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2005.04.16

朴東宣のことを淡々とブログするよ

 1995年以降、イラクのフセイン統治下で表向き人道支援として実施されていた、国連による石油食糧交換プログラムだが、その実態は、国際規模で巨大な不正にまみれていた。本来なら制裁によってイラク民衆が困らないように、イラクが産出する石油で、国民生活に必要とされる食糧と医薬品を物々交換的に供給することが目的だった。もちろん、物々交換ではない。巨大なカネがからむ。石油の市場価格との差分をチョロっとすればガバっと儲かる。その危ないカネの管理を行うはずの国連が不正にまみれて、裏金を手に入れていた。
 フランスやロシアは国家レベルともいえる規模でこの不正に絡んでいたこともあり、当初は米国のイラク侵攻によってその実態が暴かれることを恐れていた。恐れていたのは、NHKも朝日新聞も同じだろう。仲良く、この国際的な疑惑事件について日本国内で報道してこなかった(毎日新聞は報道していた)。国連に頓珍漢な幻想をいだいているのか、なんらかの利権が絡んでいるのか、イデオロギー的な背景があるのか。しかし、国連自身が主導する調査によっても大筋では事態は曝かれたことで、先の二社もしぶしぶ国内報道をするようになった。疑惑解明の渦中で報道が進められていたら、日本の世論も多少変わったかもしれない。
 この石油ビジネスに絡んだ国際的な不正に米国も免れているわけもない。だが、米国はその自国内の不正を厳しく追及しているかというと、よくわからない。そうした過程で、14日、ニューヨーク連邦地検と連邦捜査局(FBI)は、韓国人・朴東宣(パク・ドンソン:Tongsun Park)の逮捕状を取った。容疑は、フセイン下のイラク政府と一緒に、この不正を推進するべく国連に働きかけたことだ。つまり、フセインと国連の不正を繋いだのが、韓国人・朴東宣だったのだ。
 今となっては不正システムとしてその正体が曝かれた石油食糧交換プログラムだが、朴東宣はこれが開始される三年前ころから、イラク系米国人と共謀してこの計画を練っていたらしい。という経緯から考えるに、この不正システムの発案者が朴東宣その人なのかもしれない。
 いずれにせよ、朴東宣は、人道の看板で関係者の誰のハラも痛まずごっそり儲けられるこの悪徳ビジネスを国連高官とイラク高官に持ちかけていた。国連安保理がこの計画推進を決定したのは1995年。翌年1996年から実施された。それに合わせて、1995年の9月、国連アナン事務総長の息子コジョがスイス系コテクナ社(本社ジュネーブ)に入社。不正なあぶく銭をゲット。幸い、コジョの不正はすでに父アナンがかばうべくもなく暴露されている。で、このスイスなのだが、朴東宣の不正商談の場所の重要な一つだった。
 朴東宣は今どこにいるのか? 朴東宣の居場所は、ソウルの漢南洞であると見られている(追記 東京にひそんでいるとの話もあり)。ニューヨーク・マンハッタン連邦地検デビッド・ケリー検事は、すでに韓国から朴東宣を米国に引き渡しさせるための手続きを進めているが、これに応えなくてはならないのは、言うまでもないが、韓国である。なぜこの時期にという疑問も韓国政府も浮かぶだろう。
 朴東宣は、ある一定以上の年代の日本人には懐かしい名前だ。さすがの伊達男も老いて、今年七〇歳になる。糖尿病に悩んでいるとも聞く。懐かしいと言ってられないのは、一部の日本人と、米国人である。
 朴東宣は、1976年、米国と韓国のあいだで最大の国際問題となった、通称コリアゲートの主人公である。ウォーターゲート事件以降、こうした疑惑をなんとかゲートと呼ぶが、コリアゲート(韓国疑惑)がその最初のケースであった。
 当時の朴東宣と言えば、現在日本の中年女性から熱烈支援されている裴勇俊なんて貧乏くささのかけらもない東洋のボン・ヴィヴァンとして、当時、マンハッタンの社交界の注目を浴びていた(メガネは共通)。ちなみに、今回の逮捕報道に際して、ニューヨーク・タイムズの記者も若造なのだろうか、朴東宣を「東洋のオナシス」と呼ばれていたとトチ狂ったことを書いているが、そう呼ばれていたのは彼の兄、朴健碩のほうである。朴健碩は、大型タンカーなど約九十隻を持つ、まさにオナシスに比すべき韓国のタンカー王だった。汎洋商船会長も勤めたが、1987年4月19日ソウル市中区乙支路の汎洋商船ビル十階の社会長室から飛び降り自殺した、ことになっている。弟の朴東宣のほうは、ワシントンポストが書いているように「東洋のギャツビー(Oriental Gatsby)」である。
 1970年代、伊達男・朴東宣は、当時の韓国中央情報部(KCIA)と在米韓国人実業家たちと連携して、米国の議会工作を行った(下院議員買収)。目的は、米国ルイジアナ産のコメ100万トンを韓国に輸出する際の巨額の手数料をくすねようとしたものだった。なので、米国では、この公園野郎(「朴」は英語表記でPark)、こんどはコメじゃなくてアブラかよ、と苦笑している。いや、苦笑ではすまない。彼はその後、民主党への資金提供のロビーストとしても活躍というか暗躍しているので、米国内的にはもっと面白い展開があるかもしれない。それでも、民主党に不都合な話は、日本国内の左派では、暗いニュースとやらにもならないだろう。
 当時のコリアゲートがらみでは、「第080回国会 ロッキード問題に関する調査特別委員会 第6号」(参照)に日本とって重要な話が含まれているので、少々長いのだが、引用したい。なお、野田哲君は当時の社会党参議院議員である。


