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2005.11.25

フランス暴動、あれから思ったこと

 「極東ブログ: フランスの暴動について簡単な印象」(参照)で触れたフランスの暴動の話題ももうそれほどブログでも見かけなくなった。ニュースでもそれほど見かけないように思う。が、たぶん車を焼き払うといった度の過ぎた悪ふざけはなんの変わりもなくフランスの日常となっているのではないだろうか。そういえば、カトリーナ被害の話題も似たように衰弱したといった印象はある。米経済についてもいろいろ言われたが現状はなぜか好調だ。
 グローバル化がもたらす格差や移民がどうのといった議論がすべて虚しかったとも私は思わないが、旧来の左派やリベラルのイリュージョンがだいぶ含まれていたように思う。というか彼らの現実認識と理念の言葉が奇妙な乖離を遂げていたような印象も受けるし、これは言うべきではないかもしれないのだが、これらのイリュージョンは擦り切れた終末論の二番煎じといった趣きも感じられた。
 そうしたなか、ああそこまで言うのかと思ったのは、日本版ニューズウィーク11・30”フランス移民暴動の真犯人”という記事だ。このところ日本版ニューズウィークはなんかネジがはずれたようなピンボケ記事が続くので馬鹿馬鹿しいから購読辞めるかと思っていたが、ときたまこうした記事が読めるならいいかとも思えるほどだった。
 で、フランス暴動の原因はなにか。


 今回の暴動の原因を西洋とイスラムの「文明の衝突」に求めるのはまちがっている。暴動の原因はあくまでも失業問題だ。

 私もそう思う。そして、尻馬に乗って言うのだが、フランスの階級社会がもたらした事件だとかぬかしてたやつらは馬鹿じゃねーのかともこっそり思う。
 だが失業問題というだけならそれほど大したことではないし、先の私のエントリでも仄めかしてはおいた。明確に書く自信がなかったというのもあるが、むしろ失業問題というなら、その先はどうかということに対して、自動的に社会保護的な政策が浮かぶことに奇妙な違和感を感じたからでもあった。もちろん、社会は回復されなくてはならない。しかし、それが国家レベルでの保護施策を巻き込んだ形の理念として立つとき、それは違うだろうという感じがした。
 だが先の記事は問題の捨象も大きいのだが、すっきり書いていた。

 原因ははっきりしている。厳格な就業資格制度や起業に足かせをはめる厳しい規制に加え、フランスの誇る手厚い労働者保護法制がかえって失業問題の一因になっているのだ。


 こうした要因が相まって、ヨーロッパに新しいエリート層が形成されつつある。「雇用のある人たち」という階層である。「雇用のない人たち」を尻目に、この人たちは、過保護な労働法制によりますます恩恵を受ける。
 ドイツと同じくフランスの政府も、従業員の採用と解雇のコストを引き下げることを拒否し、硬直した労働市場の放置してきた。その結果、生涯にわたって雇用が保障されてる人がいる半面、それ以外の人たちは短期的な臨時雇用の職に就くしかない。

 日本も構造は同じだ。
 尻馬に乗って言うのだが、日本でこうした暴動が起きないのは、職がなくても若者が生きられることを社会の安全性として必死で維持してきたためであり、また若者が暴動に走れないほどに社会システムの圧力を強化したからだ。図に乗ってさらに失言しそうになるがやめとく。もう一つ引用しよう。

 しかし、イギリスで増えているのは理髪店の店員だけではない。規制緩和により、知識労働者の数も数千人増えた。それに、今回のフランスの移民暴動を見てもわかるように、いちばん危険なのは、ヨーロッパの若者にまったく働き口がない状況だ。

