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2005.12.07

耐震強度偽装問題の政府支援についてはとく言うこともなし

 あまりふれたくない話題なので簡単に。昨晩いつになく十時のニュースを見ていたら、耐震強度偽装問題の政府支援の話を図解で説明していた。わかりやすい。土地は住民のもの、避難・解体費用は政府・自治体が出す、新規マンションの費用は住民負担、というか民事の問題へ。ま、そういうことか。
 少し奇妙な気分にはなった。酒は飲まないことにしたのだが、最近は少しだけ飲む。小瓶のゴーデンホップ。アテはカマンベールチーズ。考えてもしかたないことは忘れよう…。寝る。
 そして今朝、新聞各紙の社説を読んだら昨晩のことを思い出した。日経を除いて執筆子、私同様不機嫌なご様子。私的に共感したのは毎日新聞社説”耐震偽造支援 リップサービスは許されない”(参照)だ。毎日新聞のうしろからぷーっと息がかかってないのかよくわからないが。


……胸中は察するにあまりある。
……無理からぬところかもしれない。
……妥当な措置と言えるかもしれない。

 使える表現が多いが、さておき。

 問題は、地震や水害などの災害時の救済策とのバランスを保ち、国民の間に不公平感が生じないように留意することだ。とくに耐震性を考えるならば、全国には耐震強度に不安を抱える建物が約1400万戸もあることを忘れてはならない。それらの耐震構造化への補助などとの釣り合いも考慮すべきだ。新たに欠陥建築が発覚したり、災害が起きた場合に適用できるかどうかも大事な要件となる。北側一雄国交相は「特例だ」と強調しているが、普遍性なくして国民の納得が得られるだろうか。

 主張はさておき、ファクツが重要。つまり、「全国には耐震強度に不安を抱える建物が約1400万戸もある」ということだ。
 と書きながら私もブログで社会ヒステリーを増幅しているだけなのだろうか。まあできるだけファクツだけメモするようにしておこう。
 読売新聞"検証・震災80年(1)「関東」「阪神」…伝える執念"(2003.7.29)は二年前の記事だが。

 国土交通省によると、全国の住宅は四千三百万―四千四百万棟。半分は八一年以前の建築で、うち六割余は耐震性に問題があるという。
 本間義人・法政大教授は「政府が掲げた都市再生政策では、とかく派手な高層ビル建築に目がうつりがちだが、危険地域の防災対策こそ優先すべきだ」と語る。

 ざっと概算すると耐震性の問題があるのは千三百万個になるようだ。この二年間で特に改善は見られない。
 古い建物といえば校舎が連想されるが、対応は地方自治ということもありニュース地域ごとにばらばらとしている。読売新聞"神戸の市立小・中学校 学校耐震診断8%止まり 大半が「補強必要」"(2004.1.16大阪)も約二年前の記事が参考になるか。

 阪神大震災で避難所となった神戸市の市立小・中学校で、耐震設計基準が強化された一九八一年以前に建てられた校舎や体育館のうち、耐震診断を終えているのは8・2%にとどまっていたことが十六日、わかった。東海地震に備える神奈川(87%)、静岡(85%)両県や全国平均(35%)を大きく下回る。補修などの復興事業が優先されて後回しになった形だが、市教委は今年度始めた全棟診断計画を前倒しし、年度内に55%の診断完了を目指す。

 二年前で耐震診断を終えた校舎が全国平均で三五%というと、現在では四分の三くらいは耐震設計対応になっていると見てよいのだろうか。これを多いと見るか少ないと見るか。こうした校舎は避難所にもなるのでそのあたりも気になる。
 ビザールというわけでもないが、奇妙なニュースもあった。十年前だが、科学技術庁防災科学研究所が阪神大震災の地震波形を振動台で再現し、鉄筋コンクリート三階建ての建物を揺らす破壊実験を行った(読売新聞1995.3.21)。結果はどうだったか。

