのかといえば、ホリエモンの勝ちだと私は思う。一千億円の元手で一千五百億円をゲットしたのだから、勝ちという以外はない。
 ただ、それが、ホリエモンにある種の理想を抱いた人にとっては、マネーゲームということにしか映らないだろうし、そこに不満も残るだろう。詳しくは知らないが、これまでホリエモンと一緒に仕事をしたけど彼から去っていく人も多いらしいと聞く。私も、どっちかというと、彼にもう多少なりとの期待を寄せることはないだろう。
 もうちょっと言う。他人の面相や風体にとやかく言うことはしないが、それでも、今回の和解で手を取り合っている面々の風体を見たとき、私は吐き気がした。「切込隊長BLOG(ブログ)」の”午後発表”エントリについた次のコメント(参照)をたまたま見て、そうだよ、と私も呟いた。

164.クロロ(2005-04-19T04:56:52+09:00)
今まで普通に育ってきて、これほど世の中操作されてるっていう気持ちの悪さを味わったのは初めてだ。大人になるってのは良心にグロを突きつけられて耐え続けるようなものだね。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20050418-02422379-jijp-bus_all.view-001

 うまい表現だ。
 しかし、私の嫌悪感について言えば、そんな純真な心情からではない。48歳にもなった男が純真でも○貞でもいられるものでもない。顧みて、人に唾棄されるようなこともけろっとやってのけてきたと思う。そして、それに反省すらしてない。「私は吐き気がしましたね」なんて言えるもんじゃ全然ないのだ。
 とここで太宰治回路でくるくる回ってもなんだが、世の中というのはこういうものだ。そして、こういうものが円満な解決というものだ。むしろ、こういう様を見て、おれも、働こうという通称ニートがいたら…、いや、いて欲しいものだと思う。
 個人的な思い出だけど、今では音信もないけど、米国籍で金髪、バイキングのような巨体で、なのに高校まで日本語しか話せなかったT君のことを思い出す。彼は「僕、就職するんですよ。おじさんの会社の社長になれって言われているんです」と言って、この季節、天を仰いでこの詩を呟いていた。

まことのことばはうしなはれ
雲はちぎれてそらをとぶ
ああかがやきの四月の底を
はぎしり燃えてゆききする
おれはひとりの修羅なのだ

【関連極東ブログ記事】


  • 新年好! ホリエモン(参照
  • 負けたのか、ホリエモン(参照
  • ホリエモン・オペラ、間奏曲(参照
  • 釣り堀衛門? いえいえ算盤弾いて末世(参照
  • モーソーモーソーとホリエモンは言う(参照
  • 終わったのか、ホリエモン(参照

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2005.04.18

敷島の大和心を人問はば朝日に匂ふ山桜花

 昨日、よい天気なので桜を見に行った。世人は、もう関東の桜は終わっているだろうと思っているかもしれないが、それは染井吉野(ソメイヨシノ)の話。山桜は里桜に一週間ほど遅れて見頃になる。八重桜についていえば、これからが本格的な季節になる。いや、染井吉野だって、高雄山ならこれから見頃だったか。
 毎年、三月も中旬になると、メディアでも桜前線という話題が盛り上がるが、今年の桜の開花は随分遅れた。と、ここで言う桜は当然ながら染井吉野のことだ。染井吉野は、江戸末期に染井の植木屋が売り出したものらしい。染井は東京豊島区巣鴨・駒込あたりの旧地名で、染井霊園などにその名を残している。
 染井吉野は大島桜と江戸彼岸との雑種。つまり江戸の花好きが人工的に作り出した桜でもある。江戸時代というのは不思議な時代で、こうした特殊な美学を元にしたバイオテクノロジーが盛んだった。現代日本ではそれほどは顧みられないが朝顔などもいろいろと改良されている。
 染井吉野はその美の追究が先行したのか、生命体としての成熟を待たなかった。実生にはならないのである。よく見ると染井吉野にも実が成るようだが、あれから木が育つということはないらしい。染井吉野を増やすには枝を挿し木する。つまり、日本の染井吉野の木はもとは一つのマザーをもっている一つの生命体である。クローンでもある。個体の寿命も短い。追記:花木の挿し木が特殊っていうことではないんですが。
 染井吉野は、身体を分化してのみ増殖するという点で死を否定された生命体でもある。日本全国、そしてアメリカ、中国、韓国と、世界各地に散らばった染井吉野だが、生命体としてはただ一本の永遠の木なのだ。ミヒャエル・エンデ「はてしない物語」にアイウォーラおばさんという不死のイメージが出てくるが、染井吉野はただ美を与えるためだけに存在し、しかも死と美のイメージを振りまきながら、実際には次世代のために死ぬことが許されない不思議な存在だ。その存在は、ある意味、畸形でもあり、江戸が同じく作り出した蘭鋳のような奇怪さも持ち合わせている。と、いうのはさすがに考えオチ。
 染井吉野は日本の歴史からすれば新しい時代の日本人の美感にも適合していたし、その後の百年の美観を先取りしていたのかもしれない。戦中の日本の美学には染井吉野の散り際のような要素が多く含まれているようでもある。
 それでも所詮日本の歴史から見ればごく最近のことだ。日本人と桜の長い関わりは、日本人として長く生きていると遠く呼びかけられるように帰っていくところがあるように思う。
 私は、染井吉野が嫌いではない。でも、山桜がより好きだ。山桜は、若葉と花が同時に開く。葉が先に出るようにも思えることから、葉を歯にかけて出っ歯を山桜と呼ぶ洒落もあったが、今では出っ歯なんていう言葉もあまり聞かない。
 山桜の若葉は赤みがかかっていて、万華鏡を覗くように空に散らばり、その色合いは、花よりも美しい。いや、花とあいまってその美しさが極まる。
 山桜への嗜好は、あまりいい表現ではないが、情の交わりとでもいうような官能的なものも潜んでいると思う。本居宣長の山桜への想いにも似たものを感じる。山桜というのは、その木、一本一本に肉感的な強い存在感がありそだ。