野田哲君 私の手元に、いまここにこのいわゆるフレーザー委員会で韓国の対外的な政界工作、ロビー活動についてフレーザー委員会で調査をしたレポートがあります。これを全文を省略して要点を私が読み上げて、引き続いて幾つかの点を質問したいと思うんです。
 これは下院国際機構小委員会から一九七七年四月四日付で「米韓関係の調査について、」こういう表題で提出をされている調査結果のレポートです。
 概要を申し上げますと、「調査の対象になった容疑事実 宣誓証言及び小委員会による調査活動を通じて入手した情報による容疑事実は下記の通り 一、KCIAと文鮮明傘下の諸団体との連けい関係。二、文鮮明の側近並びに朴東宣によるアメリカの銀行(ディプロマット・ナショナル・バンク)支配の企て。三、合衆国憲法に保証された韓国系アメリカ人の基本的人権を侵害するKCIAの脅迫といやがらせ。四、韓国政府によるアメリカの報道機関及び学界に対する買収工作。五、韓国政府が在韓米軍との物資調達契約を組織的にみずましし、米国納税者に数億ドルの過重負担をかけた事実。六、文鮮明の側近でありKCIAのエージェントと目される人物が主宰する在米の某団体による募金詐欺。同団体は韓国のラジオ放送のための募金活動を韓国政府のエージェントとして推進したことは明らかであるが、集めた金をその目的に使用することには失敗した。七、韓国政府による在韓米企業からの資金強奪。八、過去六年間以上にわたり行政府の関係当局がこれらの諸活動の一部を感知していながら、その停止又は防止のための適切な措置をとらなかった事実。九、法に定められた議会への報告義務を怠り、韓国との間に秘密行政とり決めを結んでいた事実。十、PL四八〇法案による韓国向け食糧輸送をめぐる取引きに関連して明らかに違法の手数料を秘密裡に支払っていた事実。」こうなっているわけです。
 引き続いて「これらの容疑を示唆する次の証拠を入手している。一九七四年日本の首相の訪米に際してKCIA及び文鮮明主宰の団体は訪米反対デモを計画した。国務省はこの計画を探知すると同時にKCIAに対し、その中止を要求したと伝えられる。その翌朝文の団体は、デモ開始予定時刻のわずか一時間前になって突如デモをとりやめた。」
 次、「韓国政府職員が文により所有され運営されている反共訓練学校に参加している事実。」
 次、「文のアメリカ人信奉者達は韓国に対し異常な敬意を示すよう教えられ、韓国の国益擁護のため、米国議会に対しロビー活動をするよう送りこまれており文がすいせんする候補者の選挙運動に参加させられ、またソウルのKCIA本部で教育を受けてきている。」
 次、「一民間人として米国に居住している文の側近が韓国大使館の情報通信施設を常時使ってきた事実。」
 次、「文主宰の団体の会員達及び朴東宣の共同事業者達が共同してワシントンのディプロマット・ナショナル・バンクの株式の絶対過半数を所有している事実。自分達の私産を総て同団体に献納したとしようとする文の信奉君達が株式購入の資金をどこで確保したかについては不明の点が依然残されている。」、まだいろいろありますけれども、時間の関係で、そういうような具体的な事実を、証拠を入手した、こういう情報がレポートとしてこのとおり出されているわけであります。

 このあたりの話はこれ以上踏み込まないが、関心ある人は、極東ブログ「米国会議員が統一教会文鮮明の戴冠式に参加していた」(参照)も参照されるといいかもしれない。
 朴東宣は日本とも関わりが深い。あまり憶測の話もなんなのでわかりやすいところだけだが、コリアゲートで朴東宣は、米下院議員買収の証言の見返りとして起訴が取り下げられた。その追徴金を払うためなのか、その後、日本を巻き込んでパナマ運河関連で活躍したようだ。このあたりの話などを含めて日本関連の話が、来週の週刊新潮とかに間に合うか、気を揉むところだ。
 と書き続けようと思ったものの、あまり気が進まなくなったので、ここでおしまい。
 ところで、現代韓国で尊敬される人というのは、サムスン電子・李健煕(イ・ゴンヒ)会長あたりらしい。しかし、ヒールとはいえ、老いたるギャッツビー朴東宣は、皮肉ではないが、「韓国人ってスケールがでかいな」と驚嘆させる人物である。歴史に残る大人物でもある。ヒールでもいいからそれだけのタマが日本人はいないのだろうかとも嘆かわしい、皮肉ではなく。

【参照】


  • The New York Times: Accusations Against Lobbyist Echo Charges in 70's Scandal(参照
  • Washington Post: 'Koreagate' Figure Tied To Oil-for-Food Scandal(参照