 建物は三層構造で現行の建築基準法に盛り込まれた新耐震設計基準ギリギリの強度になっている。これを加速度八一八ガルを上回る一二五〇―九七〇ガルで三回揺らした。最大振幅五十九センチを記録した最上階を中心に、はりには無数の損傷が見られたが、震度7相当の揺れでも崩壊しなかった。今回の実験では計算上、三回目の揺れで建物全体が壊れるはずだった。今回は揺らすごとにはりと柱のつなぎ部分の損壊が大きくなり、揺れのエネルギーを緩和することになった。

 計算が外れたようだ。現実問題だと、どう外れるかがわからないのではあるが。

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「社会」カテゴリの記事

コメント

いまさらながらにこちらのブログをRSSに登録させていただきました。1ゲッツで感慨ひとしおなアホ告知です。

投稿: immobilite | 2005.12.07 12:58

finalventさん、こんにちは、

耐震性に問題があるといっても、ご指摘のように地震が起こったときにどのような影響を受けるのかはかなり経験則的です。地震の度に建築関係の方々がさまざまな調査をし、データを積み上げてきて、現在の耐震基準ができているともいえます。

具体的には柱や梁にひびがはいるといったレベルから、座屈といって柱がくずれてしまうといったレベルまであります。鉄筋コンクリートの建物が崩壊するというのは、かなり異常な力が働いた時だと考えます。どうも、9.11以来建物は崩壊するときに一気にいってしまうような印象がもたれているようですが、建築基準法上の耐震性が想定しているのはかなり違う状態だと私は理解しております。

投稿: ひでき | 2005.12.07 15:24

9.11はジェット燃料による火災で、鉄骨が脆性化したのが引き金となって倒壊したわけですよね?
だからアスベストで耐火被覆、というのは余談ですが、小学生の時の社会科見学で熱を加えれば鉄は曲がることを学ばなかったんでしょうか?

また、新耐震基準云々をいうのなら、計算ルートの話もして欲しいものですが。

投稿: | 2005.12.07 20:03

はじめまして、いつも拝読させてもらっています。

前回のエントリーでもあったように、ものが壊れるシュミレーションというのは非常に難しく、それがコンクリートなどになると、さらにわからなくなるものです。

重要とされているファクツを考えるという話ですが、鉄骨だけならまだしも、コンクリートが入ると破壊を精確に予測することは不可能。というのが、ファクツだと思っています。

耐震基準というのは未だ未解明ということがファクツでしょう。

投稿: ヤマグ | 2005.12.07 22:02

耐震性に問題がある。というと皆さん全階がぺっちゃんこになるパンケーキクラッシュを想像されるようですが、多少なりとも鉄筋が入っている建物ならまずそのような壊れ方をすることはありません。ただし、1階が駐車場になっているようなピロティ形式の建物ではピロティ階が崩壊することはあるでしょうが。阪神大震災でもRCのマンションで死んだ人はほとんどいないのです。
さて、全国にある耐震性に問題がある建物です。特に木造家屋などについては、これははっきり倒壊する建物であるといってよいでしょう。当然死人もでます。
しかしそのことを声高にいってどうなるでしょう。資金面で改善の目処がない状態で、不吉なことを言った所で何の助けにもならないのです。あと30年もすれば危険な木造家屋もなくなります。それまで黙って見守りましょう。というのが現状です。
偽造マンションには退去命令が出ました。もっと命令を出した方が良い建物はいっぱいるのですが、そこは既存不適格なので無問題です。おかしいな話でしょうか?
私はそうは思いません。

投稿: Babur | 2005.12.07 23:08

>全国にある耐震性に問題がある建物です。特に木造家屋などについては、これははっきり倒壊する建物であるといってよいでしょう。当然死人もでます。

つーか、実際神戸の中心地で死地をさまよった身として言わせてもらえば、神戸のオフィスビルも、もし中に人がいれば死人が山ほど出ただろう建物がごろごろしてましたよ。高度成長期に建てられた建築物は全部まずいんじゃないかと言う気がしますが。

投稿: F.Nakajima | 2005.12.08 21:03

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