  先の世花は如何なる契有りて斯許り愛づる心なるらん

 宣長と桜といえば、標題の宣長の歌が有名だが、小林秀雄がいうように、この大和心は、近代以降人口に膾炙した趣きとは事なり、ただ、山桜が好きな想いが日本人だ、というくらいなもので、ポイントはまさに山桜というもの美しさにある。
 と、小林秀雄の著作をめくっていたがなぜか手元に思い出の部分が出てこない。ネットにこうした話題などあるまいと思ったら、そうでもなく、本居宣長記念館(参照)のサイトにあった。先の歌もある。


宣長さんがね、本當に櫻にうち込んだのは、四十からだね、若いときから櫻が好きだつたとはいふが、四十からの宣長さんには、何か必死のものが見えるね、僕には。何といふか色合ひがちがふんだよ、それまでとは。僕もさうだつた、四十からだつた、やはりね、身を切るやうな痛切な體驗がないと、駄目だね、・・・・ただ、きれいだ、きれいだといふだけで、ちつとも食ひ込んで行かないからね。

 この小林秀雄の言葉はまったくその通りだと思う。私も山桜が好きになったのは四〇歳を越えてからだ。その頃、沖縄で暮らしながら、山桜だけにはまるで初恋のように心が騒いだ。物狂おしいという感じだ。
 現在桜の名所とされているのは、戦中から戦後にかけて日本人が育ててきた染井吉野が多い。だが、そうした桜の名所でも、桜守とでもいうのか、桜の思いを深く育てた庭師などがいたところでは、桜が染井吉野だけに偏らないように配慮されている。桜の季節が染井吉野だけで終わらないようにという配慮でもあった。それも日本人の心だった。
 戦中から戦後に植えた染井吉野の寿命はもうすぐ尽きる。それに比して、山桜はより強く老いていく。日本人の心は近代を越えて生きるといった比喩でもあるかのように。

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2005.04.17

国連アナン事務総長と英米との反目

 国連不正問題関連で多少気になる動向があり、例によって国内報道が薄いので、簡単に触れておきたい。話は、この枠組みの中で、国連のアナン事務総長が英米に反撃に出たということ。それに加えて、英米がアナンに批難の応戦していることだ。英米側の応戦については、国内報道を見かけない。
 国連不正が自分の息子にまで及びバックレようもなくなったアナンだが、依然辞任の噂も聞かれない。将棋で言えば、あと二手くらいで積みそうだったのだが米国側の思惑が入り組んだこともあり、アナン続行の小康が続いている。状況から見れば、アナンは米国に懐柔されたかとも思うのだが、今回の反撃からは、なかなかアナンの気骨も感じさせる。ようは、この強気ってなんだよ、ということもあるのだが、まず、事態を見ておこう。ロイター”イラク石油交換疑惑、米英にも責任の一端=国連事務総長”(参照)はこう伝えている。


 アナン国連事務総長は14日、イラクの石油・食糧交換プログラムの疑惑について、米英にも責任の一端があるとの考えを示した。
 事務総長は、国連とメディアが参加したセミナーで講演し、フセイン元大統領が獲得した資金の大半はヨルダンとトルコへの石油輸出によるもので、国連のプログラム外の取引だったと指摘。これを阻止する力があったのは、米国や英国のような国に限られていたのに、「同盟国だったためにトルコとヨルダンに対しては目をつぶった」と述べた。