【追記】
このエントリには以下に続きがある。
極東ブログ「暗いニュースリンクでもたぶんあなたに熟考してほしくない暗いニュース」(参照

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2005.04.15

外国人との婚外子と国籍の問題

 今朝の大手新聞各紙社説では、朝日、毎日、産経が国籍法をテーマにしていた。話は、13日の地裁判決を受けたもの。訴訟は、日本人男性を父とし、フィリピン国籍の女性から生まれ、日本で暮らす男児の日本国籍の確認を求めた行政訴訟である。地裁判決としては日本国籍が認められた。詳細を調べたわけではないが、このケースに限って言えば、個人的な感想としては、妥当なものでないかと思った。
 ただ、その感想にはかなり心情が混じる。たまたま私はこの男児を地裁判決前にテレビで見てしまった。すらすらと日本語をしゃべっている。その瞬間、私はこの子が日本人にしか見えない。やばいなやられた…やられたというのは映像メディアの威力を無防備に浴びてしまった。
 話がまどろこしくなるが、日本はアジア地域では珍しく家のシステムに血縁の原理がない。親子に血のつながりがなくても家族が構成され社会そして国家が構成される仕組みを持っている。現代日本人の常識からすると、嘘、と言いたくなるだろうが、客観視すれば現実だとわかる(養子ばかり)。そしてその現実と実態のゆがみを正すべく血縁幻想が天皇家に集約されている。天皇家ですら南北朝史などを見るに複雑な状況があるが、それが意識に表面化しないのは、この幻想が十分にイデオロギー的に機能しているからである。反面、庶民レベルでは、この非血縁原理がきちんと今でも機能しているので、親子の情といったものが社会的に認知されれば血縁の原理性が破棄される。話がうざくなったので切り上げるが、この男児もきちんと日本語を話し、日本の挨拶や所作を身につけていけば日本社会にそのまま受け入れるだろう。相貌もジャピーノ(差別語?)と言われればそう見えるが南方系の相貌の日本人は実際はかなり多い。日本の歴史は実際には千二百年程度でありそれ以前の雑婚的な状況は歴史からは見づらくなっているためだろう。
 今回のケースについては、父親も同居しているようだし、日本国籍を否定すると日本人の人情としても受け入れにくいものがあるだろう。また、朝日新聞記事”日本男性と比女性の子ら9人、国籍確認求め集団提訴”(参照)を見ると事態の根にはたんなるフィリピン人の無知もありそうだ(率直にいうと援護団体も気にはなるが)。


 ロサーナさんは姉妹で異なるパスポートを掲げ、「認知の時期が国籍取得にかかわるとは知らなかった。日本で生まれれば国籍がとれると思っていたのに」と話した。

 と、そのくらいに私は考えていたのだが、社会問題としてみるなら、これはそういうことではまったくなく、国籍法の規定を憲法違反と認めた判決というのが重要になる。産経新聞”「非嫡出子も日本人」 国籍法規定は違憲 東京地裁”(参照)を引用する。

 鶴岡稔彦裁判長は「日本国民を親の1人とし、家族の一員でわが国と結びつきがあるのに、法律上の婚姻関係がない非嫡出子に国籍を認めない国籍法の規定は、法の下の平等を定めた憲法14条1項に違反する」として男児の請求を認めた。

 鶴岡裁判長というところが案外ポイントかもしれない。国側の反論はこうだったようだ。

国側は裁判で「仮装認知が多発するおそれがある」と反論していたが、鶴岡裁判長は「仮装認知が横行するかどうかは疑問がある」として退けた。

 鶴岡裁判長は仮装認知の横行が疑問であるとしているが、このあたりは世相を知っている庶民としては苦笑するしかない。すでに横行していると見てよさそうだからだ。NHKクローズアップ現代でもこの話題を取り上げていた。ただ、私は、横行といっても国は実態をかなりすでに掴んでいるのではないかと思っている。
 同記事には過去判例の示唆があるが、読み方によっては、高裁で覆る可能性とも受け取れるだろう。

 国籍法をめぐっては、別の規定が違憲かどうか争われた訴訟の最高裁判決(14年11月)で、原告側の敗訴が確定したものの、2人の裁判官が「国籍法3条1項は憲法違反の疑いが極めて濃い」とする補足意見を述べている。

 今回の判決に所謂日本の右派はどういう意見を持っているのか気にはなる。私としては、こうしたケースでは日本国籍を認めるべきではないという意見を持っているわけでもない。反面、毎日新聞社説”国籍法違憲判決 子の地位を国会が考える番だ”(参照)のように、もはや司法の問題ではない、とまでするのは勇み足だろうと思う。

もはや司法で解決すべき問題ではない。立法府の国会が、時代の変化に対応する改善策を練り、法整備を進める必要がある。最高裁の補足意見も踏まえ、下級審の判断とはいえ、違憲とされた国籍法を早急に見直さねばならない。

 国籍法の違憲性については、高裁判決まで待ってもよいのではないかとは思う。ただ国籍法自体については、幅広い視点から再考も必要だろう。それより、こうした問題の背景となる実態について、日本国と国民がどう向き合っていくかという問題は見えてこない。私自身もこのエントリで書いたようによくわからない。

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2005.04.14

フリーターについて

 先日極東ブログ「ニートについて」(参照)というのを書いて、さて、フリーターは?と気になった。この機に書いてみたい。
 毎度ながら語義から。定義はすぐに見つかった。内閣府「平成15年版 国民生活白書」 ”第2章 デフレ下で厳しさを増す若年雇用 第3節 フリーターの意識と実態”(参照)にある。


