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2005.11.14

フジモリ元ペルー大統領の動向についての印象

 フジモリ元ペルー大統領の動向について、特にまとまった考えはないが、自分の印象を簡単に書いておこう。フジモリは六日に日本を公的には秘密ということで出国しチリのサンティアゴに到着。その後、チリ当局から拘束され現在に至る。余談だが、フヒモリと呼ぶべきかとも思うが、通例どおりフジモリとしておく。
 漫然と日々のニュースを聞いている私などには、半ば降って湧いたような出来事にも思えたが、反面では予てよりフジモリが大統領復帰の執念を燃やしていることをまったく知らないわけでもない。まさかという思いではいた。日本で若い奥さんと漫然と暮らしていればいいではないか。
 過去のニュースを夏ごろまで当たってみると、八月三十一日付け共同”日本滞在のまま立候補も 来年大統領選でフジモリ氏”に大統領選立候補の話はすでにある。


ペルーのフジモリ元大統領が率いる政党「シ・クンプレ(成し遂げる)」のデルガドアパリシオ幹事長は30日、日本に滞在中のフジモリ氏が、ペルーに帰国しないまま来年4月の大統領選に立候補することを想定していると明らかにした。リマの自宅で共同通信に語った。

 もっとも共同が取材をするまでもなく、フジモリ自身は二〇〇二年九月の時点で意思の表明をしている。記事のバリューは、フジモリの政党の存在だろう。共同には政党とあるが、三党の政治同盟ということだ。
 突然にも見えた出国だが準備も進んでいた。九月十四日共同”フジモリ氏が新旅券取得 大統領選立候補が目的”によればその目的でパスポートを取得をしていた。唐突な事態でもないということだ。出国際しては米国での支援者もいる。
 フジモリの容疑についてとりあえず置くとして、ペルー国民の支持はどうかということが重要になるが、その点について彼は、十月六日共同”フジモリ氏、正式出馬表明 来年4月のペルー大統領選”でこう述べている。

 日本に滞在中のペルーのフジモリ元大統領(67)は6日、都内で記者会見し、来年4月の大統領選について「私の支持率は3割以上ある。法的に問題はない。復帰する」と語り、正式に立候補を表明した。

 ペルー国民の三〇パーセントほどの支持があれば、勝てる、つまり大統領復帰可能だと公言している。大統領選ということであれば、今後の「シ・クンプレ」の活動いかんにかかっているとはいえるのだろう。
 フジモリは現ペルー政権側からは二十一もの容疑をかけれていることになっているが、先月十九日に一件無罪判決が確定した。十月十九日共同”フジモリ氏に初の無罪判決 ペルー最高裁”より。

現職当時の軍用品の調達に絡み、公金横領などの罪に問われたペルーのフジモリ元大統領について、同国最高裁は18日、証拠不十分で無罪とする判決を言い渡した。ペルーのRPPラジオなどが伝えた。
 フジモリ氏は2000年に失脚した後、20件以上の罪で刑事訴追されているが、無罪判決は初めて。来年4月の大統領選への出馬を表明しているフジモリ氏の支持勢力が勢いづきそうだ。

