セブン・ミレニアム統合メモ
少し間が空いたが二十五日、セブン&アイ・ホールディングスがミレニアムリテイリングの株式の六五%を買収し経営統合する方針を発表した。
言うまでもなく、セブン&アイ・ホールディングスは、セブン-イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、デニーズを傘下に持つ流通グループ。対するミレニアムリテイリングはそごうと西武百貨店を持つ。これで、国内最大の流通グループが誕生し、小売りでは世界規模でも第五位となる。とはいえ、どの業態も前年比割れか成長見込み薄、ということで、世界規模で見るとヘタ打ったかもねという評価があり、S&Pはセブン側を格下げした。
新聞社説では私の記憶では二十七日に三社が扱っていた。
私の印象としてはどの社説の似たり寄ったりで、いまひとつ今回の事態が理解しづらかった。しいていえば、朝日は支離滅裂、日経はべた記事風なので、読売がやや良かったように思う。なぜ?に少し答えていた。
今回の再編で、セブン&アイは、百貨店との“共鳴効果”を狙った。一定のブランド力を保つ百貨店が仲間に加わることで、新商品の開発や仕入れが有利に展開でき、新たな出店戦略も立てやすくなる、というわけだ。
ミレニアム側にとっても、渡りに船だったとされる。ミレニアムの株式の多くは、国内の投資ファンドに所有されている。意に沿わない形で株式が売却されるより、価値を認めてくれるセブン&アイのような相手が理想的だった。
もう一つの特徴は、外資系流通大手の攻勢に備えた規模の拡大、という意味合いだ。国内の流通市場には、多くの外資が進出している。米ウォルマートは、大手スーパーの西友を子会社化した。欧州系企業も店舗展開を始めた。
つまり、①共鳴効果(シナジー効果)、②ミレニアム側の売却の危機意識、③外資対抗、ということで、大筋ではそうなのだろう。
その後、NHKの解説で知ったのだが、今回の統合はミレニアム和田繁明社長がセブン鈴木敏文会長に先月持ちかけたものらしい。和田としては他数社もリストにはしてあったそうだが、やはり鈴木を狙っていたのだろう。やはり、突然のものだったのかと思い直した。
![]() セゾンからそごうへ 和田繁明の闘い |
鈴木敏文と和田繁明については、私のような者が何かを書いてもしかたがないのだが、こういう人が天才なのだなとは思う。鈴木敏文はコンビニの現場なんか見回りませんよと言って、POSデータのCRTを見つめていた姿が印象深い。和田繁明は改装後のデパートの中を駆け回って一番ボトムの現場を確認していた姿が印象深い。そうした姿だけで、何かを感じさせる経営者ではあった。
![]() 鈴木敏文の 「本当のようなウソを見抜く!」 セブンーイレブン流 「脱常識の仕事術」 |
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コメント
いつもこのブログ面白く思って拝見しています。
自分も今はセブンイレブンでバイトをしているのでこのことに興味を持っていたのでコメントをさせていただきました。
今回のエントリ共感しますね。鈴木敏文と和田繁明はやはり天才でしょうが、時代はこれから変わり新たな才覚ある経営者が現れるのではないかと期待を含みつつ考えさせられました。
投稿: cho | 2005.12.29 20:18
>時代は変わる、その変わり目のドラマが
>あと数年で始まるような気がする、傍観者には。
という感じが僕にもします。今回の合併、ある意味、断末魔に聞こえます。
ある時代に適合して、大きくなりすぎるのもかえって面倒ですね。
投稿: ひろ | 2005.12.29 22:22
セブンに近い会社に勤務している私から見ると、この統合がセブンにもたらす効果の程は「様子見」としか言い様がありません。
近年、その独断専行ぶりから「首領様」とか「偉大なる領主」と揶揄されている鈴木会長は「日本の流通業界を救った」とでも考えているのでしょうか?
売場としては、例えばコンビニでは「デパ地下のあの味をコンビニで」というキャッチフレーズで惣菜を売ったりもしておます。味では勝てませんが。あれは、デパートにテナントとして入っている専門店が少量生産で作っている訳ですから。 また、コンビニ向けの大量生産品をデパ地下で売ったららどうなるか?当然、そのデパ地下の評判が落ちます。
次に衣料品。ヨーカドーは商品開発に陰りが出てきて低迷しています。デパートも、テナントとして入っているブランドメーカーの評判は高いですが、自らの商品開発には疑問があります。
逆に西武にとっては、財務面の強化と被買収リスクの低弦という効果があります
西武側の和田さんとすれば、独断専行の会長が生きてるうちに話をまとめてしまわないと、という考えがあったかもしれません。
私は、今のうちに破談になることをお勧め致します。
投稿: 関連業界人 | 2005.12.30 03:06
訂正
誤 低弦
正 低減
投稿: 関連業界人 | 2005.12.30 07:56