なお、本章では、フリーターを、15~34歳の若年(ただし、学生と主婦を除く)のうち、パート・アルバイト(派遣等を含む)及び働く意志のある無職の人と定義している(注13)(第2-3-1図)。その際、「学生」、「主婦」を除いて分析を行うのは、学業や育児などの傍ら、自ら選んでパート・アルバイト、派遣労働等に就く場合が多い「学生のアルバイト」や「主婦のパート」の議論と区別するためである。

 厳密な定義ではなくて暫定的なものらしい。引用にある注13はこうだ。

(注13)働く意志はあっても正社員としての職を得ていない若年を広く分析の対象としている。すなわち、厚生労働省が「労働経済の分析」(平成12年版)で定義したフリーター(パート、アルバイトとして就労している人、またはパート、アルバイトを希望している無職の人)のみならず、いわばその予備軍も含めた広い範囲の人を対象としている。例えば、派遣労働者、嘱託、正社員への就業を希望する失業者なども含まれる。なお、厚生労働省の定義によればフリーターの数は2000年で193万人となる。

 さらに以下の説明もある。内閣府がどう考えているのか知る意味でこれも引用する。

 しかし、デフレ下で長期的に経済が低迷する中で、雇用環境は厳しくなり、近年では、正社員を希望していてもやむを得ずパート・アルバイトなどになる人が多い。
 こうした現実を重視して、ここでは働く意志はあるが正社員として就業していない人を広くフリーターとしてとらえ、分析を行うこととした。

 ようするに就労可能で正社員じゃなければ全部フリーターということだ。
 個人的には、バイトだろうが仕事をして生活をしているならうだうだ言われるスジはねーよと、も思うが、内閣府も、無意味にうだうだ言っているわけでもないのだろう。同じ仕事をしていても、正社員とフリーターで賃金や福利の面で格差があるならいかんよと、とれないこともない。そうであるなら、会社の制度を変えるべく(同一労働に対する正社員とフリーターの差を無くす)、行政的な対応をすればいいのではないか。
 が、内閣府の言い分は、そうでもなさげでもある。問題をフリーターの側に回しているようだ。”フリーターの職業能力”(参照)ではこうある。

 実際にフリーターの職業能力はどの程度あるのだろうか。職業能力として具体的に比較が容易なパソコンの能力についてみると、フリーターは、正社員に比べ全体的に作業可能な人の割合が低くなっている。こうした傾向は、フリーターを高卒と大卒に分けてみても同様にみられる。パート・アルバイトとして働いていても、正社員であれば身につけられる職業能力を得る機会が乏しいことを示している(第2-3-7図)(付表2-3-3)。パート・アルバイトから正社員への転職が難しいのは、職業能力が低いことも一因であると考えられる。

 好意的に見るなら、フリーターの人たちは正社員にならないと職業能力は身に付かないよ、と内閣府は言いたいらしい。露悪的に言うと、能力がないからフリーターなんだよとも取れないことはない。制度的な問題から逃げている印象はある。
 内閣府ではないが、就労に関わる厚労省も同じ路線上で、こんなことも考えているらしい。12日付け日本経済新聞”若者自立塾など活用・フリーター20万人を常用雇用へ”(参照)が興味深い。

 厚生労働省は11日、2005年度の若年向け雇用対策について、合宿型で就職能力を高める「若者自立塾」などを活用し約20万人のフリーターを常用雇用に転換する数値目標をまとめた。雇用の安定しないフリーターや職探しもしない無業の若者の増加が深刻なため、明確な目標を定めて政策の実効性を高める。

 これには正社員のほうが職業能力が高いという前提がある。常識的に日本の現状を考えると、それは、概ね、正しい、と言えるだろうし、正社員となることでそうした職業能力を高めることができるだろう。正社員になれるチャンスがあれば若い人は活かしたほうがいい。
 同時に常識的に言って、職業能力が高い=正社員、というだけでもない。というのも、現状、企業では正社員を減らし、その分の労働力をフリーターに切り替えて、その差分で企業益にしているからだ。切り替え可能な能力があるということだ。
 こうした正社員をフリーターに置き換えていく傾向はこのままでは今後も変わらないだろう。結局、行政的に無理矢理数合わせでフリーターを正社員にできるかということになりそうだが、政府や産業界はできると考えているのだろうか。そこがよくわからない。
 私は、今後の日本は、会社と職能向上の場を切り離し、さらに労働者を保護するという点から会社下の組織じゃない職能的な組合育成のような方向に向けるべきではないかと思う。職能別労働組合とか言わなくてもいいから、職能ごとにパートタイム労働者を支援するNPOができて、それによって、そういう労働者でも普通に(多分に貧乏だろうが)暮らせるよ、という社会を目指すべきなんじゃないか。しかし、それも空論かもしれない。
 この問題について極東ブログ「OECD対日経済審査報告と毎日新聞社説でちと考えた」(参照)で触れたOECD対日経済審査報告の"Economic Survey of Japan 2005: Improving the functioning of the labour market"(参照)をこの機に読み返すと、明確な単純な提言が盛り込まれていた。

Reducing employment protection for regular workers could reverse this trend by preventing the adjustment of the workforce from falling disproportionately on young people.