 ロイターの記事の割には話が錯綜している印象も受ける。国連不正とフセイン下の石油密輸は必ずしも同一ではない。
 この話は当然ながら反米的なトーンを持っているので、中国がすぐに釣られて脊髄反射している。CRI”アナン事務総長、米英はフセイン政権下の石油密輸に責任を負うべきと示す ”(参照)がそれだが、こちらの報道ほうがやや詳しい。

 国連のアナン事務総長は、14日ニューヨークにある国連本部で、「アメリカとイギリス両国はイラクのフセイン元大統領が国連の制裁下で、石油を密輸を通して、巨額の不法資金を受け取ったことに責任を負うべきだ」と述べました。
 アナン事務総長は、「イラクのフセイン元大統領が、20世紀の90年代に不法資金を得た主なルートは、石油の密輸であり、国連の"石油と食品の交換計画"ではない」と述べ、さらに「アメリカとイギリス両国は本来ならフセイン政権の石油密輸を制止できるところを、自らの利益から、フセイン政権とトルコやヨルダンとの石油密輸貿易を放任した。

 余談めくが、CRIはダルフール問題などの報道も多いのだが、中国に都合のいい偏った報道しか流していない。同程度に中国に都合の悪そうな外信も日本語で流しているところがあると面白いのだが見あたらない。
 話をアナン反撃に戻すと、アナンの言い分は概ね正しいと私は思う。つまり、この密輸問題の全貌がよくわらかないし、大枠として見れば、米英が関わっているとしか思えない。この点については、私の見落としかもしれないが、反米左翼的な言論でもうまく取り上げられていないのではないか(ブログ興隆に比して反米議論が粗くなっている印象がある)。
 この英米系の密輸のルートは、私の勘違いがあるかもしれないが、基本的にイラクの油田と英米メジャーと深い関連にあるはずだ。イラクの油田の利権について、英米系のメジャーはキルクークを中心とした北部、つまりクルド人の地区にある程度限定されている。石油利権という点でいえば、英米系はあまり南部には関心を持っていない。その面から見れば、英米にとっては、クルドが安定こそが重要で、シーアやスンニの地域がある程度荒れていてもそれほど問題はなかった。
 この問題はクルド側からも見ることができる。ある意味出来レースで大統領となったクルド愛国同盟(PUK)出身のジャラル・タラバニだが、昨年国連に敵意のある発言もしていた。読売新聞(2003.5.23)”イラク決議採択 米の勝利、国連が認知 「占領」にお墨付き”では次のよう伝えていた。

 対イラク国連経済制裁は、一九九〇年の湾岸危機をきっかけに、フセイン体制の弱体化を目指して発動された。だが、これによって、イラク国民の生活は極端に窮乏、医薬品不足で乳児死亡率が著しく増加するなどの事態も発生した。
 その一方で、フセイン大統領、親族、政権中枢らは、トルコやシリアを経由した石油密輸や石油販売先からのリベート徴収などで巨額な富を得ていた。
 こうした経済制裁の非合理性は、イラク戦争の前からすでに明らかになっており、国連組織の官僚的体質と相まって、「イラク復興には国連を介した援助は必要ない」(クルド愛国同盟のタラバニ議長)との声まで出ていた。

 こうした背景からすると、英米責任論は結果論であって、タラバニ大統領がむっときているように国連の不合理と無力が根にあると見てもいい。そうした視点からすれば、今回のアナンの反撃は、八つ当たりという印象も受けないではない。
 アナンの反撃に英米側はすぐに対応したのが、日本国内での報道は見かけない。話としてはVOA”US, Britain Reject Annan Criticism on Oil-For-Food Scandal”(参照)が比較的読みやすいのだが、当の英米側の対応はそれで十分かというと、私は釈然としない。例えば次のような言い訳は妥当なものだろうか。

"There's a fundamental difference between oil smuggling, illegal oil smuggling that was done under the table and behind closed doors, and the very public process that the American government went through to exempt certain countries. Don't forget that this exemption came before the oil-for-food program was even established," he noted.

 もともとこのアナンの反撃はオフィシャルな発言ではなかったこともあるのかもしれない。
 合わせて、ライス国務長官が国連改革に圧力をくわえるような発言を出している。表向きはボルトンがらみでもあるのだが、タイミング的にはこのアナン発言の小競り合いの渦中にある。VOA”Rice Says UN Cannot Survive as Vital Force Without Reform”(参照)はこう伝えている。

Ms. Rice said that with the United Nations facing scandals over the Iraq oil-for-food program and the conduct of peacekeepers in Africa, it in her words "cannot survive as a vital force in international politics if it does not reform its organizations, secretariat and management practices."

 以上、話をうまく整理してない部分も多いのだが、日本としては、今、国連常任理事国入りでアナンに期待している手前もあり、米国と国連の問題にあまり触れたくないのが実情だろう。中国の暴動も基本的には、この関連の枠組み(アナンの国連ということとその後の改革)にあるはずなのだが、そうした言及もあまり見かけないように思う。

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