 私の印象では横領などの面で無罪であれば、あとは推して知るべしか。問題はむしろ無罪判決というよりそれがどうペルー国民に訴求するかだろう。そのあたりの空気が読めないものかと思うのだがわからない。沖縄とペルーはつながりが深く自分の沖縄での体験からペルー民衆を想像もしてみるのだがわからない。
cover
アルベルト・フジモリ
テロと闘う
 ニュース報道は、率直な私の印象を言えば、かなり偏っているように思える。左翼に言わせれば国粋主義の権化のごとき石原都知事はフジモリを支持しているというので、では右派はフジモリを支持しているかというとそうも見えない。簡単にいえばヘタレ右翼ならぬポチ親米派がるっせーなと思っていることだろうか。ペルー国民の少なからぬ人々が日本からの支援を感じているようだが実際の日本国内でのそうした動向の空気はほとんど感じられない。余談だが日本の左翼はフジモリを快く思っていない。理由は説明するのもくだらないので略。
 さて、こっそりと私の印象を言う、これは革命なんだろう。失言だか放言だかということになるのだろうが、そういう線で考えれば、大統領選挙も各種犯罪容疑なども、別にそれほど本質的な問題ではない。単純に言えば、フジモリ革命が成功するかしないかだけが重要だ。
 そう考えれば、その成功の是非は単純に軍事力かかっているとしか言えない。つまり、フジモリ勢力が、頼みとする国民の三〇パーセントを背景に、なんらかの方法で国軍を動かせるかということだろう。率直に言えば、とんでもないことだともいえるが、ソ連崩壊を思い出せば、あながちそうとばかりもも言えない。
 では、そうした可能性はあるのか。私はないと思う。理詰めで考えれば、フジモリが大統領に返り咲くことはないだろう。それでも、私は歴史という生き物の鼓動をこの一連の騒ぎに感じてはいる。

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コメント

結局、ペルーは、昔から一つの国ではないのです。都市部はグローバリゼーション志向、地方は土着志向。どっちが勝つかを考えれば、やっぱりフジモリは時勢に逆らっている。日本人としてはフジモリを応援したいが、だめだろうな。日本もやがてはこうなる。都市と地方の利害対立が極度に顕在化し、いままでずっと勝者であった地方は負ける。

投稿: 余丁町散人 | 2005.11.14 20:57

余丁町散人さんの、醒めたコメントに比べると、トラックバックさせて頂いたフジモリ氏に関する私のエントリは、単純過ぎますかね。でも、余丁町散人さんのように、冷静に物事を見るには、私自身の人間が単純すぎるのだということなのでしょうね。

投稿: 屋根の上のミケ | 2005.11.15 01:05

追って知るべし→推して知るべし
国粋主義の権現→国粋主義の権化
ですね。

投稿: つきっつ@校正屋 | 2005.11.15 11:19

つきっつ@校正屋さん、ご指摘ありがとうございます。訂正しました。コメントをもって履歴に代えます。

投稿: finalvent | 2005.11.15 11:45

トレドの奥さんが、ユダヤ系だから、フジモリに勝ち目はないね。

投稿: 日本人 | 2005.11.15 12:34

はじめまして。
私は最近まで南米の社会については全く無知だったのですが、南米人の友達ができたことで彼らから直接話を聞く機会が増え、状況を少しずつ理解しつつ(あるいは身で感じつつ)あります。

私の友達ペルー人をはじめ、ベネズエラ人、エクアドル人、そしてヨーロッパ人(要は私の知っている日本人以外みんな)がフジモリをとんでもない悪者政治家と考えています。
彼らが一言目に言うのは、「あいつが何人殺したか分かってるの?」ということです。それから、「確かに最初は良かったけど・・・」と続きます。

彼らの話を聞く限りだけならものすごく納得できるのですが、日本の報道を見ていて、南米人の発言との間のあまりの温度差に、私自身は戸惑っています。
本当はどうなんでしょうかね。

投稿: nodako | 2005.11.16 05:02

>nodakoさん

日本で出会えるような方々は、支配階層の裕福な方な訳で。
政権を追われた野中の恨み節と何一つ変わらないぐらいの感覚で眺めていればいいのではないでしょうか。

投稿: くれふ | 2005.11.16 20:24

私は6年前に「技系主導政治」を訴える本を出版し、フジモリ氏の登場を訴えて来たのです。年金事件から、流れるプール、シンドラー、耐震偽装等々、今ワイドショーを賑わす不祥事の殆どは戦後の文系独裁政治のせいなのです。2次大戦を一緒に戦ったドイツはとうに技系首相。歴代米国大統領をはじめ技系主導者は珍しくないのです。HP「技術立国への構造改革」を御覧下さい。

投稿: 岡田元浩 | 2007.06.20 07:17

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