 OECDの報告書ではフリーターという言葉をいじるのではなく、"non-regular employment"(正社員ではない雇用)としているのだが、あえてフリーターという言葉で意訳すると、「若年層のフリーター増加という日本労働状況の不均衡・不公正を改善するには、手厚すぎる正社員の社会保障を低減すればよいだろう」となるだろう。
 なんだ、そういうことか、と思うのだが、日本の現状では、ある一定の社会的な層に組み込まれた人間だとそんなことはおくびにも出せない空気がある。

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2005.04.13

高度道路交通システム(ITS)の祭りは続くよどこまでも

 少し旧聞になるが今年の日本のエープリルフール大賞というのがあれば、自動料金収受システム(ETC: Electronic Toll Collection System)だろう。2日の時点で、開閉バーに車両が接触したトラブルは2300件を越えた。毎日新聞記事”ETC障害:接触トラブルは2300件に”(参照)はしらっと道路公団の言い分だけを垂れ流している。


 全国の高速道路の料金所でETC(自動料金収受システム)の開閉バーに車両が相次いで接触したトラブルは、2日午前0時現在で2300件に上ることが、日本道路公団のまとめで分かった。バーの損傷などの事故も3件になった。
 道路公団によると、3月末で廃止された「別納割引制度」の利用者が、制度廃止を知らないまま1日午前0時以降も別納用のETCカードで料金所を通過しようとしたため、接触が多発した。

 道路公団にしてみると今回のトラブルで悪いのは制度廃止を熟知しなかった利用者ということだが、既存ジャーナリズムっていうのかプロのジャーナリズムっていうのか知らないがそれ以上のツッコミはないように見える。ぇえぇえ?公団側の準備不足でしょとかの話もなしなし。そして済んだことだし、その後は大きなトラブルはない。めでたしめでたし。ということで、このトラブルについては過ぎてしまえば些事となった。ブログでざっとこのトラブルを見回したが、ちょっとしたエントリのネタにはなるが、なるほど大きなトラブルはないようだ。
 ついでに、ETCはどう受け止められているのだろうかというと、ある程度予想どおりなのだが、割引きになっていいじゃん、というのと、引き落としだからいちいちその場の支払い気にしなくていいじゃん、という感じか。
 割引き制度についてはカードよりも装置価格とのバランスが気になったのだが、ブログ「清史郎&清兎の部屋」”馬運車にETC車載機取りつけ・・・”(参照)が示唆的だった。

少し前まではETC車載機は贅沢品で結構高額でした。でも最近はどんどん安くなって、パナソニックなどの一流品のセパレート型でも25,000円以下で取りつけ可能です。
ダッシュボードの上に取り付ける一体型なら、カー用品店で10,000円以下で売っており、取りつけ料・セットUP料を含めても15,000円以下になりました。

ETCを取り付けたら、料金割引が魅力です。
まずは基礎割引とでも言うのでしょうか、50,000円前払いだと58,000円分使用できます。これで約86%に割引。


 というわけで、高速を使う人には装置が普及する印象はある。
 カードの引き落としという点では、ブログ「たゆたふままに」”ETCって便利なの?”(参照)が面白かった。

ETという映画はなかなか感動ものでした。では、ETCはどうなんでしょう。夫はこれを登載したくてしょうがなかったのです~。そんなに高速を使うわけでもないのになぜなのでしょう???それは知らぬ間に家計費の口座から高速代が落ちていくからなんですね~^^;)

 というわけで、こうした点で見るとETCにはメリットがあるよね、ということなのだが、ところで、ETCってなんのために存在してたんだっけ?という本筋の話はなんとなく、それは、ま、いちいち声高に言うのもなんだし…というごにょごにょになりつつある。でも、本当は高速道路の混雑解消だった。「たゆたふままに」では混雑のエピソードがある。

ところが、お財布を出さなくてらくちんだわ~もしかするとETCも感動ものかも?と思ったのは行きだけでした。。。。帰りは料金所で大渋滞!!!ETCだろうとなんだろうと一緒なのですよ~。びゅ~んと通り過ぎる前に、まずETC専用の車線に入るのに渋滞です。そして、ようやく出たかと思ったら、はて~???ん?十車線以上あった道路が、料金所を過ぎたとたんに二車線に???はー???これじゃぁ~だめじゃんー(>_<)

 まだETCカード普及の初期段階なので、これで混雑解消はだめじゃーんとも言い切れない面もあるのだが、それでも、この本筋はワッチしていく必要はあるだろう。古い話になるが、「サイゾー」1月(2001年12月18日発売)”ETC(自動料金収受システム)導入で、高速道路はますます渋滞する”(参照)ではETCがこの本筋で役立たないかもと指摘されていた。
 サイゾーの同記事では、ETCよりもITS(Intelligent Transport Systems)「高度道路交通システム」の問題が重視されていた。今では停滞日本では忘れかけているが、90年代後半の日本は国を挙げての「マルチメディアだわっしょい」というばか騒ぎをやっていた。正体は単純に言うけど道路利権の延長の情報利権だった。

