シリアスなシリアの状況
国内ではイラクほどには注目されてないような印象も受けるが、ここらでちょっとシリアスなシリアの話でしょう。十月三十一日の安保理で、シリアに向け、ハリリ元レバノン首相暗殺事件に関する決議が採択された。じゃシリアへドカンと一発も経済制裁もない。そりゃない。決議はシリアに対して国連の独立調査委員会に無条件に協力(妨害中止)することを求めるというもの。これには被疑者の拘束や資産凍結を含む。全会一致の採択となった。中露も賛成したのは米英仏が折れたため。決議にシリアが抵抗し国際調査委員会への協力を拒否すると、「さらなる措置」とかでチェックメイトになるかもだが、私の印象ではステイルメイトか。
暗殺されたハリリ元レバノン首相は在任時レバノンに威圧的に駐留するシリア軍の撤退を主張し、シリアと親シリア派のラフード大統領と対立。結果、昨年十月に辞任し、今年二月に無惨な最期を迎えた。誰がやったのか真相はわからないが、対立していたシリアでしょという気運は「国際世界」にはあった。またか君か的である。シリアによって暗殺されたと見られるレバノン要人は既に二十人以上にのぼる。今回は駄目押しのように独立調査委報告書が出てシリアとレバノンの治安機関などの関与が指摘された。シリアのアサド大統領の実弟(四男)マーヘル・アサドや義兄(姉の夫)アーセフ・シャウカトなどシリア軍の要人も事件に関与したとされている。が、その名前を掲げた証言は最終版では「高官」の表現となり実名は消された。国連の聴取中シリアのカナン内相が自殺したとされているがそのあたりもきな臭い。
今回の決議採択についてワシントンポスト(参照)とニューヨークタイムズ(参照)は仲良く「ええんでねえの」的に意見を一にしているのだが、私はどうも解せない。もちろんシリア内に以前からレバノンのうるさいやつはやっとけ組織が存在していた。その関与がないわけもないだろう。だが、シリアの国策としてこんなことをやったのだろうか。やったらどうなるかくらいわかんないのがシリア・クオリティなのかどうも私には信じがたい。とはいえ、この先は疑惑の「宇」宙が開けてようでもあり、なんともな。
大枠で見ると、まず、米国とシリアの関係というのはなかなか微妙なものである。このあたりは、以前にも少し触れた。例えば、「レバノン大統領選挙がシリアの内政干渉で消える(2004.9.3)」(参照)や「極東ブログ: シリア制裁発動(2004.5.12)」(参照)など。
アメリカの本音としては、もちろんなにかと強面だが、実際は中道化を狙っているんじゃないの的ブッシュ政権はシリアを孤立させるだけでよしとしているのではないか。大統領とはいえ浮き世の義理の世襲王アサド(参照)は筋金入りのヘタレだしスンニ派の嫁ももろたりと世俗的でもある。立てといて悪くない。それにマジでシリアとレバノンをボロボロにしたらイスラエルまで飛び火する。そこまで米国がするだろうか。
おりしも、在イラク米軍はシリア国境を固めつつある。
イラク西部フサイバ(CNN) イラク駐留米軍は5日、シリア国境に近いフサイバ市で、外国人戦闘員も交じる武装勢力を掃討する大規模作戦「鋼鉄のカーテン」を同日早朝、開始した、と述べた。海兵隊、海軍、陸軍などの米兵約3000人、イラク軍550人を投入している。
武装勢力は、路上爆弾、自動車爆弾など使い、散発的に抵抗している模様。近隣地区では、武装勢力の最後の拠点ともみなされている。米軍は、フサイバ市は武装勢力の作戦の指揮センターで、イラク各地へ戦闘員を送り出す中心地ともみている。
イラクに入り込むシリア側の武装勢力を押さえ込むということもあるだろうが、シリアへの威嚇もあるのだろう。
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コメント
ハリリ氏暗殺の黒幕は、やはりシリアだったのですね。米国もイラク情勢が混乱したままでは、シリアにまで制裁の力を及ぼせないのですね。そのシリアがイラクのテロリストを支援しているのでしょうし、北朝鮮も、あんな状態ですし、米国もつらいところですね。
投稿: 屋根の上のミケ | 2005.11.06 22:26