 日本で一番危険なのは、その状況が社会システム側の力で鎮圧されることだろう。

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「社会」カテゴリの記事

コメント

こんにちは。
フランスの暴動の問題を「階級社会の弊害」だの「文化衝突」だのに求めるのは馬鹿げていると私も思います。
ただ、その問題の原因をを雇用問題にのみ求め、そこに日本との差異を見るのは、それはそれで少々極論かな、と思ったりします。もちろん貧困の問題は根底にあるとは思いますが、そもそもフランスで暴動を起こした層がイスラムにすら根を持たない存在である(らしい)ことは注目すべき点ではないかと思います。
マグレブ出身のフランス亡命作家、タハール・ベン・ジェルーンは、アラブ系移民問題について「フランス社会の他文化に対する無理解が根底にある」と語っていて、私の中で大きな疑問を引き起こしたのですが、それはフランス文化に対するアラブ系移民の無理解については全く語っていない点に尽きました。彼などは移民といってもエリート層に属するのでしょうが、実際こうして暴動が発生し、それが既にアラブにすら根を持たない人々の貧困に対する爆発だとすれば、これは単なる失業問題ではなく行き過ぎたリベラリズムの結果ではないかとすら思えてなりません(哀しいことですが)。
私事ですが、国とは、かつては檻のようなものだと認識していましたが、今はそれに従うことを前提に人々が在住するための一定のルールなのかと思ったりします。歳を取ったのかもしれません(笑)。
長くなりましたが、テロリズム、民族紛争をはじめ、今回の暴動などには大変心が痛みます。

ところではてなユーザーでないので質問できなかったので、こちらで失礼します。22日の日記でイエスをあえてザルカウィに例えた理由をお聞かせ頂けると幸いです。イエス運動がある種のテロリズムに近いものではないか、という意見には大変共感するものがあるのですが、アルカイダに例えるならば、役割的にはオサマ・ビン・ラディンではないかと思うのですが。ザルカウィはむしろ実行部隊の立役者ということで、パウロあたりになるのでは(笑)、などと思いました。あとはオサマがメロンを食いつつ屋根裏に隠れているところを発見されたりしないことを願うばかりです(笑)。いや、本当はイエスもオサマもそうあるべきだったのかもしれないですが。

投稿: deco | 2005.11.26 02:47

http://d.hatena.ne.jp/kagami/20051107

ここを読むと、フランスの暴動の問題を「階級社会の弊害」だの「文化衝突」だのに求めるのは馬鹿げているとは私には思えませんでした。
超えることが許されない壁、絶対的な階級社会があるというのが欧州の真実で、閉塞したまま永続しなければならない欧州流下層社会が全ての根底にあるのではないでしょうか。

投稿: ケロ | 2005.11.27 02:06

ちゃいまっせ。

投稿: のねこ仏少年 | 2005.11.27 10:57

文明の衝突だと騒いでいるのがクリスチャン側である事に注目。ハーバード大のサミュエル・ハンティントンの「文明の衝突」でも読んでみて。

んで何が言いたいかっていうと、文明の衝突を起こしていったい誰が儲かるかって事。世界の武器貿易で設けているトップ5は誰でしょう。それとどこかの国の経済は軍事産業に支えられています。その国はどこでしょう。

んだから、そういう事わかってたら、相手の意図にのっちゃ駄目なんだけれども、自分の仲間殺されるのを目の前でみて黙っている奴はいないでしょ。

奴隷貿易もそうだけれども、つけは大きいと思うよ。

投稿: コーンフレーク | 2005.11.27 18:41

この事件が、経済圏統合 及び 積極的移民受入政策が招く問題を浮き彫りにしたという点では、メリットがあったといえると思います。
 日本でも近隣諸国から移民を受入れるべきだという知識層のおじちゃんがいますが、この事件をきっかけに、整備すべき制度が未だ多くあることに気づいて欲しいものです。

投稿: ToorisugariAsan | 2005.11.27 23:46

>>decoさん
>私の中で大きな疑問を引き起こしたのですが、それはフランス文化に対するアラブ系移民の無理解については全く語っていない点に尽きました。

人の国に割り込んで権利ばかり主張する人たちはそんなもんですよ。日本も同様ですしね。人権主義は一つの共同体の中では重要だけど、外部からの「攻撃」にはとてつもなくもろいんだよなぁ。

投稿: | 2005.12.10 18:09

悪さをする移民なんて射殺しちゃえばいいのにね。

投稿: | 2005.12.27 21:55

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