建設省にとっては安全性の確保よりも、交通網におけるIT利権(=予算)を獲得した建設省族議員の政府、そして世界に対してのメンツのほうが大切だったのだ。

 この他、立ち消えになったかのような運輸省「スマートプレート」も今読み返すと面白い。
 いずれにせよ、本来なら、高速道路なんて資金回収したら無料にするか低価格にするかのはずのものを、永遠に料金取りまっせとするための公団の収受システムだったのが、その上にどかーんと国策レベルの省庁権益からみでITが乗っかってITSができた。現在ITSは9つの開発分野にまで膨れて(参照)、がんがんITコストを必要としている。
 需要があっていいじゃんというのは道路行政的な発想だが、現実的にはどこでコストを回収すんの(償却費年間400億円らしい)、というか、経営面で見ると、結局ETCのメリットは割引きということで、どっかの国の大手自動車メーカーみたいなことを日本国レベルでやっているわけだ。
 大丈夫?
 詳細がよくわからないので、アバウトな話になるのだが、普天間基地移設問題と同じで、最初からヤメトケ問題が、今となってはこれも引き返せないということのだろうか。
 余談だが、ブログ、情報紙「ストレイ・ドッグ」(山岡俊介取材メモ)の” ETC機器関連で、財団と大手2社の癒着疑惑”(参照)に微笑ましい話があった。ETCと限定されず、このあたりのIT受注の関係が気になるが、「ITS白書〈1998‐1999〉高度道路交通システムの行方と関連400社の戦略」とかも高額だし、このシステム受注で恩恵を受けている層もぶぶぶぶ厚いのだろうなと思うので、弱小ブログはこのあたりで沈黙する。

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2005.04.12

ニートについて

 ニートについてなんだか、どうも踊りたくなるほどスカな話になりそうな感じもするのだが、もやっとしたあたりをもやっと書いてみたい。
 語義は、NEET: Not in Employment, Education or Training から。直訳すると「就職してないし、学校に行ってないし、職業訓練も受けてない」ということ。洒落元は、neat。米語と英語で語感が違うが、「こざっぱり」「身ぎれいに」ということで、無職でだらしなくしてんじゃないよ、という皮肉でもある。英国で使われてきた概念らしく、英国政府系 info4local"Young People not in Education, Employment or Training: Evidence from the Education Maintenance Allowance Pilots databas"(参照)にもこの概念を使った調査がある。ざっと見た印象だと就労より教育に主眼が置かれているようでもある。

cover
小杉礼子著
フリーター
という生き方
 なんで英国かというと、長く「揺り籠から墓場まで」とされた英国の福祉政策が、1970年代後半から鉄の女サッチャー政権下の経済改革政策により若年層の失業率が急増し崩壊。その対応策の研究が進んで就労研究が進み、「ニート」という概念も出来たものらしい。サッチャー改革は現状の日本にも似ているので似た状況はあるのかもしれない。が、違う面も多かろうとも思う。
 日本では労働政策研究・研修機構の小杉礼子副統括研究員あたりが言い出したらしい(参照)。なんかこの言葉は突然世間に躍り出たという感じでもある。
 定義は…というのがよくわからない。内閣府青少年育成ホームページに”「青少年の就労に関する研究調査(中間報告)」<就業構造基本調査特別集計>”(参照・PDF)というのがあるのだが、そこにはこう書いてある。

いわゆる「ニート(通学も仕事もしておらず職業訓練も受けていない人々)」とは、非求職型及び非希望型の無業者として、日本では通常理解されていると思われる。

 ヲイ、「思われる」ってどうよ、とツッコミたくなるのだが、ようするに内閣府的にはニートという言葉はなさげ。
 いったいどこでわれわれはニートを実体的にあるように思いこんでいるのかよくわからない。生活実感としては、学校を出ても就職しねー若者を「あれがニートだべ、んだ」ということなのだろうとは思うのだが、報道でもかなり実体的である。例えば、先月二三日の産経新聞”「ニート」再集計したら85万人”(参照)はこんな感じ。

 内閣府は二十二日、十五歳から三十四歳のうち、就職の意思がない人と意思があっても求職活動をしていない人を合わせた「ニート」と呼ばれる若者が約八十五万人に上るとの調査結果を発表した。

 ニートに括弧がついているのは実は定義なんかないんだよ照れるなオレ的な表現なんだろうと思うが、この括弧付けが実際には括弧が付かないと恰好付かないほどでもないというのが現状だろう。
 この報道では、総務省が平成十四年に実施した就業構造基本調査のデータを再集計して言い出したとある。オリジナルはこれでしょ、”平成14年就業構造基本調査について”(参照)。これには用語集(参照)がついているのだが、「ニート」なんていう用語はない。古いデータをマーケティング的に新しく見直してみました的な発表なんだろうが、ようするに新しい事実が出てきたわけではない。
 奇怪な印象も受けるのは、ニートが話題になったときは、厚労省周りからだった。

厚生労働省が昨年九月に発表した労働経済白書は十五年のニートを約五十二万人と試算したが、家事手伝いを含んでいない。内閣府は家事手伝いに相当数の若年無業者が含まれるとみて、今回の調査では加えた。

 保育園と幼稚園で厚労省と文化省が対立しているの同じように、省庁間のゲームなのだろうか。いずれにせよ、内閣府は、通称カジテツ、家事手伝いをニートにしちゃったわけだ。さっさと嫁に行け、という意図か、など書くと陰謀論だとか批判されちゃう?
 カジテツをニートにするのはどうかなと思うが、先の「青少年の就労に関する研究調査(中間報告)」に戻ると、ここに「表1 無業者とその類型についての定義」というのがあって、ニートに相当は非求職型及び非希望型の無業者の解説がある。

非求職型無業者
 無業者(通学、有配偶者を除く)のうち、就業希望を表明しながら、求職活動はしていない個人
非希望型無業者
 無業者(通学、有配偶者を除く)のうち、就業希望を表明していない個人

 そして、無業者の定義はこう。

無業者(通学、有配偶者を除く)
 高校や大学などに通学しておらず、独身であり、ふだん収入になる仕事をしていない、15歳以上35歳未満の個人(予備校や専門学校などに通学している場合も除く)

 あらためて定義を見ると、ツッコミたくはなる。
 ポイントは「独身」かぁと思う。ニートやめたきゃ、職探しより、所帯を持て、と。所帯をもてば、貧乏人なら親がかりってわけにはいかねーぞ、と。ちなみに金持ちの子供は昔からニートです。
 もう一つポイントは、ここに三五歳って年齢制限があるわけだね。つまり、三二歳くらいの通称ニートはあと三年で目出度くニートじゃなくなると。で、どうするってツッコミはここではしない。
 通称ニートはわれわれの日常生活で目にするので、あ、あれ、ということだが統計上の実態はどうかと…とブログを見てたらブログ「そーろんの憂鬱 f(^^;」”フリーター、ニートの実際値を求めよう(^O^)”(参照)が絵文字とともに示唆深かった。っていうか、パクラしてもらいます。

学生を除いた就業者の状況を知りたいので、学生を除いた総人口は、26,417,800人
男性:13,205,900人
女性:13,211,900人

これで就業率を計算して見ると、79.69%
男性:90.62%
女性:68.78%

あら……やっぱり、だいたい国が発表している数字って正しいのかなぁ…
(発表している失業率よりかはかなり多いけどね(--;)
これから見るとこの年代の男性の失業者って、10.32%なんだねぇ。

 この先にも考察があって、これが結論でもないのだが、いわゆるニートは男性で見ると、10%弱くらいなんじゃないかと思う。
 これが全然違うということもあるかもだが、仮にニート率10%とすると、豊かな社会ってそんなものじゃないかと思う。インドネシアで闘鶏に興じてるオッサンとか見ても、無業者はそのくらいいても不思議ではない。
 あと、日本には自衛隊はあるけど、国軍といったものでもないし、州兵・予備兵といったものもない。そういうものがあれば、10%くらいの無業者はすっと吸収されるんじゃないかという気もするが、別に軍政になれっていう意味じゃないですので、変な思い込みの批判はご免。

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2005.04.11

C is for cookie, that's good enough for me ♪~

 "C is for cookie, that's good enough for me"♪~、歌ってしまいそうだ(試聴7を参照)。そして、行進してしまいそうだ。Cのつくものといったらクッキーさ、オイラはこれさえあれば大満足。

cover
Sesame Street Platinum:
All-Time Favorites
 そ、セサミストリートのクッキーモンスター(参照参照)の歌。すでに一部で話題のとおり。この歌が子供の健康のために廃止となった、というか、歌詞が変わる。本歌はこれ(参照)。

Now what starts with the letter C?
Cookie starts with C
Let's think of other things
That starts with C
Oh, who cares about the other things?

C is for cookie, that's good enough for me
C is for cookie, that's good enough for me
 :


 新しい歌詞はよくわからないが、歌のタイトルは"A Cookie Is a Sometimes Food"らしい。「クッキーはときどき食べるもんだよ」……
 ああああ! そんなことがあっていいのかぁ!
 APニュース"Cookie Monster Eating Less Cookies"(参照)の記者も悲鳴を上げている。

"Sacrilege!" I cried. "That's akin to Oscar the Grouch being nice and clean." (Co-workers gave me strange looks. But I didn't care.)

 "Sacrilege!"はなんと訳そうか。中野好夫なら「なんて罰当たり」だろうか。まったく、そんなことがあっていいのか。クッキーモンスターからクッキーを取り上げるなんて。と、余談だが、Oscar the Grouchのほうは私がずっとMacintoshで使っていた必須アイテムだった(使っちゃだめだってさ)。
 APの記事では、この問題を"But what about their position on Cookiegate? "と追及していく。なかなかのお話。
 この大事件の余波も大きい。Seattlepi.com"Cookie Monster caves"(参照)ではいくつか関連報道をまとめているのだが、出だしがふるっている。

OK, it's not exactly the most important story of the week but people sure have strong opinions about the news that Cookie Monster's will cut back on his namesake treats.

Even the most vocal critics seem to agree that skyrocketing childhood obesity is a major problem -- they just don't think that changing a ravenous muppet's eating habits is part of the solution.


cookie_monster 健康志向よりも大切なものがあるような気もするのだが、という気持ちは米人・加人も同じ。
 この大事件、日本国内のブログでは、と、なんだかブログ時評みたいだが、ブログ「丸い卵も切りよで四角」”クッキーモンスター、クッキーの量を減らす。”が、わろた。

小池さんがラーメンを、ドラえもんがドラ焼きを減らすのとは、
訳が違う。
クッキーを食べるのが、クッキーモンスターの
存在する理由みたいなものだろうに。

 まったくね。
 しかし、時代がものすごく健康志向ということなのだ。したがないのだろう。
 ちょっと前のワシントンポストだったが、クラフトがスナックの広告を取りやめしたという記事"Kraft to Curb Snack-Food Advertising"(参照)があった。

Moving to address growing concerns about childhood obesity and unhealthful eating habits, Kraft Foods Inc. will announce today that it is going to curb its advertising of many popular snack food items to children under 12.

 米国では子供の肥満が深刻な社会問題というのだが、それとこれとは関係ないような気もする。が、時代というのはある方向に進んだらしばらくは元には戻らない。というか、二度と戻らないことも多い。
cover
熊を放つ
 ジョン・アーヴィングの「熊を放つ」じゃないけど、袋一杯チップス・アホイをもって、クッキー・モンスターに、お前、これ忘れたんかい、と差し入れしたい。あれだ、チップス・アホイだ。日本で売っている、あのちっこいんじゃなくて、米国のあの、でかいやつだ。アホイ(Ahoy)!

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2005.04.10

日本の東アジア外交は米中間定期高官協議に従属するだろう

 米中間で定期高官協議が開催されることになった。日本政府としては藁をも掴むといった感じなのかもしれない。というのも、中国での反日暴動が報道されているが、日本人としては懸念を抱くといった程度で、実際的な意味で外交的な手段がとれないからだ。
 今回の暴動については中国当局側も困惑しているだろうと言えないこともないが、今朝の日本経済新聞社説”中国の反日行動に自制を求める”(参照)でも指摘しているが、結果的に見れば中国政府の関与はある。


 デモの主催者は「中国民間保釣連合会」などの愛国(反日)団体で、数日前からインターネットの掲示板などを通じ参加を呼びかけていた。中国当局は昨年夏には反日団体のウェブサイトを閉鎖するなど、この半年余り若者を中心とした反日活動を厳しく規制していた。
 ところが、先月後半にアナン国連事務総長が日本を国連安保理の新常任理事国の有力候補とみなす発言をしたあたりから、ネットの激しい反日言論が再び急増し始めた。当局が規制を緩めた形跡がある。

 こうした中国当局のやり口は許文龍の声明(参照)も連想させて実に不愉快な印象を受ける。
 中国当局としては、日本が国連に重要な位置を占めるようになっては困るという思惑が強いのだろうが、日本がこの60年間に積み上げてきた善意の歴史自体は否定できないとなれば、すでに歴史の証言者すらも少なくなった以前の歴史を蒸し返してみせるくらいなのだろう。
 新しく設置される米中間の定期高官協議だが、毎日新聞”米中関係:高官協議の定期開催で合意 「対日」に影響も”(参照)が手短にまとめている。

米国務省のバウチャー報道官は8日、米国と中国が両国関係のほか国際問題を協議する高官協議の定期開催で合意したと発表した。開催時期など詳細は決まっていないが、米側はゼーリック国務副長官が代表を務める予定で、次官級の定期協議になる見通し。政治、経済分野を網羅する米中間では最も高いレベルの対話のパイプが構築されることになり、将来的に東アジアにおける日米中の関係に微妙な影響を及ぼす可能性もある。

 同記事には発表関連の背景ネタがワシントンポストであることを伝えている。類似の記事は朝日新聞”米中が定期高官協議の創設合意 政治・経済の懸案に対応”(参照)にもある。毎日、朝日の記事については現段階ではしかたないのかもしれないが、食い込み足りないきらいはある。余談めくが日本版CNN”国務省が開設を確認、米中間で初の高官レベル定期協議”(参照)とそれに対応するわけでもないが、CNN Money"U.S. opens regular talks with China"(参照)での報道の違いから見ても日本国内でのこの情報の流通の仕方が多少気になる。
 ワシントンポスト”U.S., China Agree To Regular Talks”(参照)は当然だが国内報道よりは詳しい。日本関連では次の言及がある。

Experts say that with the United States distracted in Iraq, China has filled a vacuum in Asian leadership. "China has moved in and assumed a dramatic regional role," said Kenneth G. Lieberthal, a Clinton administration official now at the University of Michigan. "Everyone in the region believes the movement has shifted toward China in a way no one anticipated 3 1/2 years ago."

Reflecting the administration's concern, Rice initiated an effort during her trip to Asia to make India into a major world power and elevate Japan as a key ally on a range of international issues.


 前回のライス訪中との流れにあり、また、東アジアの力の均衡として日本を持ち上げている。このあたりの読みはごく常識的なものだが、これに日本国内では牛肉問題なので内政的に足をひっぱり続けている。陰謀論的な言い方になるが、日本の米国牛肉輸入問題は中国当局にとって都合のいい騒ぎでもあるのだろう。なお、台湾は米国からの牛肉輸入を再開した。
 米中間定期高官協議の展開がどのようになるのかわからないが、日本の外交・軍事の行方はこれに従属する形にはなるのだろう。なので、ワッチしていく必要はある。当然ながら北朝鮮問題もこの流れになる。
 余談だが、先のワシントンポスト記事には北京でDVDが1ドルで売られているとの苦情がある。

China's inability or unwillingness to rein in intellectual-property theft has been a source of frustration for U.S. officials. DVDs of recent Hollywood movies, for instance, are sold openly for less than $1 just blocks from the U.S. Embassy in Beijing.

 中国で販売されているDVDが1ドルっていうと、ちょっと思い出すこともあったのだが(参照)、ま、それはほんとに余談。

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